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279.迷いの森の入り口(強制送還)✔
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迷いの森の手前までは、エルフが護衛をしてくれた。その中に次期女王のミーメと王子のトールの姿は無い。女王が同行する許可を出さなかったのだろう。
エルフの森を出発して三日目だが、毎日、魔物の襲撃を受けている。エルフだけで来ていれば全滅していてもおかしくない。多い日には三回も襲撃された。こうなることが予測できるならば、次期女王の同行なんて絶対に許可はできないな。
エルフの森から奥地は危険な魔物が多いとは聞かされてはいたが、ここまで頻繁に襲われるなんて想像すらできなかった。特に夜間に襲って来られると睡眠不足になるので止めて欲しい。
ハイオークとハイゴブリンの群れにも襲われた。どちらも普通よりも一回り大きく、力も強く知能が高い。しっかりと連携を取り襲ってきた。今までのオークやゴブリンとは明らかに違って知性を感じる。
だが、うちにはチビとベビがいてくれる。夜間の見張りにも交代で加わってくれている。ふたりとも、張り切っており、風の刃を操り魔物を撃退してくれた。
チビとベビには森林火災になると困るので、できるだけ風の刃を使うように言い聞かせている。そのため、火炎を吐いたのはエルフから焚火に火を着けて欲しいとお願いされた時だけだ。
チビとベビは更に連携に磨きがかかってきた。念話が使えるのは大きなアドバンテージだな。俺がよく使う攻撃方法やものの考え方などの知識の吸収も順調に進んでいる。
エルフの護衛だが、迷いの森の入り口まで案内したら帰ると言っている。だけど、エルフの森までたどり着けるとは思えない。かなりの高確率で魔物に襲われ、壊滅するのではないだろうか。だって、チビもベビもなしに、エルフだけで帰らないといけないんだよ。どう考えても無理ゲーだ。チビとベビに送らせた方がいいだろうな。
更に二日が経過し、迷いの森の入り口に到着することができた。この二日間だが、キラーウルフの群れや、デスマンティスという体長三メートルのカマキリにも襲われた。
キラーウルフは、体長が二メートルの狼の魔物で、群れで襲って来たんだ。チビとベビが風の刃で反撃して数頭が切られると直ぐに逃げて行った。力の差が分かったのだろう、無理に襲おうとしないのは賢い証拠だ。
デスマンティスは、体の色を変えて周囲の景色に溶け込んでおり、戦闘を進んでいた護衛のエルフが大きな鎌に捉えられて怪我をしてしまった。
森の精霊も危険を教えてはくれなかった。あの擬態には気が付けないよ! もう少し助けるのが遅れていたら、亡くなっていただろう。癒しの魔法を行使したところ、傷は綺麗に塞ぐことができた。以前とは違い俺の造血の腕もかなり上達しているようだな。
デスマンティスが群れで待ち伏せされていたらと思うと、背筋が冷たくなった。生きたまま、ガジガジとかじられるなんて絶対に嫌だ。幸いなことに、デスマンティスは群れで行動しないそうだ。ごくまれに番の二匹が一緒に行動することがあるくらいらしい。
昨晩なんて、メガバイパーという体長三十メートルの蛇に寝込みを襲われた。胴体の太さが二メートル以上もあるんだ。チビやベビでも油断すれば丸呑みできる大きさだ。
実際に、チビを丸呑みしようと大口を開け襲い掛かって来たところを、口の中に風の刃を連続で放ったそうだ。
メガバイパーは内臓がやられたようでのたうち回って動かなくなった。だけど、外見は綺麗なままで、まるで寝ているようにも見えた。
鱗が硬くて風の刃が通じなかったから、口の中を狙ったと、チビが誇らしげに説明してくれた。俺の攻撃方法を確実に吸収してくれるいい生徒だ。だが、自分を囮にすることまで真似してくれなくてもいいのにな!
