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本編
第十七話:鮫の人魚の悪癖
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「――あっ、はい……!」
明澄は思わず起き上がって返事をする。
「どうもご機嫌麗しゅう、明澄様。無理して起き上がらなくても結構ですよ、先程王子とすれ違いましてね。王子が昨晩無理をさせたので、少し体の調子を見てやってくれないかと言われたので」
クローディオは入室後挨拶をし、明澄に寝たままでいいと促しつつ部屋を尋ねた理由を言ってベッドの方に近づく。
「――あっ、どうぞ。」
「どうも、では失礼します」
クリアは自分が座っていた椅子をすぐクローディオに譲り、クローディオは譲ってくれた椅子に座って明澄を検診する。
クローディオは脈を測ったりして検診しながらしている間、明澄が考え事をしていると……
「もしかして、詠寿様が気になりますか?」
「ーーえっ!?」
「いえね、なんだか顔にそう書いてある気がしましてね」
突然、クローディオが詠寿の事についてなにか気になるのか尋ねてきた。クローディオは、尋ねた理由は明澄の顔がそう言っているような気がしただけで特に意味はないと弁解する。
――明澄はこの際、クローディオに聞いてみようと思った……。
「――先輩は……、詠寿さんは何かを隠している気がしてならないんです。詠寿さんはボクに何を隠しているのか気になって」
「……」
「兵士が怪我をして血を流した時とか……詠寿さんに血を嗅がせてはいけない理由がなんなのか気になるんです」
兵士が怪我をした件でも詠寿が自分に何かを隠している気がしてどうしても気になってしまうと明澄はクローディオに正直に話す。そして明澄は血を流してはいけない理由がわからないと話すと、クローディオは顔つきを変えた。
「――あのっ、すみません! 暗黙のルールの事を明澄様に話したんです、血を嗅がせてはいけないという話を……」
傍で話を聞いていたクリアは、自分が詠寿に血を嗅がせてはいけないという決まりがあることを勝手に明澄に話してしまったことを正直に謝った。
「どこまで話しましたか?」
「血を嗅がせてはいけないことだけ……詳しい事は」
「そうですか……。」
その件はどこまで話したかクローディオに尋問され、血を嗅がせてはいけないということだけで詳しい事はまだ話していないとクリアは正直に話した。
クローディオは少しだけ考え事をするようなしぐさを見せて沈黙すると……、
「私もそろそろこの事は話してやるべきだと思うんですが私は医者ですし、守秘義務がありますから詳しい事は……」
詠寿の持病については明澄にも詳しく話すべきだとクローディオ自身も思っているが、医者である自分には患者の守秘義務があるため勝手に話すことは許されないと詫びる。
――しかし……。
「でも、そこまで知りたいと言うなら厳生とリョウジに相談 してみなさい」
「――えっ!?」
自分が話せない代わりに厳生かリョウジに尋ねてみると良いと、クローディオは教えた。
「俺が言えるのはそれだけ……。それじゃあね、お大事に」
検診も終わり、お辞儀をするとクローディオは部屋を退室して行くと部屋を出て数歩歩いた曲がり角に厳生が立っていた。
「(これでいいんだろう? 厳生……)」
厳生に目線を向け、小声でクローディオは厳生に頼まれたことを果たしたと告げる。
「有難うございます、先生。」
「――厳生、いいのか? 王子にバレたら命令違反で処罰が下るかもしれんぞ?」
労いの言葉を掛ける厳生に、詠寿のことわり無しに話すことは命令違反になるから下手をしたら処罰を受けるとクローディオが心配するとものの……
「分かってますよ、でも……私は明澄に王子を誤解したままにしてほしくない。どんな風に処罰されようと、私は王子に幸せになって欲しいんです……」
自分は明澄に詠寿を誤解されたままにしてほしくないから教えるべきだと考えていての行動だと、処罰を受ける覚悟でなければこんな勝手な行動はしない、でもこれは詠寿の幸せを願っての行動であると厳生はクローディオの前で打ち明ける。
「それがリヴェラ姉さんとの、約束だから」
そして、厳生は姉・リヴェラを思い出しながら窓から外の風景を見ていた。
――明澄は、部屋に戻って朝食をとりながらもクローディオが言った言葉を考えていた。
「……」
色々考えて、詠寿が隠している秘密を知るためにもある行動に出ることを決意をした。朝食を終えて、明澄はクリアが淹れてくれたお茶と茶請けをいただいていた時だった。
「――クリア、急で申し訳ないけど厳生さんにリョウジさんの元に行けるように手配してくれるよう頼んでくれないかな?」
「――えっ!? あっ、はい……!」
クリアに厳生を通してリョウジの元に行かせてもらえるよう頼み込む。
クリアは急な頼みに慌てつつも、明澄のお願いを承諾した。
――数分後……。
――コンコン
「……明澄様、中に入っても?」
「どうぞ……」
入室していいか部屋にいた明澄に尋ねる厳生の声がドア越しに響いた。明澄は厳生を部屋の中に招き入れる、厳生の後ろにはクリアもいて心配している表情を浮かばせていた。
「私を呼んだということは、医務長からの伝言を聞いて、お話を聞く気になってくれたとみていいんですね?」
「――はい。でも、厳生さんは大丈夫なんですか?」
厳生は、明澄の様子を見て話を聞く気になったのか確認してくるがこんな大胆な事をして詠寿の傍にいなくて怪しまれないのか、明澄は厳生に尋ねる。
「――呼んだのは貴方でしょう? それに……ちょっと急用ができたと言って席を外しましたし。今日は街でお買い物をするのでアリヴ達が代わりに着くようお願いしておいたので、そこは大丈夫です。」
ちゃんと詠寿にばれないように手配はしてあると、アリヴ達が代わりにボディーガードとして付いて回っているのでその辺は抜かりないと厳生は答える。
「ーーでは、リョウジさんの元に行きましょう。彼は今、この時間帯だと中庭の手入れと魚たちの体調を診ているはずです」
そして厳生はリョウジがいる中庭に明澄をクリアとともに案内する。
――カチャン
中庭につながる扉を開けると、リョウジが中庭の魚たちと戯れつつ魚たちの体調を診ている姿を見つけた。
「――おやおや、明澄ちゃんだ。……そっちからきてくれるとはね?」
リョウジはまさか明澄からきてくれるとは思わず、そう呟いた。
「――あの、リョウジさん! 教えてほしいことがあるんです」
そして明澄はさっそく本題に入った。
「もし先輩に……詠寿さんについて知りたいことがあれば、貴方を頼れとクローディオさんが」
クローディオから詠寿の事を知りたければリョウジを頼れとアドバイスされたと、明澄は話した。
「――えっ、詠寿さんについて……何で、血を嗅がせてはいけないんですか!? 詠寿さんは何を隠しているのか、教えてください!」
何故詠寿は自分にそれを隠すのか、色々聞きたいことがあって無意識にリョウジに質問責めしていた。
リョウジは「ちょっと落ち着きな」と明澄を宥め……、
「――随分、急だね? まぁ、王子はなかなか教えてなかったみたいだけどね。でも、そろそろ俺も教えてやるべきだとは思っていたからね」
リョウジ自身もそろそろ明澄に詠寿がなかなか話そうとしない鮫の人魚の悪癖について教えなければいけないと思っていたと、正直に話す。
――そして……、
「明澄ちゃんさ……変な話、詠寿サマと会って何か感じなかったかい?」
