16 / 25
第16話 真実のかけら
しおりを挟む
その日、空には一筋の白い光が走っていた。
転移魔法陣の余波だろう。王都からの使者が去っていった証。
けれど、空が静けさを取り戻しても、
ユイの心は揺れ続けていた。
「ソル・マギアが本格的に動き始めた以上、
もう、僕の存在は“ただの人助け”では済まされない」
そう思っていても、まだ実感が追いつかない。
けれど――
“あの人”が現れたことで、事態はまた一段階、動き始める。
◇ ◇ ◇
村の中央に、見慣れぬ旅人がいた。
漆黒のフードをかぶり、杖の先には銀の輪。
その男は、淡々と村を見回していた。
「……王都直属の、観測魔導師。名を、ルヴァン」
そう名乗ったその男は、ソル・マギアの一員だった。
「私は命を受け、この地に“真実の欠片”を探しに来た。
――神の使いと噂される、ユイ。君と話がしたい」
集会所で向かい合ったユイに、彼は単刀直入に告げる。
「君の力は、“人間”の枠に収まりきらない。
だがそれは、魔族の力ともまた異なる。……いわば、“第零系統”に近い」
「第零系統?」
「世界が成立する前、まだ“分類”も“体系”もなかった頃に存在した、原始的な魔。
通常は記録にも残っていない。けれど――君の力は、それに酷似している」
ユイは言葉を失った。
“分類すらされていない力”。
“魔”がまだ“魔法”になる前の何か。
つまり、自分は――
「あなたたちは、僕に何を望んでる?」
「可能であれば、“記憶”を確認させてほしい。
君の力の由来には、本人も知らない何かがあると推測している」
「……無理です。僕の記憶は、あの転生の瞬間からしかありません」
ルヴァンは静かに頷いた。
「それでも、何かが眠っているはずだ。
今はまだ鍵が閉じられていても、いずれ開く。君が自らの“起源”に触れたとき――」
◇ ◇ ◇
夜。
ユイは焚き火の前で、ひとり星を見ていた。
そこへリルがやって来て、隣に座る。
「ねえユイ。難しい話ばっかりされてるけど……ユイは、どうしたい?」
ユイは少し考えて、そして言った。
「――知りたい。僕が何者なのか。
でもそれは、“誰かのために使われるため”じゃない。
僕自身が、ちゃんと立つために知りたいんだ」
リルはうなずいた。
「うん。じゃあ、わたしは隣で見てるね。
どんなユイでも、きっとわたしは“ユイだ”って思えるから」
その言葉が、ユイの心をふっと軽くした。
自分の正体が何であれ、
誰かが「それでも」と言ってくれる限り、歩いていける。
――ソル・マギア。
――第零系統。
――真実の欠片。
すべてが、ゆっくりと繋がりはじめていた。
転移魔法陣の余波だろう。王都からの使者が去っていった証。
けれど、空が静けさを取り戻しても、
ユイの心は揺れ続けていた。
「ソル・マギアが本格的に動き始めた以上、
もう、僕の存在は“ただの人助け”では済まされない」
そう思っていても、まだ実感が追いつかない。
けれど――
“あの人”が現れたことで、事態はまた一段階、動き始める。
◇ ◇ ◇
村の中央に、見慣れぬ旅人がいた。
漆黒のフードをかぶり、杖の先には銀の輪。
その男は、淡々と村を見回していた。
「……王都直属の、観測魔導師。名を、ルヴァン」
そう名乗ったその男は、ソル・マギアの一員だった。
「私は命を受け、この地に“真実の欠片”を探しに来た。
――神の使いと噂される、ユイ。君と話がしたい」
集会所で向かい合ったユイに、彼は単刀直入に告げる。
「君の力は、“人間”の枠に収まりきらない。
だがそれは、魔族の力ともまた異なる。……いわば、“第零系統”に近い」
「第零系統?」
「世界が成立する前、まだ“分類”も“体系”もなかった頃に存在した、原始的な魔。
通常は記録にも残っていない。けれど――君の力は、それに酷似している」
ユイは言葉を失った。
“分類すらされていない力”。
“魔”がまだ“魔法”になる前の何か。
つまり、自分は――
「あなたたちは、僕に何を望んでる?」
「可能であれば、“記憶”を確認させてほしい。
君の力の由来には、本人も知らない何かがあると推測している」
「……無理です。僕の記憶は、あの転生の瞬間からしかありません」
ルヴァンは静かに頷いた。
「それでも、何かが眠っているはずだ。
今はまだ鍵が閉じられていても、いずれ開く。君が自らの“起源”に触れたとき――」
◇ ◇ ◇
夜。
ユイは焚き火の前で、ひとり星を見ていた。
そこへリルがやって来て、隣に座る。
「ねえユイ。難しい話ばっかりされてるけど……ユイは、どうしたい?」
ユイは少し考えて、そして言った。
「――知りたい。僕が何者なのか。
でもそれは、“誰かのために使われるため”じゃない。
僕自身が、ちゃんと立つために知りたいんだ」
リルはうなずいた。
