手札看破とフェンリルさんで最強へ~魔法はカードだと真理に到達してない世界でデッキ構築!~

白慨 揶揄

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第17話 勝てる魔物に敗北 【追放Side】

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「たく……。なんで、俺がリベリオーガなんて討伐に行かなきゃいけねぇんだよ。そんなのオーガを倒しきれなかった雑魚にやらせろよな」

 岩山。
 立ってるだけで汗が噴き出す太陽の光から、逃げるようにして岩陰で休息していた。

「私もどうか~ん。ていうか、オーガを取り逃がすとか有り得ないでしょ。どんだけ弱いのよ」

 プリスがパタパタと手を動かす。熱さを逃がすためか、胸元が大きく開いた服を着ていた。手の動きに合わせてプルプルプル。
 ちっ。
 二人きりだったら、狭間に溜まった汗を舐め回したいぜ。

「リベリオーガ。戦闘で敗北したオーガが、復讐に燃え極限まで自らを追い詰めることで進化した魔物。強さで言えば中級と上級の間といったところですかね」

 オストラが冷静に情報を整理する。
 こいつ、こんな熱いのにローブを脱ごうとしないし、汗一つ掻いてない。本人は「汗を掻かない体質なんです」と言っていたが、そんなことあるのかよ。
 羨ましい。

「……おい。いつまで休んでるつもりだ。大臣には今日の夜までに倒してこいと言われてるはずだが?」

 岩陰をアディが覗き込んだ。
 熱いのに一人でリベリオーガを探しまわっていたようだ。くそ真面目な感じはユライを思い出してイライラするぜ。
 けど、まあ、あいつよりはマシか。

 ユライが汗かいていても気持ち悪いだけだが、アディは違う。
 熱くなったのか、ローブを脱ぎ身体のラインがはっきりと見える。くそ、熱いのにムラムラさせんじゃねぇよ。

「バニス、聞いてるのか?」
「あー、聞いてるよ。たく、あの糞大臣。夜までって、ただこの炎天下のなか俺達を歩かせたいだけじゃないかよ」

 魔物を倒すだけなら時間は関係ない。
 昼でも夜でも倒せばいいだけのこと。それなのに条件を出してくるのは嫌がらせでしかない。
 全く、性格悪いな。
 あいつ、絶対独身だな。性格悪くて髪は常に脂ぎってる。同じ男として信じられないぜ。

「だから、夜になったら倒して、その辺で困った人を助けたことにでもしとけばいいさ。幸い、帰り道に俺達を慕ってた村があるんだ」

 貧乏くさい村で、いっつも野菜を押し付けてくる青臭い村人たち。だが、あいつらは馬鹿だから、こういう時に利用できる。

「私もさんせーい」
「私はどちらでも構いませんが……。バニスさんの指示に従います」
「なら、決定だな。夜までここで待機だ!!」

 ゴロンと横になる。
 熱くて眠れそうにはないが、動き回るよりはマシだ。それでも、横になったら眠りに落ちてしまっていた。
 気付くと夜になっていた。

「はぁ~。良く寝た。お、だいぶ涼しくなってるじゃんか。早く倒しに行こうぜ?」

 眠っていたのは俺だけじゃなく、プリスも眠っていたらしい。
 本を読むオストラに寄り掛かって寝ていた。
 む。
 なんで、俺じゃなくてオストラなんだよ。

 ギロリとオストラを睨むと、

「すいません。プリスがリーダーが気持ちよく眠ってるから邪魔しちゃ悪いと気を使ったみたいで」
「そうか。ならいいんだが」

 いらんところで気を使うな。
 今まではお構いなしで甘えてきてたくせによ。

「あれ? アディは?」
「彼女なら少し前にリベリオーガを探しに行きました。もうじき、帰ってくるんじゃないですか?」

 オストラの予想通り、すぐにアディは戻ってきた。

「ここから少し昇った先にオーガの巣を見つけた。恐らく、そこにリベリオーガもいることだろう」
「しゃーねーな。いっちょ、倒しに行きますか」

 面倒だが倒した証拠を持って行かないと大臣は信用しないだろうからな。
 グッと身体を伸ばして岩陰から出る。

 ゴツゴツとした岩山を上っていくと山の中腹部に大きな洞穴があった。中からはオーガの声が聞こえてくる。

「けっ。これから殺されるのも知らずに騒いでるみたいだなぁ」

 魔物の声を聴いてたらやる気が出てきたぜ。
 酷いくらいに痛めつけてやるか。
 穴の中を進むと、オーガはいた。
 ゴブリンが4体にリベリオーガが一体。滅ぼされた生き残りって感じだなぁ。

「おらぁ!!」

□■□■□■□■□■□■□■□■

【斬撃《スラッシュ》】
【火弾《ファイアボール》】
【斬伸撃】
【兜割り】
【治癒《小》】

□■□■□■□■□■□■□■□■

 俺は持っている魔法から【斬伸撃《ざんしんげき》】を繰り出す。これは刀身が伸びる魔法だ。剣の間合いが変化するから不意打ちにはぴったしだ。

 ザンっ!
 キーン!

