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テッペン取るぜ
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爆発を起こしたのは言わずともがなシンバクだった。
肩を回しながら立ち上がる。
爆発で生まれた黒煙がシンバクの金色の髪を映えさせる。
「よくもやってくれたのぉ。これで遠慮せずに貴様らを爆殺できるわい。テツ、エガ! もう一度、針を作らんかい!!」
「言われるまでもねぇよ」
「はっ。さっきまで掴まってたやつが、偉そうに俺に命令すんな!」
倒れたまま腕を突き出し、周囲に針をまき散らす。
そうか。
二人が最後の抵抗として生み出したのはただの鉄や弾丸じゃなかった。針だったんだ。闇雲にはなったように見せて壁と――シンバクを狙った。
それに気づいたシンバクは自らの縄に針を当て爆発。
そして、開放されて今に至ると言う訳か。
壁や天井に突き刺さった針を見て、イギーとグロウは怯えたように2人で抱き合う。
「まだ、まだじゃい! もっと、針を用意せんかい! それとも、お前たちの限界はこんなもんか? それとも、巻き込まれるのにびびっとるのか?」
「まさか。俺がビビるわけないだろ?」
「とか言って。俺より針生み出す量少なかったぜ?」
互いが互いに張り合う様にして、更に針を生み出していく。
建物の中が全て針で埋まる。
……。
これだけの量を爆発させれば、例え回復を持つイギーでも無傷じゃ済まない。不死ではなく回復。鉄片や弾丸では無理でも爆発の連撃ならば、試す価値はある。
いや、試すまでもない。彼の怯えようから、それが正しい攻略方法だと伝わってくる。
「お、おい。この量を爆発させたら、お前らだって」
「そうだ。な、お互い痛み分けってことで手を討とうぜ」
死を前に情けない姿を浮かべる。
その姿に憤怒したのか、テツとエガミは意地を持って立ち上がった。
「命を掛けて喧嘩も出来ねぇ奴が、かつて俺の母校のトップだったかと思うと反吐が出るぜ」
「ああ。しかも、お前ら人殺してんだろ? だったら、その覚悟出来てんだろうなぁ!!」
傷付きながらも、自らの足で立つライバルの姿に、シンバクもまたボロボロの身体で叫ぶ。
「そうじゃ。死を持って償わんかい!!」
三人の怒号と共に、「ドカン」と部屋を揺るがす爆音が響いた。その爆音を聞いた2人は白目を向いて意識を失う。
「あれ?」
だしかし、爆音こそしたが、建物は崩れてもいない。
刺さった針もそのままだ。
「なんだ、ソウちゃん。もう、解決してるじゃない」
「ローマン!!」
さっきの爆音はローマンが着地した音だったようだ。
良かった。
未来のある若者がこんな人達のために、犠牲にならなくて……。
なんとか立っている三人の学生。
互いに顔を見合わせて友情の笑みを浮かべていた。これが、青春というやつか。年を重ねて見ると――意外に悪くないね。
笑顔を浮かべて腕をぶつけ合う三人に向けて、崩れた建物の外から手を振る少女達がいた。
「あ、良かった。無事だ!」
「もう、心配させないでよ!」
どうやら、逃げた女子生徒が戻ってきたようだ。
ここに戻ってくることにも勇気が必要だったのだろう。互いに手を繋いでいた。
1人はおかっぱ頭から顔の横に掛けて触覚のような髪が伸びている目つきの鋭い少女。
もう1人は中学生くらいだろうか。幼い雰囲気でまさに幼女と言えるだろう。
女子生徒達の姿に真っ先に反応したのはエガミだった。
「カノン、ナミネ。良かった~2人とも無事だったのか」
両手を開いて2人を迎える。
そう言えば姉妹に手を出すなと言っていたっけ。
なるほど。
彼女たちが攫われたのは姉妹2人という訳か。言われてみれば所々顔のパーツが似ている気もする。
