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仲間
理解できなくても
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――レヴィア視点・帰宅後の夜
家に戻っても、いつも通りの静けさだった。
地下の湿った空気は窓の隙間からも入り込んでくるが、この部屋だけはまだ温かい。
マチルダはソファに座り、濡れた髪を乾かすこともせずにぼんやりと窓の外を見ていた。
レヴィアは荷物を片づけながら、少しだけ視線を向ける。
(……黙ってるが、あの話を引きずってやがるな)
あの薬の話。
ラナードが言っていた、人身売買と薬物操作。
汚い仕事だ。誰かの“都合のいい道具”として壊されていく命。
マチルダは黙って聞いていたが――“無関心”というには、あまりに静かすぎた。
「マチルダ」
声をかけると、彼女はゆっくりと振り返る。キョトンとした目。
「お前は誰にも負けないくらい強いが……しばらく、一人で行動するな」
「……?」
「お前の強さを信用してないわけじゃねぇ。……俺が、心配なんだよ」
マチルダは少し驚いた顔をして――それから、ふっと柔らかく笑った。
「……レヴィアが言うなら、そうするよ」
そういう素直さが、たまに怖くなる。
だが、同時にその“信頼”が嬉しくもある。
そのまま、マチルダがぽつりと呟いた。
「……あの薬の話、殺し屋してた時もよく聞いてた」
レヴィアは手の動きを止めた。
「は?知ってんのか」
「出処も何となくね。場所や使ってた組織の名前とかも……でも、殺しの依頼で関わったことはなかったし」
少しだけ間が空く。
「……お兄ちゃんも他人に興味なかったから、深く関わったことはない」
言葉は淡々としていたが、その“兄”という言葉にだけ微かに引っかかりがあった。
「……レヴィアは、被害にあってる人のこと……助けたいって思う?」
不意の問いだった。
レヴィアはしばらく黙って考える。
「……誰かを助けたい、なんて理屈は後からついてくるもんだ。見過ごせねぇから動く。それだけだ」
「……そういうもの?」
「ああ。感情がどうとかじゃねぇ。“ムカつくから潰す”でも、“見てられねぇから止める”でも、なんでもいい」
「そっか……」
マチルダは俯き、指先で自分の袖をいじりながらぽつりと続けた。
「……私は、正直……助けたいとも、可哀想だとも思わない」
「……」
「最低でしょ? そういう感情、全部切り離してきたから……よく分かんないの」
レヴィアは何も言わず、ただ見ていた。
マチルダの瞳は真っ直ぐで、偽りがない。ただ、少し寂しそうだった。
「……人のこと、助けてあげたら……そういう感情も、理解できるのかな?」
その問いに――レヴィアは目を細めて、静かに言葉を返す。
「……分かんねぇ。けど、分かろうとするなら……お前はもう十分、人間らしい」
マチルダは目を瞬かせて、顔を上げた。
「……そうかな」
「そうだ」
「レヴィアは、昔からそうやって簡単に言い切るよね」
「簡単じゃねぇよ」
「ふふ、じゃあ信じる」
小さく笑うその顔に、かつて“殺ししか知らなかった少女”の面影はなかった。
レヴィアは、そっと目を伏せた。
(お前が人を信じられるようになったら――次は、自分のことも信じられるようになってくれ)
そう思いながら、声には出さずに、ただ横に座る彼女の頭を優しく撫でた。
家に戻っても、いつも通りの静けさだった。
地下の湿った空気は窓の隙間からも入り込んでくるが、この部屋だけはまだ温かい。
マチルダはソファに座り、濡れた髪を乾かすこともせずにぼんやりと窓の外を見ていた。
レヴィアは荷物を片づけながら、少しだけ視線を向ける。
(……黙ってるが、あの話を引きずってやがるな)
あの薬の話。
ラナードが言っていた、人身売買と薬物操作。
汚い仕事だ。誰かの“都合のいい道具”として壊されていく命。
マチルダは黙って聞いていたが――“無関心”というには、あまりに静かすぎた。
「マチルダ」
声をかけると、彼女はゆっくりと振り返る。キョトンとした目。
「お前は誰にも負けないくらい強いが……しばらく、一人で行動するな」
「……?」
「お前の強さを信用してないわけじゃねぇ。……俺が、心配なんだよ」
マチルダは少し驚いた顔をして――それから、ふっと柔らかく笑った。
「……レヴィアが言うなら、そうするよ」
そういう素直さが、たまに怖くなる。
だが、同時にその“信頼”が嬉しくもある。
そのまま、マチルダがぽつりと呟いた。
「……あの薬の話、殺し屋してた時もよく聞いてた」
レヴィアは手の動きを止めた。
「は?知ってんのか」
「出処も何となくね。場所や使ってた組織の名前とかも……でも、殺しの依頼で関わったことはなかったし」
少しだけ間が空く。
「……お兄ちゃんも他人に興味なかったから、深く関わったことはない」
言葉は淡々としていたが、その“兄”という言葉にだけ微かに引っかかりがあった。
「……レヴィアは、被害にあってる人のこと……助けたいって思う?」
不意の問いだった。
レヴィアはしばらく黙って考える。
「……誰かを助けたい、なんて理屈は後からついてくるもんだ。見過ごせねぇから動く。それだけだ」
「……そういうもの?」
「ああ。感情がどうとかじゃねぇ。“ムカつくから潰す”でも、“見てられねぇから止める”でも、なんでもいい」
「そっか……」
マチルダは俯き、指先で自分の袖をいじりながらぽつりと続けた。
「……私は、正直……助けたいとも、可哀想だとも思わない」
「……」
「最低でしょ? そういう感情、全部切り離してきたから……よく分かんないの」
レヴィアは何も言わず、ただ見ていた。
マチルダの瞳は真っ直ぐで、偽りがない。ただ、少し寂しそうだった。
「……人のこと、助けてあげたら……そういう感情も、理解できるのかな?」
その問いに――レヴィアは目を細めて、静かに言葉を返す。
「……分かんねぇ。けど、分かろうとするなら……お前はもう十分、人間らしい」
マチルダは目を瞬かせて、顔を上げた。
「……そうかな」
「そうだ」
「レヴィアは、昔からそうやって簡単に言い切るよね」
「簡単じゃねぇよ」
「ふふ、じゃあ信じる」
小さく笑うその顔に、かつて“殺ししか知らなかった少女”の面影はなかった。
レヴィアは、そっと目を伏せた。
(お前が人を信じられるようになったら――次は、自分のことも信じられるようになってくれ)
そう思いながら、声には出さずに、ただ横に座る彼女の頭を優しく撫でた。
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