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本編
第十六話:戸惑いと疑い
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しかしまだ、一度ではまだ薬に犯された疼きは収まらず行為は何度も続いた。
――ぎしっ、ぎしっ
「あっ、あひっ、あぁ……」
達した後も何度も突き上げられ、声が枯れ果てるまで嬌声は響き行為は夜明けまで続いた。
何度達したか、いつか明澄は気を失ったように眠っていた。
――翌朝、詠寿の部屋を訪ねてくるものがいた。
「――あの、明澄様をお迎えに来たのですが」
「あぁ……そうだったな、今王子に聞いてみる」
朝方明澄を迎えに来るように言いつけられていたクリアは、見張り番をしていたショットとアリヴに用件を伝える。アリヴはクリアが詠寿に朝迎えに来るよう命令されていたのを思い出し、王子に明澄の様子を聞いてみることにした。
――コン、コン
「――失礼、王子……起きていらっしゃいますでしょうか? クリアが来ているのですが」
「すまぬな……、今まだ明澄はまだ横になっているからあと1時間後くらいにまた来てやってくれないか? あと、飲み物か何か頼む。」
ショットが部屋をノックして詠寿を呼ぶと詠寿が少し扉を開けて明澄はまだ眠っていると話し、クリアに後1時間後に迎えに来るように頼みついでに飲み物を頼んだ。
「――承知しました、……失礼します。」
クリアは詠寿の言葉を了承し、部屋の前から去って行った。
一方ベッドの方を見ると明澄はベッドの中でまだ目を瞑って寝息を立てていた。あれだけ肌を重ねる行為をしたのだ、疲れて当然である。
「明澄……。」
詠寿は明澄の足を踏まない様にベッドウに座ると、明澄の瞼にキスをする。詠寿は空中遊泳ベルトを持って、一人浴室に向かった。
――カタン
パチ……
「ん……っ」
浴室の扉を明澄はまだぼんやりとしたままだが、まどろみから目を覚ました。
向こう側からシャワーの音が響き渡り、詠寿が今シャワーを浴びていることに気付く。
ぼんやりした頭で昨日何があったのか必死に思い出す。
――かぁっ!
砕波に媚薬を飲まされ、犯されかけたことや詠寿が駆け付けて助け出してくれたことや媚薬の効果をなくすために詠寿に身体の奥を突きあげられたことを思い出し、思わず顔を赤くしベッドに蹲る。
――先輩に抱かれてしまった。
あんなみっともない声で喘いで、あんな痴態まで見られて……。
そんな考えが明澄の中でぐるぐるとまわって明澄は戸惑いを隠せず顔を赤くする。
――カチャッ
(あっ……せ、ぱい……?)
そして詠寿はシャワーを浴び終えると明澄が蹲っているベッドに戻ってくる。
明澄は、詠寿が明澄の背中側に座ったことに気付いた。
「……無理をさせたな?」
「――!」
顔は見えないが詠寿が謝罪の言葉とともにばつの悪い思いをしているのは声のトーンで分かった、詠寿は明澄が起きていることに気付いていない。明澄は寝ている振りを続け詠寿の独り言に聞き耳を立てる。
「――好きだ、初めてお前を目にしたあの時から……」
(せん、ぱい……?)
――はっきりそう聞こえた、好きだと……。
「攫っておいて軟禁しておいてこんなことしておいて……言える立場ではないということもわかっている。でも……、だれにも渡したくない程、俺はお前を愛している。」
「――っ」
詠寿が自分に対する思いをまだ寝ていると思い込んでいる自分に向かってぽつりぽつりと呟いている、明澄は詠寿の自分に対する心情を聞いて戸惑いを隠せないでいた。
「お前を傷つけたあの男にも、砕波にも……お前を誰にも渡したくはない」
詠寿は誰にも渡したくないほど明澄に思いを寄せていることを、明澄の前で告白する。
「我儘だと思うが……そばにいてくれ、明澄。」
明澄は詠寿の本心を今はっきり聞いたような気がした……。
「――ゆっくり休んでくれ」
詠寿はそう言うと明澄の髪をかき分け、蟀谷にキスを落とした。明澄は寝ている振りしていることがバレるのではないかと内心ドキドキしながらも狸寝入りを続けた、そして服に着替えた後、朝のスケジュールを確認するためか詠寿は部屋を出て行ったのだった。明澄は詠寿が出て行ったのを確認するとばっと状態を起き上がらせる。
――ドックン、ドックン
(先輩は……そんな風に、ボクを?)
戸惑いを隠せなかった、憧れで終わると思っていた詠寿がこんなにも自分に好意を寄せていてくれていたとは思わなかった。ただ掟で仕方なくここに連れてきただけと思っていたのだから。
何を思って鳴るのか、胸の鼓動がうるさくて内心落ち着いていられない。
(なんで、先輩にあんな風に優しく声を掛けられると……こんなに……)
しかもそれだけではない、詠寿の雰囲気や声はかつて自分を凌辱しようとした暴漢から声を上げて助けてくれたあの少年にどこか似ている気がするのだ。
詠寿が優しく声を掛けるこの雰囲気にどこかデジャブを感じずにはいられなかった。そして、詠寿に対する疑問はそれだけではなかった。そのことは昨夜でも思ったことだった。
――詠寿は、何故自分がトラウマを持っていることを知っているような口ぶりをしたのか?
――ドクンッ
何故、詠寿に囁くように声を掛けられると胸が高鳴るのかも疑問だった。
詠寿はもしかして一度どこかであったことがあるのではないだろうか、それも遠い昔に……。
そんな疑いが明澄の頭の中に浮かぶばかりだった。そう考えていると、ドア越しからショットの声が聞こえ、詠寿の気配を感じた明澄は先程の秘密の告白を思い出し、恥ずかしくなり再びベッドに横になる。
ドアが開くと詠寿が部屋に戻ってきて部屋にあった本棚から一冊の本を手に取った後、数十分ほどそれを読み耽っていた。
「クリアです、お飲み物です。」
「厳生です、おはようございます。」
「……入れ。」
クリアと厳生の声がドア越しにノックの音とともに聞こえてきた、アリヴが詠寿の部屋の扉を開けて二人を迎え入れる。
「「――失礼します。」」
二人同時に一礼すると……、
「お飲み物を……」
「――あぁ、ありがとう。明澄の分はそこのテーブルに置いといてくれ」
「――はい。」
最初にクリアがトレイを差出し、詠寿は飲み物をそこから受け取って明澄の分はテーブルに置くように指示する。
「詠寿様、おはようございます……お身体の具合は大丈夫でしょうか?」
「俺は心配いらない。」
厳生が詠寿に身体の具合を聞いて来たので詠寿は問題ないと告げる。
「――では、朝の支度をしましょう? 今日中に薬が出来あがるはずだと医務長が。ただ、『今はまだ薬が出来あがってない為、血を流す可能性のある武術などはお避け下さい』とのことです。今日は武術の稽古はお休みということでよろしいでしょうか?」
厳生はクローディオから言伝を預かっておりそれを詠寿に伝え、今日のスケジュールを書いたメモ帳を読み上げながら詠寿に聞く。
「――それでいい、持病が出て迷惑かけたくないからな。……昨日もアリヴが止めてくれなければきっと」
「そうですね……、アリヴにしては賢明な判断だったと思います。」
詠寿は厳生が武術の稽古の休みを提案してきたため詠寿は厳生の提案に乗る意思を伝え昨日砕波を殴り掛かった時に、アリヴが止めてくれたことに感謝していることを厳生に告げる。
厳生は昨日のアリヴのストップは正しかったと詠寿の言葉に同意し、厳生はベッドにまだ横たわっている明澄をちらっとみる。
「――うした?」
「なんでもございません……では、食事をご用意していますので行きましょう。」
厳生が何を思って明澄を見たのか気になって詠寿は聞くと厳生は何もないと答え、食事の用意が出来ているのでリビングに向かう様促す。
「――わかった。……クリア、明澄が目を覚ましたら頼む」
「――あっ、はい。……承知しました。」
詠寿は本を置いてクリアに自分の代わりに明澄の面倒を見るようにお願いし、椅子から立ち上がると厳生の後について行くことにする。詠寿は食事を摂るために先に部屋を後にした。
クリアは椅子を借りて明澄が目を覚ますまでベッドのそばにいることにした。
「……うっ、クリア」
「――えっ、あっ、明澄様!? お目覚めになられていたのですか!?」
クリアはいつの間に目を覚ましていたのかと明澄に驚いて聞いてくる。
「――うん。」
