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出会い
悪夢
しおりを挟む──夜、静寂の中──
レヴィアとマチルダはいつものように、並んで同じ布団に身を沈めていた。
マチルダは熟睡とまではいかないまでも、少しずつ目を閉じて横になることに慣れてきていた。
けれど──その夜、何かが違った。
マチルダの眉間が強く寄り、寝言ではない小さな声が漏れる。
「……やだ……いや……いたい、いたい……やめて……」
レヴィアが目を開けた瞬間、マチルダの手足が小さく震え、体がこわばっているのに気づいた。
「おい、マチルダ……起きろ!」
肩を揺らすと、マチルダはビクリと跳ねるようにして飛び起きた。
「ッ!? は、ぁ……はぁッ……は、ッ……」
胸を押さえて、うまく呼吸ができていない。
大きく目を見開いたまま、荒く息を吐いている。
レヴィアは咄嗟にマチルダの肩に手を添えた。
「魘されてた。夢でも見たのか」
マチルダは黙っていた。
でも、その目には恐怖が宿っていた。夢の中で何を見たのかが、言葉を待たずとも伝わってくる。
「……お兄ちゃんに訓練されてる夢……」
ぽつりと呟くマチルダの声は、いつもより少し幼く、不安げだった。
「痛いの。逃げたいのに逃げられないの。……アルカが殺されるの、また……」
レヴィアはその言葉を遮るように、そっとマチルダを抱き締めた。
「……ッ!」
体を固くしたマチルダに、静かな声が届く。
「お前はもう、あの地獄にはいねぇ。ここにいる。俺がいる。……だから、もう逃げなくていい」
しばらく沈黙が続いた。
マチルダの手が、ゆっくりとレヴィアの服の裾を掴んだ。
「……夢の中でアルカに言われたの。“一緒に逃げるって言ったのに”って……“嘘つき”って……」
「アルカはそんなこと言わねぇよ」
「……でも」
「お前は今、生きてる。逃げて、ここまで来た。それがアルカとの約束の第一歩だろ」
マチルダは、堪えていた感情が喉元まで込み上げるのを感じた。
それでも涙は流れない。けれど──心が、少しだけ、ほどけていく。
「レヴィア……」
「今度は俺が約束する。お前を一人にはしねぇ」
マチルダは目を伏せながら、レヴィアの胸元にそっと額を預けた。
かすかに震えていた身体が、ゆっくりと落ち着いていく。
──そして、ようやく眠りに落ちる。
レヴィアはマチルダの頭をゆっくりと撫でながら、静かに目を閉じた。
「……ゆっくり眠れ」
その夜、マチルダは初めて夢を見なかった。
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