最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和

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1巻

1-1

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 とある都市の、とある戸建ての家。そこに、一際ひときわ異臭を放つ部屋があった。
 飲みかけのジュースや食べかけの菓子、さらには何年前のものか分からない程に腐敗したパンが床に転がっている。
 この部屋に住める人間など存在しないだろう、と思う程に汚れていた。

「ふー、今何時だ?」

 ほこりが舞い上がる中で、俺は一言そうつぶやいた。
 カーテンの隙間から窓の外を見る限り、もう夜中なのだろう。

「結構かかっちまったな。早く終わらせねーと」

 俺は下を向きながら、疲れた声で言った。
 大学を卒業して入社した建設会社は所謂いわゆるブラック企業で、残業代なし、休日出勤をしても手当なんて勿論もちろんない。そんな会社に勤めること十五年、いつの間にか解体作業のベテランとして現場を任されていた。
 ここまで仕事一筋十五年の俺は、未だ独身。異性との交際経験はあるものの、結婚には至らず一人寂しい毎日を送っている。独身貴族と言えば聞こえがいいだろうか。
 そんな俺は今日も、廃屋はいおくの二階で解体作業を行っていた。

「先輩ー! 作業終わりそうですかー? 終わりそうにないなら一旦飯でも行きましょうよー!」

 外で作業を行っていた後輩から声がかかり、俺は窓のそばまで移動する。歩くたびに、もろくなった床がギシギシと音を立てた。

「まだ終わりそうにないなー! 先に飯にするかー!」

 そう後輩に返事をして、部屋の出口へ歩き出したその時、床が崩れ出した。

「お、おい。マジかよ!」

 急いで退避しようとするが、大量のゴミが邪魔をして、自由に動くことが出来ない。

「くそ! 一かばちか外に飛ぶしかねぇ!」

 俺は窓へと振り返り、外に飛び出した。
 二階から飛び降りた衝撃で足に激痛が走ったものの、大きな怪我けがはなさそうだ。

「危なかった。頭から落ちてたら死んでたぜ」

 そう呟いた瞬間、頭の上に大量のゴミが降り注ぎ、俺の視界は真っ暗になった。


         ■


 目が覚めると、俺は真っ白な空間に立っていた。

「……ここはどこだ?」

 廃屋の二階から飛び降りたところまでは覚えているのだが、その後どうなったのか、さっぱり記憶にない。

「そうだ。あの後、急に真っ暗になったんだよな」

 何かの衝撃に襲われたことを思い出して、後頭部をさする。
 俺は自分の置かれている状況が分からず、恐る恐る周りを見渡した。
 周囲には何も無く、どこまでも白い床が広がるばかりである。どう見ても俺が居た廃屋ではないし、一緒に仕事をしていた後輩の姿も見えない。

「俺、一体どうなったんだ……?」
「君は死んだんだよ!」

 考えていると、後方から可愛らしい声が聞こえた。
 振り返ると、いつの間にか金髪の美しい女性が立っていて、ニコニコ笑っていた。

「えっと、貴方は誰ですか? それと俺が死んだってどういうことです?」
「あーごめんごめん! 僕の名前はアルテナ! 一応、『アルテウス』という世界の神様さ! 君は廃屋の二階から飛び降りた後、落下してきた大量のゴミに押し潰されて死んじゃったってわけ!」

 このぼく――自称神様の返答に、普通の人であれば慌てふためくのかもしれないが、俺はなぜか落ち着いていた。勿論初めての経験だったが、不安にならなかったのだ。
 俺はアルテナに向かって聞き返す。

「つまりここは、死後の世界ってことですか?」
「まぁそゆことだね! というか君、すごく落ち着いてるね! 普通こういう時は騒いだりするもんじゃないの? 嘘だろ、俺死んじゃったのかよ! とか、ワァー神様だ! とかさ!」
「そうですね……なんでか分かりませんが、落ち着いてしまってます」
「ふーん、つまんないの! 君はね、本当は元の世界で輪廻転生りんねてんせいするはずだったんだけど、なんでか魂がこっちの世界に来ちゃったんだよねぇ。珍しいこともあるもんだ!」
「えぇ……じゃあ俺はこの先どうなるんですか? もしかして、生まれ変われないとか?」
「いや、そんなことは無いよ! 君は二つから選択をすることが出来る! 一つは、元の世界で新しい人生を送ること! そしてもう一つは……僕の世界『アルテウス』で新しい人生を送ること! さぁどっちにする?」

