血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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仲間

歩幅

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――地下・昼の通り

地下街の細道を、三人は並んで歩いていた。

先頭はレヴィア、そのすぐ隣にマチルダがぴったりとくっついている。まるで影のように距離を保ち、時折ちらっと彼を見上げては何も言わない。

少し後ろを歩くのがラナードだった。特に“ついてくるな”とも言われておらず、レヴィアも止める気配はない。

それが“許されている”証拠であると分かっていても、ラナードの内心は妙に落ち着かなかった。

(……この距離感、なんか落ち着かねぇ……)

レヴィアの背中は静かで、近寄りがたい。マチルダはさらに分からない。
だが何よりも、彼女の“目”が気になっていた。

(今、聞いていいのか……?)

視線をそっと横にずらす。
マチルダは特に何も言わない。ただ、静かに歩いているだけ。

(マチルダって一体、何者なんだ……?レヴィアと暮らして四年?地下で……殺し屋?)

口を開きかけて、閉じる。

(……ダメだ、今聞いたらきっとレヴィアが嫌がる)

ラナードは舌打ちしたいのを我慢して黙る。けれど――その様子を、マチルダはちゃんと見ていた。

(……あー、今めっちゃ質問しようか迷ってた)

ちらっと横目で彼を見ると、目線を逸らしているくせに表情が不器用で、ちょっと笑いそうになる。

(この人、嘘つけないタイプだなぁ)

「……ふふっ」

「ん?」

「なんでもなーい」

マチルダは軽く首を振って、またレヴィアの隣にぴたりと戻る。

通りが広くなり、人通りが増えてきた。
汚れた服、カビ臭い荷車、叫ぶ物売り、何かの喧嘩、濁った地下の“日常”が目の前に広がっていた。

そんな中でも、レヴィアとラナードは話していた。

「お前、昔から地下でやってたのか?」

「まあな。情報屋とか、運び屋とか……時々はヤバい仕事も混ざってたけど」

「今さら善人ぶる気か?」

「違ぇよ。善人じゃなくて“まだマシ”になりたくてさ」

「“まだマシ”ねぇ……」

そのときだった。

群衆の中をすれ違った、ボロボロの服を着た老人――その手が、スッとラナードの腰元へ。

誰も気づかない。もちろん、ラナード本人すら。

(……取られた)

マチルダは視線をずらさず、ほんの一歩、静かに足を踏み出した。

すれ違い様、彼女の指がそっと伸び、老人のポケットに入り込んだラナードの財布を、何の音もなく回収する。

レヴィアは一瞬その動きを見ていたが、何も言わない。

老人はそのまま、何も気づかずに通りの人混みに消えていった。

数歩後、マチルダが財布を手にして、ぽつりとつぶやく。

「……ラナード、今までよく生きてこられたね」

「え?」

「おじいちゃんに財布取られるほど雑魚とは思わなかった」

無造作に財布を差し出され、ラナードは硬直した。

「え!?マジか!?わぁ!!……悪い!!ありがとう!!いや~油断してた!!人多かったし、考えごとしてたし――」

言い訳が止まらない。

「うるせぇよ」

レヴィアが冷たく言い捨てる。

マチルダはラナードをじっと見上げ、首をかしげる。

「……そんなに慌ててどうしたの?」

キョトンとした顔で言われ、ラナードは赤面した。

「いや……その……見損なわれたくないじゃん……?」

「ふーん」

マチルダは短く返して、レヴィアの方へまたぴたりと寄る。

ラナードはその様子を見て、ぽつりと呟いた。

「……レヴィア、あんたに懐くのって……相当なことだよな」

「……懐かれてるなんて思ってねぇけどな」

「いや、懐かれてるよ。たぶんそれ、相当貴重だぞ。滅多にないタイプの“信頼”ってやつだ」

「……余計なこと言ってんじゃねぇ」

それでも、レヴィアはほんのわずかに、マチルダの頭に視線を向けていた。
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