エガミが北高の番長でありながら、落ち込み1人で下校していたのは、姉妹が攫われ自責の念で一人圧し潰されていたからと言う訳か。
不安から解消されたエガミの笑みはそこはかとなく明るかった。
が、2人はエガミの手をすり抜けて、1人はテツに。もう1人はシンバクに抱き着いた。
「は……?」
固まるエガミを横目に姉妹は互いに抱き着いた相手――彼氏にへと甘える。
「もう、助けに来るのが遅いよ、テツ!」
「わりぃ。でも、無事で良かったよ、カノン」
「ワシが付いていながら、一緒に攫われるとは、申し訳ないのぉ、ナミネ」
「ううん。私がそばにいたから本気出せなかったんだよね。そんな優しい所も好きだよ!」
後日、僕が聞いた話なのだが、カノンはエガミの双子の姉で、ナミネは二つ下の妹とのことだった。
必死に助けた家族よりも彼氏が評価される。
まあ、家族とはそう言うモノなのかもね。
尚、この一件がきっかけで各学校自体は仲良く統廃合されたのだが、テッペン同士の争いが激化したことは――また別の話だった。
◇
事件を無事、解決した僕は購入した花を持って壁を上る。壁の上に着くと既にベルが横になって目を閉じていた。
頭の横にそっと鉢を置くと、「あら、約束を守って偉いわね」とベルが目を開いた。
「今回もベルのお陰で解決出来たようなもんだから」
「私は何もしてないけどね……?」
「いや、そんなことないとないと思うけど……」
それにしても、ベルは何故、シンバクが襲われた姿を見ていたのだろうか? ここから北高までの距離は長い。いくら視力が良くても不可能だろう。
やはり、ベルが持つ【異能】が関係しているのだろうか?
今度、また、聞いてみよう。
今は素直に感謝の気持ちを伝えるだけだ。
僕がベルに送った花はコトネアスター。
星が煌めくように成長した樹形が印象的な植物だった。僕がこれを買った理由は一つ。
花言葉の意味を教えて貰ったからだ。
『統一』
それは今回の一件にぴったしなような気がした。
肩を回しながら立ち上がる。
爆発で生まれた黒煙がシンバクの金色の髪を映えさせる。
「よくもやってくれたのぉ。これで遠慮せずに貴様らを爆殺できるわい。テツ、エガ! もう一度、針を作らんかい!!」
「言われるまでもねぇよ」
「はっ。さっきまで掴まってたやつが、偉そうに俺に命令すんな!」
倒れたまま腕を突き出し、周囲に針をまき散らす。
そうか。
二人が最後の抵抗として生み出したのはただの鉄や弾丸じゃなかった。針だったんだ。闇雲にはなったように見せて壁と――シンバクを狙った。
それに気づいたシンバクは自らの縄に針を当て爆発。
そして、開放されて今に至ると言う訳か。
壁や天井に突き刺さった針を見て、イギーとグロウは怯えたように2人で抱き合う。
「まだ、まだじゃい! もっと、針を用意せんかい! それとも、お前たちの限界はこんなもんか? それとも、巻き込まれるのにびびっとるのか?」
「まさか。俺がビビるわけないだろ?」
「とか言って。俺より針生み出す量少なかったぜ?」
互いが互いに張り合う様にして、更に針を生み出していく。
建物の中が全て針で埋まる。
……。
これだけの量を爆発させれば、例え回復を持つイギーでも無傷じゃ済まない。不死ではなく回復。鉄片や弾丸では無理でも爆発の連撃ならば、試す価値はある。
いや、試すまでもない。彼の怯えようから、それが正しい攻略方法だと伝わってくる。
「お、おい。この量を爆発させたら、お前らだって」
「そうだ。な、お互い痛み分けってことで手を討とうぜ」
死を前に情けない姿を浮かべる。
その姿に憤怒したのか、テツとエガミは意地を持って立ち上がった。
「命を掛けて喧嘩も出来ねぇ奴が、かつて俺の母校のトップだったかと思うと反吐が出るぜ」
「ああ。しかも、お前ら人殺してんだろ? だったら、その覚悟出来てんだろうなぁ!!」
傷付きながらも、自らの足で立つライバルの姿に、シンバクもまたボロボロの身体で叫ぶ。
「そうじゃ。死を持って償わんかい!!」
三人の怒号と共に、「ドカン」と部屋を揺るがす爆音が響いた。その爆音を聞いた2人は白目を向いて意識を失う。
「あれ?」
だしかし、爆音こそしたが、建物は崩れてもいない。
刺さった針もそのままだ。
「なんだ、ソウちゃん。もう、解決してるじゃない」
「ローマン!!」
さっきの爆音はローマンが着地した音だったようだ。
良かった。
未来のある若者がこんな人達のために、犠牲にならなくて……。
なんとか立っている三人の学生。
互いに顔を見合わせて友情の笑みを浮かべていた。これが、青春というやつか。年を重ねて見ると――意外に悪くないね。
笑顔を浮かべて腕をぶつけ合う三人に向けて、崩れた建物の外から手を振る少女達がいた。
「あ、良かった。無事だ!」
「もう、心配させないでよ!」
どうやら、逃げた女子生徒が戻ってきたようだ。
ここに戻ってくることにも勇気が必要だったのだろう。互いに手を繋いでいた。
1人はおかっぱ頭から顔の横に掛けて触覚のような髪が伸びている目つきの鋭い少女。
もう1人は中学生くらいだろうか。幼い雰囲気でまさに幼女と言えるだろう。
女子生徒達の姿に真っ先に反応したのはエガミだった。
「カノン、ナミネ。良かった~2人とも無事だったのか」
両手を開いて2人を迎える。
そう言えば姉妹に手を出すなと言っていたっけ。
なるほど。
彼女たちが攫われたのは姉妹2人という訳か。言われてみれば所々顔のパーツが似ている気もする。
エガミが北高の番長でありながら、落ち込み1人で下校していたのは、姉妹が攫われ自責の念で一人圧し潰されていたからと言う訳か。
不安から解消されたエガミの笑みはそこはかとなく明るかった。
が、2人はエガミの手をすり抜けて、1人はテツに。もう1人はシンバクに抱き着いた。
「は……?」
固まるエガミを横目に姉妹は互いに抱き着いた相手――彼氏にへと甘える。
「もう、助けに来るのが遅いよ、テツ!」
「わりぃ。でも、無事で良かったよ、カノン」
「ワシが付いていながら、一緒に攫われるとは、申し訳ないのぉ、ナミネ」
「ううん。私がそばにいたから本気出せなかったんだよね。そんな優しい所も好きだよ!」
後日、僕が聞いた話なのだが、カノンはエガミの双子の姉で、ナミネは二つ下の妹とのことだった。
必死に助けた家族よりも彼氏が評価される。
まあ、家族とはそう言うモノなのかもね。
尚、この一件がきっかけで各学校自体は仲良く統廃合されたのだが、テッペン同士の争いが激化したことは――また別の話だった。
◇
事件を無事、解決した僕は購入した花を持って壁を上る。壁の上に着くと既にベルが横になって目を閉じていた。
頭の横にそっと鉢を置くと、「あら、約束を守って偉いわね」とベルが目を開いた。
「今回もベルのお陰で解決出来たようなもんだから」
「私は何もしてないけどね……?」
「いや、そんなことないとないと思うけど……」
それにしても、ベルは何故、シンバクが襲われた姿を見ていたのだろうか? ここから北高までの距離は長い。いくら視力が良くても不可能だろう。
やはり、ベルが持つ【異能】が関係しているのだろうか?
今度、また、聞いてみよう。
今は素直に感謝の気持ちを伝えるだけだ。
僕がベルに送った花はコトネアスター。
星が煌めくように成長した樹形が印象的な植物だった。僕がこれを買った理由は一つ。
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