「あっ、無理はなさらないでください……。」
そう答えるなり明澄は昨日の行為でだるくなっている体を起き上がらせる、クリアは明澄の身体を気遣い、まだ体を横にしていていいと促す。明澄は言葉に甘えてまたベッドに横になると……、
「――クリア、ちょっとお話に付き合ってくれる?」
「――はい、なんでしょう?」
明澄はクリアに少し話に付き合って欲しいと頼むとクリアはそれを承諾したのち、明澄が自分に何を話したいのか尋ねる。
「あのねクリア、先輩の……詠寿さんの事でいろいろ気になることがあるんだ」
「? ……それはどういう」
明澄は実は詠寿のことでいろいろ気になることがあるとクリアに話す、クリアは話が見えずどういうことなのか聞き返す。
「あのね……他の人には、言わないでほしい事をこれから話す。でもこれはクリアだから信じて話すってことなんだ。秘密……守ってくれる?」
明澄はクリアに他の人物には秘密で自分の話を聞いてくれるか約束を取り付け、その約束を守ってくれるか尋ねた。
「……僕は使用人達の中でも立場は弱い方だから、庇いきれなかったりすることは沢山あると思います。昨日の件は本当にごめんなさい、でも僕は……明澄様の味方のつもりです。これだけは信じてください。」
「クリア……」
クリアは昨日のことでよほど罪悪感を感じていたのだろう、手を握って明澄に謝罪の意も含めながら訴えてくる。その様子でクリアは自分を本当に気にかけてくれていることが伝わり明澄は……、
「ありがとう、クリア……クリアの気持ちは分かったよ。だからため口でいいよ、ここからは。」
「――!」
クリアを自分は信じているつもりだと安堵させるためにそう伝えた。明澄自身クリアの事はとても信頼しているつもりだ、だからあの忌まわしい過去を話すつもりだった。
そして、明澄は一呼吸置いた後……。
「――あのねボク、昔……襲われたことあるの、暴漢に。」
「――!?」
幼い頃、暴漢に犯されかけたせいでそれがきっかけでトラウマが出来てしまったこと。
そしてその時、大声を上げて暴漢を追い払ってくれた少年がいたことやその少年が通りかかった大人が来るまで自分に優しく声を掛けてくれたことを話した。他人には絶対に話してこなかったことを明澄は初めて話したのだ、その理由はクリアは秘密を守ってくれると信じたかったからだ。
クリアは、明澄のトラウマを知って悲痛そうな何も言えない顔をしていた。
「……明澄様。」
「会えるなら彼にもう一度会ってお礼を言いたいけど……なかなか会えなくて」
「……そうですね、出来れば会いたいよね。その人は明澄様にとって恩人なんだから」
明澄は自分を暴漢から守ってくれた少年に一度でもいいから会ってお礼を言いたいと、クリアに打ち明けるとクリアは明澄の気持ちに同調してくれた。
「あのね、クリア。それで……気になることがあるんだ」
「――えっ!?」
明澄は本題に入り、詠寿に関して引っ掛かりを覚えるところがあることを伝えた。
詠寿の声の雰囲気がなんとなくあの暴漢から助けてくれた少年に似ていることや自分に優しく声を掛ける雰囲気があの少年を連想させることをクリアに話したのだった。
「――それって……」
「うん、思い過ごしかもしれないし確信も持てないけど……詠寿さんに似ている気がするんだ」
そして明澄は、詠寿こそがあの少年ではないかと証拠はないが少し疑い始めていることをクリアに打ち明けた。
「もし詠寿さんだったら、ちゃんとお礼を言いたいなって。彼だったらいいなって思うんだ……ボクも彼の事を」
「……明澄様」
あの少年の正体が詠寿だったらという願望が少なからずある事や、詠寿に密かに憧れを抱いていることをクリアに打ち明ける。
――コンコン
「――明澄様、いますか?」
「――クローディオ医務長!?」
するとノックの音が部屋に響き渡り、自分を尋ねた相手がクローディオの声であったことに明澄もクリアも驚いていた。
――ぎしっ、ぎしっ
「あっ、あひっ、あぁ……」
