血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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仲間

朝の地下

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――レヴィア視点・裏路地にて

地下の朝は静かだった。
朝といっても、地上のような日差しはない。空も見えなければ、鳥の声もない。あるのは濁った空気と、まだ目を覚ましていない商人の罵声。

レヴィアはひとり、舗装の剥がれた通りを歩いていた。靴の裏に湿った石の感触が伝わる。

「よっ、レヴィア!」

聞き慣れた声が背後から飛んできた。

振り返ると、いつの間にかラナードが並んで歩いていた。

「……朝から元気だな」

「元気くらいしか取り柄がねぇからな!」

相変わらず軽い。だが、声のトーンに警戒心は混じっていない。少しずつだが、距離を詰めてこようとしているのがわかる。

「で、あれ?マチルダは一緒じゃねぇのか?」

「どっか彷徨いてんだろ」

レヴィアが肩をすくめると、ラナードは一瞬目を見開いてから苦笑する。

「え、あの子……まだ子どもだろ?一人で彷徨いて……いや、大丈夫か」

(ナイフ、喉元に――)

その時の感覚が思い出されて、思わず喉元を押さえる。

「アイツを舐めてたら死ぬぞ」

レヴィアの声に、ラナードは冷や汗を垂らしながら笑った。

「あはは……体験して痛いくらい実感してるよ……あの子マジで目が人のじゃなかった……」

「そう見える時は、大抵、本当にそうだ」

「やっぱりな……あれ、俺じゃなかったら刺されてたよな?」

「お前だから“刺されなかった”んだ。ギリギリな」

「うわ、救われたような、余計怖くなったような……」

レヴィアは口を閉ざす。ラナードが話しかけてくるのは、分かっていた。
警戒もしている。けれど今のところ、下心より“好奇心”の方が上回ってるように見える。

ラナードは横目でレヴィアの表情を探るようにして話しかける。

「なあレヴィア、前から思ってたけどさ――」

「やめろ」

「まだ何も言ってねえ!」

「でもどうせロクなことじゃねぇ」

「いやいや、これが案外ちゃんとした話で――」

「なら三文字以内にまとめろ」

「ムリ!!」

レヴィアはふっと鼻で笑った。ラナードは見逃さなかった。

(……お、今ちょっとだけ、表情緩んだな)

レヴィアは歩調を変えず、手をポケットに突っ込んだまま口を開いた。

「……俺と仲良くなろうとする理由、ちゃんとわかってるからな」

「え?」

「お前は今、俺に“気に入られよう”としてる。それが悪いとは言わねぇが……仲間になるなら、飾らず本音でこい」

ラナードは言葉を失った。
軽口は通じてるようでいて、すべて見抜かれていた。

「……やっぱ怖ぇよ、あんた」

「お前がビビってるうちは、まだマシだ。慣れたころが一番危ねぇからな」

ラナードは肩をすくめた。
けれど、どこか吹っ切れたような表情でもあった。

「ならさ、怖がりながらでも、俺なりにやってくよ。ちゃんと、本音でさ」

「……なら、勝手にしろ」

その言葉は、まるで“合格”のようにも聞こえた。
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