 アルテナはなぜか、ウキウキとした表情で会話を進めていく。
 俺はそんな彼女の気持ちを理解することが出来ず、冷静に返答した。

「では、地球に戻して頂けますでしょうか?」
「うんうん、そうだよね! じゃあこれから異世界転生の手続きを……って、えぇ⁉ そこは異世界一択でしょ!」
「うーん、俺は貴方の世界のこと、少しも知りませんし……地球よりも科学が発展していない世界だったら耐えれませんよ。スマホとかテレビとかあるなら話は別ですけど。インターネットも重要ですね」
「わぁー待って待って‼ 説明を聞いてよ‼」

 俺の返答にアルテナはあせり始め、『アルテウス』についての説明が始まった。
 彼女から聞いた話を簡単にまとめると、『アルテウス』はこんな感じの世界だった。


 ・科学は発展しておらず、その代わりに『魔法』が存在する。
 ・多数の国があり、ほとんどの国が君主制である。
 ・『ヒト』に相当する種族は人間だけでなく、亜人や魔族が存在する。
 ・モンスターが存在し、人間の生活をおびやかしている。
 ・レベルシステムがあり、レベルが上がる程強くなる。
 ・全種族共通で一人につき一つ『職業』があり、ステータスや使えるスキルなどが決まる。
 ・『職業』は生まれた時から変わることはなく、魔法使いや剣士など様々なものがある。


「――ざっとこんな感じかな! さぁどーだ、異世界転生したくなったでしょ! まだ間に合うよ‼」

 アルテナはよっぽど俺を異世界転生させたいのか、熱心に話しかけてくる。
 聞いてみた感じ、『アルテウス』には確かに魅力的な要素は多かった。ゲームやアニメなどで見た世界で過ごせるチャンスなんて二度と無いだろうし。
 でもモンスターの存在が厄介やっかいだ。俺にはアニメの主人公のような力なんて無いし、もしモンスターと出くわしたら瞬殺される自信がある。

「確かに魔法とかは魅力的だけど、俺は戦闘とか経験したことないし……そもそも魔法って俺でも使えるんですか?」
「勿論だよ! もし『アルテウス』に転生してくれるなら、サービスしちゃおうかなぁ……」

 アルテナはそう言いながら人差し指を口に当て、可愛らしい笑みを浮かべた。
 サービスか。後輩にオススメされて読んだ異世界転生? の小説の主人公も、転生する時には神様に何かギフトをもらっていたな。
 それが貰えるとすれば、俺でもモンスターを倒すことが出来るかもしれない。

「それにさ! 地球に戻ったって、次は人間になれるか分かんないよ? 虫かもしれないよ? 『アルテウス』に転生するなら、人間の男の子で、前世の記憶だって持たせちゃう‼ どう? その気になったでしょ?」

 確かに彼女の言うことも一理ある。地球に戻ったところで、もし虫に生まれ変わるなんてことになったらと思うと寒気がした。
 でもここまで異世界を推されると、怪しい気もしてしまう。
 俺は悩みに悩んだ末、『魔法』の魅力に負け、異世界転生を決意した。

「分かりました。貴方の世界に転生させて貰います! ちなみに、サービスは何を頂けるのですか?」
「わーい! ありがとう‼ じゃあ早速手続きさせて貰うね‼」

 俺が了承の返事をすると、アルテナはサービスのことなんかすっかり忘れて、キーボードのようなもので何かを打ち込み始めた。

「あの、サービスは……」
「あーごめんごめん! サービスはね、まずは健康な体! 病気とかにかからないようにしてあげるね!」

 健康な体はありがたい。何をするにも体が資本だからな。

「あとは、『鑑定』スキルと『収納』スキルかなー。この二つが有れば、とりあえず死ぬことはないと思うよ! あとは『言語理解』! なんでも日本語として理解出来るようにしといてあげる!」

 そんなにサービスしてくれるのか。この三つがあって健康な体があれば、確かに簡単には死ななそうだな。
 戦闘に関して一切サービスが無いのは不安だが、欲を言ってサービスを減らされても困るし、黙っておこう。俺でも魔法は使えるって言っていたし。

