お神酒入りまーす!~酔っ払い霊媒師!? キャバ嬢カウンセラー~

神楽 萌愛-かぐら もあ-

文字の大きさ
12 / 15

11話 これも運命?~人気俳優死す~

しおりを挟む
「とりあえず、行くかあー」
 私は立ち上がってうーん、と軽くストレッチをした。
 その声を合図に、皆が立ち上がる。こりゃまるで明菜と愉快な仲間たちだ、と私は思った。
 一先ず目に入った、他とは少々違う扉の方へ向かう。
 開いてみると一番最初に目に入って来たのは紅色をした大理石の床だった。
 どうやら洗面所のようだ。
 そして何か鼻歌のようなものが聞こえ、鏡の方を向くとご機嫌で髪をいじっている青白い何か。まあ何かなんて言っても、幽霊以外にないのだけど。
 無視は……もうしなくていいか。いきなり掴みかかってきたりしなさそうだし。
 案の定、私が鏡に映ったことで向こうがこちらに気づく。
「おっちょっとした団体さんだねえ! 皆俺のこと知ってる!?」
 と明るく、そして人懐っこい笑みで私達に問いかけてくる。
 私は深く考えず、ぱっと見でえっ知らない、と答えた。竜介も、我もだ、と私に続く。
 それを聞いて彼はそっかあ、と呟いてあからさまにがくりと項垂れた。
「もしかして、桜井太一さんですかあ?」
 オネエのネコナデ声なんて、初めて聞くなあ……
 もちろんぶん殴られそうなので声には出せない。さやかは瞳を輝かせてぶりっ子を演じている。
 ん?桜井太一……あ。
「もしや、ドラマの撮影期間中に、飲酒運転のトラックに車をぶつけられてマネージャーごと亡くなったっていうあの……?」
 お店での話のネタとしても必要だったのでニュースはネットでもテレビでも、一応頭に叩き込んでいた。顔までは覚えていなかったが、そのニュースはこれから有名になるであろう人間が亡くなった、と一時期小さな騒ぎが起こっていたので覚えている。
 私が顔を覚えていないのは、何曜日にドラマや映画、CMが流れようと夜である、というだけで仕事で見ることが不可能だからだ。
「我もニュースでそのようなものを見たな……」
「誰だ桜井って?」
 竜介は知っていてもおかしくはないが、王子が知らないのは当然だろう。
「そうだよ、そうそう! お姉さんもそっちのお姉さんもありがとね! 俺のこと知っててくれて……」
 目を輝かせて私とさやかを交互に見やっている。だめだ、しっぽを振っている犬にしか見えない。
「我のことは無視か」
「あっごめんねー俺のファン女の子のほうが多かったからつい……」
 竜介のツッコミに今回は反応する。なんというか、いきなりタメ口を使われても嫌じゃない感じの青年だ。
 かと言ってファンではないが、それは黙っておこう。
「俺が死んだせいでドラマが完結出来なかったみたいでねーまあ主役だったからねー」
 聞いてもいないことを結構喋るタイプの霊だ。……人間にもお喋り好きはいるが。
「打ち切りで放送出来なかったんですよね?」
 キャーキャー興奮しているさやかの横で私は話しかける。
「そうなんだよね、マネージャーにも悪いことしたよねー」
「居眠り運転で正面から突っ込まれたらしょうがないですわ!」
 ですわ……?
 さやかは熱心に媚びている。幽霊同士の戯れなんて初めて見た。なんだか今回は私の出番はなさそうなので、どうしても他人事のように、温かく見守ってしまう。
「君、ありがとう! 名前は何て言うの?」
「さやか、と申しますわ桜井様」
 まるで王子様に会ったシンデレラのように、彼女は宝石を見るような目で、祈るように手を組んで、桜井に全力で答えている。
「女って怖い」
「まったくだ」
 相手にされない男性陣は後ろでこそこそ何かを言っているようだけどさやかにはもちろん聞こえていない。
 ついでに桜井はさやかがオネエだということにも気づいていない。実は天然なんだろうか。
 私とさやかは桜井が出ている映画もある、ということで話が盛り上がった。というか無理やり私は合わせていた。意外とバレない。やはり天然だろうか。
 そして知っている人がいたから気が済んだらしく
「俺、また俳優に生まれ変わるよ! そうしたらさやかちゃん、俺のこと見れくれるかな?」
「もちろんですわ!!」
 もうさやかには突っ込むまい。
 私は彼との縁の糸が薄くなっているのを感じ取って、グラスに日本酒を注ぎだす。
「もう、心残りはないの?」
 そう問いかけると彼はあっさり、ないと答えた。
「じゃあ、ゆっくり、お休みなさい。また来世で」
 私は彼の頭からゆっくりと清めた酒をかけ、彼は徐々に消えていくのだった。
 嵐が去ったような静けさが残るほど彼はマシンガントークの達人だったようだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

処理中です...