血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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出会い

存在価値

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マチルダ(11)
レヴィア(21)
出会って──1年。


──レヴィア視点──

もう1年も経つのかと、ふと考えてしまう。
最初は──名前も話さず、何も食わず、寝もせず、水一滴さえ口にしなかったガキ。
背を見せることもなかった。ナイフを構えて俺の喉に突きつけてきた、あの日のことは今でも忘れねぇ。

だが──今のマチルダは違う。

いや、“普通のガキ”とはほど遠いのは今でも変わらねぇ。
殺し屋の癖は根深く染みついていて、足音も気配もゼロ。
どれだけ後ろから近づいてきても気づける気がしねぇ。
わがままも言わねぇし、物欲もねぇ。欲しがることを知らねぇ。
俺の方がよっぽど子どもっぽく思えるくらいだ。

──それでも。

俺の前ではよく笑うようになった。
コロコロ表情を変えて、小さくくすくす笑って、たまに真顔でからかってくる。
よく喋る。感情がこもってないように見えて、心の奥底ではちゃんと俺を見てる。
熟睡もしやがる。あれだけ人前で寝ることすらできなかったくせに、今じゃ──

「ねぇ、レヴィア。今日も一緒に寝るんでしょ?」

──当たり前のように、俺の布団に潜り込んでくる。

「ったりめぇだろ。てめぇが“ひとりじゃ寝れない”って言い出したんだからな」

「うん、じゃあ決まりだねっ」

にへらっと笑う顔は、まるで普通のガキみてぇだ。
……普通ってのが、どんなもんかは知らねぇが。

マチルダが俺に完全に心を開いたのは、きっと数ヶ月前。
悪夢の夜、泣きながら眠ったあの日が境界線だった気がする。

それでもマチルダはまだ、“他人には冷たい”。
俺以外には無表情で、大人びた声で必要なことしか話さねぇ。
そのくせ俺の前では平気で脱ぎ捨てたタオルを放置するし、気を抜いた表情も見せる。
そういうとこが、いちいち妙にガキらしくて……たまに、困る。

(ったく……やっぱり手がかかる)

でも──いいんだ。
こいつが“こいつのまま”でいられるようにしてやるのが、今の俺の役目だ。
守るとか救うとか、そういうのは綺麗ごとでしかねぇけど──
少なくとも、こいつが“安心して眠れる場所”くらいは、俺が作ってやる。

「おい、マチルダ。飯作るぞ。手伝え」

「えー、レヴィアが作ってよー。私、味見係」

「誰が味見係だ、寝ぼけた顔して言いやがって……」

──こいつが笑って生きてる限り、
俺もこの場所にいる意味がある気がする。





──マチルダ視点──


レヴィアと出会ってから、1年が経った。

最初は、信じてなかった。
誰も信じられなかった。
名前も言わなかったし、背中を見せるなんて絶対になかった。
それでもレヴィアは──
私のことを、どこにも捨てなかった。
ナイフを向けても、殺そうとしても、そばに居てくれた。
……そんな人、レヴィアだけだった。

あの頃の私は、「人間」なんて捨ててた。
笑う理由も、泣く理由も、守りたいものもなかった。
ただ生きるために、殺すだけの機械みたいだった。

でも──

レヴィアに撫でられると、胸の奥がふわってする。
頭を優しく撫でられるだけで、すごくすごく嬉しい。
言葉にはできない感情が、溢れてくる。

気づけば、レヴィアの前でだけは表情が緩んでた。
無表情が普通だった私が、笑うようになってた。
他の誰にも見せない顔──それを、私はレヴィアにだけ見せてる。

レヴィアのそばだと、ちゃんと眠れるようになった。
それも、“熟睡”ってやつ。
暗闇も、静けさも、気配も、全部怖くない。
布団の中で、レヴィアの温もりがあるから。

──私の全てを受け入れてくれた、たったひとりの人。

殺し屋だった私に手を伸ばして、
何も聞かずに、何も責めずに、ただそばに居てくれた人。

そんなレヴィアが──
私にとって、いちばん大事で、大好きな人。

レヴィアがいるなら、私はどこにいても生きていける。
汚い地下でも、怖い地上でも、どこでも。

……でも、もし。
レヴィアに何かあったら?
もし誰かがレヴィアを傷つけようとしたら?

私は絶対に許さない。
相手が誰であろうと、すぐに排除する。
何も感じないで殺せる。そう育てられた。
その能力を、レヴィアを守るために使うって決めたから。

「物騒だ」「怖い」「異常だ」──そう思われても構わない。
私はただ、レヴィアの隣に居たいだけ。

ずっと、ずっと──
レヴィアのそばに。
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