「うん。じゃあ、わたしは隣で見てるね。
どんなユイでも、きっとわたしは“ユイだ”って思えるから」
その言葉が、ユイの心をふっと軽くした。
自分の正体が何であれ、
誰かが「それでも」と言ってくれる限り、歩いていける。
――ソル・マギア。
――第零系統。
――真実の欠片。
すべてが、ゆっくりと繋がりはじめていた。
0
あなたにおすすめの小説
「餌代の無駄」と追放されたテイマー、家族(ペット)が装備に祝福を与えていた。辺境で美少女化する家族とスローライフ
天音ねる(旧:えんとっぷ)
ファンタジー
【祝:男性HOT18位】Sランクパーティ『紅蓮の剣』で、戦闘力のない「生産系テイマー」として雑用をこなす心優しい青年、レイン。
彼の育てる愛らしい魔物たちが、実はパーティの装備に【神の祝福】を与え、その強さの根源となっていることに誰も気づかず、仲間からは「餌代ばかりかかる寄生虫」と蔑まれていた。
「お前はもういらない」
ついに理不尽な追放宣告を受けるレイン。
だが、彼と魔物たちがパーティを去った瞬間、最強だったはずの勇者の聖剣はただの鉄クズに成り果てた。祝福を失った彼らは、格下のモンスターに惨敗を喫する。
――彼らはまだ、自分たちが捨てたものが、どれほど偉大な宝だったのかを知らない。
一方、レインは愛する魔物たち(スライム、ゴブリン、コカトリス、マンドラゴラ)との穏やかな生活を求め、人里離れた辺境の地で新たな暮らしを始める。
生活のためにギルドへ持ち込んだ素材は、実は大陸の歴史を塗り替えるほどの「神話級」のアイテムばかりだった!?
彼の元にはエルフやドワーフが集い、静かな湖畔の廃屋は、いつしか世界が注目する「聖域」へと姿を変えていく。
そして、レインはまだ知らない。
夜な夜な、彼が寝静まった後、愛らしい魔物たちが【美少女】の姿となり、
「れーんは、きょーも優しかったの! だからぽるん、いーっぱいきらきらジェル、あげたんだよー!」
「わ、私、今日もちゃんと硬い石、置けました…! レイン様、これがあれば、きっともう危ない目に遭いませんよね…?」
と、彼を巡って秘密のお茶会を繰り広げていることを。
そして、彼が築く穏やかな理想郷が、やがて大国の巨大な陰謀に巻き込まれていく運命にあることを――。
理不尽に全てを奪われた心優しいテイマーが、健気な“家族”と共に、やがて世界を動かす主となる。
王道追放ざまぁ × 成り上がりスローライフ × 人外ハーモニー!
HOT男性49位(2025年9月3日0時47分)
→37位(2025年9月3日5時59分)→18位(2025年9月5日10時16分)
帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!
雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。
ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。
観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中…
ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。
それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。
帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく…
さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
今日からはじめる錬金生活〜家から追い出されたので王都の片隅で錬金術店はじめました〜
束原ミヤコ
ファンタジー
マユラは優秀な魔導師を輩出するレイクフィア家に生まれたが、魔導の才能に恵まれなかった。
そのため幼い頃から小間使いのように扱われ、十六になるとアルティナ公爵家に爵位と金を引き換えに嫁ぐことになった。
だが夫であるオルソンは、初夜の晩に現れない。
マユラはオルソンが義理の妹リンカと愛し合っているところを目撃する。
全てを諦めたマユラは、領地の立て直しにひたすら尽力し続けていた。
それから四年。リンカとの間に子ができたという理由で、マユラは離縁を言い渡される。
マユラは喜び勇んで家を出た。今日からはもう誰かのために働かなくていい。
自由だ。
魔法は苦手だが、物作りは好きだ。商才も少しはある。
マユラは王都の片隅で、錬金術店を営むことにした。
これは、マユラが偉大な錬金術師になるまでの、初めの一歩の話──。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる