盲目少年に恋しイタチザメ

水野あめんぼ

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本編

第三十一話:実父との面会

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明澄達が待つところで車を止めると、降りて行き明澄達と合流した。

「イルカ車呼んでおいた、速攻で東の人魚界に行けるぞ」

詠寿は王族専用のイルカ車を用意して待機していたことを教え、乗るように急かす。
王族専用のイルカ車は普通のイルカ車より大き目で最低6人は乗れる仕様だった。

「でも王宮に行く際は王族か王族関係者の同行が必須だからボクらもついて行くよ、水中呼吸薬は持っているね?」
「はい、その辺はばっちりです。」

水避けの結界を張っているとはいえ中に水が入り込まないとは言い切れないイルカ車に水中呼吸薬の所持を確認され、琉璃は所持していると答えた。
友人の人魚で魔法使いであるフリッグが作った本物だからと説明した後、明澄に続いて乗り込んだ。

「観光客専用の潜水艦もあるんだがな、水圧防止しないといけないし結構面倒だからな」
「イルカ車……か」

最近では人魚界行専用の潜水艦もあるにはあるが、そちらは観光用に作られたもので料金を取られる上に魔法使いが出向いて水圧に耐えられるようにしなきゃいけないのだ。

それを考えればイルカ車で行った方が早い、しかしながら独特の揺れがあるためイルカ車に酔いやすい琉璃は少しだけげっそりする。

「まぁ、慣れだから……」

イルカ車を用意されて少しげっそりする琉璃に明澄も最初は酔ってはいたが、数回乗れば慣れて酔いはしなくなったと話す。

「アタシ、イルカ車は大丈夫ですもんね~」
「それじゃあ行きましょう、パパラッチと言いましたか? 彼らがいつ駆けつけてくるか分からないので……」

飛行機と違ってイルカ車には酔わないことを自慢するノゼルをスルーし、厳生は今詠寿はこの国の有名人なのであまりぐずぐずしていると、取材陣がネタ欲しさに詠寿を追っかけてくるので発破をかける。

「ようし、出発!」

全員乗ったことを確認し、船頭の人魚がイルカたちに合図を送りイルカたちは東の人魚界に向けて潜って行った。





ーー数時間たつと、漸く東の人魚界についた。

琉璃はやはり酔ってしまい、クリアが酔い止めの薬をくれて琉璃はそれを飲む。
イルカ車を漕いでいるイルカたちは空中遊泳ベルトの効果ですいすいと空中を泳いで行く。

王族専用のイルカ車の存在に気付いた一般市民の人魚たちは手を振ってきて、明澄は挨拶をしてくる。明澄と詠寿の姿を見つけた一部の一般市民たちは「詠寿王子だ!」「明澄様もいる!」とざわついていた。

「明澄サマもいまじゃ東の人魚界の有名人だねぇ」
「そりゃあ、王子の婚約者様ですし……」

王宮の門までイルカ車が辿りつくと王族の門番がイルカ車を引きとめた後、厳生達と詠寿の姿を確認し、「失礼しました」と一言詫びると門をくぐる許可をあげて速やかに通した。

「ーーあっ、詠寿様だ!」
「お帰りになられた!」

詠寿の姿を確認した他の衛兵や召使いたちが帰ってきたことを不知火王に知らせに行ったり、イルカ車の前で待機したりする。

イルカ車から降りると一斉に「お帰りなさいませ」と言う声が聞こえてきた。

「詠寿様、明澄様もお勤めご苦労様です。」

召使いで主任代理を任されている人魚が詠寿に挨拶をしてくる、琉璃に続いて砕波が降りるとその場にいた召使いたちがぎょっとした顔をする。
どういう反応するか、どういう反応を取られるかは分かっていたがやはり多少傷つくものだ。

「みんな、昔の砕波の事を知っているやつがいれば多少は嫌な気持ちになるだろう……それは分からなくはない。だが、砕波はあくまで父に話があって来ただけだ。図々しいかもしれないが多少は長い目で見てやってくれないか?」

