土地神に転生した俺、最強領地を築く!〜弱小領地から始まる異世界建国記〜

服田 晃和

文字の大きさ
32 / 46
第2章 筆頭土地神は大変です

第32話 『結婚』?

しおりを挟む
 冬支度も順調に進み、ミモイ村の家屋は全て木造で建て直すことが出来た。建築チームはミモイ村から移動し、ルノーでの作業を始めている。俺達はその間、摘み取った実綿を固い木の棒で叩きまくって、繊維と種で分ける作業を必死に行っていた。

「だから私言ってやったんです!文句があるんだったら猪の1匹や2匹狩ってきてから言いなさいって!」
「よく言ったわ、ノイン!本当、村の男達ったら私達の仕事を甘く見てんのよ!幾らナオキ様が居るからって、畑仕事も楽じゃないんだから!」
「そーよそーよ!ねぇナオキ様!」

 彼女達の視線が一気に俺へと集中する。顔はこちらを向いているというのに、棍棒を叩く手が止まらないのが、逆に俺の恐怖をかり立てていく。

「は、ははは。そうだね……」

 心の中で男性達に謝りながらも、俺は女性達に賛同する意思を示した。ここで彼女達と対立デモしてしまったら、気まずくなって作業どころではなくなる。

「やっぱり、ナオキ様もそう思いますよね!帰って来たと思えば、『今日は疲れてるんだ!』とか言って、子供達の面倒も見ないし!私達だって疲れてるんですからね!」
「ほんとよねぇ!どうして男ってこんなに気が利かないのかしら!ナオキ様みたいに優しくて気の利く旦那だったら良かったのにねぇ!」

 俺が彼女達に同調してしまったせいで、どんどんとヒートアップしていく旦那の愚痴大会。俺の胃が、キリキリと音を立てて痛めつけられている。

「あの、ナオキ様……失礼だと思うのですが、一つお聞きしても宜しいでしょうか?」
「え?あ、ああ別に良いけど。なにかな?」

 奥様方が愚痴をこぼしていく中、隣で作業をしていたリリアンが囁くような声で話しかけてきた。俺は気分が紛れるかと思い、軽い返事でOKを出す。するとリリアンはふーと息を吐いて、覚悟を決めたように俺に問いかけてきた。

「ナオキ様は、シズクちゃん様と婚礼を結ばれているのでしょうか?」
「ぶふぅぅ!!はぁぁぁ!!?何で俺がシズクちゃんと結婚するんだよ!!」
「す、すみません!神様は神様同士で結婚するのかと気になってしまって……」
「いやいや!そんなの俺だって知らないよ!ていうか、シズクちゃんは俺より滅茶苦茶年上だからな!」

 俺が必死になって否定したことで、リリアンも納得したのか、それ以降『結婚』の話題を出してくることは無かった。そもそも俺はまだ18歳だぞ?結婚なんて先の先の話だ。

それに、元の世界に戻る予定である以上、この世界の人間と結婚する気はない。

 そう思いながらも、リリアンの問いかけによって俺の心の片隅に『結婚』というワードが植え付けられたのは確かだった。

「ナオキ様何の話ですか!?いま結婚の話をしていませんでしたか!?」
「ずるいですよ!私達にもナオキ様のお話聞かせてください!」

 俺とリリアンの会話を耳にした主婦の軍勢が、矢継ぎ早に俺の元へ詰め寄ってくる。愚痴大会が始まる直前に追い出された子供達の明るい声が、家の外から聞こえてきた。ケラケラとした笑い声。その声は、俺にとって砂漠に現れたオアシスのような存在だった。

 今すぐにでも子供達の元へ駆けていきたい。この場から逃げ出したい。誰でも良いから助けてくれと、声にならない叫びをあげる。その時、家の扉が勢いよく開かれた。

「ナオキ様―!!だれかきたみたいだよー!村の入り口から、変な声がするー!」
「なに、本当か!教えてくれてありがとう!直ぐに行くからちょっと待っていてくれ!あー皆は引き続き作業をするように!!」

 俺は天国へと続く扉を開けてくれた子に感謝を述べつつ、急いで村の入口へと走った。この際領主の使いだろうと何でもいい。あの場から逃げ出せる機会をくれただけで、俺は泣きそうなくらいうれしかった。

 村の入口へ着くと、そこには一人の女性が馬に乗って待っていた。その後ろには、鷹の紋章が描かれた馬車があり、近くには数名の騎士たちが立っていた。

 ああ、また領主の使いが来たかと、俺は気合を入れなおす。領主の関係者には俺が土地神であることを知らしめなければならない。そう思っていたのだが、女性は馬から降りると、丁寧に頭を下げ始めた。

「失礼。こちらの村に、土地神ナオキ様はいらっしゃいますでしょうか?」
「あ、はい!じゃなくて……うむ!私が土地神ナオキだ!何用でまいった!」
「貴方がナオキ様でございましたか。申し遅れました。私、ハイネ様の近衛を務めさせて頂いております。フレデリカと申します。領主バッカス様に変わり、先日の無礼を謝罪しに参りました」

 丁寧な挨拶のせいで俺の気合が崩れかけるも、何とか持ち直して『土地神』を演じ始める。俺が土地神であることを告げると、馬車から一人の女性が降りてきた。

綺麗な銀色の長い髪の毛に、透き通るような青い目。左目は黒い眼帯で隠されていたが、それがまたミステリアスな雰囲気を醸し出していた。

「ハイネ・トーレと申します!先日は、父の使いがナオキ様に無礼を働いたと聞きました。土地神であるナオキ様に対し、暴言を吐いたと……本当に申し訳ございません!」
「あ、ああ。まぁ気にしないで……気にするでない!我が気にかけているのは、ルキアス村の魔法薬についてだ!それについては、どうなったのだ?」
「その件に関しましては、私共の方で適正価格に戻すよう指示を出させました!」

 ハイネと名乗った眼帯の女性は、ハッキリと強い眼差しで俺の目を見つめてきた。父の使いという事は、この子は領主の娘ということになるのだが。これ程までに聡明な娘なら、父親も敏腕領主のはずではないのかと疑いたくなってしまう。

 そんな疑問を浮かべていると、ハイネが何か言いたげな表情で俺の事を見つめてきた。

「娘よ。どうかしたのか?」
「あ、あのですね!!ナオキ様に折り入ってお願いがあるのですが……聞いて貰えますでしょうか!?」
「お願いだと?我を利用して民の生活を危ぶませようとするのでなければ、聞いてやらぬことも無い!」

 この間のエッケンとは違い、綺麗な女性からのお願いなら喜んで叶えてやる。見た感じ、俺の力を使って悪さをしようと企んでいる気はしないしな。少しくらい力を貸してやっても、問題は無いだろう。

 そう思い、返事をしたのだが、この選択が大きな間違いであった。

「本当ですか!?実はその……私と婚姻を結んで欲しいのです!」
「なるほど。それならば容易──はい?」

 ハイネの口から出た言葉に、俺は思わず『土地神』として演技することを忘れ、彼女の顔を二度見してしまう。それでも表情を変えることの無いハイネに、今度はフレデリカさんの方へ視線を移す。

 フレデリカさんも何も聞かされていなかったのか、鳩が豆鉄砲を食ったような顔を浮かべていた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

処理中です...