血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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仲間

準備の重み

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――レヴィア視点・作戦準備中

地下の小さな隠れ家。
昼でも薄暗いその空間に、広げられた紙と、描かれる路地裏の地図。
物音ひとつしない静寂の中、チョークが紙を擦る音だけが響く。

マチルダが迷いなく線を引き、時間帯と出入り口、通行人の数までメモしていく。

「まずは一週間。相手の行動パターンを把握するのが先」

マチルダが、淡々と口を開いた。

その隣で、ラナードが思わず叫ぶ。

「い、1週間!? そんな悠長な……!」

「……なに」

じとっとした目線がラナードを貫く。

「い、いやぁ……1週間も監視って……さっさと突入して被害者助けようぜ?」

「……さっさと突入して返り討ちにあったの誰だっけ?」

「俺です、すみません……」

(……言葉の端に、殺気じゃなく“教育”の匂いがするのが成長した証だな)

レヴィアはマチルダの姿を見ながら、ひとり心の中で頷いていた。
この数年で“自分一人が生き延びるための技術”は、誰かを守るための“戦術”に変わりつつある。

――それは、マチルダ自身の“変化”だった。

「レヴィア、マチルダって本当に14歳なのか?」

不意にラナードが呟いた。

「あぁ」

「……マジか。俺の方が年下っぽくね?」

「俺とお前が同じ24歳ってのも信じ難いけどな」

「レヴィアまで辛辣ッ!」

レヴィアは鼻を鳴らし、テーブルに肘をついたまま、マチルダの描いた地図に目を落とす。
手際の良さはプロと呼ぶにふさわしい。出入りする人間の服装や靴跡、外で待機している見張りの手癖まで見抜いてメモしていた。

(本気で“壊しに行く”時の構えだな)

ラナードが紙の隅にメモされたマークを指さしながら、ぽつり。

「……マジで、マチルダって何者……?」

「機密事項だ」

「はは、ですよね……」

そのやりとりに、マチルダはふふっと口を緩めただけだった。

そして、地図に最後のマークを書き込んでから、マチルダは顔を上げて言った。

「レヴィア、この作戦で良いかな?」

「……上出来だ」

そう言って、そっとマチルダの頭を撫でる。
慣れた手つき。何度も繰り返してきた仕草。

「へへ、やったー!」

マチルダは小さく笑って、誇らしげに顔を上げた。

その横でラナードは呆然としていた。

「……」

(マジでこの子、数分前まで“地下に潜伏する傭兵のアジトに潜入する作戦”を立ててたよな?)
(で、今、撫でられて喜んで……え、どっちなの? 天才? 子ども?)

「もうマチルダのギャップについていけねぇ……!」

そう呟いて項垂れるラナードの肩を、マチルダがトントンと叩く。

「ラナード、準備は大事だよ。生き残りたいでしょ?」

「……あい……」

レヴィアはそのやり取りを見ながら、ふっと小さく笑った。

(この調子なら、作戦の“スタートライン”には立てる)

だが油断はしない。マチルダがいれば確かに成功率は跳ね上がる。
――でもそれは、絶対の保証じゃない。

(あの薬の話の裏には、もっと汚ねぇものが潜んでる)

(……だからこそ、俺が隣にいなきゃならねぇ)

レヴィアはそっと椅子を引いた。

「準備は終わりだ。明日から監視に入るぞ。二人とも、今夜はしっかり休め」

「はーい!」

マチルダが素直に返事する横で、ラナードが小声で言った。

「……俺、明日から“子どもに教えられる側”なのか……」

レヴィアはそれに返さず、ただ肩を軽くすくめた。
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