血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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出会い

気配探知

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【地下街・通り沿い|午後】

ざわついた市場の音、叫び声、喧嘩の音。それが日常だった。
そんな中で、ぽっかりと空いた裏通りの空き地。汚れた布切れのようなボールを蹴って遊ぶ、年の近い子どもたち。
笑い声が響いていた。

マチルダはピタリと足を止め、じっとその光景を見つめた。
レヴィアも立ち止まる。ふと、横顔を見ると──

その表情には、“疑問”しかなかった。

「……あれが欲しいのか?」

「ううん……」

マチルダは首を横に振った。

「……あの人たち、なんで笑ってるの?」

レヴィアはわずかに眉を寄せた。
彼女の問いは、“興味”ではなく、“理解不能”という感覚からのものだった。

「……ああいう遊びが、楽しいんだろ」

「……楽しい? あれ、やらなきゃいけないことなの?」

レヴィアは黙り込んだ。

“やらなきゃいけないこと”。
生きるため、殺すため、それ以外の価値観がない世界で育ったガキの口から出る当然の言葉。
その無垢な無知が、逆に胸に刺さる。

(本当に……ガキらしくねぇ)

するとマチルダが、ふいに視線を少し横へずらした。
裏路地の角、瓦礫の影を指すように目だけで示す。

「……レヴィア。あれ、知り合い?」

「は?」

「裏路地の角から見てる、多分男。敵意はない」

レヴィアは瞬時に目を凝らした。
ようやく──そこに、一人の男が立っているのを確認する。
見慣れた顔だ。地下街の窃盗仲間だった元ゴロツキ。だが気配は完璧に殺していたはず。

「……お前、あの距離から気配感じ取ったのか」

「? レヴィアは気づかなかったの?」

「……」
言葉が詰まった。

このガキ、やっぱり──“異常”だ。
それは並の生き延び方じゃない。“殺すか殺されるか”で生きてきた証だった。

やがて、その男がゆっくりと近づいてきた。

「おいおい、レヴィア。お前いつの間にガキこさえたんだ? 誰の子だよ?」

マチルダは無言のまま、じっとその男を観察していた。
一切の感情を見せず。だがその目は、“殺すか殺さないか”を天秤にかけていた。

「話す義理はねぇ、失せろ」

「相変わらず冷てぇな、一緒に窃盗かました仲だろ?」

レヴィアがわずかに体をずらすようにして、マチルダの前に立つ。
マチルダは一歩も引かず、ただ視線を合わせないまま“危険の芽”を探っていた。

「よせ。近づくな」

「おっと……悪ぃ悪ぃ。けどな、あの目……まるで刺す寸前の目じゃねぇか。まさか手懐けて育ててんのか?」

男の口元が、にやついた。

次の瞬間、石ころが一つ転がった音だけを残して、マチルダの姿が男の背後にいた。

「な……」

「やめとけ」
レヴィアの一声で、マチルダはすぐに元の場所に戻った。まるで何もなかったかのように。

男の額には、冷や汗が伝っていた。

「……やべぇな、お前んとこのガキ」

「……言ったろ。近づくなって」

男は苦笑いを浮かべたまま、足早にその場を去っていった。

マチルダは視線を戻し、またボールを蹴っている子どもたちを見つめる。

「……さっきの人。背中が甘すぎたね」

「お前……何歳だよ」

「……10」

「……クソガキ」

だがその口調に、少しだけ笑みが滲んでいた。
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