13 / 15
12話 それどこかで聞いた~刺されたホスト~
しおりを挟む
もう、どうせ隠れながら歩いても、絡まれることは分かっていた。
私は堂々と歩くことにした。堂々と遭遇して、堂々とシカトするか話を聞く。
話を聞くことも、面倒と思わなくなっている私がいる。
そして2階はそこまで広くなかったようで、ついに最後の部屋らしき場所にたどり着いた。
「あー、何で俺が。クソッ」
やっぱりいるよね……ライトを照らすまでもなく、青白く発光する「それ」は地団太を激しく踏み、やるせなさが垣間見えている。
一応照らしてみると生生しく包丁が心臓付近に突き刺さって血だらけだ。
「あのー、お取込み中ごめんだけど、部屋の写真撮ってもいい? 撮ったら退散するからさ」
私は敢えて自分から絡みにいく。レベルアップした音が聞こえてきそうである。
さやか達は暴れそうな彼を見て明菜から何気に距離を取っている。
攻撃されるなら自分だけに、ってか。薄情なやつらめ……
目の前の主から応答があるまで明菜は後ろを振り返ってさやか達を睨みつけていた。
「おぉ、お前今この屋敷から逃げ出そうとしてるキャバ嬢だな!」
「「「有名人だ」」」
見事に3人の声がかぶる。そこで被らなくてもいい。
「……なんで幽霊界隈であたしの噂が流れてるのよ……」
がくり、と肩を落とす。挑発で金髪の彼は黒だけど、キラキラした派手なスーツに身をつつみ、ついでに胸部に包丁刺さり済み。
「まああれだけ騒いでればな」
「お前に言われたくなーい!」
竜介が突っ込んでくるが塩水鉄砲を撃って遊んでいた彼に、とやかく言われるなんてもっての他だ。
「私も有名にしてちょーだいよ!」
第二の地団太を踏む霊が後ろにいる。見なくても、わかる。
「俺は王子だからな! 明菜には敵わないけど有名だぞ」
口々に好き勝手言ってくれる。幽霊の中で知られていたところで……
「……あんた、心臓に包丁がっつり刺さりっ放しだけど、それ大丈夫なの?」
私は彼の腹を指さす。
「大丈夫じゃねーよ! 痛かったわ、あのクソ女めっ……」
「何、痴情の縺れってやつ? 不倫? 見た目チャラいもんね」
はあ、と私は呆れたように彼の前に一升瓶をどん、と置いて胡坐をかいて座る。
「いや、一応俺ホストでさ、歌舞伎町のど真ん中で刺されたんだよ!!」
「ん……?」
私はどこかで聞いたことある、と胡坐の上に肘を乗せて顎に置き、首を傾げる。
そしてピンと閃いた。
「あー! 歌舞伎町で刺されたホストってニュースになってたわ! うちのキャバなんてボーイの数増やしてたもん」
「やっぱり俺ニュースになったのかよ! いきなり胸にざっくりだからな!」
なぜか誇らしげに胸を張って言っているような気がする。
「……どうせ枕とかしてたんでしょ?」
私は一升瓶の酒をごくごくと飲む。
「まあなー枕しないとナンバー入れねえし」
「アタシも生きているうちに好きな殿方に抱かれたかったわ」
さやかは自分を抱きしめふりふりしているが放っておこう。竜介と王子もその姿に引いて、こちらにいつの間にか来ている。
「あたしとあんたは同じじゃないから、ホストの枕に関しては止めはしないけど、メンヘラかどうかくらい見極めなさいよ」
はあ、と再び深いため息。
「いやー何せ金払い良かったからな!」
自分の髪をいじりながらひっひっひ、と笑うホスト。
「そりゃ好きな人に貢ぎたい子はたくさんいるからね」
「そうだよな、俺イケメンだし?」
「そこはノーコメントで」
ノリ悪いな、と言われたが片手の平を彼に見せ、コメントは伏せた。
「まあ、話したらすっきりしたわ! 次はもっと上手くやるわーははっ。ってことでそれ、一口くれよ、成仏できんだろ?」
「あんたに未練がないなら出来るんじゃないの?」
私は一升瓶を彼に渡した。そして彼はぐっぐっぐっと酒を飲む。
「じゃーなー! ありがとよ!」
そう言って彼の姿が消えるより先に、おっと、と私は一升瓶をしっかりとキャッチした。
あら意外とあっさり……心のどこかでこうなると覚悟していたのか、それとも生に対してそんなに執着がなかったのか、私達は所詮水物……いつかは限界がくる。
だから、そんなもんなのかな?