魔の森の奥地はとんでもない危険地帯だった。魔物を討伐するたびに大きな魔石が手に入っている。生き物の命を粗末にしたくないので、死んでしまった魔物はできるだけ食べるようにしてきたが、流石に体長三十メートルの蛇を全部食べるのは無理だ。
よく考えたら、このまま残しても他の魔物たちの糧になる。無駄な命なんてない。食べきれないお肉は、魔物たちが争わないようにいくつかに切り分け、距離を離して置くことにした。
「なあオール、オレ達って護衛しに来たんだよな? 守られているだけのお荷物になっているんだが!」
「愚痴るなよ、ノール! 一緒に行くことが大事なんだよ! 龍が二匹もいるんだぜ、オレ達なんて戦力に数えられるわけないだろ!」
「でも、エルフとオレ達って、アルフレッドの足手まといにしかなっていないぜ! いいのかこれって!」
「……トールの言う通りだが、今更帰れないぞ! デスマンティスの鎌を見ただろ? ここで引き返したら間違いなく死ぬからな! 一緒に行くしかないって!」
トールとオールがふたりで言い合っている。確かに危険なんだよね。チビとベビがいてくれるからいいけど、俺一人ではカバーしきれない。トールとオールもこんなに危険なところだとは思ってもいなかったんだろうな。
さっきのふたりの会話から判断すると、エルフと一緒に送ったほうがいいだろう。 デスマンティスの鎌にエルフが捕らえられてからというもの、ノールが不安がっているのが見ていてわかるんだよね。
〈アルママ! ブンブンといっぱい飛んでいるダォ! 魔蜂なら火炎吐きたいダォ!〉
〈魔蜂はいっぱいで襲ってきて、目や鼻に入るから嫌いなノ! ベビも火炎が吐きたいノ!〉
チビとベビが念話してきたが、俺には音が聞こえていない。聴力を身体強化すると、少し離れた場所でブンブンと羽の音が聞こえる。かなりの数が飛んでいるようだ。
魔蜂かどうかは不明だが、致死性の毒があるのであれば悠長なことは言ってはいられないだろう。結界で一時的に防ぐことは出来るが長時間は無理だ。
羽音が近づいて来る。五十センチメートルはありそうな蜂で、赤と黒の横縞をしている。明らかに警戒色の体が毒を持っていますと言っているようだ。
〈あれはポイズンビーですね。あれに刺されると死ぬことが多いです! 絶対に刺されないでください!〉
エルフが慌てて森の精霊に何やらお願いをしているが、何をやっているのだろうか?
念のため、結界の魔道具を発動させる。みんなを囲んで結界が発動した。結界の向こうではすごい数のポイズンビーが飛び回っている。まるで迷いの森を侵入者から守っているみたいだ。
〈チビ、ベビ、結界を張っているから、風も火炎も使ってはいけないよ〉
〈分かったダォ!〉〈分かっているノ!〉
ふたりは俺の考えがよく分かるようになっている。この大群が通過し終わるまで動くことができそうにない。
五分程すると迷いの森にかかっていた霧が上がりだした。きっとエルフが精霊にお願いしたのだろう。霧が上がるとポイズンビーもどこかに飛び去ってしまった。
〈アルフレッド様! ワタシ達の仕事はここまでになりますので、ここでお別れです! 龍に遭えることを祈っております!〉
エルフが突然、別れを告げてきた。
〈皆さんありがとうございました! ところでここで分かれて無事に帰れそうですか?〉
〈……〉
エルフ同士で顔を見合わせている。……しかし、返事がない。やっぱりな。みんな無事に帰れるとは思っていないみたいだ。俺のせいでエルフが死ぬとか嫌なんだよね。どうしようかな? 送ると言っても素直に同意するとは思えない。
そうだ。お礼に龍の背中に乗って遊覧飛行してもらう提案なんてどうだろうか? 落ちないように体は固定させてもらう。帰って家族に龍の背中に乗ったぞと自慢してください! これはナイスな提案だな。
提案したら、みんな二つ返事で同意してくれた。早速、チビとベビに無理を言って元の大きさになってもらった。チビとベビだが、既に十五メートル近い大きさになっている。ベビの方が二メートル程大きいな。
早速、別れてチビとベビの背中に乗ってもらった。森の中で頑丈そうなツタを手に入れ、エルフの護衛と、トールとオールの体をチビとベビに縛る。ちょっとやそっとでは落ちはしないだろう。そのまま、何か言われる前に全速力でエルフの森に飛んでもらった。
音速に近い速度で飛行している。機長のアナウンスの小ネタはまったく通じなかった。というかみんな途中で意識がもうろうとしている。やはり、空を飛ぶのにはある程度の慣れが必要なようだ。
数時間後にエルフの森に着陸することができた。みんな意識がハッキリしていない状態のままだ。エルフの護衛とトールとオールのツタを切り、強制的に降りてもらう。
チビとベビを取り囲むようにエルフが大勢集まりだした。何か言われる前に飛び立つほうがよさそうだ。
チビとベビを連れて迷いの森に向かう。霧は上がったままならいいけれど、急いで帰ろう!
