疑われたロイヤルウェディング

佐倉 紫

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1巻

1-3

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 だがローリエがイザベラの息子のことをののしっていたことを思い出し、もしかして、と口を開く。

「レオン様も、その、今のオーランド様と同じように、ご政務にはあまり興味を持たれない方なのかしら」
「ええ、まぁ……。オーランド様と違って、レオン様は幼い頃からいろいろと問題をお持ちの方でして」

 相手が王子であるだけに控えめに答えるサリアだが、アンリエッタにはそれで充分だった。

(要するに、どちらの王子様も王位を継承するには問題があるということね。そして本人たちを差し置いて、母親同士が王位争いに熱を上げている、と)
「大変なのね……」

 つい他人事のように呟いてしまうが、「まったくです」というあきれた声が聞こえて、アンリエッタは驚いて顔を上げた。

「オーランド殿下もお妃様をめとったのですから、早く落ち着いてくださるといいのですが」

 ため息とともに吐き出したサリアは、アンリエッタがじっと見つめていることに気づいて、ハッとした様子で口をつぐんだ。

「も、申し訳ございません。つい口が滑って……」
「あら、そんなことは気にしないで。むしろそうやってなんでも話してもらえたほうが嬉しいわ。わたしたち年も近いし、仲良くしていきましょうよ」
「ですが……」

 アンリエッタはにっこりと微笑ほほえんだ。

「わたしが生まれたフィノーは小さな国ということもあって、この国ほど格式高い風潮はないの。侍女にまざって一緒に噂話を楽しむことなんて日常茶飯事だったわ。あなたともぜひそういう関係になりたいのよ。だから、ね?」

 他国の風習の違いに驚いたのか、サリアは一瞬面食らったような顔をしたが、ほどなく相好を崩して頷いた。

「王子妃様のお望みとあらば、そうさせていただきます。……実はわたしも王宮に上がったばかりで、あんまり堅苦しいのは肩がって」
「ふふ、お互い早く慣れるように頑張りましょうね」

 気軽な言葉をかけ合うと、ふたりとも肩の力が抜けて、自然と柔らかな笑みがこぼれる。
 だが再びお喋りに興じる前に、厳しい顔つきの女官が部屋を訪れ、アンリエッタへ王妃の居室にくるようにという伝言を運んできた。
 くつろぎかけていたアンリエッタは慌てて立ち上がり、ただちにローリエのもとへ足を運んだ。


 オーランドは城にいなかった旨を伝えると、王妃は大仰にため息をつき、アンリエッタをいらいらとしたまなざしでにらみつけた。

「まったく。オーランドも妻を持てば少しは変わると思ったのに、とんだ期待はずれだこと。いいこと? わたくしの息子が悪いのではありません。妃であるおまえが、あの子の心を掴めないのが悪いのです。そのことをきちんとわかっていて?」

 あごを上げた状態で傲然ごうぜんと言い放たれ、アンリエッタは素直にこうべを垂れた。

「わたくしの不徳のいたすところで、心苦しく思っております……」
「フン。まぁいいでしょう。――いいこと? 明日こそは必ずあの子を朝議の場に引っ張ってきなさい。さもなければおまえの国への麦の供給は止まると思いなさい。我が国からの麦の供給が途絶えたら、フィノーの民はきっと無事では済まないでしょうね?」

 アンリエッタは青くなってぐっと奥歯を噛みしめた。
 彼女の祖国であるフィノー王国は、国土の半分を山岳地帯が占めるため、自然環境が厳しく、麦はほとんど育たないのだ。そのため、フィノーは古くから麦は他国のものを頼りにしてきた。
 その筆頭となるのが南に位置する隣国、ここディーシアル王国なのである。ローリエの言葉は実質上、フィノーの民を質に取った脅迫のようなものだった。

(こちらに嫁ぐことになったとき、国同士の友好のために王妃様がわたしを望んでくださったと、お父様からは聞かされたけれど……)

 今のローリエを見ると、本当にそうだったのだろうか、という疑問が生じる。
 初恋のひとの妃になれたことは喜ばしいことだが、もしかしたら自分の意に反して花嫁を押しつけられたオーランドはおもしろくなかったのかもしれない。