詠寿は砕波の悪行を知っている召使いたちからすれば煙たいかもしれないが、昔と違い砕波も変わった為少しだけここに滞在することを許してやってほしいと説得した。

「詠寿……」

――詠寿が自分を庇って召使いたちに説得してくれる日が来るなんて思ってもいなかった。

昔の険悪だったころの時代じゃあり得ない光景だったから砕波も、詠寿を迎えに取り囲んだ召使いや衛兵たちも驚いた顔をしていた。

「わっ、分かりました……。」

南の人魚界の王からも更正済みと認定されていることは承知だったが召使いたちからは本当に更正しているかまだ疑いの目はかけられていることは今の反応で分かった。

しかし、砕波の悪行に一番激怒していた詠寿にそう言われると流石に召使いたちも引き下がるしかなかった。

「では……、ご案内します。私は不知火王と大臣たちに話をしてきますので」

主任代理も折れて砕波も通すことを許したのだった、主任代理は案内を召使いの一人に任せて不知火王や大臣たちに知らせに行った。

案内役の召使いは目の色を伺いながら、琉璃たちを部屋に案内した。

「当然の反応とはいえ、少しショックだったな。」
「大丈夫だよ、きっと……」

先程の使用人たちの反応への感想を呟くと琉璃は元気づける。部屋に荷物を置いて、砕波はシャワー室に向かって人魚の姿に戻った。

「不知火王のところに先に行くの?」

琉璃はまず不知火王から謝罪に行くのか聞くと……、

「いいや、まず……くそ親父に会いに行こうと思う。」
「そうか……じゃあ、行こう?」

砕波は父に会いに行ってから不知火王との話をすると決めた、琉璃はそれを聞くとまず不知火王への謝罪の前に砕波の父の元に行こうと言う。

部屋から出ると何処へ行くのかたまたまその場を通りかかった召使いに聞かれ、父の方に行くと話をして自分の家に向かうことに決めた。

「俺の家は王宮の本館から西側に有る屋敷のようなところ……王族の分家は大抵ここに住むことが決まりなんだ。出入りは許されても王宮の中核で暮らすことが許されるのは王族の後継者とその家族だけ」

王宮の決まりを説明しながら砕波について行くと屋敷のような白い建物が見えてきた、そこに砕波の父がいると思うと緊張が高鳴る。

砕波が前に着くと、庭の手入れをしていたリゼットが琉璃達の姿を見つけ駆けつけてきた。

「――砕波様!? まぁ、今お帰りに!?」
「ただいま、リゼット」

リゼットはいきなり来た琉璃たちに戸惑いを隠せず、琉璃も砕波も里帰りしに来て苦笑いを浮かべながら挨拶をする。

「……親父は?」
「はい、いらっしゃいます」

砕波は父が在宅か聞くと、リゼットは申し訳なさそうに答える。いつもなら父が在宅だと聞くだけで嫌だったが、今回は都合がよかった。

「丁度いい、話をしたい。」
「――えっ!?」

父がいると聞いて砕波は自ら自宅である西の屋敷に足を踏み入れたのだった。

琉璃も続いて砕波の自宅である屋敷に足を踏み入れる、リゼットは心配そうに琉璃達を見守っていた。これだけの広い屋敷で使用人がいまだリゼット以外見当たらないのも緊張を高ぶらせる。

しかし少し歩くと漸く3人ぐらいの廊下掃除をしていた使用人を見かけ、砕波の存在に気付いた使用人たちは、砕波の存在に驚いてすぐ立ち退いた。

「あら、誰かと思えば……」

「――!」

厭味ったらしい女性の声が届き、振り向くと化粧の濃い女性人魚が琉璃達の後ろから近付いてきた。

「(……継母だ)」
「(――えっ!?)」

小声でこの女性こそ父の再婚相手である自身の継母であることを砕波が教え、琉璃はそれに驚愕する。

? 砕波さん、よくもまぁ顔出せましたねぇ」

「別に、今回用があるのはあんたじゃないよ。お義母様……」

砕波が更正済みと認定されて南の人魚界から出られるようになったことを知ってか知らずかは分からないものの、厭味ったらしい口調から砕波を疎ましく思っていることは丸わかりだった。だが砕波も負けておらず、継母である女性人魚に用はないと一蹴した。