「そういえば、なんであんな場所に居たの? 人間が住むような場所には見えなかったけど……」

 不意にアルテナに問われた俺は、苦笑いをしながら答える。

「あぁ……仕事でいたんですよ。うちの会社は所謂ブラック企業ってやつで、お金のためならなんでもやらせる会社でしたからね。廃屋の解体なんて危険な作業、何度やってきたことか」
「へぇー。じゃあ職業は『解体屋』だったんだね!」

 ポチポチと何かを入力しながらアルテナにそう言われ、自分でも納得してしまった。
 建設会社に就職したのに、なぜか解体作業の方を多くこなしてきたのだから、『解体屋』と呼ばれても仕方ない。

「よし、手続き完了! ということで、君は今から世界『アルテウス』に転生して貰うよ!」

 これで俺も魔法使いになれる。そう考えていると、目の前に光のうずが現れた。

「さぁ、そこに飛び込んだらいよいよ転生だ! 君の新しい人生が幸多きことを願っているよ‼」

 満面の笑みで俺を送り出してくれるアルテナ。
 俺も少し幸せな気分で光の渦へと一歩を踏み出す。

「ありがとうございますアルテナ様。貴方の世界で楽しく暮らせるように頑張ります!」

 そして俺は、光の渦へみ込まれていった。
 どんな魔法を使えるのか楽しみにしながら。


「どうしよう、彼の職業『解体屋』にしちゃった……」

 この声が俺の耳に届くことはない。


         ■


「オギャーオギャー!」

 俺は高らかに産声うぶごえを上げた。

「リアよくやったぞ! 男の子だ!」
「おめでとうございます、旦那様」
「うむ! これでカールストン家の未来は盤石ばんじゃくとなったな!」

 ん? 旦那様?
 白くぼやけていた視界がはっきりし始めると、俺の目の前に白髪の綺麗な女性が見えた。ひたいに多くの汗を掻きながらも、その女性は俺に対して愛おしい者を見つめる瞳をしていた。
 女性が俺を抱えるかたわらには、目つきの鋭い男性が立っている。

「職業が私と同じ『魔導士』であれば、もっとありがたいのだがな!」
「きっとこの子も、貴方と同じ『魔導士』ですよ」
「お前と同じであったとしても『魔術師』だからな! どちらであってもカールストン家の次男としては問題なかろう!」
(『魔導士』だと! なんだその、魔法使いですって感じの職業は!)

 父親が『魔導士』で、母親が『魔術師』という職業のようだ。ということは、俺もどちらかと同じ職業になる可能性が高いのではないか?
 アルテナには魔法が使えるようにと頼んだし、きっと魔法が使える職業に違いない。
 俺は魔法が使える期待に、喜びを隠せずにいた。

(話を聞いている感じだと、もしかして俺、お金持ちの家に生まれたのか? お金持ちで魔法使いなんてめちゃくちゃ最高な転生じゃないか!)

 両親以外にも、ちらほらと大人の姿が見える。
 父親らしき人は旦那様と呼ばれていたし。新しい人生のスタートが好調だったことに、自然と俺のテンションが上がっていく。

(そう言えば、アルテナから『鑑定』のスキルを貰ったんだっけ。ちょっと見てみるか)

 両親二人に向かって『鑑定』をかけてみる。
 すると、二人の顔の横にうっすらと文字が見えてきた。
 ――――――――――――――――――――――――
【名前】ダグラス・カールストン
【種族】人間
【性別】男
【職業】魔導士
【階級】カールストン辺境伯
【レべル】26
【HP】800/800
【魔力】1200/1200(300)
【攻撃力】D-
【防御力】E+
敏捷びんしょう性】D+
【知力】B-
【運】D-
【スキル】
 中級火魔法
 中級水魔法
 魔力増幅(中)
 詠唱速度上昇(中)
 ――――――――――――――――――――――――

(おぉー‼)

 レベルやステータスは凄いのか分からないが、魔法という文字に心がおどった。
 そして、階級のところに目が留まった。
 カールストン辺境伯?
 辺境伯ってあれだよな。中世とかであった貴族の爵位だよな。
 男爵とか伯爵? くらいしか聞いたことないけど……まぁ貴族の家に生まれたってことは確かだな。そんなことより次だ次!
 俺は早速、母親に目を移した。
 ――――――――――――――――――――――――
【名前】リア・カールストン
【種族】人間
【性別】女
【職業】魔術師
【階級】カールストン辺境伯 妻
【レべル】15
【HP】500/500
【魔力】660/660(110)
【攻撃力】E+
【防御力】E+
【敏捷性】E+
【知力】C+
【運】D-
【スキル】
 中級火魔法
 初級風魔法
 魔力増幅(小)
 詠唱速度上昇(小)
 ――――――――――――――――――――――――

(二人とも魔法を使えるのか! こうなると俺の職業も、魔法使い系の可能性が高いな!)

