混浴大作戦

akimasa

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【第29話】新しいママ

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3月の中旬過ぎの土曜日、息子雄太の卒園式が無事に終わった。

しかし卒園式が終わったとしても普段仕事のある親御さん達は当然3月31日まで子供を登園させることになる。

雄太も例外ではなく3月いっぱい登園してもらうことになっている。



 そしてついに3月の最終日、最後のお迎えに保育園へ赴いた。すべての荷物を受け取り、先生達に最後の挨拶とこれまでのお礼を述べる。

雄太も今日が最後ということをわかっていて寂しそうに半べそをかいてぐずっている。それに釣られ先生達も涙を浮かべる。



最終日で持ち帰るものも多いので雄太が最後のお別れをしている間に荷物を車に積み込んだ。

「雄太。そろそろ帰るぞ」



「雄太君。バイバイ。またいつでも遊びに来てね」



今日でここに来ることも最後になるだろう。美咲先生や由香先生ともなかなか会う機会もなくなってしまうだろう。

特に美咲先生の服の上からでもわかるあのナイスバディを見ることも難しくなってしまう。

それでものぞみ先生と付き合っていれば美咲先生達とも会う機会もあるかもしれない。



 なかなか帰ろうとしない雄太をチャイルドシートに座らせ車を発進させた。



「雄太。お前も来週からは小学生だ。そうしたら新しい先生やお友達もたくさん出来る。それでも保育園の先生達に会いたくなったらまた遊びに来ればいい。もう二度と会えないわけではないのだからいつまでもそんな顔するな」



「……うん、わかった」

後部座席でみんなとの別れにベソをかいている雄太は実に寂しそうである。しかし小学校が始まればすぐに新しい友達が出来てこの寂しさもすぐに忘れるだろう。

それに雄太にはのぞみ先生がいる。

雄太が卒園した今、のぞみ先生と交際をしていることを雄太にも打ち明けることになっている。

彼はどんな反応をするだろう。

のぞみ先生がうちに頻繁に来ることにどう思うだろう。

交際していることを打ち明けてもきっと雄太にはまだ理解は出来ないであろう。しかしいずれ理解できる日が訪れる。







4月下旬、雄太が好きそうなお菓子を手土産にのぞみ先生が我が家を訪れた。

雄太にすべてを打ち明ける日が来たのだ。



突然ののぞみ先生の訪問に雄太は大はしゃぎして喜んでいる。

手土産に持ってきたお菓子をテーブルに広げみんなでお喋りしながら食べる。



ひと通りお菓子を食べ落ち着いてきた雄太の様子を見て俺とのぞみ先生の関係を説明することにした。



「雄太、ちょっと大事な話があるから良く聞いて」

こう前置きをしないと他のことに気を取られて真剣に話を聞いてくれない。



「雄太、今日はなんでのぞみ先生が家に来たかわからないだろ? それを今から教えるからしっかり聞いてほしい」



「うん」



「今パパとのぞみ先生は交際をしている」



「こうさいってなに? おいしいの?」

食べ物だと思った雄太にのぞみ先生が吹き出して笑う。



「食べ物じゃない。交際というのはすごく仲良くすることだ。パパとのぞみ先生はすごく仲良しなんだ。だからこれからは何度ものぞみ先生は家に来るし雄太とパパとのぞみ先生でお出掛けもすることある。この3人はこれからもっともっと仲良くなっていくんだ。パパの言っていることがわかるか?」



「うん、わかった。じゃあこれからは僕とパパとのぞみ先生で遊べるんだね」



「そういうことだ」

すぐには理解出来ないと思っていただけに随分物分かりのいい雄太に驚きを隠せないでいた。



「これでパパ達だけじゃなく僕も一緒に遊んでいいんだよね?」



「「えっ!?」」

俺とのぞみ先生の驚きの声がシンクロした。

雄太は俺達がこっそり密会を重ねていたことを知っているのだろうか。



「雄太君、先生とパパが遊んでいたの知ってたの?」

すかさずのぞみ先生が雄太に尋ねた。



「うん。じぃじが言ってた。パパは大切な人と会っているから邪魔しちゃダメだって言ってた」



親父の奴め……。余計な事を。



「それとね。のぞみ先生と遊んでいるってばぁばが言ってた。でも絶対に内緒だって言ってたから僕誰にも言ってないよ」



お袋の奴め……。余計な事を。



「そっか、内緒にしてくれてありがとうな。えらいぞ」



「だってじぃじが内緒にしておかないとパパとのぞみ先生が仲良くなれないって言うし、そんなの僕イヤだからずっと内緒にしてた。誰にも言ってないよ」



「雄太君……、ありがとうね」

のぞみ先生は雄太の気遣いに涙を浮かべている。



「雄太、えらいぞ! 雄太のお陰でパパとのぞみ先生はすごく仲良くなれた」



雄太の頭をガシガシと撫で褒めてあげると少し照れながら嬉しそうに笑った。

彼は俺が思っている以上に成長している。雄太なりに俺らのことを思って誰にも言わずに内緒にしていてくれたのである。



「それでのぞみ先生はいつ僕のママになるの?」



「「えっ?」」

またしても俺とのぞみ先生の声がシンクロする。

のぞみ先生とはいずれ結婚して雄太のママになってもらう前提で交際を続けてきたが具体的にいつ結婚するとはまだ決めてはいない。

まずは雄太の理解を得てから話を進めようと思っていたのだ。



「それもじぃじが言ってたのか?」



「うん。のぞみ先生がパパのお嫁さんになって僕のママになるって言ってたよ」



「そっか、そうだな、いつになるかな。雄太が小学生になってしばらくしたらそうなるかもしれないな」



「雄太君、先生が雄太君のママになってもいいの?」



「うん! だってのぞみ先生のこと大好きだもん。ねぇ、いつになったらママって呼んでいいの?」



「雄太君、ありがとうね。本当にありがとう。もういつでもママって呼んでいいよ」

きっとのぞみ先生も嬉しかったのであろう。雄太にママとして受け入れられたことに涙をボロボロ流しながら感動していた。



「やったぁー! じゃあ今日からママって呼んでいい?」

のぞみ先生は涙を流しながら大きく何度も頷いていた。



雄太はのぞみ先生をすんなりママとして受け入れてくれた。もしのぞみ先生ではなく雄太の知らない他の女性だったらこうもすんなりはいかなかっただろう。

雄太のよく知るのぞみ先生だからこそうまくいったのだ。

それに両親の暴露も今となっては雄太にとっていい下地になっていたのかもしれない。

前もって両親がある程度説明してくれたお陰で雄太にも理解する時間があったのだろう。



「ねぇママ、今日は一緒にお出掛けできる?」

早速ママと呼ぶ雄太にのぞみ先生は嬉しそうにしている。

いきなりママと呼ばれて違和感はないのだろうか。

それにまだ籍を入れていないので正確にはママではないのだが。



「雄太君はどこに行きたい?」



「う~んとね……、公園!」



「じゃあ公園行きましょう。パパも公園でいいでしょう?」

いきなり俺のことを“パパ”と呼ぶのぞみ先生にドキっとしてしまった。そして今まで以上に彼女のことが身近に感じた。

家族だ。俺達夫婦と雄太の3人家族だ。

俺は目の奥が熱くなるのを感じ必死に涙を堪えた。





「ねぇ早く公園行こう」



雄太に急かされバタバタと支度をして雄太を真ん中に3人で手を繋いで歩き公園に向かった。

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