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仲間
動き出す時
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――地下・薄暗い裏通り
水気を含んだ石畳を踏みしめる音だけが響いていた。
レヴィアとマチルダは、無言のまま帰路についていたが――その途中。
角を曲がった先、誰かがしゃがみ込んでいる姿が目に入った。
「……レヴィア?」
レヴィアの声に、男が顔を上げる。
「……!」
ラナードは片腕を押さえ、ジャケットの袖が血に滲んでいた。
手当てをしようとしていたらしく、包帯が雑に巻かれている。
「その怪我、どうした」
レヴィアが一歩近づくと、ラナードは気まずそうに目を逸らし、無理に笑ってみせた。
「……例の話に、首突っ込んじゃってさ……はは」
「……」
「薬の出処を探ってた。ちょっと派手な連中の縄張りに顔突っ込んじまった。情報屋のツテ使ったんだけど、罠だったっぽい」
レヴィアは目を細めた。
「……馬鹿が」
マチルダは隣で無言のまま。
だが目だけは鋭く、ラナードの腕、汚れた靴、巻かれた包帯、体の動き方まで観察していた。
(……やり方がなってない)
(こんなの、まず数日監視して行動パターンを掴む。それから薬の流通経路と関係者をリストアップして、出入りの時間を見て――)
(まぁ、素人だから……仕方ないか)
マチルダは、わずかにため息を吐きたくなる気持ちを抑えて黙っていた。
レヴィアはしばらく沈黙し、問いかける。
「……お前は、本気で被害者を助けたいのか?」
ラナードは痛みを堪えたように歯を食いしばり、それでもまっすぐ答えた。
「……当たり前だ。あんな話、聞いて黙ってられるかよ」
レヴィアは目を伏せて、少しだけ顎を引いた。
その背中を、マチルダがじっと見ていた。
そして――
「……」
沈黙を破って、マチルダがしゃがんでラナードの怪我をじっと見ながら口を開く。
「……動き方が雑。事前に監視した? 相手の行動パターンは? 出入りの時間? 幹部の顔と立場、薬の隠し場所、倉庫の位置、警備の人数と装備――何も把握してなかったでしょ」
ラナードはぽかんとマチルダを見る。
「そ、そこまで頭回らなかったけど……」
「潜入するなら一人か二人。表からじゃなくて、下水か裏口。武器は見つかったら即逃げる用の短剣と、気絶させる煙粉。逃走経路は三つ用意。ひとつは、事前に塞いでおいて敵を誘導するために使う。照明が少ない通路の角を確保できれば、こっちが有利」
ポン、ポン、と言葉を並べるようにして、マチルダは迷いなく“プラン”を話していた。
ラナードは口を半開きにしたまま、マチルダを見つめる。
「……どっからそんな計画が頭の中に湧いて出てくるんだよ……」
マチルダは少し笑って、言った。
「……殺し屋だったから」
「はぁ!?マジで!?いやそれでも……な、なんでそんなこと俺に教えてくれたんだ?」
「……馬鹿だから」
「はっ!?いや、え?」
「無駄死にしそうだったから」
「……返す言葉がない……」
ラナードはがっくりと項垂れ、レヴィアは横で小さく息を吐いた。
だがそのとき、マチルダがふと、視線をレヴィアに向ける。
「……ねぇ、レヴィア」
声は静かだったが、その目には確かな意志があった。
(レヴィアは嫌がるだろうけど……被害者のこと、助けてみたい)
(そしたら私でも、何か……わかるかもしれない。誰かのために動く気持ち、痛み、後悔……何か)
言葉にする前に、レヴィアが先に言った。
「……行くんだろ」
「!」
「お前の考えなんて、分かりきってる。……お前が行くなら、俺も行く」
マチルダは目を見開き――次の瞬間、少しだけ、笑った。
「……ありがと」
ラナードはそのふたりのやり取りを見て、ぼそっとつぶやいた。
「……やっぱ、すげぇな、あんたら」
レヴィアは彼を見ずに、ただ冷静に言った。