 俺が期待に胸をふくらませていると、父親が語りかけてきた。

「いいか、お前の名前はアレクだ! アレク・カールストン! カールストン家の名に恥じない立派な男になるのだ!」

 そう言いながら、俺の顔をにらむような目で見つめる。生まれたばかりの子供に対してそんなこと言っても無駄だと思うのだが。
 俺は父親の期待にあきれながら、自身の名前に興奮していた。

(アレクっていうのが俺の名前かー。意外とかっこいいな)
「大丈夫ですわ貴方。きっとアレクも貴方のように立派な男性になるに違いません」

 笑顔で父親に語りかける母親のリア。
 出産の疲労もあるだろうが、やはり我が子は可愛いのだろう。額に汗を垂らしながら、俺を優しい目で見つめてくる。

(大丈夫ですお母さん! 立派な男に育ってみせます! ですがその前に……)

 俺は心の中で母に言った。

(よし! 自分の『鑑定』をしてみるか!)

 俺は自分に向けて『鑑定』スキルを発動した。すると頭の中に文字が浮かび上がる。
 それを見て、俺は驚愕きょうがくした。

(な、な、なんだよこれ!!!)

 ――――――――――――――――――――――――
【名前】アレク・カールストン
【種族】人間
【性別】男
【職業】解体屋
【階級】カールストン辺境伯 次男
【レべル】1
【HP】50/50
【魔力】50/50
【攻撃力】F-
【防御力】F-
【敏捷性】F-
【知力】F-
【運】C+
【スキル】
 言語理解
 収納
 鑑定
【エクストラスキル】
 解体レべル1
 ――――――――――――――――――――――――

(スキルに魔法がないじゃないか‼)

 俺は自分の『鑑定』結果に衝撃を受け、そのまま気を失うように眠ってしまった……。


         ■


「はぁ、ここにも書いてないか」

 六歳になった俺は、屋敷の書斎の中で大きくため息をついた。
 この世界『アルテウス』に転生してからもう六年。自分の『鑑定』結果に衝撃を受けたあの日が懐かしく感じる。
 あの日から俺は前世の知識をフル活用し、自身の成長を早めてきた。
 生後三か月で首を据わらせ、寝返りを完璧にする。
 生後六か月で、つかまり立ちを成功させる。
 生後九か月で、簡単な単語を発する。
 生後一歳で、歩行及び会話を成立させる。
 そして一歳を過ぎた頃、屋敷の中を探索してこの書斎を見つけたのだ。
 書斎にもって本を読んでいた俺を見た両親は、初めは心配した素振りを見せていたものの、最近では「この子は天才だ! 賢者かもしれぬぞ!」と大喜びしていた。

「――これだけ探して見つからないってことは、俺のスキルに関する本は無いってことか?」

 初めて自分を『鑑定』した時に目にしたスキルについて、俺はずっと調べてきた。
 エクストラスキル欄にあった『解体レべル1』とはなんなのか。
 使い方も分からなければ、どういったスキルなのかも分からない。

「そもそも、エクストラスキルの本が一冊も無かったしなぁ。これじゃあどうやって使えばいいのか分からん!」

 後輩のように、異世界転生の小説をたくさん読んでいたら、この状況を打破するすべを持っていたかもしれない。
 だが如何いかんせん、前世で俺にそういう機会はなかった。もう少しそっち系の本を読んでおくべきだったと後悔している。
 長年書斎に籠もって得た知識といえば、この世界の地理歴史や『職業』、そして通常のスキルのことくらいだった。
 俺は本棚から一冊の本を取り出す。