「まぁ……、相変わらず憎たらしい」

青筋を立て、憎まれ口を継母は叩いていたが砕波は無視して父親のいる部屋に向かおうとする。琉璃は戸惑いながらも砕波について行く。

砕波に対する冷たい対応、視線、そして継母が放つ嫌味……。砕波が家に帰りたくないと言った理由も、今なら分かると琉璃も肌で感じていたのだった。

こんな環境で性格が拗れない訳がないのだから……。

でも、砕波はもう昔と違って考えが変わった。
父に愛してもらえなくても継母に嫌われていても、琉璃が自分を愛してくれる。リゼットもいる。
それに気付いたのだ……。

琉璃は自分を見捨てないと言ってくれた、だから避けていた父と話し合うことができると思ったのだ。

意を決し父のいる部屋を開けた、砕波の父は息子の姿を見て驚いていた。

「お前……!」
「久しぶりだな……親父」

砕波が突然帰郷するなんて思っていなかったようで、しかしすぐに我に返って砕波の父は「何の用だ」と聞いて来た。砕波の父は砕波に面影がある顔をした40代後半くらいの男性の人魚だった。

「別に……親父、アンタは俺がサメの人魚であることを散々けなしたよな?」

砕波は父親の過去の発言を蒸し返し始めた、本人はどうせ忘れているだろうけど蒸し返して思い出させてやりたい気持ちだったためそう言い放ったのだ。

「俺の歌声が耳障りだと言ったこともあった……母さんが好きだって言ってくれた声をアンタのその言葉が俺の歌声を封印してた」
「それがなんだ、今頃……そんな昔のこと俺は知らん。そんなこと言いにわざわざ出向いたのか?」

予想通りと言うべきか、父は反省しておらず寧ろ自分は悪くないと開き直る始末だった。

呆れてしまった、傷つけて置いて覚えていないんだって……。いいや、人のことは言えなかった、明澄に言われるまでクリアにしたことを自分も忘れていたのだから。同族嫌悪のような気持ちになって砕波は嫌になった。

琉璃はそれに気づき、ぎゅっと砕波の腕に抱きついた。

「――!」

 琉璃の方を見ると、琉璃は優しい笑みを浮かべて頷いた。「大丈夫だよ」と言ってくれていることが分かって砕波は今の気持ちを払拭することが出来た。

「そいつは……?」
「琉璃……、俺はこの子と一緒に生きていくって決めた。それをアンタに報告しに来ただけ」

砕波の父はようやく琉璃の存在を聞き、砕波は父親に一応紹介の形を取って琉璃は今自分にとって大切な人だと言うことを教える。

「ほぉ、物好きもいたもんだ……。まして、人を傷つけて迷惑をかけまくる鮫の人魚を好きになる輩なんてな!」

琉璃を見て、砕波の父は侮蔑的な言葉を並べ琉璃を貶した。砕波は父がこんな反応するとは分かっていたが、琉璃を悪く言われると激昂しそうになるが琉璃がそれを止める。

琉璃は先程までただ様子を伺うだけだったが、漸く口を開き……

「たいせつなものが本当に見えていないんですね……。かえって哀れに見えます」

「――ハァ!?」

 琉璃は砕波の父からしたら挑発にも思えるような言葉をぶつけて来て、砕波の父親は琉璃の言葉に不快そうに顔をしかめた。砕波は琉璃の突然の挑発的発言に驚いていた。

「砕波さんのお父さん……、貴方が何故そこまで実の子である砕波さんを嫌う理由はぼくにはわかりませんし理由は知りません。でも、これだけは言えます。」
「……」
「ぼくは砕波さんが鮫の人魚であることも含めて、……“大好き”です。」

琉璃は砕波の父に砕波のすべてが“好き”で傍にいると、砕波の父に言い放った。
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