「――えっ!?」
リョウジは突然、明澄に意味深な質問をしてきて明澄は慌てて考え込む。
「あの、関係ない変な話かもしれないけど……ボク、昔先輩にどこかで会っているんじゃないかって思う節があったりするんです」
「――!?」
答えにはなっていないだろうが、リョウジにここに来てから詠寿とは昔何処かで会っている気がしてならないと思うようになったということを明澄は伝えると二人は顔つきを変え、リョウジと厳生はお互い顔をを向けあう。
そしてリョウジは視線を明澄の方に戻すと……、
「――なら、話が早いよ。じゃあ……まず、悪癖について話そうか」
詠寿が話すことを躊躇している本題に入ることに決めた。
「鮫の人魚ってのは、人魚族の中でも高い戦闘力を持つんだ。人魚族の中でも戦闘集団と言っても過言でもない。ただ、鮫の人魚には欠点がある。それが“鮫の人魚の悪癖”。」
「……その欠点って?」
人魚族の中でも、鮫の人魚は戦闘員に一番向くほど身体能力に優れているが、実は鮫の人魚には重症な欠点があることを話す。
明澄は早くそれを聞きたくて無意識にリョウジに続きを急かした。
「……鮫の人魚は鮫本来の本質か、血の匂いを嗅ぐと興奮性が増して自我を失って嗜虐性を帯びた性格に変わってしまう。」
「――!?」
リョウジは鮫の人魚に血のにおいを嗅がせると鮫の人魚は鮫本来の本質なのか興奮して狂暴性のある性格に変わってしまうのだと説明する。
「特に鋭敏な嗅覚の持ち主はこれが出やすい、詠寿サマは残念なことに生まれつき嗅覚が鋭敏だ。」
「そうか、だからあの時……」
特にサメの人魚の中でも嗅覚が鋭敏である者程出やすいことをリョウジは説明し、詠寿は嗅覚が生まれつき鋭敏であることを話した。この話で明澄は兵士が血を流した時、周りがあんな大慌てしたのか納得できた。あれはすべて詠寿を守るための行動だったことを漸く理解することも出来た。
「私があの時、クリアに中庭か鍵のかかる場所に貴方を避難させろと命じたのは詠寿様に悪癖が出てしまったらリョウジさんの元へ詠寿様を大人しくさせる薬を打ってもらうか、せめて貴方だけでも傷つけさせない様にするためです。詠寿様は……この悪癖で貴方を傷つけるのではないかと不安視されていました。」
兵士が血を流した時にそう命令した理由を厳生はちゃんと丁寧に説明してくれた、そして詠寿がいつか持病である鮫の人魚の悪癖で明澄を傷つけるのではと怯えていることを明かした。
「この持病が厄介なのはね……一度、血の匂いを嗅いで興奮してしまったら自我を失うから時間経過でもなかなか本来の性格に戻れない、本人の意志関係なしにね……。本人が漸く我に返った時はもう辺りは血の海だったってケースもなくはない。」
そして補足するかのようにリョウジは一度血の匂いを嗅いで自我を失えば時間経過で対処しても鮫自体の本能が関係するのでなかなか本人の意志関係なく本来の性格に戻れないだと説明する。
「昔あった話では、これが原因で起きてしまった事件があったくらい……鮫の人魚で悪癖が出なかったのはプランクトン食性の鮫である人魚だけ……悪癖(これ)が原因で他の人魚たちは恐れて鮫の人魚たちと番になることを嫌がるようになってしまった」
――昔、鮫の人魚がその悪癖で我を忘れて血なまぐさい事件を起こしてしまったことが過去にあったこともあって鮫以外の魚種である人魚たちは鮫の人魚たちと余程でない限り番になりたがらないケースが多くなったと厳生は説明した。
「先輩……」
明澄は詠寿がなかなか言い出せなった理由がそれだったことも分かり、何も言えなくなる……。
教えなければならないと思いつつ、心の端でこの持病を知って明澄が離れてしまうのではという詠寿自身が抱えていた葛藤と不安が見え隠れしたから。
「まさか、その薬って……」
「抑制剤だ……鮫本来の本能を抑制する薬だよ」
リョウジは鮫本来の本能を抑制させる薬を、詠寿を含む鮫の人魚たちに服用させていることを明かした。
明澄は思わず起き上がって返事をする。
「どうもご機嫌麗しゅう、明澄様。無理して起き上がらなくても結構ですよ、先程王子とすれ違いましてね。王子が昨晩無理をさせたので、少し体の調子を見てやってくれないかと言われたので」
クローディオは入室後挨拶をし、明澄に寝たままでいいと促しつつ部屋を尋ねた理由を言ってベッドの方に近づく。
「――あっ、どうぞ。」
「どうも、では失礼します」
クリアは自分が座っていた椅子をすぐクローディオに譲り、クローディオは譲ってくれた椅子に座って明澄を検診する。
クローディオは脈を測ったりして検診しながらしている間、明澄が考え事をしていると……
「もしかして、詠寿様が気になりますか?」
「ーーえっ!?」
「いえね、なんだか顔にそう書いてある気がしましてね」
突然、クローディオが詠寿の事についてなにか気になるのか尋ねてきた。クローディオは、尋ねた理由は明澄の顔がそう言っているような気がしただけで特に意味はないと弁解する。
――明澄はこの際、クローディオに聞いてみようと思った……。
「――先輩は……、詠寿さんは何かを隠している気がしてならないんです。詠寿さんはボクに何を隠しているのか気になって」
「……」
「兵士が怪我をして血を流した時とか……詠寿さんに血を嗅がせてはいけない理由がなんなのか気になるんです」
兵士が怪我をした件でも詠寿が自分に何かを隠している気がしてどうしても気になってしまうと明澄はクローディオに正直に話す。そして明澄は血を流してはいけない理由がわからないと話すと、クローディオは顔つきを変えた。
「――あのっ、すみません! 暗黙のルールの事を明澄様に話したんです、血を嗅がせてはいけないという話を……」
傍で話を聞いていたクリアは、自分が詠寿に血を嗅がせてはいけないという決まりがあることを勝手に明澄に話してしまったことを正直に謝った。
「どこまで話しましたか?」
「血を嗅がせてはいけないことだけ……詳しい事は」
「そうですか……。」
その件はどこまで話したかクローディオに尋問され、血を嗅がせてはいけないということだけで詳しい事はまだ話していないとクリアは正直に話した。
クローディオは少しだけ考え事をするようなしぐさを見せて沈黙すると……、
「私もそろそろこの事は話してやるべきだと思うんですが私は医者ですし、守秘義務がありますから詳しい事は……」
詠寿の持病については明澄にも詳しく話すべきだとクローディオ自身も思っているが、医者である自分には患者の守秘義務があるため勝手に話すことは許されないと詫びる。
――しかし……。
「でも、そこまで知りたいと言うなら厳生とリョウジに相談 してみなさい」
「――えっ!?」
自分が話せない代わりに厳生かリョウジに尋ねてみると良いと、クローディオは教えた。
「俺が言えるのはそれだけ……。それじゃあね、お大事に」
検診も終わり、お辞儀をするとクローディオは部屋を退室して行くと部屋を出て数歩歩いた曲がり角に厳生が立っていた。
「(これでいいんだろう? 厳生……)」
厳生に目線を向け、小声でクローディオは厳生に頼まれたことを果たしたと告げる。
「有難うございます、先生。」
「――厳生、いいのか? 王子にバレたら命令違反で処罰が下るかもしれんぞ?」
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「分かってますよ、でも……私は明澄に王子を誤解したままにしてほしくない。どんな風に処罰されようと、私は王子に幸せになって欲しいんです……」
