血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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出会い

レヴィアという青年

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【地下街・レヴィア視点】

狭く、湿った部屋だった。

壁は煤で黒ずみ、床の石は長年の足音にすり減っている。
窓なんてものは当然ない。
空気は淀み、吐いた息さえすぐに重く戻ってくる。

レヴィアはその部屋で一人、ぼんやりと背を壁に預けていた。

明かりは、卓上に置いたランプひとつ。
頼りない炎が、わずかに揺れては彼の輪郭を浮かび上がらせていた。

ここ数日は、特に忙しかった。

盗み、取り立て、時には殺し。
地下街に生きるなら、それくらい“普通”の仕事だ。

いちいち罪悪感なんて感じていたら、とっくに死んでる。

(……クソみてぇな世界だ)

レヴィアは、ゆっくりと煙草に火を点けた。

煙が細く立ち上り、部屋の天井に吸い込まれていく。
地下には天井がある。
空はない。

どれだけ足掻いても、上には行けない。
腐った水と、血と、嘘しかない場所。
それでも、ここが“自分の世界”だった。

“外”を見たことはない。

けれど、別に見たいとも思わなかった。

ただ──

(生きていくために、やってるだけだ)

この場所では、どんな奴でも“価値”があれば生きられる。
力、金、恐怖、支配。

自分は、運良く“力”と“頭”を持っていた。
だから今日も生きている。ただそれだけだ。

殺すときも、盗むときも、誰の顔も覚えない。
興味がない。
明日にはどうせ死ぬかもしれない連中のことなど、覚える意味もない。

けれど──

(……時々、わけのわかんねぇ夢を見る)

真っ白な何かに追いかけられて、息もできずに目を覚ます。
夢の中では、決まって自分が“ちっぽけな子ども”に戻っている。

過去のことなど、とうに切り捨てたはずなのに。

レヴィアは煙を吐いた。
煙の先にある暗闇を、じっと見つめる。

(……くだらねぇ)

寝るわけでもなく、何かをするわけでもなく、ただこうして、時間を潰していく。

仲間? 信頼?
そんなものは裏切られるために存在する。
自分以外、誰も信用しない。

孤独は怖くない。
元からそうだった。
怖いのは──何かを“信じて”、それが壊れることだ。

レヴィアは立ち上がった。

背筋を伸ばし、肩を回す。
どこからともなく、地下の遠くから喧騒が聞こえる。

誰かが争っている。
誰かが泣いている。
誰かが死んでいる。

(どうでもいい)

ただ、今日も歩く。

靴音だけが、静かに石畳に響いた。

この道の先で、自分はまた血を流し、何かを壊し、そして誰にも知られず戻ってくるだろう。

だが──

ほんの数日後。
レヴィアの人生は、音もなく“ずれて”いく。

まだ小さく、まだ壊れかけの、ある少女と出会うことで。

けれど今はまだ、それを知る術もない。

ただ、静かな夜が続いている。
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