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本編
第二十一話:真実を知る決意
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――王宮に帰った後も、あんなことがあったせいかぎくしゃくした空気になっていた。
結局、ノゼルは重要参考人として王宮に連れて行かれることとなった。詠寿は今回悪癖が出てしまったことと、それを明澄に見られてしまったことにショックを隠せていなかったようだった。
無理もない、せっかくの墓参りで相手側に非があったとしても不可抗力だったとしても暴力沙汰を起こしてしまったのだから。
詠寿は、部屋に戻って部屋に閉じこもってしまった……。
部屋の中で厳生が話をしており、ショットと事情を聴いたアリヴが心配そうに詠寿の部屋の前で聞き耳を立てている。
――カチャッ
「ーーどうだった?」
アリヴが部屋から出てきた厳生から詠寿の様子を聞くが、厳生は詠寿の耳に届かないようにしたいのか詠寿に聞こえぬよう場所替えを頼む。詠寿の部屋から少し離れたところで厳生は本題に入ろうとする。
「今回の件でかなりまいってるみたいだ、それにこのまま行くと不味いかも……」
「――何っ!?」
悪癖が出てしまったことで明澄を怯えさせてしまったと負い目を感じていることや、このまま行くと詠寿が不味い決断をするかもしれないと厳生が話す。
「王子は、こんな自分を明澄様は好いてくれるはずないと言って自分に関する記憶を消した方がいいのではと……」
「――そんな、掟違反どころじゃありませんよ!?」
話を聞いたところ、詠寿は今回の件をかなり気にしているらしく最悪な場合、詠寿は明澄を自分に関する記憶を消して人間界に返すかもしれないと危惧していると厳生が話す。
ショットはそんなことすれば、掟違反に反するだけではなく掟に従っている民衆や城の者を敵に回すことになると言う。
「だから不味いんじゃないか、明澄様には早く思い出させるためにもこっちも強硬手段をとりましょう」
厳生はこちらも急いで明澄にあることを知ってもらうように提案する。
「だが、勝手に話すなと言われているだろ? お前もどうなるか……」
アリヴは厳生がしようとしていることを悟り、心配の声を掛けると……、
「でも一か八かでもやるしかありません、二人とも……時間を作ってくれますね?」
「……わかった」
「なるべく時間は稼ごう」
厳生は一か八かでやる事を決断し、二人に時間を稼いでもらうように頼みこむ。
厳生たちの話を偶然立ち聞きして、ある場所に足取りを進める人影がいることを厳生たちはまだ知る由もなかった。
一方明澄は、今回の件で詠寿の事を心配していたが明澄もどうやって言葉を掛けていいのか分からず、そのままクリアに案内されて部屋に戻ろうとした時だった。
「あすみおに~さま♪」
「――うわっ!」
「るっ、瑠璃音姫!?」
急に後ろから誰かに抱きつかれた、明澄は驚いて後ろを振り向くと詠寿の妹である瑠璃音が明澄に抱きついたのだ。瑠璃音が少し宙に浮いているから体重は掛かっていないが抱きつかれるとさすがに驚く。
「ほらほら、姫様……急に抱きつくと驚かれますでしょう?」
「ルメルダさん?」
瑠璃音に注意する声が聞こえるとそこには侍女・ヴィオレではなく薬師であるルメルダの姿だった。
「ルメルダさん、今日ヴィオレさんは……?」
「ヴィオレちゃんは今日留守にしているの、だからあたしが代わりに瑠璃音姫のお守り番。」
明澄がルメルダにヴィオレがいない理由を問うと、ルメルダはヴィオレが私用で席を開けているので自分が代わりに瑠璃音の面倒を見ていると明かした。
「それと、さっきクローディオから伝言頼まれてね。」
「--?」
ルメルダはさっきクローディオとばったり会い、明澄への伝言を頼まれたのだと話した。
「『あの大馬鹿弟のことは私に任せてください、迷惑をかけた償いを兄としてどこかの形でさせますから』だってさ……」
伝言を聞く限り、弟であるノゼルがやらかしたことを大層気にしていたらしく、本来なら重罰を科せられてもおかしくないのだがクローディオからすれば身内である為、違う形で償わせるチャンスが欲しいと言いたいのだと思われた。
「――あっ、いえ……ボクの方はもういいですよ。そこまで気にしないでくださいと言っておいてください」
「あら、お優しいんですね……明澄様」
未遂だし兄弟喧嘩を間近で見ていた明澄は、不良人魚たちに幇助はしたが未遂で終わったしその件についてはもうそこまで咎めるつもりはないと話すと、ルメルダは伝言を苦笑いで了承する。
「彼にも色々訳がありそうだし……ね」
『優秀でちやほやされてきた兄貴たちに“出来損ない”の俺の気持ちなんかわかるかよ!』
明澄はノゼルが言い放った言葉がクローディオ達の家庭環境を物語っている気がしたのと、明澄自身は許せない感情を向けているのはあくまで自分を無理矢理抱こうとした砕波の方なのでノゼルにはそこまで怒りを向けていないと明かした後、ノゼルもノゼルで何か言い分があると思ってそんな考えに至ったと話した。
「気になりますか?」
「ええ、まぁ……」
クローディオ達の兄弟仲の亀裂の理由が気になるか聞かれ、明澄は正直に気になると言った。
「クローディオが言うにはノゼル君は……他の兄弟と比べると魔力が弱かったからクローディオのお父さん、クエシスの事も頭にあってノゼル君に厳しくし過ぎてしまったんですって。でもクローディオが言うには、彼のお父さんも厳しすぎたかもって少し反省しているんですって。」
クローディオから聞いた話ではノゼルは魔力の発達が他の兄弟に比べると劣り、クローディオ達の父はクエシスが大出世するほど長けていたことが頭にもあった為ノゼルに厳しくしてしまったというものらしい。ノゼルも認めて欲しかったのだろう、そういう考えに至った明澄は……
「……そうか、お父さんにも伝えるようクローディオさんに言ってくれませんか?」
「わかったわ……」
明澄はクローディオに会ったらノゼルが砕波に情報を流したことはもう気にしていないと伝えてほしいとルメルダに頼むとルメルダは快く了承してくれた。
「一緒に中庭にでも行かない? 明澄お兄様。」
「――えっ? でも……」
中庭に行かないかと瑠璃音は明澄の腕を引っ張りながら誘ってくるが、ドアの前で見張り番の衛兵がいるのにいいのかと思って衛兵の方を明澄はちら見する。
「大丈夫、あたくしも王族ですもの♪ あたくしと一緒なら兵士たちは何も言いませんわ」
「ねー?」といいながら瑠璃音は見張り番として起立していた衛兵たちに聞く、衛兵たちはやり場に困っているようだった。
「もう……勝手なんだから、姫様は」
「うふふふふ♪」
「だってさ……あんたら、30分か1時間ほど休憩してきてもいいと思うよ」
明澄は呆れつつ失笑して瑠璃音の誘いに乗ることに決めた。ルメルダが見張り番になっている衛兵たちに休憩を挟んでもいいと伝えながら、明澄を引っ張る瑠璃音について行った。
中庭に移動すると瑠璃音にベンチに誘われ、中庭の魚に餌をやりながらベンチに座っていた。
中庭の魚が、嬉しそうに餌を貰って食べる。
「……明澄お兄様はさ、お兄様の事好き?」
「――えっ!?」
瑠璃音はいきなり話を振ってきて明澄に詠寿の事が好きか聞いてきた。
「お兄様、悪癖のこと明澄お兄様に見られたことでショック受けてたみたいだから。明澄お兄様自身どう思ってるのかなって思って。」
瑠璃音はこんな質問をした理由を明確にはっきり教えた、明澄自身は詠寿のことは好きか嫌いか教えてほしいそうだ。
「こんなこと言うの図々しいかもだけど……、お兄様のこと嫌いにならないであげてね」
「――!」
「あたくしもお兄様の事好きだから、明澄お兄様にはせめてお兄様のこと友達としてでもいいから好きでいてほしいの。」
瑠璃音は明澄に願わくば身内としても詠寿の事をどうか嫌いにならないでほしいと願い出た、恋人として無理でもせめて友達として好きであって欲しいと願い出た。
「身内の勝手なお願いかもしれないけど……お兄様、不器用だからどう上手く気持ちを伝えていいかわからない人だし。普段強がってるくせにああいうところだとすぐヘタレになっちゃう人だから、体がでかい割に……。」
勝手かもしれないが、兄である詠寿は奥手で普段は虚勢を張っているものの恋愛に関しては臆病と評しながらも持病で恐ろしいことをしてしまうことがあっても心根は悪いわけではないから決して嫌いにならないであげてほしいと瑠璃音は辛辣な言葉を交え明澄に改めて頼み込んだ。
――くすっ
「大丈夫、嫌いにならないよ」
「――!」
身内独特の辛辣な瑠璃音の詠寿に対する評価に明澄は思わず失笑しながらも、詠寿の事を嫌いにはならないと安心させる。その返答に驚いたのか瑠璃音は真面目な顔をして明澄を見る。
「それは、友達として……?」
瑠璃音は明澄の詠寿に対する好意は友人としてのものか聞いた。瑠璃音の質問に対して明澄は首を横に振ると……、
「ボクもね……前々から先輩の事が好きだったんだ」
「――!」
明澄も大学で会った時から詠寿に対して恋心を秘めていたことを瑠璃音に打ち明ける。
「色々あり過ぎて混乱が一杯で整理出来ない所有るけど……、先輩は鮫の人魚である自分と闘っている人だって分かっているから。」
「――そう。それで……まだ整理できていないってなあに?」
掟とはいえ無理矢理連れてこられて色々な事があって、まだ整理が出来ていない事もあるが、悪癖で我を忘れた詠寿の姿は詠寿の本来の姿ではないと認識しているつもりだと明澄は瑠璃音に打ち明ける。
それを聞いて瑠璃音は安堵の表情を浮かべていたが、整理できていない部分は一体何か明澄に問いかける。
「あのね……先輩はボクの事で何か隠してる気がするんだ。昔、先輩と何処かあった様な気がしてならないんだ」
「――!」
そして詠寿とは昔何処かで会った気がすると瑠璃音に打ち明けていたところ……、
「その事は、私が話しましょう。」
「!? 厳生さん……!?」
誰かが遮るように声を上げたので振り向くと、厳生がクリアとともに中庭にいつの間にか入ってきて明澄の会話を聞いていたのだった。
「……王子が、掟を無視して貴方の記憶を消して人間界に戻すかもしれません」
「――!?」
厳生は今の詠寿の心理状況を明澄に明かし、下手をすれば掟を破ってまで記憶を消して人間界に明澄を戻すかもしれないと話す。
「お兄様、もしかして悪癖を知られたこと気にして身を引こうと……!?」
明澄に悪癖の実態を知られたことで弱気になっていることを悟った瑠璃音は、厳生に詠寿が身を引こうとしているか聞くと厳生は返答代わりに頷く。
「――お兄様のバカ、そう言って一番引きずるタイプのくせに!」
「そうなる前に貴方には知っていただきたい、もう時間はありません。」
悪癖の実態を曝け出してしまったことを気にして弱気になっている詠寿に、瑠璃音は呆れつつ怒っていた。厳生は明澄に掟を無視して明澄の自分と人魚界に関する記憶を消す前に絶対に知って欲しいから着いて来てほしい場所があると伝える。
「王子には貴方にとって思い出させたくない過去も思い出させるからと言って絶対にこの事は勝手に話すなと命令されていました、でも……王子がそう考えるようになった以上貴方にはちゃんと知って欲しい」
そして今まで詠寿がある事実を隠し通していた理由を厳生は話し、厳生はそうならない為にも明澄にはちゃんと事実を知って欲しいと厳生は説得をし始める。
「一度聞きます、貴方の傷を抉ることになるかもしれない。それでも……覚悟はできていますか?」
そして明澄のトラウマを掘り起こさせるようなことになるかもしれないがそれでも知りたいかと、
厳生は選択の余地をあげた。明澄は考え込むと、自分が眠っていると思い込んで曝け出した詠寿の言葉を思い出した……。
『攫っておいて軟禁しておいてこんなことしておいて……言える立場ではないということもわかっている。でも……、だれにも渡したくない程、俺はお前を愛している。』
『お前を傷つけたあの男にも、砕波にも……お前を渡したくはない』
『我儘だと思うが……そばにいてくれ、明澄。』
あの言葉の数々が詠寿の本心だとしたら、何をそこまでひた隠しにするのか余計知りたかった。
あの言葉の数々を思い出し、明澄はもう答えは決まった。
「お願いします。」
厳生に教えてほしいと願い出た、その言葉に笑みを浮かべ厳生は……、
「――では、“記憶の泉”の部屋に案内します。」
その事実を知るための部屋に案内すると話した。
「……」
瑠璃音もその様子を見て何か考えているようだった。
結局、ノゼルは重要参考人として王宮に連れて行かれることとなった。詠寿は今回悪癖が出てしまったことと、それを明澄に見られてしまったことにショックを隠せていなかったようだった。
無理もない、せっかくの墓参りで相手側に非があったとしても不可抗力だったとしても暴力沙汰を起こしてしまったのだから。
詠寿は、部屋に戻って部屋に閉じこもってしまった……。
部屋の中で厳生が話をしており、ショットと事情を聴いたアリヴが心配そうに詠寿の部屋の前で聞き耳を立てている。
――カチャッ
「ーーどうだった?」
アリヴが部屋から出てきた厳生から詠寿の様子を聞くが、厳生は詠寿の耳に届かないようにしたいのか詠寿に聞こえぬよう場所替えを頼む。詠寿の部屋から少し離れたところで厳生は本題に入ろうとする。
「今回の件でかなりまいってるみたいだ、それにこのまま行くと不味いかも……」
「――何っ!?」
悪癖が出てしまったことで明澄を怯えさせてしまったと負い目を感じていることや、このまま行くと詠寿が不味い決断をするかもしれないと厳生が話す。
「王子は、こんな自分を明澄様は好いてくれるはずないと言って自分に関する記憶を消した方がいいのではと……」
「――そんな、掟違反どころじゃありませんよ!?」
話を聞いたところ、詠寿は今回の件をかなり気にしているらしく最悪な場合、詠寿は明澄を自分に関する記憶を消して人間界に返すかもしれないと危惧していると厳生が話す。
ショットはそんなことすれば、掟違反に反するだけではなく掟に従っている民衆や城の者を敵に回すことになると言う。
「だから不味いんじゃないか、明澄様には早く思い出させるためにもこっちも強硬手段をとりましょう」
厳生はこちらも急いで明澄にあることを知ってもらうように提案する。
「だが、勝手に話すなと言われているだろ? お前もどうなるか……」
アリヴは厳生がしようとしていることを悟り、心配の声を掛けると……、
「でも一か八かでもやるしかありません、二人とも……時間を作ってくれますね?」
「……わかった」
「なるべく時間は稼ごう」
厳生は一か八かでやる事を決断し、二人に時間を稼いでもらうように頼みこむ。
厳生たちの話を偶然立ち聞きして、ある場所に足取りを進める人影がいることを厳生たちはまだ知る由もなかった。
一方明澄は、今回の件で詠寿の事を心配していたが明澄もどうやって言葉を掛けていいのか分からず、そのままクリアに案内されて部屋に戻ろうとした時だった。
「あすみおに~さま♪」
「――うわっ!」
「るっ、瑠璃音姫!?」
急に後ろから誰かに抱きつかれた、明澄は驚いて後ろを振り向くと詠寿の妹である瑠璃音が明澄に抱きついたのだ。瑠璃音が少し宙に浮いているから体重は掛かっていないが抱きつかれるとさすがに驚く。
「ほらほら、姫様……急に抱きつくと驚かれますでしょう?」
「ルメルダさん?」
瑠璃音に注意する声が聞こえるとそこには侍女・ヴィオレではなく薬師であるルメルダの姿だった。
「ルメルダさん、今日ヴィオレさんは……?」
「ヴィオレちゃんは今日留守にしているの、だからあたしが代わりに瑠璃音姫のお守り番。」
明澄がルメルダにヴィオレがいない理由を問うと、ルメルダはヴィオレが私用で席を開けているので自分が代わりに瑠璃音の面倒を見ていると明かした。
「それと、さっきクローディオから伝言頼まれてね。」
「--?」
ルメルダはさっきクローディオとばったり会い、明澄への伝言を頼まれたのだと話した。
「『あの大馬鹿弟のことは私に任せてください、迷惑をかけた償いを兄としてどこかの形でさせますから』だってさ……」
伝言を聞く限り、弟であるノゼルがやらかしたことを大層気にしていたらしく、本来なら重罰を科せられてもおかしくないのだがクローディオからすれば身内である為、違う形で償わせるチャンスが欲しいと言いたいのだと思われた。
「――あっ、いえ……ボクの方はもういいですよ。そこまで気にしないでくださいと言っておいてください」
「あら、お優しいんですね……明澄様」
