血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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仲間

汚れた噂

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――地下街・昼の市場通り

地下の市場は、昼時になると人通りが増す。
小さな屋台が並び、魚の臭いと酒のにおいが混ざり合う空気のなかを、レヴィアとマチルダは並んで歩いていた。

ふたりの手は、もう繋がれていなかったが、距離は変わらない。マチルダはレヴィアの横を、誰にもぶつからぬよう静かに歩く。

そのとき。

「おーい!奇遇だな、レヴィア!」

聞き慣れた声が背後から届いた。

振り返れば、手に食材の入った袋を持ったラナードが、気軽な様子で近づいてくる。

「……買い出しか?」

「ああ、まあな。そっちもか?」

「水汲みついでだ」

ふたりは短く言葉を交わしながら、肩を並べて歩き出す。マチルダは黙ったまま、レヴィアの隣を歩き続けていた。

しばらくして――ラナードが声を潜めて口を開く。

「なあ、レヴィア……ちょっと嫌な話、耳に入った」

「……あ?」

「最近、地下で妙に“高い報酬”の仕事が出回ってる。出所がわからねぇ。誰が金出してるのかも不明。けど、噂じゃ“薬”が絡んでるらしい」

レヴィアの眉がわずかに動く。

「……薬?」

「ああ。発情剤、無力化剤、興奮作用に記憶障害――そういう“目的ありき”のブツばかりだ」

空気が、にわかに冷えた。

「クソみてぇな話だな」

レヴィアの低い声に、ラナードはうなずく。

「女子どもを狙って薬漬けにして……そのまま“売られる”らしい。上の貴族や遊郭に横流しされてるとかって噂もある」

横を歩くマチルダは、何も言わない。ただ、その場からふっと感情を切り離したような無表情になっていた。

ラナードはちらりと彼女を見て――あえて、軽い口調で言う。

「……マチルダは、大丈夫だとは思うけどな。一応、気をつけろよ」

レヴィアは立ち止まり、少しだけラナードの方を向く。

「情報の出どころは?」

「確認中。けど、話してきたのはいつも“グレーな仕事”に手ェ染めてる連中だった。信憑性はある」

「……わかった」

レヴィアはそれ以上は聞かず、また歩き出す。
マチルダは黙ってついていく。手は繋いでいないが、その距離はずっと近いままだった。

ラナードは少しだけ間を取り、ぽつりとつぶやく。

「……正直、ああいうのが野放しってのが一番腹立つよな」

「……ああ」

「やるなら、潰すしかねぇか」

レヴィアは答えずに、静かに歩く。

ラナードは、それ以上“聞かない”。
何かを感じ取りながらも、踏み込まないことを選んだ。

地下の空気が、ほんの一瞬だけ、さらに冷たく感じられた。
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