「すげぇんじゃねぇ。必要なことを、やってるだけだ」
水気を含んだ石畳を踏みしめる音だけが響いていた。
レヴィアとマチルダは、無言のまま帰路についていたが――その途中。
角を曲がった先、誰かがしゃがみ込んでいる姿が目に入った。
「……レヴィア?」
レヴィアの声に、男が顔を上げる。
「……!」
ラナードは片腕を押さえ、ジャケットの袖が血に滲んでいた。
手当てをしようとしていたらしく、包帯が雑に巻かれている。
「その怪我、どうした」
レヴィアが一歩近づくと、ラナードは気まずそうに目を逸らし、無理に笑ってみせた。
「……例の話に、首突っ込んじゃってさ……はは」
「……」
「薬の出処を探ってた。ちょっと派手な連中の縄張りに顔突っ込んじまった。情報屋のツテ使ったんだけど、罠だったっぽい」
レヴィアは目を細めた。
「……馬鹿が」
マチルダは隣で無言のまま。
だが目だけは鋭く、ラナードの腕、汚れた靴、巻かれた包帯、体の動き方まで観察していた。
(……やり方がなってない)
(こんなの、まず数日監視して行動パターンを掴む。それから薬の流通経路と関係者をリストアップして、出入りの時間を見て――)
(まぁ、素人だから……仕方ないか)
マチルダは、わずかにため息を吐きたくなる気持ちを抑えて黙っていた。
レヴィアはしばらく沈黙し、問いかける。
「……お前は、本気で被害者を助けたいのか?」
ラナードは痛みを堪えたように歯を食いしばり、それでもまっすぐ答えた。
「……当たり前だ。あんな話、聞いて黙ってられるかよ」
レヴィアは目を伏せて、少しだけ顎を引いた。
その背中を、マチルダがじっと見ていた。
そして――
「……」
沈黙を破って、マチルダがしゃがんでラナードの怪我をじっと見ながら口を開く。
「……動き方が雑。事前に監視した? 相手の行動パターンは? 出入りの時間? 幹部の顔と立場、薬の隠し場所、倉庫の位置、警備の人数と装備――何も把握してなかったでしょ」
ラナードはぽかんとマチルダを見る。
「そ、そこまで頭回らなかったけど……」
「潜入するなら一人か二人。表からじゃなくて、下水か裏口。武器は見つかったら即逃げる用の短剣と、気絶させる煙粉。逃走経路は三つ用意。ひとつは、事前に塞いでおいて敵を誘導するために使う。照明が少ない通路の角を確保できれば、こっちが有利」
ポン、ポン、と言葉を並べるようにして、マチルダは迷いなく“プラン”を話していた。
ラナードは口を半開きにしたまま、マチルダを見つめる。
「……どっからそんな計画が頭の中に湧いて出てくるんだよ……」
マチルダは少し笑って、言った。
「……殺し屋だったから」
「はぁ!?マジで!?いやそれでも……な、なんでそんなこと俺に教えてくれたんだ?」
「……馬鹿だから」
「はっ!?いや、え?」
「無駄死にしそうだったから」
「……返す言葉がない……」
ラナードはがっくりと項垂れ、レヴィアは横で小さく息を吐いた。
だがそのとき、マチルダがふと、視線をレヴィアに向ける。
「……ねぇ、レヴィア」
声は静かだったが、その目には確かな意志があった。
(レヴィアは嫌がるだろうけど……被害者のこと、助けてみたい)
(そしたら私でも、何か……わかるかもしれない。誰かのために動く気持ち、痛み、後悔……何か)
言葉にする前に、レヴィアが先に言った。
「……行くんだろ」
「!」
「お前の考えなんて、分かりきってる。……お前が行くなら、俺も行く」
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「……ありがと」
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「すげぇんじゃねぇ。必要なことを、やってるだけだ」
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