達した後も何度も突き上げられ、声が枯れ果てるまで嬌声は響き行為は夜明けまで続いた。
何度達したか、いつか明澄は気を失ったように眠っていた。
――翌朝、詠寿の部屋を訪ねてくるものがいた。
「――あの、明澄様をお迎えに来たのですが」
「あぁ……そうだったな、今王子に聞いてみる」
朝方明澄を迎えに来るように言いつけられていたクリアは、見張り番をしていたショットとアリヴに用件を伝える。アリヴはクリアが詠寿に朝迎えに来るよう命令されていたのを思い出し、王子に明澄の様子を聞いてみることにした。
――コン、コン
「――失礼、王子……起きていらっしゃいますでしょうか? クリアが来ているのですが」
「すまぬな……、今まだ明澄はまだ横になっているからあと1時間後くらいにまた来てやってくれないか? あと、飲み物か何か頼む。」
ショットが部屋をノックして詠寿を呼ぶと詠寿が少し扉を開けて明澄はまだ眠っていると話し、クリアに後1時間後に迎えに来るように頼みついでに飲み物を頼んだ。
「――承知しました、……失礼します。」
クリアは詠寿の言葉を了承し、部屋の前から去って行った。
一方ベッドの方を見ると明澄はベッドの中でまだ目を瞑って寝息を立てていた。あれだけ肌を重ねる行為をしたのだ、疲れて当然である。
「明澄……。」
詠寿は明澄の足を踏まない様にベッドウに座ると、明澄の瞼にキスをする。詠寿は空中遊泳ベルトを持って、一人浴室に向かった。
――カタン
パチ……
「ん……っ」
浴室の扉を明澄はまだぼんやりとしたままだが、まどろみから目を覚ました。
向こう側からシャワーの音が響き渡り、詠寿が今シャワーを浴びていることに気付く。
ぼんやりした頭で昨日何があったのか必死に思い出す。
――かぁっ!
砕波に媚薬を飲まされ、犯されかけたことや詠寿が駆け付けて助け出してくれたことや媚薬の効果をなくすために詠寿に身体の奥を突きあげられたことを思い出し、思わず顔を赤くしベッドに蹲る。
――先輩に抱かれてしまった。
あんなみっともない声で喘いで、あんな痴態まで見られて……。
そんな考えが明澄の中でぐるぐるとまわって明澄は戸惑いを隠せず顔を赤くする。
――カチャッ
(あっ……せ、ぱい……?)
そして詠寿はシャワーを浴び終えると明澄が蹲っているベッドに戻ってくる。
明澄は、詠寿が明澄の背中側に座ったことに気付いた。
「……無理をさせたな?」
「――!」
顔は見えないが詠寿が謝罪の言葉とともにばつの悪い思いをしているのは声のトーンで分かった、詠寿は明澄が起きていることに気付いていない。明澄は寝ている振りを続け詠寿の独り言に聞き耳を立てる。
「――好きだ、初めてお前を目にしたあの時から……」
(せん、ぱい……?)
――はっきりそう聞こえた、好きだと……。
「攫っておいて軟禁しておいてこんなことしておいて……言える立場ではないということもわかっている。でも……、だれにも渡したくない程、俺はお前を愛している。」
「――っ」
詠寿が自分に対する思いをまだ寝ていると思い込んでいる自分に向かってぽつりぽつりと呟いている、明澄は詠寿の自分に対する心情を聞いて戸惑いを隠せないでいた。
「お前を傷つけたあの男にも、砕波にも……お前を誰にも渡したくはない」
詠寿は誰にも渡したくないほど明澄に思いを寄せていることを、明澄の前で告白する。
「我儘だと思うが……そばにいてくれ、明澄。」
明澄は詠寿の本心を今はっきり聞いたような気がした……。
「――ゆっくり休んでくれ」
詠寿はそう言うと明澄の髪をかき分け、蟀谷にキスを落とした。明澄は寝ている振りしていることがバレるのではないかと内心ドキドキしながらも狸寝入りを続けた、そして服に着替えた後、朝のスケジュールを確認するためか詠寿は部屋を出て行ったのだった。明澄は詠寿が出て行ったのを確認するとばっと状態を起き上がらせる。
――ドックン、ドックン
(先輩は……そんな風に、ボクを?)
