公爵様のランジェリードール―衣装室は立ち入り厳禁!―

佐倉 紫

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第四章 メイド、手を出される。

011 ☆

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「ふっ……」

 おまけに薄く開いた唇のあいだから舌まで入ってくるし!

(ちょっと待ってちょっと待って普通キスって舌を入れるものなわけ!? か、からんでくるぅううおおお~……!!)

 縮こまっていた舌を探り当てられ、くるくるともてあそばれて、なんだかもう頭の中が真っ白になってきた。だんだん意識も薄らいでいって……

「……ジゼル、ジゼル、キスのあいだは鼻で息をして」
「……ふへ……、げほっ」

 どうやらいつの間にか酸欠状態におちいっていたらしく、軽く揺すぶられたジゼルは小さく咳き込んだ。

「やっぱり僕はキスが下手なのかなぁ? 最初にしたときも君は倒れていたし……」
「……い、いえ……すみません、わたしが、慣れていないものでして……」

 しゅんと肩を落とすロイドが気の毒で、ジゼルは慌ててなぐさめにかかる。まさか舌が入ってくるとは思わなかったので、驚きのあまり息を止めていたようだ。

「まぁ慣れていても困るけれど。――いい、ジゼル? 恋人同士は舌を擦り付け合うキスをするものなんだよ」
「す、す、擦り付け……っ」

 生々しすぎる言葉にまた意識がふーっとなりそうになる。そんなジゼルの髪を撫でながら、ロイドはくすりと笑った。

「大丈夫、ゆっくりやっていこう。僕が全部教えてあげるから心配しないで」

 そんな至近距離で綺麗に微笑まれましても……!
 無理という前に再び唇が重なって、ジゼルはたまらず目を閉じる。鼻で息、鼻で息……っ、と思うが、いざロイドに舌を絡ませられ、舌の裏側や口蓋こうがいを舐め上げられると、もはや呼吸を気にしている場合ではなくなった。

「ふぁ……っ、あ、あふっ……」

 自分でも赤面したくなるほど甘ったるい声が漏れて、ジゼルはかぁぁあっと火が出そうなほど真っ赤になる。
 そっと薄目を開ければこちらをじっと見つめるロイドとバッチリ目が合って、心臓が止まりそうになってしまった。

「そう、そのまま……力を抜いていて……」
「……ふ……」

 ちゅっと音を立てて下唇を食まれ、再び舌を入れられる。歯列の裏を舌先でなぞられると、なぜだか背筋がゾクゾクした。体中から泡のように力が抜けていく。
 そのうち唇の隙間からぴちゃぴちゃと水音まで立つようになって、気づけばジゼルはぐったりとロイドの胸に身体を預けていた。

「ロイド、さま……」
「……やっぱり最初は寝台じゃなくてよかったよ。君のそんな顔を見たら、理性なんてあっという間にどこかへ行ってしまう」

 そんな顔ってどんな顔……と思う間もなく再び口づけられて、思考はあっという間に霧散むさんする。ジゼルもおずおずと舌を出すと、身体に回るロイドの腕にかすかに力がこもった気がした。

「ジゼル――」

 ロイドが切ない声で囁く。大きな手が太腿ふとももから脇腹を伝って、乳房に置かれるのにジゼルは気づいた。だが、なんだか体中がふわふわしてしまって、ろくにねのけることもできない。
 だが羞恥心しゅうちしんは捨てきれず、無意識のうちに肩がぴくっと跳ねた。

「ろ、ロイドさま、手が……」

 指摘されて、ロイドは手を離すどころか、ジゼルのワンピースの背中ボタンを開けて、布地の下に手を滑らせてくる。

「あっ……」

 弾みでワンピースの肩が落ちて、袖に引っかかった状態になった。簡易コルセットが胸の下あたりまであらわになって、ジゼルはもう声も出せない。
 おまけにコルセット越しに胸の膨らみを包まれて、ひゅっと息を呑んでしまった。
 前止めのコルセットは紐さえほどいてしまえば、あっという間に緩んでずれ落ちる。
 思わせぶりに胸を撫でられ、コルセットと肌の隙間に指を入れられると、そのときを意識して心臓がバクバクと暴走し始めた。

「――っ……!」

 紐がほどかれることはなかったが、隙間に入れられていた指が乳首をかすめてきて、思わずびくんっと身体を跳ね上げてしまう。
 同時に下腹のほうがなぜだかずくんと疼いて、初めての感覚に大いに戸惑ってしまった。

「う、ふ……っ」
「怖い?」

 ジゼルはこくこくと頷く。
 肯定すればやめてもらえる……? とふと考えたが、甘かった。

「でも僕は見たいな。君の胸。下着姿は幾度いくどとなく見てきたけれど……肝心の部分は布が邪魔して見えなかったから」

 見えなくするために下着とはあるものでは? と根本的な問いかけをものすごくしたい。
 だがジゼルが答えるより先に、ロイドはコルセットの紐を一気にほどいた。

「あっ……」

 思った通りコルセットはすぐにずれて、シュミーズだけになってしまう。慌てて隠そうとするが、ロイドの手がすぐさまシュミーズの肩を降ろして、両胸がふるりと顔を出した。

「っ~~……!」

(恥ずかしすぎる――ッ!!)

