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王太子顔見せパーティー
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上品なエンジ色に金縁の馬車から出てきたのは、サスマン王国筆頭貴族の娘、アリス・パルス公爵令嬢。
光に当たると虹色に輝くプラチナブロンドがフワフワとなびく。パッチリ二重に彩られたラベンダー色の瞳に、ぷっくりとしたやや色が濃いめのピンクの唇。全てが神の手作りのような完璧な少女。
「パルス公爵家から参りました、アリス令嬢でございます。」
「はい、確認致しました。段差がごさいますので、お気をつけください。」
「ありがとう」
警備員はまさか令嬢からお礼が返ってくるとは思わず、不躾に見てしまった。それでもアリスは気にせずニッコリと笑った。
ほぅ
誰もが顔を赤くするほどの美しい大輪の花のような笑顔。
侍女に導かれてパーティー会場に行く後ろ姿も一寸の狂いもなく美しかった。
「お嬢様、こちらが控え室でございます。まだ少し開始まで2時間ほどございますので、こちらでお休み下さい。」
応接間に案内されて、専属侍女が内側から鍵を閉めて、アリスと侍女だけになった。
「くあーー!!やっと一息!疲れたわ~」
「お嬢様、馬車からここまで歩いただけですよ。これからパーティーですからね!ソファにずるずるしません!御髪が乱れます。」
「既に疲れたわー。それに参加しても意味が無いじゃないの。今日ほど無駄な時間はないわ。」
「私だって来たくはありませんが…筆頭貴族としては…」
「分かってるわよ。まあ、近衛騎士からお婿さん候補を物色するわ。」
「……一応王太子殿下に失礼のない程にしてくださいね。」
「それも分かってるわよ。私を誰だと思っているの?」
ふんっと鼻を鳴らす15歳の淑女に頭が痛くなる侍女であった。
「アリス・パルス様、パーティーのお時間になりましたので、よろしければご移動お願い致します。」
「お嬢様はすぐに向かいます。お知らせありがとうございます。」
ソファから立ち上がったアリスは既に完璧な令嬢になっていた。
赤、黄色、緑、青……庭園に咲き誇る花のごとく美しいドレスを纏った淑女達が微笑みあっている。
もうバチバチしてるの。行きたくないわ~
内心どんな事を考えていても、アリスは死角なし完璧美少女で登場すると、既に会場に居る令嬢たちからの挨拶をする。
「パルス公爵令嬢のドレスは本当に素晴らしいですわ。」
「いつ拝見してもうっとりしてしまいますの。」
「まあ、皆様も素敵な華ですわ。こちらに参りました時に、ここは楽園かと思いましたもの。」
「うふふ、それはとても光栄な事ですわ。あら…!お飲み物やお食事はなさいましたか?気づかずに申し訳ありません。せめてお飲み物を…」
オレンジの香りがするアイスティーで喉を潤していると、王太子殿下がやってきた。
透き通る水色の髪にラピスラズリのような青に金が散りばめられた瞳。それらに負けない甘いマスクと甘い声を振りまきながら、初めの挨拶をした。
「ここの会場は世界中の美姫を集めたようだ。出来れば一人一人と話をしたいと思っている。楽しみにしているよ。」
笑顔で締めれば場も締まる……どころか蕩けて殆どの令嬢の顔が真っ赤になっている。所々立っているのもやっとなようで、軽く震えている令嬢も居るほどだ。
アリスは筆頭貴族の為、1番に挨拶に向かう。話を聞かれないように、防音魔法と衝立、侍女と騎士が置かれていた。
「お初にお目にかかります。パルス公爵家から参りました。アリスにございます。王太子殿下、並びに王妃殿下に置かれましても、ご機嫌麗しゅうございます。」
「アリス穣、会えて嬉しいよ。楽にしてくれ。ところで、母上は本日公務の予定と知らせていたが……何故分かった?」
