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ヒトのキョウカイ6巻(赤十字の精神)
15 (アフターケアも大切に…。)
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もう生きていたくない。
どうせ いつか人は死ぬんだ…それが早いか遅いかで、結果は変わらない。
そして、オレがどんなに頑張り一生をかけて磨いた技術も、ドラムが500年ほど前にやった事を オレが自覚無く なぞっているだけだ。
更に エクスプロイトウイルスのせいで営業が出来ず、しかも自粛と強制でないにも関わらず、周りが自粛を強制する。
しかも、個人が自発的にやっている事になっているので政府から保障は無く すべて自己責任だ。
結果、デパート艦シーランドは 大量の店がシャッターを閉じ 閉店…。
テナント代が払えず、本国の政府からの保障も無い為 オレの人生は完全に詰んだ。
そして例え 無事でも、店の再開は絶望的だし…そもそもコック一筋のオレは他の稼ぎ方を知らない…。
しかも、艦が今向かっている場所はワームの巣だ…。
投入される戦力の半数は帰って来れないと聞いている…。
この艦は 戦闘区域から いくらか離れるだろうが、危険である事には変わりがない。
どーせそこで死ぬ…例え生き残っても次に餓死が待っている…もう嫌だ…楽になりたい。
オレはそう思い、甲板の柵を飛び越え海に飛び降りた…。
痛い…筋肉痛のように身体が痛い…。
オレは首だけ動かし周りを見る…ここは診療所?
右手の手首には 細長いチューブが刺さっており、それをたどると吊り下げられている点滴の袋へと行きつく。
オレは簡易ベットに寝かされ、四肢はベルトで拘束されている…自殺防止用か?
「麻酔が抜けた見たいだな…。」
スライドドアを開けて白衣を着ている知らない女が入って来て、背中を向けて点滴の袋を取り換えている…背中には 赤い十字架がプリントされている…ワーム戦に備えて増員された軍医だろうか?
軍医がパイプ椅子を出し、オレの横に座る。
「まずは、現世にオカエリナサトかな…この大罪人が…。」
軍医が言う。
罪人?…ああ自殺しようと した事か…。
「死に損なった見たいだな…」
オレは首を上げ四肢を見る…毛布をかけられていて見えないが 手足はあるし 動かせる。
「安心しな、全部生身だよ…義体化させてない。
と言うか気にするなら自殺するなっての…。」
「いくらだ?」
「あ?」
「治療費…店潰されて干からびて、生活出来ないで自殺したオレにいくら払えって言うんだ。」
オレは更に生き地獄を味わう事を確信した。
起きて1番に金の話か…相当、金で追い詰められているんだな…。
細胞活性薬を塗って細胞に無理をさせて傷を塞いで貰った為、成長痛に似た痛みが出ているはず何だが…それより精神の治療も必要みたいだ。
「薬品や機材の使用料、含めて10万UMて所か…。
これは後でシーランド本国に一括で請求する。
今回の報酬もあるからな…。
で、もし通らなかったら、現世に連れ戻して来た私が 責任を持って負担する。
どっちにしろアンタの負担にならないから、安心しな…。」
パイロットスーツの上から赤い十字架の白衣を着ているハルミが言う。
「安心ね…店も金も無いし、身体もボロボロだったのに…何を安心すれば良いんだよ…。」
コックが泣き出す…。
「アンタが自殺未遂を起こした事がキッカケで 営業が再開出来た…。
まだ少ないが店も開いていて、各国の軍人を客に商売を再開し始めている…。」
「店の再開?エクスプロイトウイルスは?」
「発症者は今の所 5名だな…。
全員完治…念のため3日は安静にして貰ってるが、発症は抑えられたよ…。」
「そう…。
アンタは軍医か?」
「あ?昔はな…って言っても550年も前だけど…。
私は 今は数少ない医師だよ…エクスマキナのハルミ・サカタ…知らない?
