血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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仲間

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――レヴィア視点/監視6日目 夜

裏路地を駆け抜けた先。
薄暗い影の中で、ラナードが何かを抱えていた。

それは、地下のガキ。ボロボロの服、怯えた瞳。
マチルダではなかった。

「マチルダは?」

その一言が口からこぼれたとき、自分でも驚くほど声が低かった。

ラナードが、顔を上げる。
眉をひそめ、唇を噛みしめた表情で、苦しげに答えた。

「レヴィア、俺……ごめん……」

「……チッ」

舌打ちが自然に漏れた。

だが、怒りの矛先はラナードではなかった。

(あいつ……自分から、囮になったってことか)

目の前の状況と、マチルダが見せた合図、行動。
全部を繋げれば、答えは一つしかなかった。

レヴィアは素早く周囲を確認し、ラナードに向き直った。

「今はとにかく身を隠す。来い」

「……ああ」



人目の少ない廃屋に身を潜め、レヴィアは息を潜めながら周囲の音を探った。
手下らしき足音は、もう聞こえない。マチルダを連れて引き上げたのだろう。

「ガキはどうした」

「さっき別の安全な路地に逃した。仲間もいない、ただの被害者だ」

「……そうか」

しばらく沈黙が落ちた。
ラナードは口を開きかけて、何度か言葉を飲み込み――やがて、ぽつりと漏らすように言った。

「俺が、すぐにマチルダの意図を理解できなくて……」

「……」

「子どもを助けることに集中しちまったんだ。あいつが“今すぐ逃げろ”って言った意味も……あのときはわかんなくて」

ラナードの声は、乾いていた。

「俺のせいで、あの子が……」

「違ぇよ」

レヴィアは鋭く言った。

「お前が悪いわけじゃねぇ。あいつが勝手に、そう決めたんだ」

「でも――」

「お前が“迷った”のは、善意があったからだ。誰かを見殺しにできなかった。……それは、俺も同じだ」

「……」

「けどな。マチルダは、その“ためらい”すら捨てて動ける奴だ。……殺し屋だったってのは聞いたな?」

ラナードはうなずいた。

「“生き残る”ために、感情を全部置き去りにしてきた。今も、何かを“思って”動いたわけじゃねぇ。“正しいから”でもねぇ」

「……じゃあ、何で?」

「……俺たちが、“あいつの邪魔になった”からだろ」

その言葉に、ラナードは言葉を失った。

レヴィアは拳を握る。

「けどな――」

「マチルダは、あのとき俺に目で合図した。お前と子どもを守れって。……俺の判断に任せたってことだ」

「……」

「だから、俺はあいつを助けに行く。――それだけだ」

ラナードは目を見開いた。

レヴィアの声は低く、静かだった。
けれど、そこには揺るぎない決意が滲んでいた。

(待ってろよ、マチルダ)

(今度は、俺が――お前を助ける番だ)
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