侍女、もとい王妃殿下も後ろで鋭い眼差しを向けている。そんな目に怯むアリスではなく、可愛らしくニッコリと笑った。
「御髪があまりにもお美しすぎますわ。それに、王妃殿下が使用されております香水は、王族の方しか許されない香りでございますわ。」
「ああ、なるほど。パルス公爵家の抱えている農地で原料を栽培しているのだったな。これは1本取られた。」
「1本だなんて。ふふふ。」
「原料の匂いは現地に行かないと分からないからな。流石だ。私としては、こういう人が王太子妃になるのが理想的ではあるな。母上はどうだろうか?」
「ええ、理想的ではございますね。」
「恐れながら、よろしいでしょうか。」
「なんだ?」
「誠に光栄なお話ではございますが、私は公爵家の跡取りにほぼ確定しておりますの。それに、こんなこと恐れ多いのですが…王太子殿下と私は、きっと根底が同じでございますわ。ですので、きっと夫婦生活は破綻すると思いますの。」
王太子も王妃と少し目を見張ったが、コロコロ笑っているアリスをじっと見つめてから、納得したように頷いた。
「確かに、私のダニエルには令嬢は手に負えませんわね。残念だわ。」
「母上はひどいですね。…いや、確かにそうだ。けれど、私は令嬢が気に入ったよ。だからどうだろうか、友人…にはなれるだろうか。公爵家当主になるのであれば、それも良いだろう。」
「まあ!光栄な事でございますわ。謹んでお受け致します。では、友人として……私のお婿さんをご紹介頂けませんか?」
「あははっ!私の婚約者を探している場でそれを進言するか!令嬢の肝の座りには恐れ入ったよ。……流石にすぐすぐ紹介することは出来ないがどうだろう、このパーティーの3日間で、自由に動き回っていい事にするよ。いい人材が見つからなかったら、また言ってくれ。」
「あら。よろしいのですか?私は殿下とご友人になれて幸せ者でございますわ。」
フワッと花が綻ぶ笑顔で答えると、近くに控えていた騎士の耳が真っ赤になっていた。王妃はそれを見て「本当にそっくりだこと」と口にした。
光に当たると虹色に輝くプラチナブロンドがフワフワとなびく。パッチリ二重に彩られたラベンダー色の瞳に、ぷっくりとしたやや色が濃いめのピンクの唇。全てが神の手作りのような完璧な少女。
「パルス公爵家から参りました、アリス令嬢でございます。」
「はい、確認致しました。段差がごさいますので、お気をつけください。」
「ありがとう」
警備員はまさか令嬢からお礼が返ってくるとは思わず、不躾に見てしまった。それでもアリスは気にせずニッコリと笑った。
ほぅ
誰もが顔を赤くするほどの美しい大輪の花のような笑顔。
侍女に導かれてパーティー会場に行く後ろ姿も一寸の狂いもなく美しかった。
「お嬢様、こちらが控え室でございます。まだ少し開始まで2時間ほどございますので、こちらでお休み下さい。」
応接間に案内されて、専属侍女が内側から鍵を閉めて、アリスと侍女だけになった。
「くあーー!!やっと一息!疲れたわ~」
「お嬢様、馬車からここまで歩いただけですよ。これからパーティーですからね!ソファにずるずるしません!御髪が乱れます。」
「既に疲れたわー。それに参加しても意味が無いじゃないの。今日ほど無駄な時間はないわ。」
「私だって来たくはありませんが…筆頭貴族としては…」
「分かってるわよ。まあ、近衛騎士からお婿さん候補を物色するわ。」
「……一応王太子殿下に失礼のない程にしてくださいね。」
「それも分かってるわよ。私を誰だと思っているの?」
ふんっと鼻を鳴らす15歳の淑女に頭が痛くなる侍女であった。
「アリス・パルス様、パーティーのお時間になりましたので、よろしければご移動お願い致します。」