この業界では結構有名 なんだけど…。」
「すまん…名医って事で良いのか?」
「そう、エクスプロイトウイルスの患者を始めて治したのが私…。
この道550年の大ベテラン…太陽系の医師としては メディクに続いての古株じゃないかな…。
まぁ…アンタの手術自体は 医療用ドラムに任せっきりで、何もやって無いんだけど…。」
私は分かりやすく笑って答える。
「普通なら全身義体にした方が簡単だったんだが…アンタ、コックだろ。
しかも希少な職人…だから 無理して義体化させなかった。」
今の時代、料理の殆どは工場での生産が大半で、調理は工場内で行い、人は介入しない…すべて自動だ。
そして、調理と言えば湯煎や電子レンジでの温めの事を言い、料理をする人は殆どいない。
これは、ソイフードが味覚パウダーで味を作り、食感パウダーで食感を、色や形には 着色料が使われている為、天然物と比べて調理難易度も調理の仕方も遥かに難しいからだ。
その中で手料理を商売にする料理人の数は極端に少なく、最高レベルの料理人は得に貴重になる。
「お気遣いどうも…でも もう引退だ。
オレがいくら頑張った所でドラムに勝てないんだから…。」
調理用のドラムは 人が一生掛けても磨けない程の時間と試行錯誤による経験を持ち、人の職人技もすべて学習している。
しかも 1体が学習すれば、すべての個体が ネットを繋がってコピー出来るのだから、わざわざ師匠に弟子入りして、数年間かけて修行する必要も無い。
なので、どんなに頑張っても人である以上、ドラムの調理技術を越える事は出来ない…だが…。
「確かにドラムに勝つのは無理だろうな…アレの学習時間は人の換算で1万年程度…。
それを人がやるには どう考えても寿命が足りな過ぎる…。
それでも、その歳で これだけの成果が出せるなら 私は十分だと思うよ…。」
私は 身元を照会した時のデータを見て言う…ちなみにこのデータはクオリアに提供して貰った…データの入手方法は…まぁ聞かないでおこう…。
「それでも、オレはドラムに勝ちたい。」
「勝ちたいなら 全身義体になって1万UMのスキルチップ『万能調理』をインストールするだけで ドラムと互角まで上がれる。
でも、アンタは『人が美味しい料理を作る』って言う付加価値を提供するのが目的なんだろう。
なら、完璧は求めなくて良いし 完成された美味しさより、少し雑な食事でも良いんじゃないか?」
「……。」
「そんな顔をするなって…そうだな…砦学園都市に行ってみるのはどうだ?
あそこは、旧時代の価値観を大事にしている都市だから受け入れてくれるだろうし、アンタが来れば 料理の質やバリエーションがもっと増えるだろう…。
確か能力が高ければ 移民が出来たはず…。」
私はARウィンドウを出し、調べて見る…やっぱり まだやっている。
あの都市は 遺伝子の一本化が進んで問題になっているので外国人の血を取り込もうと移民を推奨している。
「砦学園都市か…。
行って見たいな…でも次の最接近まで待たないと…。」
シーランドの船団は 大体2ヵ月周期で周っているので、次は1ヵ月後だ。
「じゃあ…今すぐ行ってみるか?」
「えっ?」
私は いたずらをする子供のように笑みを浮かべた。
「シーランドコントロール…。
こちら、Gウォークバードハルミ機、ドロフィン1からの離陸を要請…Request」
『こちら、シーランドコントロール…Gウォークバード ハルミ機のリクエストを受理…。
離陸を許可…繰り返す、離陸を許可…。』
「ハルミ機、離陸許可、了解…。
よし、行くぞ!!」
いきなりパイロットスーツを着せられ、ヘルメットを被り、乗せられたのは腕と脚がついた戦闘機だ。
見た事もない型だし、そもそも自家用戦闘機なんて聞いたことも無い。
「安心しな…上限を3Gまでに抑えるから潰れる事は まずない。」
Gウォークがゆっくりと垂直離陸し、高度を上げて艦から離れて行く。
「安全高度に到達…加速するぞ…。」
「分かっ…うっ」
機体の腕と足が収納され、戦闘機になり急加速する…目の前の計器を見ると10秒程で音速を突破…更に20秒後には時速3000kmのマッハ3に到達し、加速Gが収まる。
快適とは言えないが、十分に耐えられている。
「な…問題無かっただろう…。」
前にいる私がコックに言う。
「ああ…それで砦学園都市まではどの位で着くんだ?」
「距離は 大体1500km位 だから 30分ちょいか?」
「早いな…。」
「そりゃ船で移動するんなら そう感じるだろうが、エアトラS2でも3時間程度の距離だぞ…結構近所だ。」
砦学園都市が近くになったからだろう…機体が減速し始める…減速は結構ゆっくりだ。
戦闘機の腕と足を出し、更に減速…ほぼ垂直で着陸した。
着陸した場所は大きな倉庫で、この下に砦学園都市があるらしい。
「さっ着いたぞ…。」
戦闘機が ややぎこちなく歩き、倉庫のシャッターの前で駐機姿勢になりコックピットが開く。
ハルミが機体の装甲に足をかけて器用に降り、オレも降りる…途中 病み上がりの足が滑り踏み外すがハルミが支えてくれた。
「あぶねっ」
「助かる…。」
オレは機体を降り、ハルミと一緒に人用の入り口のドアを開けて倉庫に入る。
「あれ?嬢ちゃん…エクスマキナに戻ったん じゃなかったっけ?