がっつりと写真を撮って、その場を後にする私達だった。
私は堂々と歩くことにした。堂々と遭遇して、堂々とシカトするか話を聞く。
話を聞くことも、面倒と思わなくなっている私がいる。
そして2階はそこまで広くなかったようで、ついに最後の部屋らしき場所にたどり着いた。
「あー、何で俺が。クソッ」
やっぱりいるよね……ライトを照らすまでもなく、青白く発光する「それ」は地団太を激しく踏み、やるせなさが垣間見えている。
一応照らしてみると生生しく包丁が心臓付近に突き刺さって血だらけだ。
「あのー、お取込み中ごめんだけど、部屋の写真撮ってもいい? 撮ったら退散するからさ」
私は敢えて自分から絡みにいく。レベルアップした音が聞こえてきそうである。
さやか達は暴れそうな彼を見て明菜から何気に距離を取っている。
攻撃されるなら自分だけに、ってか。薄情なやつらめ……
目の前の主から応答があるまで明菜は後ろを振り返ってさやか達を睨みつけていた。
「おぉ、お前今この屋敷から逃げ出そうとしてるキャバ嬢だな!」
「「「有名人だ」」」
見事に3人の声がかぶる。そこで被らなくてもいい。
「……なんで幽霊界隈であたしの噂が流れてるのよ……」
がくり、と肩を落とす。挑発で金髪の彼は黒だけど、キラキラした派手なスーツに身をつつみ、ついでに胸部に包丁刺さり済み。
「まああれだけ騒いでればな」
「お前に言われたくなーい!」
竜介が突っ込んでくるが塩水鉄砲を撃って遊んでいた彼に、とやかく言われるなんてもっての他だ。
「私も有名にしてちょーだいよ!」
第二の地団太を踏む霊が後ろにいる。見なくても、わかる。
「俺は王子だからな! 明菜には敵わないけど有名だぞ」
口々に好き勝手言ってくれる。幽霊の中で知られていたところで……
「……あんた、心臓に包丁がっつり刺さりっ放しだけど、それ大丈夫なの?」
私は彼の腹を指さす。
「大丈夫じゃねーよ! 痛かったわ、あのクソ女めっ……」
「何、痴情の縺れってやつ? 不倫? 見た目チャラいもんね」
はあ、と私は呆れたように彼の前に一升瓶をどん、と置いて胡坐をかいて座る。
「いや、一応俺ホストでさ、歌舞伎町のど真ん中で刺されたんだよ!!」
「ん……?」
私はどこかで聞いたことある、と胡坐の上に肘を乗せて顎に置き、首を傾げる。
そしてピンと閃いた。
「あー! 歌舞伎町で刺されたホストってニュースになってたわ! うちのキャバなんてボーイの数増やしてたもん」
「やっぱり俺ニュースになったのかよ! いきなり胸にざっくりだからな!」
なぜか誇らしげに胸を張って言っているような気がする。
「……どうせ枕とかしてたんでしょ?」
私は一升瓶の酒をごくごくと飲む。
「まあなー枕しないとナンバー入れねえし」
「アタシも生きているうちに好きな殿方に抱かれたかったわ」
さやかは自分を抱きしめふりふりしているが放っておこう。竜介と王子もその姿に引いて、こちらにいつの間にか来ている。
「あたしとあんたは同じじゃないから、ホストの枕に関しては止めはしないけど、メンヘラかどうかくらい見極めなさいよ」
はあ、と再び深いため息。
「いやー何せ金払い良かったからな!」
自分の髪をいじりながらひっひっひ、と笑うホスト。
「そりゃ好きな人に貢ぎたい子はたくさんいるからね」
「そうだよな、俺イケメンだし?」
「そこはノーコメントで」
ノリ悪いな、と言われたが片手の平を彼に見せ、コメントは伏せた。
「まあ、話したらすっきりしたわ! 次はもっと上手くやるわーははっ。ってことでそれ、一口くれよ、成仏できんだろ?」
「あんたに未練がないなら出来るんじゃないの?」
私は一升瓶を彼に渡した。そして彼はぐっぐっぐっと酒を飲む。
「じゃーなー! ありがとよ!」
そう言って彼の姿が消えるより先に、おっと、と私は一升瓶をしっかりとキャッチした。
あら意外とあっさり……心のどこかでこうなると覚悟していたのか、それとも生に対してそんなに執着がなかったのか、私達は所詮水物……いつかは限界がくる。
だから、そんなもんなのかな?
がっつりと写真を撮って、その場を後にする私達だった。
2
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました
美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる