血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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仲間

人間らしさ

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地下街・帰り道

湿った空気の中、足音だけがふたりの間に響いていた。
マチルダは無言のまま歩き、レヴィアもまた口を開かなかった。

ふと、レヴィアはその小さな手に触れる。
冷たい指先を、そっと包み込むように握った。

マチルダはびくりと肩を揺らしたが、何も言わず、そのまま手を預けてくれた。
指先に、ほんの少しだけ力がこもる――握り返してきた。

(……感情がないふりしてるが、お前はもう、とっくに人間に戻ってきてる)

まだ幼いのに、大人のように振る舞って。
無表情で、淡々と物事を処理して。
「殺し屋だった」と、何の感情もなく言い切る少女。

でも――
今夜のあれは違った。

墓の前で見せたあの“弱さ”。
それは、誰かを想った証。
感情を抱いたからこそ見た、あの夢。

(……全部お前の中にあったんだろうな。見ねぇふりしてただけで)

レヴィアは視線を少し落とし、隣で歩く少女の横顔をちらりと見る。
マチルダは、少しだけ顔を俯かせていた。
言葉を選んでるようでもあり、ただ眠いだけのようでもある。

(……俺がそばにいる意味は、ただ戦うためじゃねぇ)

(俺が――
お前の“人間らしさ”を守るために、ここにいるんだ)

地下街は、やさしくない。
人間らしくあることのほうが、ずっと苦しい。
けれどそれでも――この手の温もりを、忘れさせたくなかった。

(……感情があるのは、弱さなんかじゃねぇ。お前が人間としてここに立ってる証拠だ)

目の前に、馴染んだ薄暗い家の灯りが見えた。
無言のまま、マチルダの手を強く、だけどやさしく引いた。

(眠れねぇ夜があるなら、俺が付き合ってやる。
感情に負けそうになるなら、その全部、俺が受け止めてやる)

(……だから――)

(何があっても、もうひとりで抱えるな)





地下街の小さな部屋――深夜

暖かいランプの灯りの中、マチルダは俺の服の裾を握ったまま、眠りに落ちた。
眉間の皺も、いつもの冷静さも、どこにも見当たらねぇ。
今この瞬間だけは、まるで――
どこにでもいる、年相応のガキみてぇな顔してる。

(……やっと寝やがったか)

あれだけ神経張ってたんだ。そりゃ疲れもするだろう。
けど、きっとあいつは自分じゃ気づいてねぇ。
休むってことすら、どこか罪悪感を覚えてる節がある。

そっと、布団の端を引き寄せて、肩まで掛け直す。
俺の服の裾はまだ、ぎゅっと握ったまま。
夢の中でも、離したくなかったんだろうな。

(本当に、ガキだな……)

けど――

(……それでいい)

お前が殺し屋だった過去も、冷めた目をしてるのも知ってる。
感情を捨てたって言い切って、誰かに感謝されても首を傾げて。
けど――
今日、墓の前で泣きそうな声で「会いたい」って呟いた時。
俺は思ったんだ。

(……もうお前は、“戻ってきてる”)

生き物を、誰かを、ちゃんと想える場所に。
人間としての“痛み”を知る場所に。

だから、今は――
せめてこの眠ってる間くらい、全部忘れてていい。
俺がそばにいてやる。お前が、どんなに冷めて見えても関係ねぇ。

(……お前が笑うなら、俺はそれで十分だ)

お前がまた、感情を取り戻して苦しむ時が来るなら、
俺はその全部を――何度でも、受け止めてやる。

だから――

(……おやすみ、マチルダ)
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