最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和

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第4章 憎しみの結末

第188話 兄弟喧嘩

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 アリスに無言で抱きしめられること数分。嬉しいという気持ちよりも、恥ずかしさの方が増し始めたころ、試合の準備が完了したのか、俺のもとへハイデリッヒ先生が呼びにやってきた。

 無言で抱き合う俺達を見て、先生はこれ見よがしに大きな音で咳ばらいをして見せる。

「ゴホン……アレク・カールストン。そろそろ時間なんだが、もう準備は良さそうか?」
「あ、ああはい!!ありがとう、アリス。もう大丈夫だ!」
「そ、そうみたいね!!それじゃあアレク、頑張ってね!」

 俺とアリスは先生に現場を見られた恥ずかしさを紛らわすように、いつも以上に明るく別れを告げた。アリスが去っていく背中を見つめながら、俺はゆっくりと心を落ち着かせていく。

 アリスの姿が見えなくなったことを確認し、俺は先生と共に闘技場の入場口へと歩き始めた。少し気まずい雰囲気が流れているが、先生は表情を変えることなく隣を歩いてくれている。

 そうして何事もなく入場口に辿り着いた。反対側の入場口はこちらを真直ぐに見つめる兄さんの姿が見える。その瞬間、落ち着かせていたはずの怒りの感情が沸々と湧き上がってきた。兄さんの姿と父の姿が重なって見えてしまうほどに。

 それほどまでに二人に対する俺の憎悪の感情は強いものだったのだ。そんな黒い感情に飲み込まれそうになった時、沈黙を貫いていたハイデリッヒ先生の手が俺の肩に置かれた。

「お前達は、兄弟喧嘩をしたことがあるのか?」
「はい?……したことないですけど」

 突然何を言い出すかと思えば、兄弟喧嘩をしたことがあるかだって?そんなもの、今まで一度たりともしたことがない。だって学園に入学するまでの間ずっと、一人で暮らしていたようなものなのだから。

 そんな俺の気持ちを無視し、先生は話を続けた。

「実は私にも弟がいてな。この年にもなると兄弟喧嘩というものには縁が無くなるのだ。今思えば、あれも良い経験だった」
「はぁ。そうですか」
「今回の『兄弟喧嘩』はどちらが勝つか見ものだな。なにせ、お前達兄弟にとって人生初の『兄弟喧嘩』だ。あっちも死ぬ気で勝ちに来るぞ?」

 そう言ってハイデリッヒ先生は嬉しそうに微笑みを浮かべる。兄さんが死に物狂いで勝ちに来るとは思えない。父に言われて俺を勝たせに来るに決まっている。

「それは無いと思いますよ。兄は父に言われて、俺に勝ちを譲りに来るはずですから」
「それはどうだろうな。こんな公の場で弟に負けるなど、兄としてのプライドが許すはずないからな。まぁなんにせよ──」
 
 ハイデリッヒ先生が言葉を切ったかと思うと、俺の背中を力強く叩いてきた。予想外の行為に驚いた俺は、思わず先生の方へと振り返る。

「折角の兄弟喧嘩、楽しんでくると良い!」

先生に檄を飛ばされながら、俺は闘技場の中へ足を踏み入れる。それと同時に向こう側の入り口から、兄がこちらに向かって歩き始めた。数刻前に顔を合わせた時とは打って変わって、どこか覚悟を決めたような顔をしている。

俺達が歩みを止めたのを確認すると、司会が大きな声で宣言を始めた。

「ただいまより、個人の部準決勝第一試合、エリック・カールストン対アレク・カールストンの試合を始めます!」

 俺達の名前が呼ばれると、歓声とどよめきが入り混じった声が会場を埋め尽くす。性が同じということもあってか、変な勘繰りをする者達が居るようだ。だが、そんな会場の雰囲気にのまれることなく、兄の目は真直ぐに俺を見つめていたままだった。

「また、本試合より決勝までは一部上級魔法の使用が解禁されております!」

 司会のその一言に、会場のボルテージが一気に上昇するのが分かった。『上級魔法』という、戦いに縁の無い者たちでは滅多に見ることの出来ない魔法をこの距離で拝めることが出来るのだから、興奮するのも仕方がない。

 しかし、俺と兄さんの試合でそれを見ることは叶わないだろう。恐らく、俺が間違いなく勝てるように、父が兄になんらかの指示を出しているはず。その指示の中に、魔法の制限もあるはずだ。

「それでは、両者準備は宜しいですね?」

 審判の言葉に俺達は頷く。審判が両手を左右に広げるとそれを合図にしたかのように会場がピタリと静かになった。

「……始め!!」

 開始の合図とともに俺は右手を兄さんに向けて魔法を発動させようと魔力を込めていく。その時間は1秒も無かっただろう。だがその僅かな時間の間に、兄さんは詠唱を完了したのだった。

「──『雷槍』!!」
「ッツ!」

 試合開始直後、不意を突いた兄さんの一撃。俺は何とか両腕を体の前で組み、身体への直撃を何とか防ぐ。だがその一撃は、身体の芯に響くほど強烈な魔法だった。魔法が直撃した腕に大きな傷は無いものの、雷による副作用なのか、身体全体が痺れて思ったように動かない。

 予想外の攻撃に呆気にと垂れる俺をよそに、初手から上級魔法を見ることが出来て、観客は大きな歓声を上げていた。

「どうした、アレク。私が『雷槍』を使うとは思いもしなかったか?」

 俺に杖先を向けたままの兄さんが、ニヤリと笑いながら俺に問いかけてきた。

「あ、当たり前でしょ!!兄さんは父上に、俺を勝たせるよう指示されているんじゃないんですか!?」
「その通りだ!!お前をもう一度『カールストン家』に戻すために、この試合で私はお前に負けるよう指示されている!」
「だったら何でこんなことを!!こんなことして、父上が許すと思ってるんですか!?」

 父の言いつけを目の前で破るなど、兄がするとは思えない。だが俺の言葉を聞いた兄さんは、顔を左に向け観客席をみつめた後、ふっと笑みをこぼした。その笑みは誰かを嘲笑するような、酷く汚れたものではなく、温かみにあふれていた。まるで、ヴァルトがニコに笑いかけている時のような、そんな笑顔だった。

 兄さんがこちらに顔を戻すと、その笑みから温かみがスッと抜けていく。今度は子供が悪戯をする時のような、そんな無邪気な笑顔に変わった。

「私がお前に勝てば、優秀なのが私だと誰もが理解するだろ!?」
「……そんなことしたって、状況が変わるわけじゃないんだよ」
「やってみなきゃわからないさ」

 そう言いながら微笑む兄さんを見て、兄が何を望んでいるのか、今のやり取りではっきりと分かった。兄さんは本気で俺たちの事を思って、この試合を勝ちに来ている。そんなことをしても、父の考えが変わるわけでないと理解していながら。

「さて、お喋りはこれで終わりだ!行くぞ、アレク!!」

 兄さんの声に呼応するように、俺は右手を前に向けて叫んだ。

「かかってこい!!兄さん!!」
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みんなの感想(169件)

A・l・m
2025.07.14 A・l・m

じゃあ、キリストさんが十字架を背負ったのは王様がキリスト教徒だからなの?

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ShironekoChamame

知り合いに勧められ、本を借りました。とても面白く、キャラ一人一人の性格もとても好きで本を二冊ずつ買ってしまいましたw更新待ってます!!

解除
スパークノークス

おもしろい!
お気に入りに登録しました~

解除

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