⊕ヒトのキョウカイ⊕【未来転生したオレは、星を軽くぶっ壊すチート機械少女と共にこの幻実(せかい)で生きて行く…。】

Nao

文字の大きさ
132 / 207
ヒトのキョウカイ5巻 (亡霊再び)

11 (絶望的な確率の希望を信じて)

しおりを挟む
「さて…とりあえずは動くようになったが、DLと呼ぶには まだまだ だな…。」
 食堂の長いテーブルの席に研究員が座り、お菓子をつままみながらオレの話を聞いている。
 人海戦術で組み上げたプログラムのバグを直し、正常起動まではこぎけ、まともに動くようにして見たが、まだ戦場に出す事は出来ない。
「DLの武器が一切使えないし、プログラムの書き換えも難しい…。
 そこで、DL規格の変換機コンバーターを作ってDLに合わせようと思う。」
 オレが研究員に向かって提案をする。
「え?リアルタイムでコンバーターを掛けたら処理スペックが跳ね上がりますよ…。」
「ただでさえ、スペックギリギリのキューブを使っていますから、下手をすれば転倒中に処理が足りなくて自壊します。」
 研究員が慌ててオレに言う。
「そこは処理を減らすしか無いでしょう…。
 DL規格にする事で フォースネットへのアクセスが出来るようになるし、DL規格の武器も使えるようになる。
 更に言えば 今後 キューブの処理能力は 上がるはずなんだから、ファントムが普及した際にDL規格の方がエンジェニアが扱い易くなるだろう。
 と言う事で皆さんには DL規格へのコンバーターを作って貰いたい。
 システムの追加なんかは オレら2人で出来るけどコンバーターは 人数が必要だ。」
「とは言っても 現状ファントムは 電気が使えないので無線の類が使えませんよね…。」
 QEで動いているファントムは電気兵装が使えない…。
 AQBの時もQEをわざわざ電気に変換していた見たいだが、QE前提の社会じゃない限り、互換性は絶対に必要だろう。
「そっちは こっちで何とかする。
 無線も火器管制も ハードポイントもある前提で作って欲しい。」
「それなら出来ますが、2日は かかりますよ…。」
「こっちも、空間ハッキングシステムの追加に稼働実験もしないと行けないから、2日は絶対に必要になる。
 後、どの位の処理能力が必要か分かるか?」
「色々と追加項目が多いので DLの1.5倍は 掛かるのではないでしょうか?」
「なら、その間で収めるようにして欲しい、それ以上超えるなら連絡するって事で…。」
「ええ、分かりました。」
「さて、今日は オレが持ちますので、思う存分 食べて これからの修羅場後半戦に向けて 早めに寝てください。」
「「ありがとうございます。」」

「いいのですか?」
 ツヴァインがナオに聞いてくる。
「通常1週間かる作業を2日でやって貰うんだから、特急料金を出さないとな…。」
「そもそも、こちらが開発やテストをお願いしている立場なのですが…。」
「まぁ…完全新型のDLのテストパイロットなんて、金を出してもやりたい仕事だからな…。
 DLの最終型を造った時もそうだった…。
 こっちがメカニックも出来るから、開発者のおっさん達と意気投合してな…。
 パーツのアップグレードシステムなんかは オレが要望を出して作って貰ったんだ…。」
「あ~あの機構きこうはあなたの発案だったのですか…。」
「アレのおかげで、今でもDLの中身はほとんどど変わって無いしな…。」
 兵器と言う物は常にアップグレードしないと、他の国の兵器に取り残されてしまい、役に立たない弱い兵器を大量に持つことになる。
 その為、こう言ったパーツの高性能化による次世代改修は大規模になり易く、その為に莫大ばくだいな金額と時間、人的リソースが必要になるが、DLの場合はサイズと規格さえ合っていれば、新しいパーツをそのまま入れてもリミッターが働き、各パーツとの出力を調整してバランスの良い機体にしてくれる機能が有るので、改修コストが安く済む利点を持つ。
 この思い付きを実現させる開発者も凄いが、580年もこの方式でアップグレードされ続けるとは 流石にオレも思っていなかった。
「だから、新しい機体を作る以上妥協だきょうはしたくないんだ…。
 オレの妥協で人死にが出たら気分が悪いしな…。
 それじゃあ…オレらは部屋に戻るよ…メシ食えないしな…。
 あー請求書の方は よろしく~。」
「はい…送っておきますね…。」
 ナオはそう言うとクオリアと一緒に部屋に戻って行った。

