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俺はロラン②

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 俺は婚約者であるカーナをお茶会に誘う。
 無論、婚約者である俺とのお茶だ。カーナは断るなんてことはせず、直ぐに了承した。………まぁ、断ろうとしても権力で脅すだけだが。

 そんな風に始まったお茶会。
 茶葉の入り混じった風味の良い、ほんのり紅い透き通った茶を口に挟みながら、カーナに婚約破棄のことについて話す。

「なぁなぁエレナ。」
「何ですかロラン様。」
「昔から思ってたけどさ、お前の顔タイプじゃないんだよね。胸は結構あるから妥協範囲内だけど、どうしても顔が無理。だから、婚約破棄をしてくれ。」

 俺は思っていることをそのまま伝えた。
 別に遠回しに婚約破棄を伝えることも出来たが、面倒臭い。それに、もう婚約者じゃなくなるんだ。変な気遣いはしなくてもいい。

 もう一口お茶を挟みながら、俺はカーナのことをじっと見つめる。
 数十秒経っただろうか。
 カーナは少し考えるように腕を軽く組むと、一口茶でお口直しをして、口を開いた。

「えぇ。喜んで婚約破棄をして差し上げます。」

 そう満面の笑みを浮かべながらそう言うと、春を舞う蝶のように軽快な足取りで部屋を出ていく。

 取り残された俺は、そんなカーナを見て疑問に感じる。
 どうしてカーナは、嫌そうにしなかったんだ?

 俺の憶測では、俺が婚約破棄をすると言うと、カーナは反対してくると思っていた。それも、泣きながら。ただでさえタイプではない顔が、更に醜くなると思っていた。
 
 なのに、何だあの態度は。
 俺との婚約を破棄出来たことが、嬉しそうだったじゃないか。
 この俺との婚約をだぞ。
 あり得ない。

 少し俺の頭をフル回転させて考えた後、俺は一つの結論を出す。
 もしかしたら、カーナには俺以外の男が居たのではないかと。

 怒りのあまり、俺は地団駄を踏む。
 俺という存在がありながら、どうして彼奴は他の男を作ったりしたんだ。
 この俺様が居るというのに。
 俺はカーナ以外の女を抱いたりしたが、関係ない。
 俺は次期王様だぞ。
 俺は許されるが、彼奴は許されない。

 俺は、彼奴を監視することに決めた。

 

















 ………
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