血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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出会い

守るべき存在

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【地下街・朝/レヴィアの部屋】

鉄の匂いが薄く残る地下の空気に、朝の静けさが広がっていた。

レヴィアはいつも通り早く目覚めていたが、隣の気配がなぜか気になっていた。
まだマチルダは眠っているのか、それとも──

そのとき。

「……レヴィア」

不意に名前を呼ばれ、レヴィアはピクリと動きを止めた。

振り返ると、壁際に座ったマチルダが、いつものように無表情のまま、こちらを見ていた。

「……!」

(出会ってから、名前を呼ばれたのは──初めてだ)

思わず固まってしまう。
たった一言なのに、レヴィアは返し方を一瞬忘れた。

マチルダは、そんな彼の様子に少しだけ眉を動かして言った。

「……変な顔。名前呼ばれたくらいで」

「うるせぇよ」

顔を背けながら低く返す。
だがどこか、いつもより言葉がやわらかく聞こえた。

マチルダは、ふと視線を落として呟くように言った。

「……仕事、探してくる」

「は?」

唐突すぎる言葉に、レヴィアは眉をひそめた。

「私にできるのって、“殺し”くらいだから。……言ったでしょ? 殺し屋は儲かるって」

淡々とした口調だが、それはまるで“当たり前の現実”を口にしているようだった。

レヴィアは数秒、何も言えなかった。

「……そんなこと、もうする必要はねぇ」

ようやく出た言葉は、思った以上に静かで強かった。

マチルダは目を細めた。

「……なんで?」

「お前はガキだろ。……ガキはガキらしく、大人に守られてりゃいい」

言ったあと、自分の口調の硬さに、レヴィアは少しだけ後悔した。
けれどそれは、間違いなく彼の“本音”だった。

するとマチルダが、少しだけ視線を外して、小さく言った。

「レヴィアが、私のこと……守るの?」

その声には、かすかに迷いがあった。
でも、その“迷い”は、期待と信じたい気持ちの裏返しだった。

レヴィアは、黙ってマチルダを見つめた。

そして──ほんの少しだけ、声のトーンを落として答えた。

「……あぁ。俺が守る」

それは決して軽い言葉ではなかった。
それは、“責任”を背負う者の、覚悟の一言だった。

マチルダはしばらく何も言わず、じっとレヴィアの顔を見ていた。
そして、何も言わずにうなずいた。

その日から、マチルダは殺し屋としての“過去”ではなく、
“守られるガキ”としての“今”を、ほんの少しずつ歩み始めることになる──
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