 ナオとクオリアは部屋に戻り、作業を再開する。
「それで、どうやって処理能力を減らす気だ?
 無計画で言った訳では無いんだろう?」
 クオリアがオレに言う。
「まずは 常時展開している通行止めの部分解除だな…。」
「統計上被弾確率が低い部分を無くすのか?」
「いや…未来予測システムの予測線で被弾位置が割り出せるだろう…それを使えば ある程度範囲が絞れる。」
「確かにそうだが…ジャミング中には そのシステムが使えなくなる。」
「だったら選択式にするか自動切換えが出来るようにしないとな…。」
「自動切換えがベストだ…ならそこは 私が担当しよう。」
「じゃあこっちはもう一つの方を…。」
「他にも減らす所が?」
「ファントムって キューブで繋がっているから多関節で、やろうと思えば腕で波打つ事も出来る見たいなんだ…。
 ただ、実際には必要無いから、関節のキューブを設定してそれ以外を完全固定で『マリオネット』で操作した方が良いと思う…。」
 多分 研究員はマリオネットを知らなかったんだろう。
 使う関節は人を基準にして最適化をすれば 大幅に処理を削減出来るだろう…。
「『マリオネット』か…分かった…それはナオの担当で…。」
「次は 電気だな…。
 通信や ハードポイントから武器への電力供給…。」
「これは私がやる…。
 武器に対しての情報交換と安定した電力供給…。
 緊急用のバックドアも仕掛けたいしな…。」
「何かあった時に止められるようにか…。」
 この機体が量産された場合、それこそクオリアの言う通り、バックの中に隠し持つ事が出来てしまう。
 それは 新たな争いを産む可能性がある訳で、これは その為のセーフティだろう。
「ああ…悪用する気は無いが、この機体が敵側に回ったら止められるようにしたい。」
「まぁ オレじゃあ 見つけられ無いだろうしな…。
 聞かなかった事にしてあげるから自己責任でどうぞ…。」
「感謝する。」
「後は 腹部装甲を破壊された場合、自壊するように作らないと…。」
 ファントムの無敵装甲に穴を開けてワザと弱点を作らないと、無敵装甲を破る超兵器が太陽系での標準装備になりかねない…。
 相手側の火力を下げる意味でも弱点を作る事は必要だ。
「自壊した場合 脱出用のバギーも消えてしまうから 計画的に止めないと行けない。
 それと今回の1000mの深海では 確実に腹部が潰れる事になるから、量産に目途が付くまで後回しだ。」
「分かった。」

「なあ…これでラプラスを倒せると思うか?」
 作業中にふと思いつきナオが聞く。
「いや…無理だ。
 これは人が私達のように空間ハッキングを使った戦闘が出来る為の物だ。
 エレクトロンが100や200増えた所で変わらない…。」
「じゃあ1万なら……。」
「守るべき星が無くなる…。
 それでもラプラスは生き残るだろう…。」
「じゃあ何でこれを…。」
 クオリアが大分だいぶ前から研究都市でプロジェクトを立ち上げさせ、間接的に技術を渡し、研究員に開発するように誘導して来たのは確実だ。
 そして クオリアは 勝算の無い無意味な行動はしない。
 つまり何かクオリアに利益になるはずだ。
「ワームがラプラスになる前に人類同士での共食いが発生する。
 想定規模からいって、これが発生した場合 ラプラスと戦う時には まともな戦力が残されていない。
 つまり ラプラスと戦う事も出来ず、私がタナトスに乗り、ガンマレイバーストで太陽系内の人類を道連れにラプラスを封印する事になる…それが現時点で想定されている結末だ。」
「戦争の原因は?」
「物資の枯渇による奪い合い、人口の間引き、生産施設及び 技術者の確保。
 宇宙への脱出リソースの奪い合い…色々だ。
 これを見越してエレクトロンが月基地に生産施設の機材を貯めこんでいるが、それでも集団心理が戦争を誘発するだろう。」
「なら ファントムは?」
「その時 ナオの関係者を守る物…もしくは…。」
「もしくは?」
「ファントムのキューブを量産して、1億人を宇宙に逃がすか…。
 エアトラS2には30人しか積めないし、軌道エレベーターも大量輸送出来るとは言え 限られているし、どちらも低所得者は救えない。
 でもファントムだったら、大気圏を単体で離脱し、亜光速で移動出来るようにもなるだろう…。
 つまり、太陽系内のコロニーに移民し、船団と一緒に太陽系を去るプランだ。」
「地球を捨てるのか…。」
「ああ…とは言ってもコロニー内もここと大きくは変わらない。
 人が快適に暮らせる大気組成…自然の理不尽さが無い完璧に制御された天候…。
 宇宙遊牧民なら ワームやラプラスがやってきても別の星系に逃げられるしな…。
 奴らは 光より早く目的地にたどり着く事が出来ないから…。」
「それでも、如何どうにかしたい…。」
「私からも聞きたい…ナオはどうして地球に固執こしつする?
 宇宙でも生活は大して変わらないと言うのに…。」
「地球と言うより人類の文明かな…。」
「ん?」
「オレは 人の力を信じたいのさ…。
 サルが棍棒こんぼうを武器にして、火を扱い、食べ物を焼き、稲作に…星の位置から暦《こよみ》を作り、本と文字を作って次世代に記憶のバックアップを残せるようになって…万物の法則を解き明かし、アーコロジーを作れるまでに発展した人類が、ラプラスを倒す為に何を生み出すのか…。
 きっと凄い兵器を作ってラプラスさえも倒せるんじゃないかってね…。」
 オレは少し笑いながらクオリアに答える。
「希望的観測だな…。」
「それで結構。
 絶望しかない未来なんて生きる気が起きないし、皆が同じ希望を持てば、思い込みの力で確率補正が掛かるかも しれないだろう…。」
「そうか…思い込みか…。
 なら 私は、絶望的な確率ではあるが、確率は0では無いと信じよう…。」
 クオリアが絶望的と断言する確率を手繰り寄せる手はあるのだろうか?
 今はその時が来た時に準備不足に成らないように全力で生きるしかない。
 オレは そう思い作業を続けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