また何かようか?」
下に続くエレベーター前で 明らかに暇そうにしている入国審査官が言う。
「お仕事だよ…。
まずは観光で、気に入れば移住したいってさ…。」
「移住ね…ウチは厳しいよ…それなりに技能が無いと移住出来ないからね…。」
「あーそこは大丈夫…コイツは一流のコックだから…。」
「へぇ…食文化の発展に貢献出来そうだな…。」
入国審査官は、腕時計型のデバイスをオレの右腕に付ける。
「それは、観光客の監視と財布をかねているデバイスだ。
外すなよ…取りあえず 観光1週間、移住審査と手続きに1週間でどうだ?」
「それでお願いします。」
オレはデバイスを見る…ARウィンドウには、この都市の通貨10万トニーが入っている。
「あの…既にお金が入っているのですが…。」
前の観光客の口座を流用しているのか?…杜撰だな…。
「それは生活保障金…ヒトの生活を維持する為の金だな…。
だから、ここでは働いた分だけ遊べるんだ。
まぁ ただの観光客なら、ここまで やらないんだがな…。」
入国審査官が言う。
つまり、食いっぱぐれないって事か…良い制度だ…得に今のオレには…。
入国審査官が話ながらスキャナーでオレを検査…。
「何だ…武器の持ち込みは無しか…。
護身用のリボルバーを貸し出せるが如何《どう》する?」
まさか治安が悪いのか?
それこそ観光客の安全のために銃を持たせる程度には…。
でも、リボルバーと言う事は6発で解決出来るレベルか…。
「いいえ、銃は撃った事がありません…何か危険でも?」
「いんや…発砲事件は 年1回位だし、治安は良いよ…。
でも可能性が0じゃ無いから お守りでリボルバーをぶら下げて置くのさ…。
そうすれば 相手は自分が撃たれる可能性を警戒して 撃って来ない…勿論自分が危険だったら撃てるしな…。」
入国審査官が言う。
「分かりました お借りします。」
入国審査官は棚からホルスターに入ったリボルバーを出して、渡し、腰に装着する。
「それじゃあ…後は任せたよ…。」
ハルミが言う。
「あれ?入国しないのか?」
「だって…私はネスト攻略作戦の赤十字艦に所属する衛生兵だよ…戻らないと…。」
「て…今、シーランド艦は1500kmは離れているんじゃないか?」
「そ…戦闘機で 一飛び…。」
「…?戦闘機?」
オレと入国審査官が外に出て、ハルミがGウォークに乗りこむ。
「自家用戦闘機って…マクロスかよ」
「おっ…おっちゃん、そっちに詳しいのか…。
ジガと気が合うかもな…戻ったらジガに伝えておく。」
「多分 ジガは知ってるよ…映画館の常連だしな…。」
「ああ…そっち繋がり…。」
ハルミは笑いながら言う。
オレはアイドリング状態のGウォークに近づく…。
「ありがとう…治してくれただけじゃなくて、連れて来てもらって…。」
「だから、手術したのはドラムだって…。
私は ちゃんとアフターケアをしただけだよ…動かすよ…。」
ハルミはそう言い、ハッチを閉じる。
オレが離れるのを待ち、離れると少し歩き…しばらくして垂直離陸…。
こちらを向いて軽く手を振り、見上げる程高くなり 小さくなった所で、一瞬で音速を突破し、爆音と衝撃波を放ってシーランド艦に戻って行った。
そうとう手加減されていた見たいだな…。
「じゃあ…少し遅れたが、砦学園都市にようこそ…歓迎するよ」
オレは 下から来た迎えの職員と共に下の役所に向かった。
どうせ いつか人は死ぬんだ…それが早いか遅いかで、結果は変わらない。