戸惑いを隠せなかった、憧れで終わると思っていた詠寿がこんなにも自分に好意を寄せていてくれていたとは思わなかった。ただ掟で仕方なくここに連れてきただけと思っていたのだから。
何を思って鳴るのか、胸の鼓動がうるさくて内心落ち着いていられない。
(なんで、先輩にあんな風に優しく声を掛けられると……こんなに……)
しかもそれだけではない、詠寿の雰囲気や声はかつて自分を凌辱しようとした暴漢から声を上げて助けてくれたあの少年にどこか似ている気がするのだ。
詠寿が優しく声を掛けるこの雰囲気にどこかデジャブを感じずにはいられなかった。そして、詠寿に対する疑問はそれだけではなかった。そのことは昨夜でも思ったことだった。
――詠寿は、何故自分がトラウマを持っていることを知っているような口ぶりをしたのか?
――ドクンッ
何故、詠寿に囁くように声を掛けられると胸が高鳴るのかも疑問だった。
詠寿はもしかして一度どこかであったことがあるのではないだろうか、それも遠い昔に……。
そんな疑いが明澄の頭の中に浮かぶばかりだった。そう考えていると、ドア越しからショットの声が聞こえ、詠寿の気配を感じた明澄は先程の秘密の告白を思い出し、恥ずかしくなり再びベッドに横になる。
ドアが開くと詠寿が部屋に戻ってきて部屋にあった本棚から一冊の本を手に取った後、数十分ほどそれを読み耽っていた。
「クリアです、お飲み物です。」
「厳生です、おはようございます。」
「……入れ。」
クリアと厳生の声がドア越しにノックの音とともに聞こえてきた、アリヴが詠寿の部屋の扉を開けて二人を迎え入れる。
「「――失礼します。」」
二人同時に一礼すると……、
「お飲み物を……」
「――あぁ、ありがとう。明澄の分はそこのテーブルに置いといてくれ」
「――はい。」
最初にクリアがトレイを差出し、詠寿は飲み物をそこから受け取って明澄の分はテーブルに置くように指示する。
「詠寿様、おはようございます……お身体の具合は大丈夫でしょうか?」
「俺は心配いらない。」
厳生が詠寿に身体の具合を聞いて来たので詠寿は問題ないと告げる。
「――では、朝の支度をしましょう? 今日中に薬が出来あがるはずだと医務長が。ただ、『今はまだ薬が出来あがってない為、血を流す可能性のある武術などはお避け下さい』とのことです。今日は武術の稽古はお休みということでよろしいでしょうか?」
厳生はクローディオから言伝を預かっておりそれを詠寿に伝え、今日のスケジュールを書いたメモ帳を読み上げながら詠寿に聞く。
「――それでいい、持病が出て迷惑かけたくないからな。……昨日もアリヴが止めてくれなければきっと」
「そうですね……、アリヴにしては賢明な判断だったと思います。」
詠寿は厳生が武術の稽古の休みを提案してきたため詠寿は厳生の提案に乗る意思を伝え昨日砕波を殴り掛かった時に、アリヴが止めてくれたことに感謝していることを厳生に告げる。
厳生は昨日のアリヴのストップは正しかったと詠寿の言葉に同意し、厳生はベッドにまだ横たわっている明澄をちらっとみる。
「――うした?」
「なんでもございません……では、食事をご用意していますので行きましょう。」
厳生が何を思って明澄を見たのか気になって詠寿は聞くと厳生は何もないと答え、食事の用意が出来ているのでリビングに向かう様促す。
「――わかった。……クリア、明澄が目を覚ましたら頼む」
「――あっ、はい。……承知しました。」
詠寿は本を置いてクリアに自分の代わりに明澄の面倒を見るようにお願いし、椅子から立ち上がると厳生の後について行くことにする。詠寿は食事を摂るために先に部屋を後にした。
クリアは椅子を借りて明澄が目を覚ますまでベッドのそばにいることにした。
「……うっ、クリア」
「――えっ、あっ、明澄様!? お目覚めになられていたのですか!?」
クリアはいつの間に目を覚ましていたのかと明澄に驚いて聞いてくる。
「――うん。」
「あっ、無理はなさらないでください……。」
