⊕ヒトのキョウカイ⊕【未来転生したオレは、星を軽くぶっ壊すチート機械少女と共にこの幻実(せかい)で生きて行く…。】

Nao

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ヒトのキョウカイ6巻(赤十字の精神)

16 (2時間前)

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 10月25日土曜日…作戦日の2日前…。
 エレクトロンの月面都市…『静かの海都市』。
 月の周回軌道に待機させていた無人のスペトラにギリギリまで訓練したパイロットを乗せて行き、予備機を入れた40機のスペトラが周回軌道上にそろう…。
 先頭のスペトラに乗っているのは 指揮官の私…ニールだ。
 航行中のトラブルに対応し、責任を持って降下させるのが私の任務になる。
 静かの海都市に都市長が不在になったが、補佐官ほさかんのバスとコリンズがいるので大丈夫だろう…。
 月と地球の軌道に乗せ、ニール機を先頭に筒が4本とブリッジが1本がX字に繋がっているスペトラが上下左右の5機の編隊を組み、更にその後ろにスペトラ編隊が一定間隔を開けて追ってくる。
 軌道投入にまる1日か…。
 ブリッチの席に座るのは エレクトロン6名…。
 与圧されていると言うのにパイロットスーツにヘルメットを被り、バイザーは マジックミラーになっていて顔が見えなく、製造コードの名前はあるが、人用の名前は無い。
 彼女らは役割を持たずにエレクトロンとして 生まれて来た為、人用の名前を付ける必要が無かった。
 腕は優秀だが、機械っぽさが目立ち娯楽の概念がいねんも まだ取得していない…私より ずっとヒューマノイドしている。

 10月26日日曜日…作戦日まで残り1日前…。
「減速開始」
 月から加速したスペトラが一斉に向きを反転…リボルバー型のシリンダーが回転を始め、性能は悪いがリアクションホイールとして役割を果たし微量の推進剤だけで方向転換が出来る。
 ゆっくりと反転し終わり、全機が逆噴射…。
 機体を減速し、地球の地表との相対速度を7.66 km/sに保つ。
 地表からの高度は400km程だ…ここが安全圏になる。
 全機が軌道に乗り、安全を確認…明日の降下時間を待つ…。

 10月27日、月曜日、作戦当日、午前10時…作戦まで後2時間。
「予定海域に着きました…。」
「うむ…各艦に連絡…作戦開始時刻まで戦闘待機…特に海中!敵の動きがあり次第 報告…。」
『オールホエール了解』
 海中の護衛に回っているディープブルーホエールの隊長が答える。
 空母のドロフィン1を中心に6隻がデパート艦…いや 赤十字艦から離れて行き、ワームの巣…ネストを囲むように配置について行く。
 赤十字艦のシーランドは ここで待機…戦闘海域から50km程 離れるだろう。
 艦の護衛が無くなる事が心配だが、赤十字艦シーランドには レーザー照射機がある為、ある程度の防衛は出来るだろう…。

「落ち着いて下さい…。
 あなたが動揺していると、部下の皆さん達が心配します。」
 ブリッジの後ろの部屋…オペレーションルームに座るレナにコンパチが言う。
「分かってます…作戦が始まれば 切り替えますので…。」
 24人のオペレーター席はまり、担当している部隊を俯瞰ふかん視点で監視するのが私の役割だ。
 フォースネットで 全機体に情報が共有されていると言っても、1兵士がその情報を頭で処理するには時間が掛かるし、戦闘時のストレスで頭がまわらなくなっている可能性も十分にあるので、私が情報を処理して提供する…。
 私が担当しているのは、砦都市の部隊とトヨカズとロウのキョウカイ小隊だ。
 ナオとクオリア、ジガは突入部隊の援護で そちらはエルダーが見ている…私じゃ判断出来ないからだろう。
 ハルミは、手足の生えた戦闘機のGウォーク内で待機している…水中には潜れないが、降下中に一切攻撃が出来ない降下部隊の援護になる。
 ブラックバードⅢは、降下部隊の護衛をする事は難しいのと燃料による稼働時間の問題で ギリギリまで待機…。
 降下部隊の護衛は、甲板で待機しているハルミと…今 軌道上にいる エレクトロン1個小隊で対処する事になる。
 次、水中装備のパワードに乗っているトヨカズと同じく水中装備のベックに乗るロウは、ワームが密集する峡谷きょうこくのポイントAに降りる事になる。
 このポイントには 砦都市の部隊もいるので、こちらも私が面倒を見る事になる。
 そして、カズナは 後部ハッチを外し 剥き出しの状態のクオリアのエアトラS2に乗っていて作戦開始と同時に空中待機だ…。
 このエアトラS2には 後部ハッチ付近に引き上げ用のワイヤーが4本付いていて、脱出して海に上がって来た兵の足を先端のワイヤーの輪に掛けさせる事で、一気に4人を回収する事が出来る。
 それと炭素繊維で出来た救命ボートもボートごと回収する事も出来る…カズナの任務は、脱出した負傷兵を赤十字艦に運ぶ仕事だ。
 準備は万全…やる事はすべてやった…もう後は現場の兵士の活躍に任せるしかない…。
 私はただ情報を送るだけ…。
 私も戦場で戦えたら…身1つで責任も無く 人を殺していたあの方が気楽だった。
 でも今、私はオペレーター…私の情報で兵士の命が左右される…それが責任者…。

