⊕ヒトのキョウカイ⊕【未来転生したオレは、星を軽くぶっ壊すチート機械少女と共にこの幻実(せかい)で生きて行く…。】

Nao

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ヒトのキョウカイ5巻 (亡霊再び)

12 (人の不幸で金儲け)

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 エスクスマキナ都市…。
 氷と雪だけの土地を脚と翼の腕が生えた戦闘機が歩いて行く。
「そんじゃあ行ってくる…。」
 戦闘機に乗っているハルミが言う。
 コックピットは全面装甲でおおわれていて 外が見えないが、AR表示で機体が透けて見え 下のコンパチが見える。
「気を付けて下さいね…。」
「分かっているって…。」
 戦闘機の翼の腕を横に伸ばして浮力を確保…足のスラスターから量子光が噴射して それを推進力に空中に上がり、安全高度に到達した所で一気に空中で加速し、下を向いている脚を戦闘機に格納して、更に加速…軽く音速を突破し、ソニックブームを発生させる…。
 雲の上を抜け…まぶしくない程度に輝く太陽に照らされ、水平飛行に移り、翼腕よくわんを調整し、高速飛行モードに移る。
 速度はマッハ3…時速にして 3000kmの巡航速度を叩き出す『Groundグラウンド Walkウォーク birdバード』…Gウォークは 大戦時に開発された機体に今のテクノロジーを加え、ハルミとジガが趣味とノリで強化した『自家用戦闘機』だ。
 AQBを搭載して 空間ハッキングで周囲の風の振る舞いを制御し、それを推進力に変換しているので大気圏内なら推進剤を一切使わずに移動できる。
「やっぱり戦闘機は良いね…。」
 ハルミは右手のスティックで機体を調整しながら言う。
 この機体は 一応ダイレクトリンクシステムに対応しているDLで、戦闘時には そちらを使うが、私はアナログのスティック操作の方が好きだ。
 やっぱこう…動かしている感じが良い…。
 今時、戦闘機は無人が基本で 条約を無視すれば完全自立制御の戦闘機で『行って』『撃って』『帰って』これる。
 そんな技術があるってのに、この機体には 最低限のアシスト機能しか入れていなく…昔ながらの戦闘機の感覚を楽しめる…。
 座席は前と後ろの2席が付いていて、前には私、後ろには大きなバックパックをシートベルトで縛り付けてある。
 エクスプロイトウイルスの解析と資料作成が完成し、これから行くのは地球保健機関EHO都市だ。
 都市としての人数は少ないが、大半が医療関係者で 薬剤や検査機の製造、他の都市の衛生状態をチェックしたり、指導をしたり、都市間の感染症が発生した場合 対応したりするのが この都市の役割だ。
 今回ここに向かうのは医療用AIの『メディク』にエクスプロイトウイルスの対処法を入れさせ、全世界のメディクにアップデートさせるのが目的だ。
 結局、1人しかいない私が 直接行って治すより 医療用AIに対処法を覚えさせるのが一番効率が良いからだ。
 Gウォークを減速させつつ降下させ、雲の中に入る。
 機体に雨が打たれているが、キャノピーと違い映像加工されているARキャノピーは視界不良にはならない…。
 雲を抜けるとそこに見えるのは 小さいドーム型の都市とその横の大きな滑走路だった。
 直径は5km…地下に生産工場があるが やっぱり小さい都市で、その横には不釣り合いな程の大型の4km滑走路がある。
 駐機場の開けたシャッターから大量のエアトラS2が見え、滑走路の整備もちゃんとされていて どんな機体でも着陸出来るようになっている。
 Gウォークは滑走路から離れた空中待機区域を旋回飛行し、ハルミは管制にアプローチを取る。
「こちらGウォークバードハルミ機、現在、空中待機区域を旋回飛行中…着陸許可を求む…リクエスト」
『こちらEHO管制、Gウォークバードハルミ機、ビーコンに従い着陸を許可…。』
 管制塔のAIが、すぐに指示を出す。
「ハルミ機、着陸を了解…。」
 Gウォークはギリギリまで速度を落とし脚を降ろして、高度を保ちつつ滑走をして止まり、着陸…駐機場まで歩く…。
 膝を折り畳み、キャノピーが上がって中からハルミが降りる。
「よっと…」
 それなりの高さはあるが この位なら問題無い…。
 事前連絡を入れていたので、駐機場に車が来て横に止める。
「お疲れ様です。」
 白衣をまとった医師が降りてくる。
「エクスマキナ都市から来ましたハルミ・サカタです。
 早速会議室に行きたいのですが…。」
「ええ頼みます。
 私としても早く メディクをアップデートさせたいので…。」

