お神酒入りまーす!~酔っ払い霊媒師!? キャバ嬢カウンセラー~

神楽 萌愛-かぐら もあ-

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12話 それどこかで聞いた~刺されたホスト~

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 もう、どうせ隠れながら歩いても、絡まれることは分かっていた。
 私は堂々と歩くことにした。堂々と遭遇して、堂々とシカトするか話を聞く。
 話を聞くことも、面倒と思わなくなっている私がいる。
 そして2階はそこまで広くなかったようで、ついに最後の部屋らしき場所にたどり着いた。
 「あー、何で俺が。クソッ」
 やっぱりいるよね……ライトを照らすまでもなく、青白く発光する「それ」は地団太を激しく踏み、やるせなさが垣間見えている。                     
 一応照らしてみると生生しく包丁が心臓付近に突き刺さって血だらけだ。
「あのー、お取込み中ごめんだけど、部屋の写真撮ってもいい? 撮ったら退散するからさ」
 私は敢えて自分から絡みにいく。レベルアップした音が聞こえてきそうである。
 さやか達は暴れそうな彼を見て明菜から何気に距離を取っている。
 攻撃されるなら自分だけに、ってか。薄情なやつらめ……
 目の前の主から応答があるまで明菜は後ろを振り返ってさやか達を睨みつけていた。
「おぉ、お前今この屋敷から逃げ出そうとしてるキャバ嬢だな!」
「「「有名人だ」」」
 見事に3人の声がかぶる。そこで被らなくてもいい。
「……なんで幽霊界隈であたしの噂が流れてるのよ……」
 がくり、と肩を落とす。挑発で金髪の彼は黒だけど、キラキラした派手なスーツに身をつつみ、ついでに胸部に包丁刺さり済み。
「まああれだけ騒いでればな」
「お前に言われたくなーい!」
 竜介が突っ込んでくるが塩水鉄砲を撃って遊んでいた彼に、とやかく言われるなんてもっての他だ。
「私も有名にしてちょーだいよ!」
 第二の地団太を踏む霊が後ろにいる。見なくても、わかる。
「俺は王子だからな! 明菜には敵わないけど有名だぞ」
 口々に好き勝手言ってくれる。幽霊の中で知られていたところで……
「……あんた、心臓に包丁がっつり刺さりっ放しだけど、それ大丈夫なの?」
 私は彼の腹を指さす。
「大丈夫じゃねーよ! 痛かったわ、あのクソ女めっ……」
「何、痴情の縺れってやつ? 不倫? 見た目チャラいもんね」
 はあ、と私は呆れたように彼の前に一升瓶をどん、と置いて胡坐をかいて座る。
「いや、一応俺ホストでさ、歌舞伎町のど真ん中で刺されたんだよ!!」
「ん……?」
 私はどこかで聞いたことある、と胡坐の上に肘を乗せて顎に置き、首を傾げる。
 そしてピンと閃いた。
「あー! 歌舞伎町で刺されたホストってニュースになってたわ! うちのキャバなんてボーイの数増やしてたもん」
「やっぱり俺ニュースになったのかよ! いきなり胸にざっくりだからな!」
 なぜか誇らしげに胸を張って言っているような気がする。
「……どうせ枕とかしてたんでしょ?」
 私は一升瓶の酒をごくごくと飲む。
「まあなー枕しないとナンバー入れねえし」
「アタシも生きているうちに好きな殿方に抱かれたかったわ」
 さやかは自分を抱きしめふりふりしているが放っておこう。竜介と王子もその姿に引いて、こちらにいつの間にか来ている。
「あたしとあんたは同じじゃないから、ホストの枕に関しては止めはしないけど、メンヘラかどうかくらい見極めなさいよ」
 はあ、と再び深いため息。
「いやー何せ金払い良かったからな!」
 自分の髪をいじりながらひっひっひ、と笑うホスト。
「そりゃ好きな人に貢ぎたい子はたくさんいるからね」
「そうだよな、俺イケメンだし?」
「そこはノーコメントで」
 ノリ悪いな、と言われたが片手の平を彼に見せ、コメントは伏せた。
「まあ、話したらすっきりしたわ! 次はもっと上手くやるわーははっ。ってことでそれ、一口くれよ、成仏できんだろ?」
「あんたに未練がないなら出来るんじゃないの?」
 私は一升瓶を彼に渡した。そして彼はぐっぐっぐっと酒を飲む。
「じゃーなー! ありがとよ!」
 そう言って彼の姿が消えるより先に、おっと、と私は一升瓶をしっかりとキャッチした。
 あら意外とあっさり……心のどこかでこうなると覚悟していたのか、それとも生に対してそんなに執着がなかったのか、私達は所詮水物……いつかは限界がくる。
 だから、そんなもんなのかな?
 がっつりと写真を撮って、その場を後にする私達だった。
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