異世界に転生したけどトラブル体質なので心配です

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214.2黒死病2（周到な対策）✔ 2024.3.3修正 文字数 前2,374後2,255減119

　メダリオン王国のオレン村で、三人の兵士が体調を崩したと緊急鳩便が届いたんだ。

　直ぐに向かい、接触した疑いのある人も、別々に施設に隔離させてもらった。隔離施設は先日、来た時に土魔法で造っていたんだけど、予想より接触者が多く、追加で造ることになってしまったよ。

　コレラの症状とは違っているな。患者の聞き取りと体を見せて貰ったら、蚤に噛まれていたんだ。噛まれた患部が腫れている。この症状はペストの可能性が高い。

　ペストは黒死病と呼ばれ、適切な治療を行わないと死亡率が六割以上という恐ろしい病気だ。発症して二十四時間以内に適切な治療を行うことができれば、症状が軽くなる傾向にある。人によって免疫力や体力に違いはあるけど、治療が早いほど死亡率をさげることができるんだ。

　邪神教の施設を強襲した後にも、作業に来ているから、村の様子はばっちりと頭に入っている。

　レックスにも国境付近の木々を伐採してもらったし、チビとベビには切り倒した木を運んでもらい、柵を作るために力を貸してもらっている。ベルン公爵の呼びかけにより、村人も参加してくれたから思った以上に早く完成させることができた。

　十年前に起きた流行り病の記録や、今回の調査により、異神国パズズに邪神教の重要な施設があると疑っていたからね。

　俺が来るまでは、兵士も住民も不安そうにしていたけど、癒しの魔法を見た途端に落ち着きを取り戻してくれたんだ。パニックになるのが怖いから、直ぐに飛んで来て正解だったよ。

　希釈したブルースライムの消毒液の浴槽も準備しているから、マニュアル通りに息の続く範囲で潜ってくれているはずだ。全身の剃毛もお願いしたんだけど、蚤は見つけられただろうか？

　なんとか吹き出さずに堪えたけど、マニュアルに記載していない、眉毛まで剃っていたのには笑いそうになってしまった。

　ピンクスライムポーションを含ませた布で、全身を拭いている。お互いに手の届かない場所は拭き合っている。命がかかっているから、恥ずかしいとか言ってはいられないよ。マニュアルの通りにやってくれているようで安心した。

　俺の作った魔力水に砂糖、食塩、ピンクスライムポーションを加えた特性ドリンクも飲んでもらう。このドリンクは、グラン帝国のコレラの際に絶大な効果が証明されているんだ。

　発症した兵士に、もう一度癒しの魔法を行使しに行こう。栄養価の高い食事と毎日、魔力水に入浴、至れり尽くせりな環境で過ごしてもらっている。

　すると、発病して弱っていた兵士は、目に見えて元気を取り戻している。特性ドリンクはあと少しの間、飲み続けてもらった方がいいだろう。

　施設で一週間の隔離生活を送り、発病しなければ隔離生活は終了だ。

　暖かい風呂に毎日入り、美味しい食事が提供されるため、もっといたいと言い出す兵士までいる。つるつるの頭と眉毛が、生えるまで出たくないと考えていそうだけどね。

　国境の中立地帯も火魔法で焼き払っておいた。隔離施設の中も高温にして殺菌したからね。

　大沼ガエルのゴム引き手袋に長靴、マスク、サングラスに消毒薬、ピンクポーション、ブルーポーションもチマチマと作り続けていてよかったよ。患者と接触を避ける事、素手で触らない事、隔離することや、勿体無くても患者の衣服は着替えるごとに焼却処分する事など、細かくマニュアル化しておいたのも役に立ったみたいだ。そうそう、眉毛は剃らなくていいと加筆しないとね。

　事前に対策をしていたお陰で、確認された感染者は三人だけで済んでいる。対策していなかったらと思うと恐ろしい。

　毛皮をやるから入国させてくれと言った人が怪しいと、感染した兵士が言っている。その時の三人がみんな発症しているのだから間違いないだろうね。処置が早かったし、感染者が体力のある兵士だったことも不幸中の幸いだったよ。

　グラン帝国とアスラダ国に、パズズで流行り病が起きている可能性が高いと、緊急鳩便を送っておいた。ちゃんと対応してくれているだろうか？

　グラン帝国はパズズとの国境をすぐに完全封鎖したと手紙が届いた。わざわざ第一騎士団長が知らせてくれたみたいだ。

　遅れてアスラダ国からも封鎖したと手紙が届いた。しかしアスラダ国で発病する者が出始めているため、助けて欲しいと手紙に書かれていたんだ。村と町の往来は、禁止しているみたいだな。

　ポーションや消毒薬、大沼ガエルの手袋なども持って行こう。治療方法を伝えてあげたい。俺が持って行ける数は少しだけだから、マシューさんにもお願いしたほうがいいな。

　アスラダ国内のあちこちの重傷者に、癒しの魔法をかけて回っているが忙しすぎる。ここ数日は、俺が飛んで行くと『空飛ぶ聖者様』だって、子供達に囲まれることが多い。魔法大国アスラダでは、賢者様アールス・ハインドが物凄い人気なのを忘れていたよ。

　今回、コレラの教訓が活かされたみたいで、グラン帝国の対応は早かった。何十人か国境の村で発病したらしいが、治療も早くて前回のような酷い状況にはならずに済んだと手紙に書かれていたよ。俺が渡した対策マニュアルに助けられたとお礼が書かれていたからね。役に立てたなら嬉しい。

　アスラダ国の黒死病も沈静化に向かっている。消毒や隔離を徹底させたのが功を奏したようだね。あとは自分達でやれるだろうから、俺も屋敷に帰えれそうだ。

　帰ったら、レックス達に手伝ってもらった報酬を支払わなければいけない。《新しい美味しい料理を食べさせろ》って、レックスは簡単に言うけど、そんなにポンポンと思いつかないんだよな～。どんな料理にしようかな？