エルフの森を出発して三日目だが、毎日、魔物の襲撃を受けている。エルフだけで来ていれば全滅していてもおかしくない。多い日には三回も襲撃された。こうなることが予測できるならば、次期女王の同行なんて絶対に許可はできないな。
エルフの森から奥地は危険な魔物が多いとは聞かされてはいたが、ここまで頻繁に襲われるなんて想像すらできなかった。特に夜間に襲って来られると睡眠不足になるので止めて欲しい。
ハイオークとハイゴブリンの群れにも襲われた。どちらも普通よりも一回り大きく、力も強く知能が高い。しっかりと連携を取り襲ってきた。今までのオークやゴブリンとは明らかに違って知性を感じる。
だが、うちにはチビとベビがいてくれる。夜間の見張りにも交代で加わってくれている。ふたりとも、張り切っており、風の刃を操り魔物を撃退してくれた。
チビとベビには森林火災になると困るので、できるだけ風の刃を使うように言い聞かせている。そのため、火炎を吐いたのはエルフから焚火に火を着けて欲しいとお願いされた時だけだ。
チビとベビは更に連携に磨きがかかってきた。念話が使えるのは大きなアドバンテージだな。俺がよく使う攻撃方法やものの考え方などの知識の吸収も順調に進んでいる。
エルフの護衛だが、迷いの森の入り口まで案内したら帰ると言っている。だけど、エルフの森までたどり着けるとは思えない。かなりの高確率で魔物に襲われ、壊滅するのではないだろうか。だって、チビもベビもなしに、エルフだけで帰らないといけないんだよ。どう考えても無理ゲーだ。チビとベビに送らせた方がいいだろうな。
更に二日が経過し、迷いの森の入り口に到着することができた。この二日間だが、キラーウルフの群れや、デスマンティスという体長三メートルのカマキリにも襲われた。
キラーウルフは、体長が二メートルの狼の魔物で、群れで襲って来たんだ。チビとベビが風の刃で反撃して数頭が切られると直ぐに逃げて行った。力の差が分かったのだろう、無理に襲おうとしないのは賢い証拠だ。
デスマンティスは、体の色を変えて周囲の景色に溶け込んでおり、戦闘を進んでいた護衛のエルフが大きな鎌に捉えられて怪我をしてしまった。
森の精霊も危険を教えてはくれなかった。あの擬態には気が付けないよ! もう少し助けるのが遅れていたら、亡くなっていただろう。癒しの魔法を行使したところ、傷は綺麗に塞ぐことができた。以前とは違い俺の造血の腕もかなり上達しているようだな。
デスマンティスが群れで待ち伏せされていたらと思うと、背筋が冷たくなった。生きたまま、ガジガジとかじられるなんて絶対に嫌だ。幸いなことに、デスマンティスは群れで行動しないそうだ。ごくまれに番の二匹が一緒に行動することがあるくらいらしい。
昨晩なんて、メガバイパーという体長三十メートルの蛇に寝込みを襲われた。胴体の太さが二メートル以上もあるんだ。チビやベビでも油断すれば丸呑みできる大きさだ。
実際に、チビを丸呑みしようと大口を開け襲い掛かって来たところを、口の中に風の刃を連続で放ったそうだ。
メガバイパーは内臓がやられたようでのたうち回って動かなくなった。だけど、外見は綺麗なままで、まるで寝ているようにも見えた。
鱗が硬くて風の刃が通じなかったから、口の中を狙ったと、チビが誇らしげに説明してくれた。俺の攻撃方法を確実に吸収してくれるいい生徒だ。だが、自分を囮にすることまで真似してくれなくてもいいのにな!