未遂だし兄弟喧嘩を間近で見ていた明澄は、不良人魚たちに幇助はしたが未遂で終わったしその件についてはもうそこまで咎めるつもりはないと話すと、ルメルダは伝言を苦笑いで了承する。
「彼にも色々訳がありそうだし……ね」
『優秀でちやほやされてきた兄貴たちに“出来損ない”の俺の気持ちなんかわかるかよ!』
明澄はノゼルが言い放った言葉がクローディオ達の家庭環境を物語っている気がしたのと、明澄自身は許せない感情を向けているのはあくまで自分を無理矢理抱こうとした砕波の方なのでノゼルにはそこまで怒りを向けていないと明かした後、ノゼルもノゼルで何か言い分があると思ってそんな考えに至ったと話した。
「気になりますか?」
「ええ、まぁ……」
クローディオ達の兄弟仲の亀裂の理由が気になるか聞かれ、明澄は正直に気になると言った。
「クローディオが言うにはノゼル君は……他の兄弟と比べると魔力が弱かったからクローディオのお父さん、クエシスの事も頭にあってノゼル君に厳しくし過ぎてしまったんですって。でもクローディオが言うには、彼のお父さんも厳しすぎたかもって少し反省しているんですって。」
クローディオから聞いた話ではノゼルは魔力の発達が他の兄弟に比べると劣り、クローディオ達の父はクエシスが大出世するほど長けていたことが頭にもあった為ノゼルに厳しくしてしまったというものらしい。ノゼルも認めて欲しかったのだろう、そういう考えに至った明澄は……
「……そうか、お父さんにも伝えるようクローディオさんに言ってくれませんか?」
「わかったわ……」
明澄はクローディオに会ったらノゼルが砕波に情報を流したことはもう気にしていないと伝えてほしいとルメルダに頼むとルメルダは快く了承してくれた。
「一緒に中庭にでも行かない? 明澄お兄様。」
「――えっ? でも……」
中庭に行かないかと瑠璃音は明澄の腕を引っ張りながら誘ってくるが、ドアの前で見張り番の衛兵がいるのにいいのかと思って衛兵の方を明澄はちら見する。
「大丈夫、あたくしも王族ですもの♪ あたくしと一緒なら兵士たちは何も言いませんわ」
「ねー?」といいながら瑠璃音は見張り番として起立していた衛兵たちに聞く、衛兵たちはやり場に困っているようだった。
「もう……勝手なんだから、姫様は」
「うふふふふ♪」
「だってさ……あんたら、30分か1時間ほど休憩してきてもいいと思うよ」
明澄は呆れつつ失笑して瑠璃音の誘いに乗ることに決めた。ルメルダが見張り番になっている衛兵たちに休憩を挟んでもいいと伝えながら、明澄を引っ張る瑠璃音について行った。
中庭に移動すると瑠璃音にベンチに誘われ、中庭の魚に餌をやりながらベンチに座っていた。
中庭の魚が、嬉しそうに餌を貰って食べる。
「……明澄お兄様はさ、お兄様の事好き?」
「――えっ!?」
瑠璃音はいきなり話を振ってきて明澄に詠寿の事が好きか聞いてきた。
「お兄様、悪癖のこと明澄お兄様に見られたことでショック受けてたみたいだから。明澄お兄様自身どう思ってるのかなって思って。」
瑠璃音はこんな質問をした理由を明確にはっきり教えた、明澄自身は詠寿のことは好きか嫌いか教えてほしいそうだ。
「こんなこと言うの図々しいかもだけど……、お兄様のこと嫌いにならないであげてね」
「――!」
「あたくしもお兄様の事好きだから、明澄お兄様にはせめてお兄様のこと友達としてでもいいから好きでいてほしいの。」
瑠璃音は明澄に願わくば身内としても詠寿の事をどうか嫌いにならないでほしいと願い出た、恋人として無理でもせめて友達として好きであって欲しいと願い出た。
「身内の勝手なお願いかもしれないけど……お兄様、不器用だからどう上手く気持ちを伝えていいかわからない人だし。普段強がってるくせにああいうところだとすぐヘタレになっちゃう人だから、体がでかい割に……。」
勝手かもしれないが、兄である詠寿は奥手で普段は虚勢を張っているものの恋愛に関しては臆病と評しながらも持病で恐ろしいことをしてしまうことがあっても心根は悪いわけではないから決して嫌いにならないであげてほしいと瑠璃音は辛辣な言葉を交え明澄に改めて頼み込んだ。