自分は明澄に詠寿を誤解されたままにしてほしくないから教えるべきだと考えていての行動だと、処罰を受ける覚悟でなければこんな勝手な行動はしない、でもこれは詠寿の幸せを願っての行動であると厳生はクローディオの前で打ち明ける。
「それがリヴェラ姉さんとの、約束だから」
そして、厳生は姉・リヴェラを思い出しながら窓から外の風景を見ていた。
――明澄は、部屋に戻って朝食をとりながらもクローディオが言った言葉を考えていた。
「……」
色々考えて、詠寿が隠している秘密を知るためにもある行動に出ることを決意をした。朝食を終えて、明澄はクリアが淹れてくれたお茶と茶請けをいただいていた時だった。
「――クリア、急で申し訳ないけど厳生さんにリョウジさんの元に行けるように手配してくれるよう頼んでくれないかな?」
「――えっ!? あっ、はい……!」
クリアに厳生を通してリョウジの元に行かせてもらえるよう頼み込む。
クリアは急な頼みに慌てつつも、明澄のお願いを承諾した。
――数分後……。
――コンコン
「……明澄様、中に入っても?」
「どうぞ……」
入室していいか部屋にいた明澄に尋ねる厳生の声がドア越しに響いた。明澄は厳生を部屋の中に招き入れる、厳生の後ろにはクリアもいて心配している表情を浮かばせていた。
「私を呼んだということは、医務長からの伝言を聞いて、お話を聞く気になってくれたとみていいんですね?」
「――はい。でも、厳生さんは大丈夫なんですか?」
厳生は、明澄の様子を見て話を聞く気になったのか確認してくるがこんな大胆な事をして詠寿の傍にいなくて怪しまれないのか、明澄は厳生に尋ねる。
「――呼んだのは貴方でしょう? それに……ちょっと急用ができたと言って席を外しましたし。今日は街でお買い物をするのでアリヴ達が代わりに着くようお願いしておいたので、そこは大丈夫です。」
ちゃんと詠寿にばれないように手配はしてあると、アリヴ達が代わりにボディーガードとして付いて回っているのでその辺は抜かりないと厳生は答える。
「ーーでは、リョウジさんの元に行きましょう。彼は今、この時間帯だと中庭の手入れと魚たちの体調を診ているはずです」
そして厳生はリョウジがいる中庭に明澄をクリアとともに案内する。
――カチャン
中庭につながる扉を開けると、リョウジが中庭の魚たちと戯れつつ魚たちの体調を診ている姿を見つけた。
「――おやおや、明澄ちゃんだ。……そっちからきてくれるとはね?」
リョウジはまさか明澄からきてくれるとは思わず、そう呟いた。
「――あの、リョウジさん! 教えてほしいことがあるんです」
そして明澄はさっそく本題に入った。
「もし先輩に……詠寿さんについて知りたいことがあれば、貴方を頼れとクローディオさんが」
クローディオから詠寿の事を知りたければリョウジを頼れとアドバイスされたと、明澄は話した。
「――えっ、詠寿さんについて……何で、血を嗅がせてはいけないんですか!? 詠寿さんは何を隠しているのか、教えてください!」
何故詠寿は自分にそれを隠すのか、色々聞きたいことがあって無意識にリョウジに質問責めしていた。
リョウジは「ちょっと落ち着きな」と明澄を宥め……、
「――随分、急だね? まぁ、王子はなかなか教えてなかったみたいだけどね。でも、そろそろ俺も教えてやるべきだとは思っていたからね」
リョウジ自身もそろそろ明澄に詠寿がなかなか話そうとしない鮫の人魚の悪癖について教えなければいけないと思っていたと、正直に話す。
――そして……、
「明澄ちゃんさ……変な話、詠寿サマと会って何か感じなかったかい?」
「――えっ!?」
リョウジは突然、明澄に意味深な質問をしてきて明澄は慌てて考え込む。
「あの、関係ない変な話かもしれないけど……ボク、昔先輩にどこかで会っているんじゃないかって思う節があったりするんです」