魔の森の奥地はとんでもない危険地帯だった。魔物を討伐するたびに大きな魔石が手に入っている。生き物の命を粗末にしたくないので、死んでしまった魔物はできるだけ食べるようにしてきたが、流石に体長三十メートルの蛇を全部食べるのは無理だ。
よく考えたら、このまま残しても他の魔物たちの糧になる。無駄な命なんてない。食べきれないお肉は、魔物たちが争わないようにいくつかに切り分け、距離を離して置くことにした。
「なあオール、オレ達って護衛しに来たんだよな? 守られているだけのお荷物になっているんだが!」
「愚痴るなよ、ノール! 一緒に行くことが大事なんだよ! 龍が二匹もいるんだぜ、オレ達なんて戦力に数えられるわけないだろ!」
「でも、エルフとオレ達って、アルフレッドの足手まといにしかなっていないぜ! いいのかこれって!」
「……トールの言う通りだが、今更帰れないぞ! デスマンティスの鎌を見ただろ? ここで引き返したら間違いなく死ぬからな! 一緒に行くしかないって!」
トールとオールがふたりで言い合っている。確かに危険なんだよね。チビとベビがいてくれるからいいけど、俺一人ではカバーしきれない。トールとオールもこんなに危険なところだとは思ってもいなかったんだろうな。
さっきのふたりの会話から判断すると、エルフと一緒に送ったほうがいいだろう。 デスマンティスの鎌にエルフが捕らえられてからというもの、ノールが不安がっているのが見ていてわかるんだよね。
〈アルママ! ブンブンといっぱい飛んでいるダォ! 魔蜂なら火炎吐きたいダォ!〉
〈魔蜂はいっぱいで襲ってきて、目や鼻に入るから嫌いなノ! ベビも火炎が吐きたいノ!〉
チビとベビが念話してきたが、俺には音が聞こえていない。聴力を身体強化すると、少し離れた場所でブンブンと羽の音が聞こえる。かなりの数が飛んでいるようだ。
魔蜂かどうかは不明だが、致死性の毒があるのであれば悠長なことは言ってはいられないだろう。結界で一時的に防ぐことは出来るが長時間は無理だ。
羽音が近づいて来る。五十センチメートルはありそうな蜂で、赤と黒の横縞をしている。明らかに警戒色の体が毒を持っていますと言っているようだ。
〈あれはポイズンビーですね。あれに刺されると死ぬことが多いです! 絶対に刺されないでください!〉
エルフが慌てて森の精霊に何やらお願いをしているが、何をやっているのだろうか?
念のため、結界の魔道具を発動させる。みんなを囲んで結界が発動した。結界の向こうではすごい数のポイズンビーが飛び回っている。まるで迷いの森を侵入者から守っているみたいだ。
〈チビ、ベビ、結界を張っているから、風も火炎も使ってはいけないよ〉
〈分かったダォ!〉〈分かっているノ!〉
ふたりは俺の考えがよく分かるようになっている。この大群が通過し終わるまで動くことができそうにない。
五分程すると迷いの森にかかっていた霧が上がりだした。きっとエルフが精霊にお願いしたのだろう。霧が上がるとポイズンビーもどこかに飛び去ってしまった。
〈アルフレッド様! ワタシ達の仕事はここまでになりますので、ここでお別れです! 龍に遭えることを祈っております!〉
エルフが突然、別れを告げてきた。
〈皆さんありがとうございました! ところでここで分かれて無事に帰れそうですか?〉
〈……〉
エルフ同士で顔を見合わせている。……しかし、返事がない。やっぱりな。みんな無事に帰れるとは思っていないみたいだ。俺のせいでエルフが死ぬとか嫌なんだよね。どうしようかな? 送ると言っても素直に同意するとは思えない。
そうだ。お礼に龍の背中に乗って遊覧飛行してもらう提案なんてどうだろうか? 落ちないように体は固定させてもらう。帰って家族に龍の背中に乗ったぞと自慢してください! これはナイスな提案だな。
提案したら、みんな二つ返事で同意してくれた。早速、チビとベビに無理を言って元の大きさになってもらった。チビとベビだが、既に十五メートル近い大きさになっている。ベビの方が二メートル程大きいな。
早速、別れてチビとベビの背中に乗ってもらった。森の中で頑丈そうなツタを手に入れ、エルフの護衛と、トールとオールの体をチビとベビに縛る。ちょっとやそっとでは落ちはしないだろう。そのまま、何か言われる前に全速力でエルフの森に飛んでもらった。
音速に近い速度で飛行している。機長のアナウンスの小ネタはまったく通じなかった。というかみんな途中で意識がもうろうとしている。やはり、空を飛ぶのにはある程度の慣れが必要なようだ。
数時間後にエルフの森に着陸することができた。みんな意識がハッキリしていない状態のままだ。エルフの護衛とトールとオールのツタを切り、強制的に降りてもらう。
チビとベビを取り囲むようにエルフが大勢集まりだした。何か言われる前に飛び立つほうがよさそうだ。
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