そして、オレがどんなに頑張り一生をかけて磨いた技術も、ドラムが500年ほど前にやった事を オレが自覚無く なぞっているだけだ。
更に エクスプロイトウイルスのせいで営業が出来ず、しかも自粛と強制でないにも関わらず、周りが自粛を強制する。
しかも、個人が自発的にやっている事になっているので政府から保障は無く すべて自己責任だ。
結果、デパート艦シーランドは 大量の店がシャッターを閉じ 閉店…。
テナント代が払えず、本国の政府からの保障も無い為 オレの人生は完全に詰んだ。
そして例え 無事でも、店の再開は絶望的だし…そもそもコック一筋のオレは他の稼ぎ方を知らない…。
しかも、艦が今向かっている場所はワームの巣だ…。
投入される戦力の半数は帰って来れないと聞いている…。
この艦は 戦闘区域から いくらか離れるだろうが、危険である事には変わりがない。
どーせそこで死ぬ…例え生き残っても次に餓死が待っている…もう嫌だ…楽になりたい。
オレはそう思い、甲板の柵を飛び越え海に飛び降りた…。
痛い…筋肉痛のように身体が痛い…。
オレは首だけ動かし周りを見る…ここは診療所?
右手の手首には 細長いチューブが刺さっており、それをたどると吊り下げられている点滴の袋へと行きつく。
オレは簡易ベットに寝かされ、四肢はベルトで拘束されている…自殺防止用か?
「麻酔が抜けた見たいだな…。」
スライドドアを開けて白衣を着ている知らない女が入って来て、背中を向けて点滴の袋を取り換えている…背中には 赤い十字架がプリントされている…ワーム戦に備えて増員された軍医だろうか?
軍医がパイプ椅子を出し、オレの横に座る。
「まずは、現世にオカエリナサトかな…この大罪人が…。」
軍医が言う。
罪人?…ああ自殺しようと した事か…。
「死に損なった見たいだな…」
オレは首を上げ四肢を見る…毛布をかけられていて見えないが 手足はあるし 動かせる。
「安心しな、全部生身だよ…義体化させてない。
と言うか気にするなら自殺するなっての…。」
「いくらだ?」
「あ?」
「治療費…店潰されて干からびて、生活出来ないで自殺したオレにいくら払えって言うんだ。」
オレは更に生き地獄を味わう事を確信した。
起きて1番に金の話か…相当、金で追い詰められているんだな…。
細胞活性薬を塗って細胞に無理をさせて傷を塞いで貰った為、成長痛に似た痛みが出ているはず何だが…それより精神の治療も必要みたいだ。
「薬品や機材の使用料、含めて10万UMて所か…。
これは後でシーランド本国に一括で請求する。
今回の報酬もあるからな…。
で、もし通らなかったら、現世に連れ戻して来た私が 責任を持って負担する。
どっちにしろアンタの負担にならないから、安心しな…。」
パイロットスーツの上から赤い十字架の白衣を着ているハルミが言う。
「安心ね…店も金も無いし、身体もボロボロだったのに…何を安心すれば良いんだよ…。」
コックが泣き出す…。
「アンタが自殺未遂を起こした事がキッカケで 営業が再開出来た…。
まだ少ないが店も開いていて、各国の軍人を客に商売を再開し始めている…。」
「店の再開?エクスプロイトウイルスは?」
「発症者は今の所 5名だな…。
全員完治…念のため3日は安静にして貰ってるが、発症は抑えられたよ…。」
「そう…。
アンタは軍医か?」
「あ?昔はな…って言っても550年も前だけど…。
私は 今は数少ない医師だよ…エクスマキナのハルミ・サカタ…知らない?
