血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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出会い

始まり

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【レヴィア視点/地下の家・初日とその夜】

地下街の朝は、地上よりも静かだ。
光が差さねぇ分、時間の感覚も鈍る。

それでも、空腹だけは誤魔化せねぇ。
──普通はな。

「……」

パンを置いた。

冷めたスープも添えてみた。
干し肉もひとかけら。

(ガキは食い物に弱ぇ)

誰に教わったわけでもねぇが、それくらいわかる。
地下じゃ生きてくために“食うこと”が何より優先される。

特に子どもは、空腹に勝てねぇ。
本能的に手を伸ばすはずだった。

……だが、こいつは違った。

壁に背をつけて、じっと座っている。
まるで張り付いたように、一切動かない。

「……食わねぇのか」

返事は、ない。

ほんの一瞬、視線が皿に向いた気がした。
けどすぐに、また無表情な監視の目に戻る。

(……まるで、殺し屋に睨まれてるみてぇだ)

──そう、ずっと見られていた。
俺がナイフを抜かないか。
寝込みを襲ってこないか。

このガキ、目つきが違う。
他のガキと同じに考えたら、命を落とすタイプだ。

言葉をかけても無駄。
問いかけにも反応しねぇ。

水さえ飲まねぇ。
本能で生きてるはずの年頃で、それを拒絶するってのは──

(……何を食って、どうやって生きてきたんだ)

腹が減っても、喉が渇いても、
“それを表に出すな”と叩き込まれてきたような冷めた目。

泣かねぇ。
喚かねぇ。
怯えもしねぇ。

ただ、ひたすらに──警戒してる。

背中は絶対に見せねぇ。
夜も、まったく眠らねぇ。

(……試されたな、昨夜)

ナイフを喉に当てられたとき、こいつの目に一瞬だけ“迷い”が見えた。

切れなかった。
俺を“殺してもいい”と教え込まれたような振る舞いだったくせに、結局殺さなかった。

(殺せなかったんじゃねぇ、殺さなかったんだろ)

理由は分からない。
けど──“殺さなくていい”と思った。

その判断が、このガキにとってどれほどの意味を持っていたかは分からねぇ。

(……クソッタレな場所で、どんな目に遭ったんだ)

名前すら教えてくれねぇ。

だから、今まで何があったのか──
聞いたところで、きっと“死んでも話さねぇ”。

そんな目をしてる。

(……けどよ)

何でか、放っておけなかった。

レヴィアは、パンの皿を引き戻さず、そのまま置いておいた。
水も、ぬるくなったままのままにしておく。

ふと、マチルダと目が合った。
一瞬。ほんのわずか。

レヴィアが何も言わず、何もしないことに、少しだけ──ほんのわずかだけ、表情が緩んだ気がした。

(……気のせいか)

あるいは。

その“気のせい”が、始まりだったのかもしれない。
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