 狼は本当の意味では眠らない。
 頭は寝ても身体が常に警戒し、更に狼同士群れて眠る。
 ここも暮らしていた雪の森と変わらない…常に死は身近にある。
 今日殺して食べた動物は、死に…いつかはロウも誰かに食べられる…食べられれば、その動物の血肉となり、フンとなり 今度は竹を育てる…そしてその竹を誰かが食べ、また動物を狩る力に変わる…それが自然の摂理せつり
 逆らった所で流れは変えられないし、ならロウに出来るのは全力で生きる事だけ…。
 今は寝て身体を万全の状態で維持して狩りに望む…。
 そう、いつも通りだ。
 ロウは、そう思い眠りについた。

『くう…』
 作戦までおおよそ2時間…『30分前に起こして』と言ったロウは、ベックのコックピットで暢気のんきに寝ている。
 パワードのコクピットからロウの寝顔を見る…深く眠っているように見えるがロウの感覚器官は 敵に対して常に警戒していて、危険となればすぐに起きて行動を取れる。
 そんなロウにトヨカズは感心する。
 寝れる時に寝れると言うのは 一種の才能だ。
 昨日は寝るに寝れず、やっと眠るも浅い眠りだった…緊張しているせいだろう。
 睡眠薬を飲もうとも考えたが、眠って意識が無くなるのが、とてつもなく怖くなった…。
 仮死状態に近いと言われる睡眠…。
 経験上起きられると分かっているが、それは経験則けいけんそくで、眠ったら起きない可能性もある…。
 平和な環境で生活していたオレは こんな事を今まで考えた事も無かった。
 今までVRで殺して数多の兵士NPCの顔が浮かび…ピースクラフトで殺した決起部隊の事も思い出す。
 NPCはデータの集合体でまた復活する…決起部隊を殺したのも自衛だから問題は無い…。
 そう、問題は無い…分かっては いるんだがな…。
(こりゃ…反動がひどくなるだろうな…。)
 願わくば、作戦終了後に反動が来ますように…。
 オレはそう思い、ロウに習って目を閉じた…意識は常に周りを警戒していて休まらなかったが…。

 事件を解決し、天尊は王城で色々と仕事をしているらしく、経費の銃弾代100UM×50発の5000UMを受け取り、2人は王城を出た…報酬は後でVR上で話し合い 交渉して決めるとの事…。
 ナオとクオリアは事前に調べていた銃器店に向かい、消費した9mm弾を購入する。
 驚く事に1発が10UMで砦学園都市の10分の1の価格だった。
 オレは50発購入し、空のマガジンに手動で弾を入れる。
「いいのか…そんな安物の弾を入れて…。」
 クオリアが言う。
「まぁ…撃てない方が問題だし…。
 それに ガチガチの精度が出る銃だったら弾の精度もシビヤになるだろうが、ウージーなら粗悪そあくな弾でも結構 動くからな…。」
 軍用の銃がジャム率が低いと言われているのは、ちゃんとメンテナンスを行っている事と、軍が厳格げんかくな基準をいた高品質な弾を選定せんていして購入しているからだ。
 ゆえに民間用に出している粗悪な弾を使って軍用の精度の良い銃を動かそうとすると高確率でジャムる。
 対してウージーマシンピストルは 有効射程は200m程だが、そのシンプルな設計は粗悪な弾でもちゃんと受け入れくれて確実に動いてくれる。
 技術レベルが低い現地で弾を調達するなら、この銃が一番だ。
「それが、わざわざ この銃を選んでいる理由か?」
「そ…ガチで殺すには不向きだろうけど…。
 護身用や競技用なら安くてメンテナンス性が良くて拡張性が高いこの銃の方が良いんだ…。」
 オレはそう言う…。
「さて…作戦まで2時間を切った…少し急いでいこう…。」
「ああ…分かってる。」
 オレとクオリアが空間ハッキングを使って走り、出国手続きを秒で終わらせ、オレがファントムを召喚…。
 召喚が完了次第、2人は機械で最適化されたような機敏きびん動作うごきでコックピットに乗り込み、機体を立ち上げる。
 ハッチ閉鎖…システムチェック…オールグリーン。
「よし…行こう…。」
 ファントムがゆっくと飛翔し 500mの安全高度まで上がり、一気に加速する…すぐさま音速を突破…高度を上げ1万mになった所で戦闘海域に進路を取る。
 大体1時間位か…。
 作戦開始まで30から45分位の余裕がある。

「っ…緊急アラート…エルダーからだ。」
 後ろに座るクオリアが言う。
「コンパチさんが?
 予定より早く 戦闘が始まったのか?」
「いや…でも、マズイな…。
 EHOの都市の海岸に大量のDLが上陸するらしい…。
 推定接触時間は 30分…。」
「まさか…テロリスト?
 しかも、こっちの作戦を狙った?」
「EHOに防御力は 皆無に等しい…各都市の援軍も間に合わないだろう…。
 だから、周回軌道にいるDLを全部 降ろす事が決まった。」
「は?
 つまり、作戦投入出来るDLは海上運搬うんぱんしているやつだけか?」
「そうだ…EHOいわく、それで戦力は足りるとの事だ。」
「そりゃ、帰還しない前提だったら足りるだろうが…相打ちだぞ…。」
 これがワームとの最後の戦闘とは限らない…ここで多数のパイロットを失えば次の大規模戦闘でパイロットが揃《そろ》えられなくなる…。
「それは 私も分かっている…。
 今、エレクトンのネットで議論が始まっている…私も参加しているが…。
 とにかくナオはそのまま向かって欲しい。
 作戦時間までには こちらで終らせる…。」
「分かった…任せた。」
「任された。」
 クオリアはそう言い…しばらく黙った。
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