血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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仲間

団欒

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リヴァイ視点___夜の団欒

部屋は相変わらずうるさい。
イリナとラナードのガキの喧嘩が、俺の神経をチクチクと削ってくる。

「うるせぇ!!」

怒鳴っても、一瞬で静かになっても、また数分後には元通り。
まったく、気が抜けねぇ。

そんな中で、ふと視線が向いたのは……ソファに静かに座っているマチルダだった。

イリナとラナードのやり取りを見ながら、
特に笑うでも、怒るでも、引くでもなく……ただ、淡々と眺めている。

表情の動かない横顔。
あいつはいつもそうだ。静かで、落ち着いてて、誰よりも“大人びて”見える。

でも――俺には分かってる。
あの無表情の奥には、言葉にできない想いが眠ってることを。

静かに、マチルダの横に腰を下ろした。

声をかけたわけじゃねぇ。
けど、マチルダは俺に気づいて、ぽつりと聞いてきた。

「……レヴィア。私がわがまま言わないと、損した気分になる?」

……突拍子もない質問だった。

「何だそれ」

「ラナードが言ってたの。よく意味分かんないけど」

俺は鼻で笑った。
あいつの余計な口が、マチルダの中に変な疑問を植え付けたらしい。

「……あいつ、相変わらず余計なことばっか言いやがる」

「意味……あるの?」

マチルダの声は、どこか探るような、試すような響きだった。
俺は、少し考えてから答えた。

「……お前は欲がねぇ。わがままも言わねぇ。俺には頼るけど、それも最低限だ」

マチルダは黙って頷いた。

「そういうお前が、たまに甘えたりすると……安心すんだよ。俺が」

「……」

「“損した気分”ってわけじゃねぇが……全部抱えてんじゃねぇかって、不安になる」

一瞬、マチルダが俺を見上げた。

――不安にさせてた?
そんな風に問いかけるような瞳だった。

だから、俺ははっきり言ってやった。

「でも、お前が無理に変わる必要はねぇ。今のままでいい。……俺は、そんなお前が好きだ」

マチルダは、目を細めて、わずかに笑った。

“ありがとう”――口にしなくても伝わってくる、あの笑顔だった。

なんでだろうな。
誰よりも感情を見せないこのガキが、たった一瞬見せたその表情が、やけに胸に残る。

誰かに褒められて喜ぶんじゃなくて、
“俺”に褒められた時だけ素直に喜ぶ。

……可愛いやつだよ、ほんとに。



マチルダが、ふいに言った。

「じゃあ今度、レヴィアにだけわがまま言ってみようかな。それでいっぱい困らせるの」

口調は冗談みてぇで、軽く笑ってた。
けど、その目だけは――真っ直ぐで、どこか本気だった。

「……いつでも言え」

そう即答した俺に、マチルダは少し驚いた顔をした。
目を見開いて、ぽかんとしてやがる。

「……そんなすぐ返ってくると思わなかった」

「お前が“今度”とか言うと、次はいつになるか分かんねぇからな」

「……あー、確かに……」

マチルダが、苦笑いする。
自分でも自覚してるんだろうな。感情を出すのが苦手で、思ってもすぐ言えないことが多いって。

「……マチルダ」

名前を呼ぶと、マチルダは静かにこちらを見る。

「お前のわがままは“困る”もんじゃねぇ。“頼ってくれる”ってことだろ」

「……」

「それだけで十分、嬉しい」

小さな肩が、一度だけぴくりと揺れた。

そしてマチルダは――ちょっとだけ、恥ずかしそうに笑った。

「そっか……じゃあ今度、“わがまま”の練習してみようかな。レヴィアで」

「練習台かよ」

「ふふ、嫌?」

「嫌なら即座に却下する」

「じゃあ許可されたらわがまま通るってこと?」

「……あぁ。許可制だ」

冗談混じりのやり取りなのに、マチルダの声はどこか楽しげだった。

これでいいんだ――
感情を無理に引き出すんじゃねぇ。少しずつ、自分のペースで出せばいい。

……俺は、ずっと見てる。
わがままを言えるようになるその日まで――いや、その先も。

「……レヴィア」

「ん?」

「いつもありがと」

その言葉に、思わず目を細めた。

「礼なんていい。……その代わり、次のわがままは早めにな」

マチルダは、照れたように口元を指で隠して笑った。

可愛すぎて、反則だろうが。
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