――くすっ
「大丈夫、嫌いにならないよ」
「――!」
身内独特の辛辣な瑠璃音の詠寿に対する評価に明澄は思わず失笑しながらも、詠寿の事を嫌いにはならないと安心させる。その返答に驚いたのか瑠璃音は真面目な顔をして明澄を見る。
「それは、友達として……?」
瑠璃音は明澄の詠寿に対する好意は友人としてのものか聞いた。瑠璃音の質問に対して明澄は首を横に振ると……、
「ボクもね……前々から先輩の事が好きだったんだ」
「――!」
明澄も大学で会った時から詠寿に対して恋心を秘めていたことを瑠璃音に打ち明ける。
「色々あり過ぎて混乱が一杯で整理出来ない所有るけど……、先輩は鮫の人魚である自分と闘っている人だって分かっているから。」
「――そう。それで……まだ整理できていないってなあに?」
掟とはいえ無理矢理連れてこられて色々な事があって、まだ整理が出来ていない事もあるが、悪癖で我を忘れた詠寿の姿は詠寿の本来の姿ではないと認識しているつもりだと明澄は瑠璃音に打ち明ける。
それを聞いて瑠璃音は安堵の表情を浮かべていたが、整理できていない部分は一体何か明澄に問いかける。
「あのね……先輩はボクの事で何か隠してる気がするんだ。昔、先輩と何処かあった様な気がしてならないんだ」
「――!」
そして詠寿とは昔何処かで会った気がすると瑠璃音に打ち明けていたところ……、
「その事は、私が話しましょう。」
「!? 厳生さん……!?」
誰かが遮るように声を上げたので振り向くと、厳生がクリアとともに中庭にいつの間にか入ってきて明澄の会話を聞いていたのだった。
「……王子が、掟を無視して貴方の記憶を消して人間界に戻すかもしれません」
「――!?」
厳生は今の詠寿の心理状況を明澄に明かし、下手をすれば掟を破ってまで記憶を消して人間界に明澄を戻すかもしれないと話す。
「お兄様、もしかして悪癖を知られたこと気にして身を引こうと……!?」
明澄に悪癖の実態を知られたことで弱気になっていることを悟った瑠璃音は、厳生に詠寿が身を引こうとしているか聞くと厳生は返答代わりに頷く。
「――お兄様のバカ、そう言って一番引きずるタイプのくせに!」
「そうなる前に貴方には知っていただきたい、もう時間はありません。」
悪癖の実態を曝け出してしまったことを気にして弱気になっている詠寿に、瑠璃音は呆れつつ怒っていた。厳生は明澄に掟を無視して明澄の自分と人魚界に関する記憶を消す前に絶対に知って欲しいから着いて来てほしい場所があると伝える。
「王子には貴方にとって思い出させたくない過去も思い出させるからと言って絶対にこの事は勝手に話すなと命令されていました、でも……王子がそう考えるようになった以上貴方にはちゃんと知って欲しい」
そして今まで詠寿がある事実を隠し通していた理由を厳生は話し、厳生はそうならない為にも明澄にはちゃんと事実を知って欲しいと厳生は説得をし始める。
「一度聞きます、貴方の傷を抉ることになるかもしれない。それでも……覚悟はできていますか?」
そして明澄のトラウマを掘り起こさせるようなことになるかもしれないがそれでも知りたいかと、
厳生は選択の余地をあげた。明澄は考え込むと、自分が眠っていると思い込んで曝け出した詠寿の言葉を思い出した……。
『攫っておいて軟禁しておいてこんなことしておいて……言える立場ではないということもわかっている。でも……、だれにも渡したくない程、俺はお前を愛している。』
『お前を傷つけたあの男にも、砕波にも……お前を渡したくはない』
『我儘だと思うが……そばにいてくれ、明澄。』
あの言葉の数々が詠寿の本心だとしたら、何をそこまでひた隠しにするのか余計知りたかった。
あの言葉の数々を思い出し、明澄はもう答えは決まった。
「お願いします。」
厳生に教えてほしいと願い出た、その言葉に笑みを浮かべ厳生は……、
「――では、“記憶の泉”の部屋に案内します。」
その事実を知るための部屋に案内すると話した。
「……」
瑠璃音もその様子を見て何か考えているようだった。
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