「――!?」
答えにはなっていないだろうが、リョウジにここに来てから詠寿とは昔何処かで会っている気がしてならないと思うようになったということを明澄は伝えると二人は顔つきを変え、リョウジと厳生はお互い顔をを向けあう。
そしてリョウジは視線を明澄の方に戻すと……、
「――なら、話が早いよ。じゃあ……まず、悪癖について話そうか」
詠寿が話すことを躊躇している本題に入ることに決めた。
「鮫の人魚ってのは、人魚族の中でも高い戦闘力を持つんだ。人魚族の中でも戦闘集団と言っても過言でもない。ただ、鮫の人魚には欠点がある。それが“鮫の人魚の悪癖”。」
「……その欠点って?」
人魚族の中でも、鮫の人魚は戦闘員に一番向くほど身体能力に優れているが、実は鮫の人魚には重症な欠点があることを話す。
明澄は早くそれを聞きたくて無意識にリョウジに続きを急かした。
「……鮫の人魚は鮫本来の本質か、血の匂いを嗅ぐと興奮性が増して自我を失って嗜虐性を帯びた性格に変わってしまう。」
「――!?」
リョウジは鮫の人魚に血のにおいを嗅がせると鮫の人魚は鮫本来の本質なのか興奮して狂暴性のある性格に変わってしまうのだと説明する。
「特に鋭敏な嗅覚の持ち主はこれが出やすい、詠寿サマは残念なことに生まれつき嗅覚が鋭敏だ。」
「そうか、だからあの時……」
特にサメの人魚の中でも嗅覚が鋭敏である者程出やすいことをリョウジは説明し、詠寿は嗅覚が生まれつき鋭敏であることを話した。この話で明澄は兵士が血を流した時、周りがあんな大慌てしたのか納得できた。あれはすべて詠寿を守るための行動だったことを漸く理解することも出来た。
「私があの時、クリアに中庭か鍵のかかる場所に貴方を避難させろと命じたのは詠寿様に悪癖が出てしまったらリョウジさんの元へ詠寿様を大人しくさせる薬を打ってもらうか、せめて貴方だけでも傷つけさせない様にするためです。詠寿様は……この悪癖で貴方を傷つけるのではないかと不安視されていました。」
兵士が血を流した時にそう命令した理由を厳生はちゃんと丁寧に説明してくれた、そして詠寿がいつか持病である鮫の人魚の悪癖で明澄を傷つけるのではと怯えていることを明かした。
「この持病が厄介なのはね……一度、血の匂いを嗅いで興奮してしまったら自我を失うから時間経過でもなかなか本来の性格に戻れない、本人の意志関係なしにね……。本人が漸く我に返った時はもう辺りは血の海だったってケースもなくはない。」
そして補足するかのようにリョウジは一度血の匂いを嗅いで自我を失えば時間経過で対処しても鮫自体の本能が関係するのでなかなか本人の意志関係なく本来の性格に戻れないだと説明する。
「昔あった話では、これが原因で起きてしまった事件があったくらい……鮫の人魚で悪癖が出なかったのはプランクトン食性の鮫である人魚だけ……悪癖(これ)が原因で他の人魚たちは恐れて鮫の人魚たちと番になることを嫌がるようになってしまった」
――昔、鮫の人魚がその悪癖で我を忘れて血なまぐさい事件を起こしてしまったことが過去にあったこともあって鮫以外の魚種である人魚たちは鮫の人魚たちと余程でない限り番になりたがらないケースが多くなったと厳生は説明した。
「先輩……」
明澄は詠寿がなかなか言い出せなった理由がそれだったことも分かり、何も言えなくなる……。
教えなければならないと思いつつ、心の端でこの持病を知って明澄が離れてしまうのではという詠寿自身が抱えていた葛藤と不安が見え隠れしたから。
「まさか、その薬って……」
「抑制剤だ……鮫本来の本能を抑制する薬だよ」
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