血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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仲間

動く理由

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――レヴィア視点・裏路地にて

ラナードの腕から滲む血を、マチルダは無言で見ていた。
その目には、驚きも動揺もなかった。ただ――呆れていた。

(……まぁ、そりゃそうなる)

潜入なんてのは、正面から踏み込むだけで済むような甘いもんじゃない。
ラナードは根が真っ直ぐすぎる。感情で動いた分、痛い目を見た。それだけの話だ。

「……お前は、本気で被害者を助けたいのか?」

自分の口からその言葉が出た瞬間、少しだけ違和感があった。

(他人にそんなこと聞くような柄じゃねぇのにな)

けど、それを聞かずにはいられなかった。
“あの話”は、それだけで胃がひっくり返るような嫌悪を感じる。

「……当たり前だ。あんな話、聞いて黙ってられるかよ」

ラナードの言葉は真っ直ぐだった。少し迷いがあっても、嘘じゃなかった。

(……だからって信用しきるわけにはいかねぇがな)

ふと横を見ると、マチルダが口を開いた。

言葉は冷静で、的確で、まるで戦場の報告みたいだった。

(監視、動線、出入口、誘導……)

それを話しているのが、まだ20にもなってねぇ少女だというのに、内容は“戦術”と呼べるレベルだった。

(……天才なんて言葉じゃ片付かねぇ)

でも、レヴィアは知っている。

それは才能なんかじゃない。
“生き残るために”叩き込まれた知識と手段――

(誰も守っちゃくれなかった場所で、たったひとりで、生き残ってきた)

「……馬鹿だから」

「は?」

「無駄死にしそうだった」

ラナードにそう言ってのけたマチルダは、たぶん悪意じゃなくて、素で言ってる。
それがかえって刺さるのか、ラナードはがっくりと肩を落としていた。

そんな中、マチルダが静かにこちらを見上げてきた。

「……ねぇ、レヴィア」

その一言に――レヴィアはすでに察していた。

(ああ、来ると思ってた)

あいつは変わった。昔は、命令にしか動かなかったのに。
今は、自分の意思で人を見て、選んで、考えて、動こうとしている。

(……その感情を“知りたい”と思えるようになった)

だからこそ、口を挟む前に、レヴィアは言った。

「行くんだろ」

マチルダの目がわずかに見開く。

「……!」

「お前の考えなんて、分かりきってる。お前が行くなら、俺も行く」

それは、“一緒に行く”という提案ではない。
“置いていくつもりはない”という宣言だった。

マチルダの顔に、ふっと表情が緩んだ。小さな安心が滲む。

ラナードがぽつりとつぶやいた。

「……やっぱ、すげぇな、あんたら」

レヴィアは肩をすくめて、ラナードを見ずに答える。

「すげぇんじゃねぇ。やるべきことを、やってるだけだ」

(……マチルダが“人の痛み”を知ることで、何か変わるなら)

(それはきっと、悪いことじゃねぇ)

今度は、レヴィアの手から行動する番だった。
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