この業界では結構有名 なんだけど…。」
「すまん…名医って事で良いのか?」
「そう、エクスプロイトウイルスの患者を始めて治したのが私…。
この道550年の大ベテラン…太陽系の医師としては メディクに続いての古株じゃないかな…。
まぁ…アンタの手術自体は 医療用ドラムに任せっきりで、何もやって無いんだけど…。」
私は分かりやすく笑って答える。
「普通なら全身義体にした方が簡単だったんだが…アンタ、コックだろ。
しかも希少な職人…だから 無理して義体化させなかった。」
今の時代、料理の殆どは工場での生産が大半で、調理は工場内で行い、人は介入しない…すべて自動だ。
そして、調理と言えば湯煎や電子レンジでの温めの事を言い、料理をする人は殆どいない。
これは、ソイフードが味覚パウダーで味を作り、食感パウダーで食感を、色や形には 着色料が使われている為、天然物と比べて調理難易度も調理の仕方も遥かに難しいからだ。
その中で手料理を商売にする料理人の数は極端に少なく、最高レベルの料理人は得に貴重になる。
「お気遣いどうも…でも もう引退だ。
オレがいくら頑張った所でドラムに勝てないんだから…。」
調理用のドラムは 人が一生掛けても磨けない程の時間と試行錯誤による経験を持ち、人の職人技もすべて学習している。
しかも 1体が学習すれば、すべての個体が ネットを繋がってコピー出来るのだから、わざわざ師匠に弟子入りして、数年間かけて修行する必要も無い。
なので、どんなに頑張っても人である以上、ドラムの調理技術を越える事は出来ない…だが…。
「確かにドラムに勝つのは無理だろうな…アレの学習時間は人の換算で1万年程度…。
それを人がやるには どう考えても寿命が足りな過ぎる…。
それでも、その歳で これだけの成果が出せるなら 私は十分だと思うよ…。」
私は 身元を照会した時のデータを見て言う…ちなみにこのデータはクオリアに提供して貰った…データの入手方法は…まぁ聞かないでおこう…。
「それでも、オレはドラムに勝ちたい。」
「勝ちたいなら 全身義体になって1万UMのスキルチップ『万能調理』をインストールするだけで ドラムと互角まで上がれる。
でも、アンタは『人が美味しい料理を作る』って言う付加価値を提供するのが目的なんだろう。
なら、完璧は求めなくて良いし 完成された美味しさより、少し雑な食事でも良いんじゃないか?」
「……。」
「そんな顔をするなって…そうだな…砦学園都市に行ってみるのはどうだ?
あそこは、旧時代の価値観を大事にしている都市だから受け入れてくれるだろうし、アンタが来れば 料理の質やバリエーションがもっと増えるだろう…。
確か能力が高ければ 移民が出来たはず…。」
私はARウィンドウを出し、調べて見る…やっぱり まだやっている。
あの都市は 遺伝子の一本化が進んで問題になっているので外国人の血を取り込もうと移民を推奨している。
「砦学園都市か…。
行って見たいな…でも次の最接近まで待たないと…。」
シーランドの船団は 大体2ヵ月周期で周っているので、次は1ヵ月後だ。
「じゃあ…今すぐ行ってみるか?」
「えっ?」
私は いたずらをする子供のように笑みを浮かべた。
「シーランドコントロール…。
こちら、Gウォークバードハルミ機、ドロフィン1からの離陸を要請…Request」
『こちら、シーランドコントロール…Gウォークバード ハルミ機のリクエストを受理…。
離陸を許可…繰り返す、離陸を許可…。』
「ハルミ機、離陸許可、了解…。
よし、行くぞ!!」
いきなりパイロットスーツを着せられ、ヘルメットを被り、乗せられたのは腕と脚がついた戦闘機だ。
見た事もない型だし、そもそも自家用戦闘機なんて聞いたことも無い。
「安心しな…上限を3Gまでに抑えるから潰れる事は まずない。」
Gウォークがゆっくりと垂直離陸し、高度を上げて艦から離れて行く。
「安全高度に到達…加速するぞ…。」
「分かっ…うっ」
機体の腕と足が収納され、戦闘機になり急加速する…目の前の計器を見ると10秒程で音速を突破…更に20秒後には時速3000kmのマッハ3に到達し、加速Gが収まる。
快適とは言えないが、十分に耐えられている。
「な…問題無かっただろう…。」
前にいる私がコックに言う。
「ああ…それで砦学園都市まではどの位で着くんだ?」
「距離は 大体1500km位 だから 30分ちょいか?」
「早いな…。」
「そりゃ船で移動するんなら そう感じるだろうが、エアトラS2でも3時間程度の距離だぞ…結構近所だ。」
砦学園都市が近くになったからだろう…機体が減速し始める…減速は結構ゆっくりだ。
戦闘機の腕と足を出し、更に減速…ほぼ垂直で着陸した。
着陸した場所は大きな倉庫で、この下に砦学園都市があるらしい。
「さっ着いたぞ…。」
戦闘機が ややぎこちなく歩き、倉庫のシャッターの前で駐機姿勢になりコックピットが開く。
ハルミが機体の装甲に足をかけて器用に降り、オレも降りる…途中 病み上がりの足が滑り踏み外すがハルミが支えてくれた。
「あぶねっ」
「助かる…。」
オレは機体を降り、ハルミと一緒に人用の入り口のドアを開けて倉庫に入る。
「あれ?嬢ちゃん…エクスマキナに戻ったん じゃなかったっけ?