「お嬢様はすぐに向かいます。お知らせありがとうございます。」
ソファから立ち上がったアリスは既に完璧な令嬢になっていた。
赤、黄色、緑、青……庭園に咲き誇る花のごとく美しいドレスを纏った淑女達が微笑みあっている。
もうバチバチしてるの。行きたくないわ~
内心どんな事を考えていても、アリスは死角なし完璧美少女で登場すると、既に会場に居る令嬢たちからの挨拶をする。
「パルス公爵令嬢のドレスは本当に素晴らしいですわ。」
「いつ拝見してもうっとりしてしまいますの。」
「まあ、皆様も素敵な華ですわ。こちらに参りました時に、ここは楽園かと思いましたもの。」
「うふふ、それはとても光栄な事ですわ。あら…!お飲み物やお食事はなさいましたか?気づかずに申し訳ありません。せめてお飲み物を…」
オレンジの香りがするアイスティーで喉を潤していると、王太子殿下がやってきた。
透き通る水色の髪にラピスラズリのような青に金が散りばめられた瞳。それらに負けない甘いマスクと甘い声を振りまきながら、初めの挨拶をした。
「ここの会場は世界中の美姫を集めたようだ。出来れば一人一人と話をしたいと思っている。楽しみにしているよ。」
笑顔で締めれば場も締まる……どころか蕩けて殆どの令嬢の顔が真っ赤になっている。所々立っているのもやっとなようで、軽く震えている令嬢も居るほどだ。
アリスは筆頭貴族の為、1番に挨拶に向かう。話を聞かれないように、防音魔法と衝立、侍女と騎士が置かれていた。
「お初にお目にかかります。パルス公爵家から参りました。アリスにございます。王太子殿下、並びに王妃殿下に置かれましても、ご機嫌麗しゅうございます。」
「アリス穣、会えて嬉しいよ。楽にしてくれ。ところで、母上は本日公務の予定と知らせていたが……何故分かった?」
侍女、もとい王妃殿下も後ろで鋭い眼差しを向けている。そんな目に怯むアリスではなく、可愛らしくニッコリと笑った。
「御髪があまりにもお美しすぎますわ。それに、王妃殿下が使用されております香水は、王族の方しか許されない香りでございますわ。」
「ああ、なるほど。パルス公爵家の抱えている農地で原料を栽培しているのだったな。これは1本取られた。」
「1本だなんて。ふふふ。」
「原料の匂いは現地に行かないと分からないからな。流石だ。私としては、こういう人が王太子妃になるのが理想的ではあるな。母上はどうだろうか?」
「ええ、理想的ではございますね。」
「恐れながら、よろしいでしょうか。」
「なんだ?」
「誠に光栄なお話ではございますが、私は公爵家の跡取りにほぼ確定しておりますの。それに、こんなこと恐れ多いのですが…王太子殿下と私は、きっと根底が同じでございますわ。ですので、きっと夫婦生活は破綻すると思いますの。」
王太子も王妃と少し目を見張ったが、コロコロ笑っているアリスをじっと見つめてから、納得したように頷いた。
「確かに、私のダニエルには令嬢は手に負えませんわね。残念だわ。」
「母上はひどいですね。…いや、確かにそうだ。けれど、私は令嬢が気に入ったよ。だからどうだろうか、友人…にはなれるだろうか。公爵家当主になるのであれば、それも良いだろう。」
「まあ!光栄な事でございますわ。謹んでお受け致します。では、友人として……私のお婿さんをご紹介頂けませんか?」
「あははっ!私の婚約者を探している場でそれを進言するか!令嬢の肝の座りには恐れ入ったよ。……流石にすぐすぐ紹介することは出来ないがどうだろう、このパーティーの3日間で、自由に動き回っていい事にするよ。いい人材が見つからなかったら、また言ってくれ。」
「あら。よろしいのですか?私は殿下とご友人になれて幸せ者でございますわ。」
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