(あ……だから、昨夜はあんなふうにお怒りになったのかしら)

 頑なに妃を拒絶するのは王妃様に対する反抗によるものだったのだろうか。だが、そうだとしてもあの仕打ちはやはりひどいように思う。
 ついうつむいて考え込んでしまったアンリエッタは、「聞いているの!?」と上擦うわずった声で叫ばれ、弾かれたように顔を上げた。

「す、すみませ……きゃっ!」

 肩に軽い衝撃を受け、アンリエッタはうしろへよろける。見ればドレスの肩口が白く汚れ、投げつけられたとおぼしきしろの瓶が足下に転がっていた。

「わたくしを前にして考え事など、いい度胸だこと! 明日と言わず、すぐにでもおまえの国への麦を止めてやろうかしら!?」
「そ、そんな、おやめくださいっ」
「ならば二度とわたくしをないがしろにするようなことは許しません! 誰であろうと、このわたくしを虚仮こけにするようなことは絶対に許さない。絶対に……!」

 ぎらぎらと燃える紫色の瞳を前に、ローリエの本気を感じ取って、アンリエッタはごくりと唾を呑み込む。民を質に取るなど王妃の考えとは思えなかったが、それを指摘するほどアンリエッタも恐れ知らずではない。

(オーランド様を朝議へ連れて行かなければ、本当にフィノーが大変なことになるかもしれない)

 とはいえ、オーランドの様子からそれが容易なことでないのははっきりしている。頭を痛めながらも、アンリエッタは王妃の部屋を離れた。
 思い悩んでいるうちに夜は更けて、食事と入浴を勧められる。
 就寝の支度を終えたアンリエッタは、オーランドの部屋を訪れる決意を固めた。


「アンリエッタ様、大丈夫でございますか?」

 オーランドの部屋に続く扉の前に立ち、胸元を押さえて深呼吸したアンリエッタに、サリアが心配そうなまなざしを向けてきた。
 アンリエッタはぎこちなく微笑ほほえみ、「大丈夫」と頷く。だが実際は、緊張と恐怖で足がすくみそうになっていた。

(昨日あんなふうに扱われたことを思うと、やっぱり怖い……)

 今のアンリエッタは、夜着にガウンを重ね、金髪をゆるい三つ編みにまとめている。こころもとない装いはいかにも無防備だが、こんな遅くにドレスで訪ねるのもどうかと思い、結局このままやってきてしまった。

(また、あんなふうにされてしまったら)

 恐ろしい想像に身体が震える。それでもローリエの求めに応えるためには、今夜中にオーランドに会う必要があった。なにより……ここでおびえて尻込みしていては、ますます彼に会いづらくなるという思いもあったのだ。

(そんなことになれば、ますますあの方の心は離れて行ってしまう気がする。……そんなのはもっといや)

 伊達に三年も相手を思い続けてきたわけではない。ようやく結ばれたこの幸運を逃しては、これまでの恋心を裏切ることにもなりかねないのだ。

(親しくなりたいと口にするなと言われただけで、嫌いだと言われたわけではないもの。だから大丈夫。まだ完全に拒絶されたわけではないわ)

 物怖じしそうになる心を励まして、アンリエッタは「よし」と気合いを入れる。そうしてみずから扉を音高くノックした。
 すぐに取り次ぎの従僕が出てきて、アンリエッタの姿を見ると驚いたように目をみはる。

「突然ごめんなさい。オーランド様にお会いしたいのだけど、今はお部屋にいらっしゃる?」
「はい、王子妃様。どうぞお入りください」

 うやうやしく頭を下げて部屋へ迎え入れられ、アンリエッタはひとまずほっと息をつく。昨日のオーランドの態度から、もしかしたら「妃を部屋に入れるな」と命じられているかもと少し不安に思っていたのだ。
 居間まではすぐ案内されたが、そこで待つように言われ、アンリエッタは手持ちぶさたに室内を見回す。深緑の落ち着いた色合いで統一された室内は、どことなくオーランドらしいと思わせる雰囲気が漂っていて、自然と口元がほころんだ。
 しかし奥の扉から戻ってきた従僕が、申し訳なさそうな顔で告げた言葉に顔色を失う。

