血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

文字の大きさ
75 / 91
仲間

拠点

しおりを挟む
__レヴィア視点

「私、行く所無いんだよね」

イリナの声は、どこか遠慮がちで――けど、確かに寂しさがにじんでいた。

ラナードが何気なく言った。

「もうこの際みんなで一緒に住むか?」

「マジ!?」

イリナの目が一瞬で輝いた。子どもらしい喜び方だった。

(ああ……まだ“普通”を知ってるガキなんだな)

「一緒に住むだ?どこに」

俺が問いかけると、マチルダの視線がチラリと俺を見る。

(分かってんだろうな……俺の“家”だってことを)

「そりゃもちろん……いやいやなんでもない!!」
ラナードが慌てて口を濁す。

イリナが不思議そうな顔をしている横で、マチルダは微かに目を細めたまま黙っていた。

「そういや俺が仲間に入れてもらった時も、レヴィアに“生活に踏み込むな”って言われたなぁ」

「レヴィアの兄貴って、プライベート大事にするタイプ!?」

「ぶふっ、それは違ぇだろ!」
ラナードが吹き出す。

(違ぇよ……)

言葉にはしなかったが、俺の中では答えは出ていた。

――“マチルダ”を、守りたかっただけだ。

こいつは俺と二人きりになって、ようやく自分を出せるようになった。
……ようやく、眠る時に警戒せずに、隣で寝息を立てるようになった。

他人が同じ屋根の下に入ったら――
また最初に戻るかもしれねぇ。

それでも。

「レヴィア」

隣にいたマチルダが、袖を軽く引いた。

「私は大丈夫。レヴィアが決めて?」

その顔は、決して強がってはいなかった。

けど、自分の中で“何か”を超えた顔だった。

「……お前……分かってんのか?一緒に住むってどういうことか」

「うん。でもレヴィアが居なくなる訳じゃないでしょ?」

「……当たり前だ」

「なら平気」

ああ、そうか。

(もうこいつは――“俺”の隣を選んでるんだ)

ラナードがニヤリと笑い、イリナがぽかんとしている。

「ったく……しょうがねぇな」

そう口にしたのは、俺の方だった。

「やったー!!本当にいいの!?」
イリナが跳ねるように喜んだ。

「ただし、ルールは守れ。俺の部屋に勝手に入るな。夜は騒ぐな。マチルダにちょっかい出すな」

「え!?最後だけなんか特別ルールみたいなんだけど!?」

ラナードが笑う。

「ほらな、言った通りだろ。レヴィアのマチルダなんだって」

「マチルダの意見は!?って思ったけど、なんかマチルダも納得してる顔してるし!」

マチルダは微かに笑っていた。

――この拠点は、ただの“避難所”じゃなくなる。

新しい“家族”になりつつある。

そんな気がして、俺は小さく息を吐いた。


「誰も二人の間に入る余地ねぇよな」

(あぁ――それでいい)

何も言わずに歩き出す。隣にマチルダの足音。

その音が、今の俺にとって一番安心できる“日常”だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

肉食御曹司の独占愛で極甘懐妊しそうです

沖田弥子
恋愛
過去のトラウマから恋愛と結婚を避けて生きている、二十六歳のさやか。そんなある日、飲み会の帰り際、イケメン上司で会社の御曹司でもある久我凌河に二人きりの二次会に誘われる。ホテルの最上階にある豪華なバーで呑むことになったさやか。お酒の勢いもあって、さやかが強く抱いている『とある願望』を彼に話したところ、なんと彼と一夜を過ごすことになり、しかも恋人になってしまった!? 彼は自分を女除けとして使っているだけだ、と考えるさやかだったが、少しずつ彼に恋心を覚えるようになっていき……。肉食でイケメンな彼にとろとろに蕩かされる、極甘濃密ラブ・ロマンス!

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...