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第8話 手に入る魔法は一つじゃない
しおりを挟む「あれ? ゴブリンを倒したら【腕力強化《小》】じゃなくて、【強化の矢】が手に入ったぞ?」
□■□■□■□■□■□■□■□■
【強化の矢】×3
【泡弾《フォーム・ショット》】×4
【腕力強化《小》】×3
□■□■□■□■□■□■□■□■
手に入らないことはあるけど、他の魔法が手に入ったことはなかった。
草原の草に包まれ日向ぼっこするフェンリルに聞いてみた。
「ねぇ。これってどういうこと?」
「ああん? 魔物一匹から手に入る魔法は一つとは限らないだけだ。そんなことで俺を起こすなぁ!」
……。
フェンリルは眠りを起こされたからか機嫌が悪かった。だったら、無理して付いてこなくてもいいのに。
「そうだ。いつまでもフェンリルじゃ、呼び辛いから名前付けてもいいかな? これからも一緒に居てくれるんでしょ?」
「ホァ。好きにしろ」
テコテコと歩いて少し離れると再び眠りに入ってしまう。まあ、好きにしろってことだから、好きにさせて貰おうか。
「フェンリルで傲慢だからマンリルにしようかな」
「文字数は殆んど一緒じゃねぇか!!」
「あ、起きた」
僕の名づけにフェンリルが立ち上がり遠吠えをした。
「しかも、ダセェし。言っとくけどな、俺にはロウって名前があるんだ! 呼びたきゃそう呼べ!」
「なんだ……。マンリルには名前があったのか……」
「お前、次、俺をマンリルって呼んだら、本気で起こるからな?」
「分かったよ、ロウ」
フェンリルの遠吠え。
草原では聞きなれぬ獣の鳴き声に興味を持ったのか、一匹の魔物が姿を見せた。ゴブリンの強化種であるオーガだ。
強さは中級。
この草原で一番強い魔物だ。自分の縄張りが荒らされると思ったのか、息が荒く手にした棍棒を振り回す。
「ちょっと、戦うのは避けたかったんだけど!?」
いずれはオーガを倒すつもりではあったけど、僕の予定ではそろそろ、違うエリアの魔物たちを倒そうかと思っていたのだ。
中級と戦うには、三種類だけじゃ心細い。
「ロウ、逃げるよ!」
「逃げる? 何言ってんだよ。今のお前なら余裕で倒せるだろ?」
「無理だよ。この三種類だけじゃ……」
「はぁ。しょうがない。魔法の隠された特性をもう一つ教えてやるか」
グッと前足を伸ばして腰を曲げる。
三頭身だからか、やっぱり犬にしか見えない。その姿が伝説上のフェンリルみたいに大きくて格好良かったら説得力はあるだろうに。
「お前、今、失礼なこと考えてただろ?」
「全然。早く特性を教えてよ」
疑いの眼差しを投げるが、追及する時間はないと判断したらしい。
「いいか? 魔法は特定の組み合わせをすることで、一つの魔法になることがあるんだ?」
「……どういうこと? ロウの説明は毎回難しいんだよ」
「そんな難しい話をしてるつもりはないが、確かに経験したほうが早いよなぁ! そしたら、【強化の矢】と【腕力強化《小》】を同時に発動してみろ。今の枚数ならイメージするだけで出来るだろ」
「ど、同時に選択?」
言われるがまま、弦を引き順々に発動する。
すると、二つの魔法では見られなかった現象が身体に現れた。【強化の矢】によって纏う赤いエネルギー。
それが僕の身体全体に纏われていた。
「これって」
「後はいつも通り放つだけだ」
ヒュンっ。
弦を放すと、これまでのどの一撃よりも早く矢が宙を走った。
防ごうと交差したオーガの腕を貫く。
拳大の穴が身体に空いていた。
「凄い……。これが僕の魔法?」
「そうだぁ! これが魔法進化だぁ!」
「魔法……進化」
弱い魔法も組み合わせれば強力な一撃になる。
オーガを一人で倒せるほどの魔法。
「凄い、凄いよ! ロウ!!」
「へ。喜んでもらえて良かったよ。で、どうだ? オーガの魔法は手に入ったか?」
「あ、そうだ!」
喜びで感覚に集中するのを忘れていた。
ステータス画面を開く。
□■□■□■□■□■□■□■□■
【強化の矢】×3
【泡弾《フォーム・ショット》】×4
【腕力強化《小》】×3
【腕力強化《中》】
□■□■□■□■□■□■□■□■
良かった。
しっかりと魔法は手に入っていた。
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