「殿下は王子妃様とはお会いしたくないと仰せです。申し訳ありませんが、今日のところはお引き取りくださいませ」
「そんな……」

 深々と頭を下げる従僕のつむじを見つめ、アンリエッタは悲しくなる。
 だがここで引き下がれない事情もあり、一度唇を噛みしめたアンリエッタは、正面の扉に視線を据えた。

「あちらにオーランド様がいらっしゃるのね?」
「え? ええ、はい。……王子妃様っ?」
「アンリエッタ様!」

 従僕とサリアがそろってぎょっとした声を出す。
 アンリエッタは構わずずんずんと扉に向かって進み、真鍮しんちゅう製の取っ手に手をかけた。
 そうして扉を開けば、居間に負けず劣らず広々とした室内が目に入る。
 その中央には天蓋てんがい付きの寝台があり、オーランドはそこに長い両足を投げ出すようにしてくつろいでいた。

「……なんだ?」

 枕にもたれるようにしていた彼は、面倒くさそうな面持ちでアンリエッタを見つめると、手元の本をパタンと閉じる。
 アンリエッタは思いきって、寝室に身を滑り込ませ扉を閉めた。従僕が慌てた様子で扉を開けようとするのを背後に感じ、内鍵をかけて誰も入ってこられないようにする。
 焦ったように扉が叩かれるのを聞きながら、アンリエッタはゆっくり寝台を振り返った。

「突然訪ねてきてしまって、申し訳ありません」

 うなじが見えるほどに頭を下げると、アンリエッタの行動に驚いた顔をしていたオーランドは、すぐに不機嫌な面持ちになった。

「殊勝に謝るくらいならすぐに出て行け。会いたくないと伝えたはずだ」

 鞭打つような声にひるみつつも、アンリエッタは勇気を振り絞って寝台に近づいた。

「殿下にお話がございます」
「おれはおまえと話すことなどなにもない」

 とりつく島もない答えだ。ひるんでは駄目とアンリエッタは気持ちを強く持とうとする。

「あの、殿下はここ一年ほど、朝議などにお顔を出していないとお聞きしました」
「だから?」
「……朝議は、この国の方々にとって特別なものだと聞いています。殿下も、きちんとお出になったほうがいいのではないかと」
「異国の人間のくせに、我が国の慣習のことでおれに説教をする気か?」

 アンリエッタは夜着の裾をぎゅっと握って、震え出しそうになるのを懸命にこらえた。

「……確かに、わたしはこの国の者ではありません。けれどこの国に嫁いで、あなたの妃となりました。ですからわたしはもう、ディーシアルの人間だと思っております」

 アンリエッタの真摯な言葉に、なにか感じるものがあったのだろうか。オーランドはふと真顔になると、アンリエッタの緑の瞳を探るように見つめてくる。
 突然の視線に思わず身体を硬くすると、オーランドはすぐに眉を寄せて、ふいっと視線をらしてしまった。

「それで? 結局なにが言いたいんだ」
「その……明日の朝議は、ぜひ殿下とご一緒したいと思って。お願いに参りました」

 ただ朝議に出てほしいというより、一緒に行きたいと言ったほうがまだ受け入れてもらえるのではないかと思ったのだが、オーランドは鼻で笑うだけだ。
 しかし、突然なにかに気づいたように、オーランドが鋭くこちらを見つめてくる。
 その視線に思わず目を逸らすと、オーランドは手元の本を投げ出して寝台から下りた。
 そのまま大股で近寄ってこられて、アンリエッタは反射的に後ずさる。

「で、殿下?」
「なにを隠している?」

 頭ひとつ分も背の高い彼からじっと見下ろされて、アンリエッタはたじろいだ。

「か、隠してなど……」
「とぼけるな。いきなり朝議に誘ってくるなどおかしいだろう。――誰かに頼まれたか?」

 ぎくり、と身体が強張こわばるのを止めることができない。それを見てオーランドはますます眉間の皺を深めた。

「どうなんだ」
「そ、の……王妃様に、お願いされて」

 剣呑な雰囲気に耐えられず、アンリエッタは正直に答えてしまう。
 だがこれが間違いだったようで、オーランドの紫の瞳にぎらりと凶悪な光が差した。
 それに息を呑みながら、アンリエッタは慌てて言葉を重ねる。