 セクシーな下着を着るとき以上の羞恥などないと思っていたが、あった。ワンピースも下着も上半身だけ引き下ろされて中途半端に引っかかっている格好というのが、情けないような、より卑猥ひわいさを演出しているような……という感じがしてきて、めまいがする。

「ここ、綺麗な桃色だったんだね。すごく可愛い」
「ひゃん!」

 おまけに露わになった乳首を乳輪ごと親指で撫でられて、ジゼルは妙な悲鳴を上げた。

「可愛いな、ジゼル……」
「……あ、あ、ちょっと、ロイド様……!」

 ロイドの身体がぐっとのしかかってきて、あわあわしているうちに、長椅子の座面に背を押しつけられる。まさに押し倒されているという状況になって、ジゼルは(ひ――っ!)と悲鳴を上げた。

(寝台じゃなくても結局押し倒しているじゃないのおおおお!)

「ごめんね。我慢ができなくなって」

 ジゼルの声にならない抗議を正しく理解しながらも、ロイドは悪びれなく微笑んでくる。
 絶対に確信犯だ。わかってやっている! ジゼルはくぅっと唇を噛みしめた。
 だが文句を言うことはできなかった。ロイドが両手で胸の膨らみを包んで、左右それぞれゆったり揉み込んでくる。手のひらの乾いた感触と思いがけない温かさに包まれ、体温が一気に上がった気がした。

「ひ、あ……っ、そ、そんな、揉まないで……っ」
「そうは言っても柔らかいから仕方がない。ここの飾りも美味しそうだし」
「あんっ」

 かすかに膨らんでいた乳首を指先で軽く弾かれ、そこから生じた甘くもくすぐったい疼きにジゼルはびくんっと跳ね上がる。
 口からも高い声が漏れて恥ずかしくなるが、ロイドが胸元に顔を伏せてきたので、それどころではなくなった。

「ろ、ロイド様、なにを……ひゃあん!」

 いきなり舌を伸ばしたロイドが、乳首を下かられろっと舐め上げてきた。指とは違う刺激に大きく目を見開いてしまう。

「あ、や、やだ……」
「ふふ、もう尖ってきたよ。敏感なんだね、ジゼル」
「なにが……」

 意味がわからずふるふると首を振るジゼルだが、ロイドは構わず左の乳首を乳輪ごと口に含んでしまう。もう一方の乳首は指の股に挟んで、膨らみごとゆったり揉み込んできた。

「ふぁ……っ、あ、あ、いや、ロイドさま……っ」
「ん? 痛い?」
「痛くはない、ですけど……っ」

 舌や指で刺激されるたび、なんだかうずうずと疼いて妙な気分になる。くすぐったくてやめてほしいのに、身体の奥が熱くなって……

「痛くないなら、ちょっと我慢して感じていてごらん? これがそのうちすごくよくなってくる。今は初めてで、慣れていないから妙に感じるだけだよ」

 そういうものなの……? 経験がないジゼルにはわからない。
 でも、このままされたら、本当におかしくなっちゃいそうだし――
 激しい羞恥に駆られながらも、必死に思考を働かせていたときだ。


 ――コンコンコン、というノックの音が扉から響いて、二人はハッと動きを止めた。


「旦那様、イルマです。少々お伺いしたいことがありまして」

(家政婦長だ……!)

 なじみある声にジゼルは思わず息を呑んで固まってしまう。
 しかしロイドはすぐに身体を起こして、いつもと変わらぬ穏やかな声音で「ああ、今そっちに出て行くよ」と答えた。

「ちょっといいところだから待っていてくれ。――残念、思わぬ邪魔が入った。ここが立ち入り禁止部屋じゃなかったら危なかったかもね」

 ――確かに、扉の向こうに広がるだだっ広い作業部屋だったら、ロイドが扉から離れたところで作業している可能性を考慮こうりょして、家政婦長は扉を開いて入ってきていたかもしれない。

「名残惜しいけれど、今日はここまでにしておこう。家政婦長の相手をしてくるから、衣服を整えているといい」

 上手く声を出せる気がしないジゼルは首を上下に振ってこくこくと頷く。
 真っ赤になったままの彼女にちょっと笑って、ロイドはジゼルの鼻先にそっと口づけてきた。

「もっと深くまでふれたかったな。期待していたおかげで、僕のあそこはもうこんなふうになっていたよ」

 あそこ、と言いながら下半身をぎゅっと押しつけられて、ジゼルは危うく悲鳴を上げそうになる。
 性的に興奮したとき、男性の股間のものがどうなるかは一応知識として知っている。――けれど。

(こんなに硬く自己主張してくるものなの……!? ぬ、布越しだってわかるくらいに、すごい存在感なんだけど!?)

 下腹のあたりに押しつけられたそれは、お互いのワンピースと脚衣越しでもはっきりわかるほど、なんだか硬く邪魔そうに膨らんでいた。
 言葉も出ないジゼルにくすくす笑って、ロイドは立ち上がる。

「次はもう少し先まで進もう。新たなランジェリー作りのためにも、愛しい思いを深め合うためにも、僕らはもっとふれあっていかないとね」

 要するに次はこんなものじゃ済まない、なんなら処女もいただくから、というような宣言をされて――
 ジゼルはいよいよ煙でもくのかというほど真っ赤になって、石のように固まってしまった。
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