血に濡れた約束は廃墟に眠る

まちにゃ

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仲間

夜の記憶

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マチルダ視点

「……」

夜の闇に目を開けた。空気は静かで、周囲は何も変わっていないのに――
手が、震えていた。

「……なんで」

訓練の夢を見ていた。
幼い頃、兄のカルトに無理やり繰り返された、あの“殺しの訓練”。

逃げられなかった。拒否できなかった。
痛いのも、苦しいのも、怖いのも、全部「甘え」だと教えられた。

「……」

終わったのに。
殺し屋も、家族も、全部……終わったはずなのに。

体が――覚えてる。
忘れたくても、勝手に思い出す。苦しくて、吐き出せない。

布団の中で、少しだけ体を丸める。
息が苦しい。

……ふと、横に目をやると。

レヴィアの寝顔がそこにあった。
眉間に少し皺が寄っているけど、それでも眠っている顔は静かだった。

「……」

なんでだろう。見てると――泣きそうになる。

「……」

そっと、体を寄せて。レヴィアの腕の中に、自分から潜り込んだ。
小さな手で、彼の胸元をそっと掴んで……ぎゅっと、力が入った。

(もう終わったの……全部……
 お兄ちゃんもいない。殺されることも、役に立たなきゃ捨てられることも、ないのに――)

(もう、忘れられてもいいでしょ……?)

どこにもぶつけられない言葉を、喉の奥で押し殺した。

「……マチルダ?」

優しい低い声が、耳元で囁かれた。

「ッ……ごめ……ちょっと目が覚めただけ」

思わず離れようとした瞬間――レヴィアの腕が、そっと俺を引き戻した。

「バカ。なんで離れようとすんだ」

「……レヴィア……」

「手、震えてる。夢、見たんだろ」

マチルダは、何も言えなかった。ただ、唇を噛みしめた。

「……もう終わったって、何回も思ってる。でも、たまに……分からなくなるんだ。
 “また戻るかも”って、変な感覚に引きずられる」

「……そうか」

レヴィアの手が、マチルダの背中をそっと撫でた。一定の、安定した動きで。

「……大丈夫だ。戻らねぇ。お前はもう、“そこ”にはいねぇ。俺がいる限りな」

「……うん」

「今は……もう“マチルダ”でいられる。殺し屋じゃねぇ、お前のままでいい」

「……ありがと、レヴィア」

そのまましばらく、何も言わずに抱き合っていた。

レヴィアの体温はあたたかくて、夜の冷たさなんてすぐに消えていった。

「……」

もう一度だけ、眠ってみよう。そう思えた。
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