「で、でも朝議に出ていただきたい気持ちはわたしも同じです。国政の場にはきちんと臨まないと――」
「だからこうしてやってきたと? 昨日のおれの言葉も忘れて? その上で自分の価値観を押しつけようとは、たいしたものだな」
「あっ……!」

 強い力で肩を掴まれ、既視感にアンリエッタは真っ青になる。とっさに足を踏ん張ってこらえようとするが、男の力の前にはまるで敵わなかった。

「い、いや……、きゃう!」

 あえなく寝台に突き飛ばされ、恐怖と焦りに冷や汗がにじむ。すぐに逃げだそうとするが、敷布の上に押さえつけられ身動きが取れなくなった。
 昨夜とまったく同じ状況に、抑え込んでいた恐怖が一気に膨れ上がる。
 潤んだ瞳を見開いたまま震え出したアンリエッタを見下ろし、オーランドは酷薄に笑った。

「そんなに言うなら、朝議に顔を出してやってもいいぞ」
「え……っ」
「ただし、おれの言うことをすべて聞くことができたらだ」

 そう言うと、オーランドは自身の下穿きに手をかける。
 怖々しながら彼のすることを見ていたアンリエッタは、やがてそこから引きずりだされたものを目の当たりにし、「ひっ」と短く悲鳴を上げた。
 それは女性では持ち得ない、男性の象徴であり欲望でもある部分だった。
 わずかに勃ち上がった状態が、まるで鎌首をもたげる蛇のように見える。その異様さに気圧けおされて、アンリエッタはごくりと唾を呑み込んだ。

「昨夜の行為でわかっただろう? 男と女がねやでする行為がどういったものか」

 冷たい言葉に、そのとき与えられた苦しみと痛みまでよみがえって、自然と身体が強張こわばる。色をなくした唇を震わせるアンリエッタに、オーランドは歪んだ笑みを向けてきた。

「これがおまえの中にはいるものだ。だがそのためにはまだ硬さが足りない。だから――」

 オーランドはアンリエッタの小さな手を捕まえて、それを自身の欲望へと添えさせる。

「やっ……!」
「こうしてふれて、硬くしてみせるんだ」

 指先に感じる熱さと、耳を疑うような台詞せりふに、アンリエッタは言葉もなく固まった。
 青ざめたまま硬直する彼女に、オーランドはさらに言い募る。

「いやなら別にやらなくていい。おれも朝議に出ないまでだからな。どうする?」

 朝議に出ないという一言に、アンリエッタはハッと息を呑んだ。

(ここで拒絶したら、オーランド様は本当に朝議にはきてくださらなくなる。そうなったらフィノーは……)

 王妃の指示により麦の供給を止められて、大変な事態に陥るだろう。
 王家に生まれた姫としても、国同士の友好のために嫁いだ妃としても、そのような事態を引き起こすわけにはいかない。
 アンリエッタはわき上がる羞恥心と恐怖心をきつく目をつむることで抑え込み、覚悟を決めて、そろそろとまぶたを持ち上げた。
 彼の手が導くまま、まだ柔らかな雄芯を、震える指先でそっと握り込む。

「そのまま手を上下に動かして、全体をしごいてみろ。間違っても握りつぶすなよ」

 どれくらい力を入れて握ればいいのか、どれくらいの速さでしごけばいいのかもわからなくて、アンリエッタは情けなさと恥ずかしさに涙ぐみながら、懸命に手を動かした。
 柔らかだったそれは刺激を受けて徐々に大きくなり、腹のほうへ反り返っていく。手の中で脈打つ硬度も増してきた気がして、アンリエッタはたちまち逃げ腰になった。

(これが、昨夜わたしの中にれられたもの?)

 オーランドの言葉を聞く限り、そうなのだろう。実際、棒状のなにかに貫かれた感覚は鮮明に覚えている。自分の小さな手の中でみるみる育っていくそれを見ると、なるほど、痛いはずだと妙に納得する思いまで芽生えてきた。
 同時に、またこんな大きいものを挿れられるのかと、恐ろしくて息が止まりそうになる。
 いっそ気を失いたいと願いながら、アンリエッタは奥歯を噛みしめ必死に彼に奉仕した。
 だが非道な命令はこれだけでは終わらず、今度は後頭部に手を添えられ、ぐいっと上体を引き起こされた。

「あう!」
「今度はこれを舐めろ」

 赤黒く反り返る雄芯を眼前に突き出され、アンリエッタはぎょっと目を見開いた。

「な、舐め……!?」
「できないのか?」

 アンリエッタは慌てて首を振る。かといってすぐにできるものでもなく、彼女は半泣きになりながら手の中の雄芯を見つめた。
 この短い時間で、それはますます異様な形になってきている。丸い先端の小さな割れ目からはじんわりと液がにじみ出てきており、とても舌を近づけたいとは思えなかった。
 しかしアンリエッタに断るという選択肢はない。舌先をふれさせるだけだと呪文のように心で唱えて、アンリエッタは意を決して、薄く開いた唇から小さな舌をのぞかせた。
 滲み出る液を避けるようにして、くびれの部分にそっと舌を押し当てる。
 手の中の欲望がびくりと震えて、アンリエッタは驚いて舌を離した。
 だがオーランドの手がそれを許さない。それどころか、彼は薄く開いたままのアンリエッタの口内に、無理やり雄芯をねじ込んできた。
 突然のことに口を閉じる余裕もない。次のときには反り返った先端が喉の入り口にまで入り込んで、アンリエッタは驚愕と苦しさに限界まで目を見開いた。

「んぅっ、ん――ッ!」
「歯を立てるな! もっと奥までくわえ込め……!」
「んん……! ……っ」

 口の中が彼でいっぱいになる。せ返るような雄の匂いと喉元までふさがれた苦しさに、アンリエッタはたちまち嘔吐えずきそうになった。無意識のうちに彼の足に爪を立て身体を引きはがそうとするが、オーランドの手がしっかり頭を押さえていて、首を振ることすらできない。
 その状態でゆっくりと腰を動かされ、舌や頬に当たる肉塊の感触に全身が強張こわばる。苦しさのあまり脂汗が噴き出し、涙がぼろぼろと頬を伝ってこぼれ落ちた。

「ん、んぐっ、う……っ」
「もっと唇をすぼめて、手でしたようにしごくんだ。舌も動かせ」
「っぐ……、うぅー……っ」

 突かれるたびに気持ち悪さを覚えながら、アンリエッタは必死に言われたとおりにする。唇をすぼめ、彼の欲望にぴたりと沿わせるようにしごきながら、縮こまる舌を懸命に動かして、くびれた部分をぎこちなく舐めた。
 舌先にピリッとするような刺激を感じ、ますます涙があふれてくる。
 おまけに口内の欲望はますます硬く膨れ上がったように思えて、開いたままのあごまで痛み出した。

(早く……早く、終わって……)

 硬く目をつむり、わき上がる吐き気を必死に抑え込んだとき、唐突に雄芯が引き抜かれる。
 後頭部を支えていた手が離れ、アンリエッタは敷布の上に倒れ込む。激しく咳き込みながら、我慢できずむせび泣いた。

「う、ぅ……、ひど、い……っ」
「初めにいやならやめろと言ったはずだ。その上で受け入れたくせに、責められるとは心外だな」

 思わず呟いた一言にまで冷たい言葉を浴びせられ、アンリエッタは喉を震わせる。
 そんな彼女を仰向けに押さえつけ、オーランドはその夜着に手をかけた。

「い、いやっ」

 止めようとしたときにはもう遅く、裾に手をかけられ乱暴に引き上げられる。
 破られることこそなかったものの、白い足から腰元までが一気に露わになって、恐怖に震える肌に鳥肌が立った。

「ひ……っ」

 これからされることを敏感に感じ取り、アンリエッタは首を振る。全身ががくがく震えて、噛み合わない歯の根がカチカチと耳障りな音を響かせた。

「やめるか? おれはそれでもいっこうに構わないぞ」

 アンリエッタの足を開かせながら、オーランドがこともなげに告げる。
 限界まで欲望を溜め込み、反り返った先端が震えるひだのあいだへ潜り込もうとしてくる。

(いや、いやっ、れないで、お願い……!)