そう答えるなり明澄は昨日の行為でだるくなっている体を起き上がらせる、クリアは明澄の身体を気遣い、まだ体を横にしていていいと促す。明澄は言葉に甘えてまたベッドに横になると……、
「――クリア、ちょっとお話に付き合ってくれる?」
「――はい、なんでしょう?」
明澄はクリアに少し話に付き合って欲しいと頼むとクリアはそれを承諾したのち、明澄が自分に何を話したいのか尋ねる。
「あのねクリア、先輩の……詠寿さんの事でいろいろ気になることがあるんだ」
「? ……それはどういう」
明澄は実は詠寿のことでいろいろ気になることがあるとクリアに話す、クリアは話が見えずどういうことなのか聞き返す。
「あのね……他の人には、言わないでほしい事をこれから話す。でもこれはクリアだから信じて話すってことなんだ。秘密……守ってくれる?」
明澄はクリアに他の人物には秘密で自分の話を聞いてくれるか約束を取り付け、その約束を守ってくれるか尋ねた。
「……僕は使用人達の中でも立場は弱い方だから、庇いきれなかったりすることは沢山あると思います。昨日の件は本当にごめんなさい、でも僕は……明澄様の味方のつもりです。これだけは信じてください。」
「クリア……」
クリアは昨日のことでよほど罪悪感を感じていたのだろう、手を握って明澄に謝罪の意も含めながら訴えてくる。その様子でクリアは自分を本当に気にかけてくれていることが伝わり明澄は……、
「ありがとう、クリア……クリアの気持ちは分かったよ。だからため口でいいよ、ここからは。」
「――!」
クリアを自分は信じているつもりだと安堵させるためにそう伝えた。明澄自身クリアの事はとても信頼しているつもりだ、だからあの忌まわしい過去を話すつもりだった。
そして、明澄は一呼吸置いた後……。
「――あのねボク、昔……襲われたことあるの、暴漢に。」
「――!?」
幼い頃、暴漢に犯されかけたせいでそれがきっかけでトラウマが出来てしまったこと。
そしてその時、大声を上げて暴漢を追い払ってくれた少年がいたことやその少年が通りかかった大人が来るまで自分に優しく声を掛けてくれたことを話した。他人には絶対に話してこなかったことを明澄は初めて話したのだ、その理由はクリアは秘密を守ってくれると信じたかったからだ。
クリアは、明澄のトラウマを知って悲痛そうな何も言えない顔をしていた。
「……明澄様。」
「会えるなら彼にもう一度会ってお礼を言いたいけど……なかなか会えなくて」
「……そうですね、出来れば会いたいよね。その人は明澄様にとって恩人なんだから」
明澄は自分を暴漢から守ってくれた少年に一度でもいいから会ってお礼を言いたいと、クリアに打ち明けるとクリアは明澄の気持ちに同調してくれた。
「あのね、クリア。それで……気になることがあるんだ」
「――えっ!?」
明澄は本題に入り、詠寿に関して引っ掛かりを覚えるところがあることを伝えた。
詠寿の声の雰囲気がなんとなくあの暴漢から助けてくれた少年に似ていることや自分に優しく声を掛ける雰囲気があの少年を連想させることをクリアに話したのだった。
「――それって……」
「うん、思い過ごしかもしれないし確信も持てないけど……詠寿さんに似ている気がするんだ」
そして明澄は、詠寿こそがあの少年ではないかと証拠はないが少し疑い始めていることをクリアに打ち明けた。
「もし詠寿さんだったら、ちゃんとお礼を言いたいなって。彼だったらいいなって思うんだ……ボクも彼の事を」
「……明澄様」
あの少年の正体が詠寿だったらという願望が少なからずある事や、詠寿に密かに憧れを抱いていることをクリアに打ち明ける。
――コンコン
「――明澄様、いますか?」
「――クローディオ医務長!?」
するとノックの音が部屋に響き渡り、自分を尋ねた相手がクローディオの声であったことに明澄もクリアも驚いていた。
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