 お偉いさんが囲むように配置されている会議室にハルミが途中参加し、一通りの説明を求められた。
 そして説明が終わった所で 重役から帰って来た言葉に私はブチ切れた。
「なに!?アップデート出来無いだと!?」
「ええ…まだ臨床試験すらやっていない治療法をメディクに入れる事は出来ません。」
 正面の小太りの男が言う。
「周りに大量に臨床試験が出来る患者がいるだろう…。」
 ハルミが言う。
「ならまずは、医師が臨床試験を行い 有効性と安全性が確認された段階で組み込みます。」
「アンタらはそれで良いかもしれないが、医師がいない都市はどうする?
 治療が一切出来ず死人が増えるだけだ…。」
 今の時代、医療行為を出来る医者はいるが 医療行為を指示できる医師は少ない。
 今回は 医師のAIは間違った治療法を指示している状態で、医者はそれに従うしかない。
 医者が医師の判断を無視して 自分の判断で勝手に治療したら、罰せられるからだ。
「なら、こちらから各都市に人員を派遣しましょう。
 優先順位を決めて治療を指示すれば…。」
「それでは遅すぎるって言っているんだが…。
 疫病えきびょうでの初動しょどうの遅れは致命的だ。
 広まってからじゃ余計に面倒になるだけだ。」
「とは言ってもルールはルールですから。
 緊急と言って勝手に進めては余計に傷口が広がります。」
「なら、アダム代表…パンデミック宣言を行い、物流を制限して貰いたい。」
 ハルミがアダムをにらむ。
「今回のウイルス騒動はパンデミックでは無く、危険度の少ない風邪が流行しているだけだ。
 パンデミック宣言を行い、物流を止めたら壊死《えし》する企業が出てくる。
 そうなった場合、感染者より経済的自殺者が多くなるだろう。」
 アダムが最もらしく言う。
 確かにそうだ…物流を制限すればそこに携わる企業がダメージを受ける…。
 それによる自殺は、疫病で死ぬ人数より遥《はる》かに多くなる…だが、その都市の政府が補助金を出すなら別だ。
 損失分を政府が保証して、長めの休暇を取って貰えば 各都市に医師を送る為の時間稼ぎが出来るだろう。
「でもデータから言って重症患者は 自然治癒で治すのは無理だろう。
 今だったらまだ間に合う。
 これ以上…時間が掛かったら、ワームへの対応に間に合わなくなる。」
「こちらだって…医療物資を略奪の如《ごと》く持ってかれて備蓄生産が追い付いていないのだ。
 ここは慎重に議論するべきと思いますがね…。」
 別の重役がハルミに言う。
 何だ?この…まるで感染が拡大するまで、時間を稼ぐような言動は?
 コイツらは感染爆発を望んでいる?
 いや…感染爆発で身動きが取れなくなったらせまりくるワームに人員を割けず、地球の人類が絶滅すると理解しているだろうに…。
 何かしらのメリットがあるのか?
 ハルミは 会議室に入ってからのログをエクスマキナの回線を中継してクオリアに送り、利害関係を探らせる。
 こう言った事はクオリアが得意だ。
『状況は理解した。』
 送信完了から1分で情報を確認したクオリアがプライベートチャットに入って来る。
『どう言う事なんだ?
 話を聞く限り、感染を広げたいとしか思えない。』
 ハルミが言う。
『少し違う…10月15日まで、アダム代表にパンデミック宣言させない事が目的だ。
 右から2番目の青年…彼は味方だ。
 彼は 製薬会社の社長で パンデミック宣言を出させたいと考えている。
 パンデミック宣言後に特効薬を作って高値で各都市に売りつけるつもりだからだ。』
『は?薬の価格は法律で決められているだろう』
 EHOで薬の価格は厳密に決められている。
 各都市が 安い薬を高額で販売したとしても、EHOの方が安いなら EHOから買った方が得になる為、どこの都市でも同じ位の価格で安定する。
『パンデミック時は 緊急性が高い為、薬価が 事実上製薬会社の言い値になる。
 自分の所で作ったウイルスなら特効薬も簡単だろうからな…。
 それに 今の時点でも 株の空売りだけで相当な額の儲けを出している。』
『コイツが元凶か…。』
 見た所 好青年のように見えるが ここに座っている以上見た目通りでは無いと言う事か…まさか ここまでとはな…。
『でも、事態を終息させるなら、彼に味方した方が良い。
 10月15日以降だと感染が広がり過ぎていて、手遅れになる。』
『さっきも言ってたな…その10月15日が基準なのは何でだ?』
『『パンデミック債』の払い戻しがその日だからだ。』
 ああそう言う事か…。
『ったく、また下らない事で…。
 分かった利害関係のリストをまとめて送ってくれ…味方を増やしてみる。』
 ハルミが納得して、話を切り上げようとする。
 さっきから ハルミは 無言で少し不自然になっている。
『こちらからも 天尊に話してみる…。
 EHOの出資額が1位が ダントツで天尊カンパニーだからな…。
 多分アダム代表は 出資者に気を利かせているんじゃないのか?
 天尊が出資を止めたらEHOは壊滅だろうからな…。』
『またそっちに繋がるか…。
 天尊が糸を引いていなけりゃあいんだが…。』
『流石に物流を滞らせて、将来の顧客を大量に死なす事は 彼の望む事では無いだろう…。』
『そうやって信用が出来る所が天尊のスゴイ所なんだよな…。』
 時間にして数秒でクオリアとやり取りをかわし、現場のデータをクオリアにリアルタイムで送るよう設定し、仲間を引き入れるように戦略を変更した。
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