 懇願の言葉が頭を駆けめぐる。だが王妃の命令を無視するわけにはいかず、本心を伝えることはできなかった。
 それでもなんとかやめてほしくて、アンリエッタは泣き濡れた瞳でオーランドを見上げる。
 オーランドは軽く眉根を寄せると、アンリエッタの足を掴み直した。

「いや……っ」

 またあとがつくほど握り込まれるのかとおびえるが、意に反して、オーランドは白い足をぐっと持ち上げると、膝頭が胸につくようにアンリエッタの体勢を変える。

「そのまま膝の裏を抱えていろ」

 アンリエッタは戸惑いながら、震える手をぎこちなく動かし、言われたとおりぴたりと合わさった膝裏を抱える。
 すると、オーランドは蜜口にあてがっていた丸い先端を、アンリエッタの太腿のあいだへと潜り込ませた。

「あ、あぁ……?」

 狭い膣孔ではなく、秘所と太腿のあいだに生まれたわずかな隙間を、熱い屹立きつりつがゆっくり出入りしていく。アンリエッタの唾液と彼自身の先走りで濡れた剛直は、柔らかな内腿にられ、より熱く硬くなっていった。

「あ、あ、……やぁ……っ」

 そしてアンリエッタも、痛みとは違うもどかしい感覚を覚えて息を呑む。
 昨夜ほんの少しだけ感じた、むずがゆいような妙な感覚。それが再びわき上がって、細い身体をふるふると震えさせた。

「んっ、んん……」

 目をきゅっと閉じ、アンリエッタは慣れない感覚に必死に耐える。
 彼の剛直が抜き差しされるたび、くびれた部分が包皮に隠された花芯の上をこすっていき、ぞくぞくするような感覚が押し寄せてきた。
 彼がこぼす先走りの液が肌を伝って、内腿と秘所がねっとりと濡れていく。そうすると彼の動きがなめらかになって、伝わる熱さが倍になったように感じられた。

「……あ、あぁう……、やぁ……っ」

 にちゅにちゅと卑猥ひわいな水音が聞こえてくる。そのたびに花芯がずくずくと熱を持ったように脈打って、薄い包皮の下でぷっくりと膨らむのがわかった。

(や、やだ……、気持ちいい……)

 花芯のさらに奥のほう……下腹の奥がわき立つように熱くなって、自然と背が反り返ってはぁはぁと乱れた呼吸が漏れる。
 開きっぱなしの唇から危うく唾液がこぼれそうになって、アンリエッタはこくりとそれを呑み込んだ。しだいに頭の中がぼうっと熱くなってくる。

「ふ、うぅ……」

 わき上がる愉悦と熱さに、手から力が抜けそうになって、きゅっと力を入れ直す。その瞬間、膝頭が胸にすれて、いつの間にか硬く尖り始めた乳首を刺激した。

「ひぁ! あ、あぁ……っ」

 ほんの少しこすれただけで、ピリッとするような甘いうずきが立ち上って、アンリエッタはびくんと身体を揺らす。すると彼の屹立きつりつが一気に花芯の上を滑っていき、予期せぬ刺激に全身がびくびくと震えた。

「んぅ、ん……っ」
「はっ……濡れてきた。この程度でも感じられるとは、とんだ淫乱だな」

 吐き捨てるように言われ、アンリエッタの胸がズキリと痛む。身体中を包んでいた快感がふっと遠ざかり、悲しみが波のように押し寄せてきた。

「もうれても問題ないな」
「う……、あっ、やめ……っ」

 屹立が太腿のあいだを離れ、アンリエッタはハッと息を呑む。
 一度彼女から離れたオーランドは、片手を充分に張り詰めた自身に添え、丸い先端を蜜口に食い込ませた。
 恐怖に乾ききっていたはずのそこは、いつの間にかわずかに湿り気を帯びていたが、無理やり押し入ろうとする異物の存在を感じ取って、萎縮いしゅくしたようにひくつく。

「待っ……!」

 アンリエッタが慌てて上体を起こした瞬間、オーランドは一気に腰を進めてきた。
 先端が蜜口に食い込むぐちゅりという音が響く。ビリッとした痛みが走り、アンリエッタはとっさに、オーランドの身体にすがりついた。


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