誰にも気づかれなかった僕の生き方が、世界を変えていました。

シロトネ

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第15話 この道

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朝。村の空は、どこまでも澄んでいた。

けれど、ユイの心には、雲がかかっていた。

王都から届いた二つの選択肢。
どちらを選んでも、もう昔のような“静かな日々”には戻れない。

でも、何も選ばなければ、誰かに選ばれてしまう。

だから――決めるしかなかった。


リルは、何も聞いてこなかった。

ただ隣にいて、ユイの手を握ってくれていた。

その静かな優しさが、今のユイにはいちばん必要だった。


日が高く昇った頃、ユイは集会所を訪れた。

そこにはエリシアと、調査隊の隊長がいた。

ユイはまっすぐに言った。

「僕は、王都には行きません」

隊長がわずかに眉を上げ、エリシアは視線を逸らさずに返す。

「理由を聞いても?」
「僕は、“誰かに命令されて生きる”ために生まれ変わったわけじゃないから」
「なるほど。君らしい答えだ」

エリシアはそう言って、立ち上がった。

「ならば、ここで観測を続けさせてもらう。制限は最低限にする」
「ありがとうございます」

ユイは頭を下げた。

それは、逃げではない。

自分の意思で「ここにいる」と決めた――その証だった。


◇ ◇ ◇


その夜、リルと並んで丘に立った。

草をなでる風。遠くの森の影。

リルが小さく笑う。

「ユイ、選んだんだね」
「うん。まだ怖いけど、でも……」
「でも?」
「君がいてくれるなら、たぶん、どこにいても僕は“僕”でいられる気がした」
「……わたしも」

ふたりの影が、夕日に重なる。

何者でもなかった僕が、
誰かとこうして未来を選べるなんて――

ほんの少し前まで、想像もしていなかった。


空は静かだった。
でも、確かに世界は、変わりはじめていた。
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