血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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仲間

線引き

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――レヴィア視点・地下街の外れにて

レヴィアは、歩きながらずっと考えていた。

(マチルダは……俺と2人きりで一年かけて、ようやく少しだけ心を開いた)

最初は、ただついてくるだけのガキだった。
何を聞いても「別に」としか言わず、背後を見せることもなかった。
夜も目を閉じずに眠り、誰の手も届かない距離で自分の世界に閉じこもっていた。

それが今では、こうして隣を歩いている。
冗談も言うし、あくびだってする。背中を預けることもある。

(ようやく……ようやく“警戒せずにいられる場所”になったってのに)

レヴィアの横で、マチルダは何も言わずに歩いている。
ただ、ぴったりと寄り添うようにして、いつもより一歩近い。

(今さら、他人を家に入れたら――元通りかもしれねぇ)

視線を落とすと、マチルダの手がわずかにレヴィアの服の裾を掴んでいた。

(……だから、とにかく“家には入れねぇ”。住ませるつもりもねぇ。仲間にするかどうかは、こいつの出方次第だ)



レヴィアはラナードを、家から数メートル離れた細道の壁に立たせ、自分はマチルダとともにその前に立った。

マチルダは無言のまま、レヴィアの隣で腕を組んでいる。感情を一切見せず、ただ“見ている”。
あの夜、首に刃を突きつけた少女と同一人物だと分かっていても、ラナードの背筋が勝手に凍る。

レヴィアが先に口を開いた。

「で? なんの話をしに来た?」

「……あんたらと組みたい。今のままじゃ、俺は地下で腐るだけだ。だが、あんたらとなら――」

「夢が叶うとでも思ったか?」

ラナードは言葉に詰まりかけたが、堪えるようにして答える。

「思った、じゃなくて……願った、かな。正直、あのときお前らを見て“運命だ”とか思った。だから、卑怯なこともした」

「自覚があるなら救えねぇな」

レヴィアは冷ややかに言う。けれど、その言葉にはほんのわずかな“余地”があった。
試しているのだ――この男が、今後どう動くかを。

「お前の名前は?」

「俺は、ラナード」

レヴィアはゆっくりと頭をひとつ傾けた。

「ラナード。お前の中に“地上に出たい”以外の理由はあるのか?」

「……?」

「上に行きたいだけなら、俺じゃなくてもいい。権力に媚び売って、金で買えばいい。お前みたいなタイプは、それが一番手っ取り早いだろうが」

「それは違う!」

ラナードは声を上げた。マチルダの視線が、少しだけ鋭くなる。

「違う……俺が上に行きたいのは、自分のためじゃない。地下で死んでく奴らを、見て見ぬふりしたくなかった。俺に力があれば、何かできるかもしれねぇって、思ったんだよ……!」

レヴィアはしばらく黙っていた。
マチルダがレヴィアの袖を軽く引いた。

レヴィアが視線を落とすと、マチルダは小さな声で――誰にも聞こえないほどの声で囁いた。

「……今、嘘はついてなかったよ」

レヴィアは、その一言に応えるように、息を吐いた。

「……いいだろう。様子は見てやる。ただし条件がある」

ラナードが食い入るように顔を上げる。

「まず、家には絶対に入るな。俺の生活に入り込むな。信用は、後から得るもんだ」

「……わかった」

「次に、マチルダには近づくな」

ラナードは顔をしかめた。

「名前……初めて聞いた。マチルダ、っていうのか」

「“レヴィアのうっかりな相棒”だよ?」

無表情のまま、マチルダが返した。が、ほんの少しだけ口元が笑ったように見えた。
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