【もうダメだ!】貧乏大学生、絶望から一気に成り上がる〜もし、無属性でFランクの俺が異文明の魔道兵器を担いでダンジョンに潜ったら〜

KEINO
ファンタジー
貧乏大学生の探索者はダンジョンに潜り、全てを覆す。 ~あらすじ~ 世界に突如出現した異次元空間「ダンジョン」。 そこから産出される魔石は人類に無限のエネルギーをもたらし、アーティファクトは魔法の力を授けた。 しかし、その恩恵は平等ではなかった。 富と力はダンジョン利権を牛耳る企業と、「属性適性」という特別な才能を持つ「選ばれし者」たちに独占され、世界は新たな格差社会へと変貌していた。 そんな歪んだ現代日本で、及川翔は「無属性」という最底辺の烙印を押された青年だった。 彼には魔法の才能も、富も、未来への希望もない。 あるのは、両親を失った二年前のダンジョン氾濫で、原因不明の昏睡状態に陥った最愛の妹、美咲を救うという、ただ一つの願いだけだった。 妹を治すため、彼は最先端の「魔力生体学」を学ぶが、学費と治療費という冷酷な現実が彼の行く手を阻む。 希望と絶望の狭間で、翔に残された道はただ一つ――危険なダンジョンに潜り、泥臭く魔石を稼ぐこと。 英雄とも呼べるようなSランク探索者が脚光を浴びる華やかな世界とは裏腹に、翔は今日も一人、薄暗いダンジョンの奥へと足を踏み入れる。 これは、神に選ばれなかった「持たざる者」が、絶望的な現実にもがきながら、たった一つの希望を掴むために抗い、やがて世界の真実と向き合う、戦いの物語。 彼の「無属性」の力が、世界を揺るがす光となることを、彼はまだ知らない。 テンプレのダンジョン物を書いてみたくなり、手を出しました。 SF味が増してくるのは結構先の予定です。 スローペースですが、しっかりと世界観を楽しんでもらえる作品になってると思います。 良かったら読んでください!

特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。 そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。 しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの? 優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、 冒険者家業で地力を付けながら、 訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。 勇者ではありません。 召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。 でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。

第1王子だった私は、弟に殺され、アンデットになってしまった

竹桜
ファンタジー
第1王子だった主人公は、王になりたい弟に後ろから刺され、死んでしまった。 だが、主人公は、アンデットになってしまったのだ。 主人公は、生きるために、ダンジョンを出ることを決心し、ダンジョンをクリアするために、下に向かって降りはじめた。 そして、ダンジョンをクリアした主人公は、突然意識を失った。 次に気がつくと、伝説の魔物、シャドーナイトになっていたのだ。 これは、アンデットになってしまった主人公が、人間では無い者達と幸せになる物語。

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

処理中です...