「これなんかめちゃくちゃ派手だから、魔法についての本だと思ったのに、歴史の本なんだもん。嫌になっちゃうよ」

 俺は嫌味を言いながらも、パラパラとページをめくり始めた。
 この世界『アルテウス』は、フォルリット大陸と呼ばれる一つの大陸に「人間」「亜人」「魔族」が共存しており、それぞれ文明を築いている。
「亜人」とは、「猫人族」「犬人族」「狼人族」「狐人族」「虎人族」「エルフ」「ドワーフ」などの総称である。他にも多くの亜人が存在しているが、詳細は明らかになっていない。

「ゲームに出てきたような、獣耳の女の子とかが居るってことなんだよなぁ。モフモフしてみてぇー!」

 俺は少しだけ鼻の穴を大きくした。別にやましいことを考えているわけではない。単純にでてみたいのだ。
 脱線しかけたが、話を戻そう。
 フォルリット大陸には八つの国が存在する。
 フェルデア王国。
 ノスターク帝国。
 聖アルテナ教国。
 ベルデン魔法王国。
 この四つの国は、住んでいる者の九割が人間であり、人間が国を治めている。ちなみに、今俺が住んでいる国がフェルデア王国だ。

「それで次は――」

 ナリビア共和国。
 ドワーフ王国。
 アールヴ国。
 この三国はそれぞれ亜人が治めている。人間の国とは友好的な関係でありながら、閉鎖的な体制のため、独自の文化が築かれていた。

「最後がこの国か……」

 魔国。
 魔族のみが暮らす国であり、この国を治める者は「魔王」と呼ばれる。
 三百年前までは、他の七つの国と敵対し、絶えず戦争をしていた。しかし現在の魔王に代替わりしてからは、他国と停戦協定を結んでいる。
 パラッとページをめくり、次のページに目を移す。

「それで、このモンスターっていうのが、人間や亜人、魔族にとっての敵ってことか」

 モンスター。
 この世界に生存する三種族にとって、共通の敵と言える。
 魔物とも呼ばれ、知性を持たないものから人間と同レベルの知性を有するものまで多種多様。
 これら有害なモンスターを討伐するのが冒険者で、彼らはギルドに所属し、依頼された任務を遂行することにより金銭や褒賞ほうしょうを手にする。

「確か、この屋敷の南にある森の奥にモンスターがいるから気をつけろって、父上が言ってたっけな」

 低級なモンスターとは言っていたが、六歳の子供が遭遇して無事に帰れはしないだろう。ましてやスキルの使い方も分からないのだから。
 魔法が使えたら、勝手に屋敷を抜け出してレベル上げなんてことも出来たかもしれない。
 そうこうしていると、書斎の扉がガチャリと音を立てて開いた。

「やっぱりここか。探したぞ、アレク」

 扉を開けて書斎に入ってきたのは、二歳年上の兄であるエリック・カールストンだった。
 俺とは似ても似つかない茶色の髪と瞳という容姿で、父の血を色濃く引いているのが分かる。
 少し怒ったような口調をしているが、これが兄さんのデフォルトだ。

「エリック兄さん。何か用事ですか?」

 俺は自分の感情を表に出さぬよう、作り笑顔でエリック兄さんに返事をする。
 その理由は、俺が初めてエリック兄さんを見た時から現在に至るまで、エリック兄さんに対して嫉妬しっとに似た感情を抱いているからである。
 その理由がこれだ。
 ――――――――――――――――――――――――
【名前】エリック・カールストン
【種族】人間
【性別】男
【職業】魔導士
【階級】カールストン辺境伯 長男
【レべル】1
【HP】50/50
【魔力】60/60
【攻撃力】F-
【防御力】F-
【敏捷性】F-
【知力】F
【運】E-
【スキル】
 初級火魔法
 初級風魔法
 ――――――――――――――――――――――――
 ステータスを見れば分かるであろう、俺がエリック兄さんをうらやましがっている理由。
 それは彼の職業が『魔導士』であり、なおかつ初級火魔法、初級風魔法のスキルを所持しているからである。
 俺が望んでいるスキルを、エリック兄さんは二つも手にしているのだ。
 まぁだからと言って、別に兄に何かをするわけではない。
 兄が将来的に魔法を使えることを羨ましいとは思っているし、一つ分けてくれとも思っているが、それとこれとは別だ。
 何と言っても、この世界『アルテウス』において、三人しかいないかけがえのない俺の家族なのだから。
 俺がそんな感情を抱いているとは全く知らないエリック兄さんは、面倒くさいという感情を一切表に出さず、弟の面倒を見てくれる良い兄だった。


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