107 / 155
第107話
しおりを挟む
泣く泣く予期せぬ出費に応じた半人造の少女らと、王都に於ける長期の護衛依頼を結び直した翌々日、地母神派に属する大司教のお願い絡みで学院の一角へ足を運ぶ。
最高学府で知識を付けようと集まった様々な年齢層の者達に向け、増築を重ねた各寮の部屋数が多いことから、敷地内に併設された病棟を訪れるためだ。
薬草を卸している聖マリア教会の伝手により、面会の約束を取り付けた魔法科医師の案内で四人一組の病室に入れば、昏睡状態の中等科生徒が三名ほど眠っていた。
「なんか、心地よさそうに見えるね、無為に起こすのが躊躇われるくらい」
「市井の診療に廻った修道士らの報告では数日振りに目覚めた後、再び体内のマナが失われて昏睡する過程で苦痛を味わうようです」
遠慮なく患者の一人に近づいて寝顔など覗き込んだリィナの服裾を掴み、引き剥がしつつもフィアが症状に言及すると、隣にいた医師の声が耳朶を打つ。
「強制的に漏出させられるマナは魔力で編まれた不可視の糸を伝い、何処かに送られていると思しいが… 患者の身体経由で解析を試みても、すぐに切断されてしまう」
それも一時的なものに過ぎないことから、少し経てば糸の繋がりは復元されてしまい、鼬ごっこになるとの事だ。
病棟の医師達は学院の講師も務めるだけあって、世間を騒がせる昏睡事件の解決に寄与すべく、既に様々な試行錯誤を積み上げているようなので、少し踏み込んだ質問を投げてみる。
「外部からの魔力干渉を断つ絶縁結界は?」
「勿論、有効だよ。隔離の状態ならマナの収奪は行われない」
ただ、三桁越えの意識不明者が出ている王都の現状、すべての被害者にこの方法が適用できるはずもない。
恒常的な結界の維持は想像以上に負担が大きく、日々の生活が送られる規模の領域となれば言わずもがな、裕福な極一部の者達に限られるだろう。
「眠り姫になった伯爵令嬢とか、修道女らの噂話で聞きましたけど……」
「ん~、お貴族様でも経済的に厳しそう、一般市民には到底無理ね」
何気なく呟いた幼馴染に触発されて、諸々の経費に思いを馳せたリィナが言い添えると、肯定するように担当の医師も頷いた。
最高学府で知識を付けようと集まった様々な年齢層の者達に向け、増築を重ねた各寮の部屋数が多いことから、敷地内に併設された病棟を訪れるためだ。
薬草を卸している聖マリア教会の伝手により、面会の約束を取り付けた魔法科医師の案内で四人一組の病室に入れば、昏睡状態の中等科生徒が三名ほど眠っていた。
「なんか、心地よさそうに見えるね、無為に起こすのが躊躇われるくらい」
「市井の診療に廻った修道士らの報告では数日振りに目覚めた後、再び体内のマナが失われて昏睡する過程で苦痛を味わうようです」
遠慮なく患者の一人に近づいて寝顔など覗き込んだリィナの服裾を掴み、引き剥がしつつもフィアが症状に言及すると、隣にいた医師の声が耳朶を打つ。
「強制的に漏出させられるマナは魔力で編まれた不可視の糸を伝い、何処かに送られていると思しいが… 患者の身体経由で解析を試みても、すぐに切断されてしまう」
それも一時的なものに過ぎないことから、少し経てば糸の繋がりは復元されてしまい、鼬ごっこになるとの事だ。
病棟の医師達は学院の講師も務めるだけあって、世間を騒がせる昏睡事件の解決に寄与すべく、既に様々な試行錯誤を積み上げているようなので、少し踏み込んだ質問を投げてみる。
「外部からの魔力干渉を断つ絶縁結界は?」
「勿論、有効だよ。隔離の状態ならマナの収奪は行われない」
ただ、三桁越えの意識不明者が出ている王都の現状、すべての被害者にこの方法が適用できるはずもない。
恒常的な結界の維持は想像以上に負担が大きく、日々の生活が送られる規模の領域となれば言わずもがな、裕福な極一部の者達に限られるだろう。
「眠り姫になった伯爵令嬢とか、修道女らの噂話で聞きましたけど……」
「ん~、お貴族様でも経済的に厳しそう、一般市民には到底無理ね」
何気なく呟いた幼馴染に触発されて、諸々の経費に思いを馳せたリィナが言い添えると、肯定するように担当の医師も頷いた。
31
あなたにおすすめの小説
転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~
名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。
序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた
砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。
彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。
そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。
死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。
その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。
しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、
主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。
自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、
寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。
結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、
自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……?
更新は昼頃になります。
悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
ガチャで破滅した男は異世界でもガチャをやめられないようです
一色孝太郎
ファンタジー
前世でとあるソシャゲのガチャに全ツッパして人生が終わった記憶を持つ 13 歳の少年ディーノは、今世でもハズレギフト『ガチャ』を授かる。ガチャなんかもう引くもんか! そう決意するも結局はガチャの誘惑には勝てず……。
これはガチャの妖精と共に運を天に任せて成り上がりを目指す男の物語である。
※作中のガチャは実際のガチャ同様の確率テーブルを作り、一発勝負でランダムに抽選をさせています。そのため、ガチャの結果によって物語の未来は変化します
※本作品は他サイト様でも同時掲載しております
※2020/12/26 タイトルを変更しました(旧題:ガチャに人生全ツッパ)
※2020/12/26 あらすじをシンプルにしました
「お前と居るとつまんねぇ」〜俺を追放したチームが世界最高のチームになった理由(わけ)〜
大好き丸
ファンタジー
異世界「エデンズガーデン」。
広大な大地、広く深い海、突き抜ける空。草木が茂り、様々な生き物が跋扈する剣と魔法の世界。
ダンジョンに巣食う魔物と冒険者たちが日夜戦うこの世界で、ある冒険者チームから1人の男が追放された。
彼の名はレッド=カーマイン。
最強で最弱の男が織り成す冒険活劇が今始まる。
※この作品は「小説になろう、カクヨム」にも掲載しています。
転生先の説明書を見るとどうやら俺はモブキャラらしい
夢見望
ファンタジー
レインは、前世で子供を助けるために車の前に飛び出し、そのまま死んでしまう。神様に転生しなくてはならないことを言われ、せめて転生先の世界の事を教えて欲しいと願うが何も説明を受けずに転生されてしまう。転生してから数年後に、神様から手紙が届いておりその中身には1冊の説明書が入っていた。
微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる