血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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仲間

正直な話

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――地下街・市場の外れにて

雑多な人々が行き交う地下市場。魚の臭いと酒の気配、怒声と笑い声が交差する中、レヴィアとマチルダは黙々と買い出しを済ませていた。

「……あと、肉だな」

「レヴィア、それ前に買ったやつと同じでいいの?」

「ああ、あれなら悪くなりにくい」

ふたりの会話は簡潔で無駄がない。それでも、傍から見れば妙に息が合っているように見える。

そんな彼らの前に、突然現れた男がいた。

「なぁ、ちょっと待ってくれ……!」

ラナード。息を切らせたその声に、レヴィアはちらりとも視線を向けなかった。

「……俺は忙しい。他を当たれ」

「あっ、ちょ、待てよ……お前じゃなきゃダメなんだ!」

その声に混じる焦り。
そして――

「それに……」

ラナードの目線が、ゆっくりとマチルダへ向く。
その視線は怯えと後悔に満ちていた。

レヴィアはその一瞬の空気の揺れを感じ取り、ようやく目を細めた。

「……まさかコイツに手を出そうとしたのか?」

(きっと返り討ちにあったに違いねぇ)

ラナードは数秒の沈黙の後、目を逸らすようにして、言った。

「……その通りだ。俺は、お前が連れてるガキを……人質にしようとした」

マチルダは腕を組んだまま無言。レヴィアの顔を見ない。

「……正直~」

「チッ……おい、お前、言わなかったな?」

「忘れてた!」

「嘘つけ」

「うっかり~」

その飄々とした態度に、ラナードの頭が追いつかない。

(……本当にこの前の“ガキ”と、同じ人間か?)

殺気に満ちていたあの夜の少女と、今目の前で軽口を叩くこの子は、どうにも結びつかない。

レヴィアは深いため息をひとつ吐いてから、真正面からラナードを睨みつけた。

「……ったく。で、お前は俺達と来て、どうするつもりだ?」

その目はまだ警戒を解いていない。
簡単に信用するような男じゃない――ラナードもそれを分かっている。

「……地上に行きたい」

言い切った。覚悟の一言だった。

マチルダが、その言葉にだけ目を細める。

(地上……)

レヴィアは、ほんのわずか間をおいてから、低く言った。

「俺達は、地上に住む権利なんて持ってねぇぞ。地下のゴミとして生きてる。知ってて言ってんのか?」

ラナードは小さくうなずいた。

「……だからこそ、お前らが必要なんだ。俺には“力”が足りない。でも、あんたらなら――」

言葉が詰まる。マチルダの視線がじっと、自分を射抜いているのが分かった。

“まだ試されてる”

レヴィアも、マチルダも、今この場で殺すこともできた。
そのチャンスを、ただ“喋らせる”ために与えてくれているにすぎない。

(……話すしかねぇ。ここで逃げたら、もう二度とチャンスはねぇ)

ラナードは奥歯を噛み締めた。

「……なぁ、せめて名前だけでも……教えてくれないか」

その問いに――

マチルダは一拍置いて、口角だけ上げた。

「……私のことは、“レヴィアのうっかりな相棒”でいいよ」

「……どの口が言ってんだ」

「……ははっ」

緊張が、わずかに緩んだ。けれど、まだほんの少しだけ。
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