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仲間
囮
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――レヴィア視点/監視6日目 夜
裏路地を駆け抜けた先。
薄暗い影の中で、ラナードが何かを抱えていた。
それは、地下のガキ。ボロボロの服、怯えた瞳。
マチルダではなかった。
「マチルダは?」
その一言が口からこぼれたとき、自分でも驚くほど声が低かった。
ラナードが、顔を上げる。
眉をひそめ、唇を噛みしめた表情で、苦しげに答えた。
「レヴィア、俺……ごめん……」
「……チッ」
舌打ちが自然に漏れた。
だが、怒りの矛先はラナードではなかった。
(あいつ……自分から、囮になったってことか)
目の前の状況と、マチルダが見せた合図、行動。
全部を繋げれば、答えは一つしかなかった。
レヴィアは素早く周囲を確認し、ラナードに向き直った。
「今はとにかく身を隠す。来い」
「……ああ」
◆
人目の少ない廃屋に身を潜め、レヴィアは息を潜めながら周囲の音を探った。
手下らしき足音は、もう聞こえない。マチルダを連れて引き上げたのだろう。
「ガキはどうした」
「さっき別の安全な路地に逃した。仲間もいない、ただの被害者だ」
「……そうか」
しばらく沈黙が落ちた。
ラナードは口を開きかけて、何度か言葉を飲み込み――やがて、ぽつりと漏らすように言った。
「俺が、すぐにマチルダの意図を理解できなくて……」
「……」
「子どもを助けることに集中しちまったんだ。あいつが“今すぐ逃げろ”って言った意味も……あのときはわかんなくて」
ラナードの声は、乾いていた。
「俺のせいで、あの子が……」
「違ぇよ」
レヴィアは鋭く言った。
「お前が悪いわけじゃねぇ。あいつが勝手に、そう決めたんだ」
「でも――」
「お前が“迷った”のは、善意があったからだ。誰かを見殺しにできなかった。……それは、俺も同じだ」
「……」
「けどな。マチルダは、その“ためらい”すら捨てて動ける奴だ。……殺し屋だったってのは聞いたな?」
ラナードはうなずいた。
「“生き残る”ために、感情を全部置き去りにしてきた。今も、何かを“思って”動いたわけじゃねぇ。“正しいから”でもねぇ」
「……じゃあ、何で?」
「……俺たちが、“あいつの邪魔になった”からだろ」
その言葉に、ラナードは言葉を失った。
レヴィアは拳を握る。
「けどな――」
「マチルダは、あのとき俺に目で合図した。お前と子どもを守れって。……俺の判断に任せたってことだ」
「……」
「だから、俺はあいつを助けに行く。――それだけだ」
ラナードは目を見開いた。
レヴィアの声は低く、静かだった。
けれど、そこには揺るぎない決意が滲んでいた。
(待ってろよ、マチルダ)
(今度は、俺が――お前を助ける番だ)
裏路地を駆け抜けた先。
薄暗い影の中で、ラナードが何かを抱えていた。
それは、地下のガキ。ボロボロの服、怯えた瞳。
マチルダではなかった。
「マチルダは?」
その一言が口からこぼれたとき、自分でも驚くほど声が低かった。
ラナードが、顔を上げる。
眉をひそめ、唇を噛みしめた表情で、苦しげに答えた。
「レヴィア、俺……ごめん……」
「……チッ」
舌打ちが自然に漏れた。
だが、怒りの矛先はラナードではなかった。
(あいつ……自分から、囮になったってことか)
目の前の状況と、マチルダが見せた合図、行動。
全部を繋げれば、答えは一つしかなかった。
レヴィアは素早く周囲を確認し、ラナードに向き直った。
「今はとにかく身を隠す。来い」
「……ああ」
◆
人目の少ない廃屋に身を潜め、レヴィアは息を潜めながら周囲の音を探った。
手下らしき足音は、もう聞こえない。マチルダを連れて引き上げたのだろう。
「ガキはどうした」
「さっき別の安全な路地に逃した。仲間もいない、ただの被害者だ」
「……そうか」
しばらく沈黙が落ちた。
ラナードは口を開きかけて、何度か言葉を飲み込み――やがて、ぽつりと漏らすように言った。
「俺が、すぐにマチルダの意図を理解できなくて……」
「……」
「子どもを助けることに集中しちまったんだ。あいつが“今すぐ逃げろ”って言った意味も……あのときはわかんなくて」
ラナードの声は、乾いていた。
「俺のせいで、あの子が……」
「違ぇよ」
レヴィアは鋭く言った。
「お前が悪いわけじゃねぇ。あいつが勝手に、そう決めたんだ」
「でも――」
「お前が“迷った”のは、善意があったからだ。誰かを見殺しにできなかった。……それは、俺も同じだ」
「……」
「けどな。マチルダは、その“ためらい”すら捨てて動ける奴だ。……殺し屋だったってのは聞いたな?」
ラナードはうなずいた。
「“生き残る”ために、感情を全部置き去りにしてきた。今も、何かを“思って”動いたわけじゃねぇ。“正しいから”でもねぇ」
「……じゃあ、何で?」
「……俺たちが、“あいつの邪魔になった”からだろ」
その言葉に、ラナードは言葉を失った。
レヴィアは拳を握る。
「けどな――」
「マチルダは、あのとき俺に目で合図した。お前と子どもを守れって。……俺の判断に任せたってことだ」
「……」
「だから、俺はあいつを助けに行く。――それだけだ」
ラナードは目を見開いた。
レヴィアの声は低く、静かだった。
けれど、そこには揺るぎない決意が滲んでいた。
(待ってろよ、マチルダ)
(今度は、俺が――お前を助ける番だ)
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