血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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仲間

掃除当番

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レヴィア視点

掃除当番の朝。ほこり一つ残さず家中を磨き上げるのが俺たちの日課だ。
──いや、俺とマチルダの、だ。

「イリナ、そこ拭き残してんぞ。」
「あ?お前が足引っ張ってんじゃねーのかよ!」
「はぁ!?はっ倒すぞクソガキ!」
「やってみろやオッサン!」

……また始まった。

バケツをひっくり返す音、モップをぶつけ合う音、どっちが先に掃いただの水を撒いただの、どうでもいい言い合いが続く。どちらも全く譲らず、もはや掃除は二の次。

「……」

部屋の隅でモップを手に黙々と床を磨いているマチルダが、ちらりとラナードとイリナを見た。けれど何も言わない。

(感情の起伏……ほぼゼロだな、相変わらず)

「お前の拭いたとこ、ムラだらけなんだよ!」
「あ?そこはお前が最初にやったとこだろ!」

俺のこめかみがピクついた。
……限界だ。

「いい加減にしろッ」

ズガンッ!!
2人の頭にダブルゲンコツが炸裂する。鈍い音とともに沈黙が戻った。

「ラナード、お前は本当に俺と同い年か?24ってウソじゃねぇよな?」

「……すみません……」

「イリナ、17歳って年齢詐欺じゃねぇだろうな。言動が7歳にしか見えねぇ」

「い、言いすぎだろ兄貴ぃ~!」

「うるせぇ。2人ともガキすぎんだよ。次騒いだら外に放り出すぞ」

「「はい……」」

床にしゃがみ込んだ2人が肩を並べて落ち込んでいるのを見て、俺はため息をついた。

ふと、マチルダを見ると、彼女はモップを静かに止めて俺に目を向けた。

「……よくそこまで感情出せるよね、2人とも」

ぼそっと呟くような口調。興味があるのか、呆れてるのか──どちらとも取れる、淡々とした声音。

「まぁ……騒がしいくらいが、普通のガキっぽいってことだ」

俺がそう返すと、マチルダはふっと笑った。

ほんの一瞬。けれどそれは、俺にとっては貴重な“変化”の兆しだった。

___

「掃除くらい余裕!今日から私、ピカピカ隊長やる!!」

モップを振りかざして張り切るイリナの声が、薄汚れた廊下に響き渡る。

「はぁ!?何言ってんだよお前!昨日も今日も一番働いてんのは俺だろ!俺が掃除隊長だっての!」

ラナードが即座に張り合って、2人でまた言い合いを始めた。

「お前、昨日バケツひっくり返したくせに!」「それはお前が押したからだろ!?」
「は?嘘つくな!」
「嘘じゃねぇし!」

掃除道具片手に押し問答を繰り返す2人の姿を、マチルダはじっと見ていた。
何も言わない。ただ、ぼそっとつぶやいた。

「……2人って、本当に私より年上なのかな……」

……俺もそう思う。

「……はぁ」
自然とため息が漏れた。

掃除は終わる気配もなく、騒がしさだけが広がっていく。
耳がキーンとする。

「うるせぇガキが2人……先が思いやられる」
俺は小声でぼやいた。

すると、すぐ隣にいたマチルダが首を傾げた。

「ん? 私はガキじゃないの?」
素直な顔で聞いてくる。

「お前はガキだが、手がかからねぇ。空気も読めて賢い」

自然と口から出た本音だった。

マチルダはぱっと顔を明るくした。

「……褒めてくれたの?」

その瞳は、まるで初めて褒められた子犬のように嬉しそうで。

(……こいつ、普段は感情の起伏ゼロのくせに、俺が褒めると心底嬉しそうにしやがる……)

つい、頭をぽんと撫でた。

──その時。

「兄貴ーッ!!またマチルダばっか褒めてるー!!イチャイチャすんなってのーッ!!」

モップを抱えたまま、イリナが鬼のような勢いで走ってくる。

「俺達だって少しは褒められても良くないか!?こっちは神経すり減らして掃除頑張ってんだけど!!」

ラナードも後ろから文句をぶちまけながら追ってくる。

「……文句言ってる暇あったら一つでも多くゴミ拾え」

俺が低く睨むと、2人はピタリと動きを止めた。

「「……はい」」

完全に子ども扱い。
マチルダがくすっと笑った。小さく、でも確かに楽しそうに。

「なんか、兄妹みたいだね」

マチルダのぽつりとした一言に、俺は──
それも悪くねぇかもな、と思った。
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