また何かようか?」
下に続くエレベーター前で 明らかに暇そうにしている入国審査官が言う。
「お仕事だよ…。
まずは観光で、気に入れば移住したいってさ…。」
「移住ね…ウチは厳しいよ…それなりに技能が無いと移住出来ないからね…。」
「あーそこは大丈夫…コイツは一流のコックだから…。」
「へぇ…食文化の発展に貢献出来そうだな…。」
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「それは、観光客の監視と財布をかねているデバイスだ。
外すなよ…取りあえず 観光1週間、移住審査と手続きに1週間でどうだ?」
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オレはデバイスを見る…ARウィンドウには、この都市の通貨10万トニーが入っている。
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だから、ここでは働いた分だけ遊べるんだ。
まぁ ただの観光客なら、ここまで やらないんだがな…。」
入国審査官が言う。
つまり、食いっぱぐれないって事か…良い制度だ…得に今のオレには…。
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護身用のリボルバーを貸し出せるが如何《どう》する?」
まさか治安が悪いのか?
それこそ観光客の安全のために銃を持たせる程度には…。
でも、リボルバーと言う事は6発で解決出来るレベルか…。
「いいえ、銃は撃った事がありません…何か危険でも?」
「いんや…発砲事件は 年1回位だし、治安は良いよ…。
でも可能性が0じゃ無いから お守りでリボルバーをぶら下げて置くのさ…。
そうすれば 相手は自分が撃たれる可能性を警戒して 撃って来ない…勿論自分が危険だったら撃てるしな…。」
入国審査官が言う。
「分かりました お借りします。」
入国審査官は棚からホルスターに入ったリボルバーを出して、渡し、腰に装着する。
「それじゃあ…後は任せたよ…。」
ハルミが言う。
「あれ?入国しないのか?」
「だって…私はネスト攻略作戦の赤十字艦に所属する衛生兵だよ…戻らないと…。」
「て…今、シーランド艦は1500kmは離れているんじゃないか?」
「そ…戦闘機で 一飛び…。」
「…?戦闘機?」
オレと入国審査官が外に出て、ハルミがGウォークに乗りこむ。
「自家用戦闘機って…マクロスかよ」
「おっ…おっちゃん、そっちに詳しいのか…。
ジガと気が合うかもな…戻ったらジガに伝えておく。」
「多分 ジガは知ってるよ…映画館の常連だしな…。」
「ああ…そっち繋がり…。」
ハルミは笑いながら言う。
オレはアイドリング状態のGウォークに近づく…。
「ありがとう…治してくれただけじゃなくて、連れて来てもらって…。」
「だから、手術したのはドラムだって…。
私は ちゃんとアフターケアをしただけだよ…動かすよ…。」
ハルミはそう言い、ハッチを閉じる。
オレが離れるのを待ち、離れると少し歩き…しばらくして垂直離陸…。
こちらを向いて軽く手を振り、見上げる程高くなり 小さくなった所で、一瞬で音速を突破し、爆音と衝撃波を放ってシーランド艦に戻って行った。
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