 だが、魔法を使用した斬撃はリベリオーガに止められた。

「てめぇ……!」

 恐らく人間の武器を拾ったのだろう。同じく剣を持ち俺の攻撃を防いでいた。

「ちっ!!」

 これが王に渡した火龍の剣だったら、刀ごと溶かし斬ってやったのによ。
 つーか、一番良い剣を寄こせっていったのに、全然普通じゃないか。

「プリス!!」

「うん。焼いちゃうよ!!」

 プリスが背後から魔法を放つ。得意魔法はファイア系。
 使える魔法は俺の次に多い三種類だ。

□■□■□■□■□■□■□■□■

【火弾《ファイアボール》】×2
【三連火弾《トリプルファイア》】
【爆・爆発《ボム》】

□■□■□■□■□■□■□■□■

 選択した魔法は【三連火弾《トリプルファイア》】。

 ボボボン。

 三つの火球が洞窟を照らし飛んでいく。
 いいぞ!
 焼けし死ね!!

 ダンっ。
 フシュウウ……。

 三つの火の玉は、リベリオーガに当たると煙となって消えた。

「な、効いてない!?」
「当たり前だ。よく見ろ! あいつは腕に盾亀《シールドタートル》の甲羅を装備しているだろう。なぜ正面から戦っているんだ!」

 アディが信じられないと声を上げる。
 防御に特化した装備を持つリベリオーガに真正面から二つも魔法を使用するなんてと避難の声を上げる。

「おい! だったら、なんでそれを早く教えないんだ!」
「教える? これくらい自分で気づくべきだ」
「知るか! 魔物の情報は全部後衛が教えるのが【占星の騎士団】のルールだ。よって、これはお前のミス。責任もってお前がなんとかしろ!」
「なんとか……だと!?」

 ミスした相手に挽回のチャンスを上げるなんて、ちょっと優しすぎか? こうやって甘くするから、ユライみたいに付け上がるんだろうなぁ。
 そんなことを考えているとオストラが並び耳打つ。

「バニスさんもしあなたが彼女を狙ってるなら、ここは一緒に戦った方がいいのでは? 今一度、あなたの強さを魅せれば、すぐに落ちますよ」
「本当か?」
「はい」

 仕方がない。
 ここは手を貸してやるか……。

「お前ひとりで任せようと思ったが、今回だけは許してやる。一緒にリベリオーガを倒そうぜ?」

 一陣の風みたいに笑って見せた。
 洞窟に爽やかな風が吹いたとアディは勘違いしちゃうんじゃないのか?

「案外、私一人の方が倒せるかもしれないけど」
「なに!?」

 ピタリと風が止む。
 この女……なんなんだよ!

「くそ! イラつくぜ!!」

 こうなったら、今直ぐにこの女を滅茶苦茶にしてやる!! 魔物は二の次だ!
 アディに手を伸ばす。

 スカっ。

 手が空を切った。
 まさか、俺が手を出すことが分かっていたのか?

 だが、アディが避けたのは俺じゃなかった。

 ドドドドン!!

 三連で放たれる炎が、俺達を襲った。

「あ、あちぃ!!」

 直撃した俺は炎に包まれ宙を飛ぶ。

 ボォオオオオ。
 ヒューン。
 ドン。

 岩壁にぶつかった俺をオストラとプリスが助ける。

「大丈夫ですか? プリス。今直ぐ治癒魔法を!」
「うん!」

 治癒を発動すると焼けた皮膚が修復されていく。だが、ダメージが大きいからか、焼けた皮膚は完全には戻らなかった。

 俺達を庇うように武器を構えながら、アディが見向きもせずに言う。

「まただ。あんな分かりやすい呼び動作を、何故、お前達は見抜けない?」
「だから、後衛の役目だって言ってるだろうが! 自分だけ逃げやがって!!」

 こいつにはチームワークって言葉がないのか!!
 身体の痛みが消えるまで休む。

 その間もアディは一人でリベリオーガとゴブリンと戦っていた。

「へっ。なんだよ。口だけで苦戦してるじゃんか」

 自分は特別みたいな口ぶりだが、結局、俺がいないと防御するだけで手一杯。ちょっとばかし逃げるのが上手いからっていい気になりすぎなんだよ。

「駄目だ……撤退だ!」
「はぁ!? なんで、お前が指示するんだ!」
「戦えるならどうぞ戦ってくれ。私は引くぞ!!」

 アディは自分だけ洞窟から逃げ出した。
 ちっ。
 これから俺が本気出してやろうと思ったのに……。

 リベリオーガとゴブリンは俺達を倒そうと、ゆっくりと近付いてくる。まるで、俺達を甚振ってるみたいだ。

「ちょっと、バニスどうするの!? 私たちも退く!?」
「馬鹿言うな。俺達だけでも倒すんだよ!!」

 口先だけの新入りがいなくても、俺達三人いれば充分だ。どれだけの死地を潜り抜けてきたと思っているんだ。
 だが――。

「くそっ! 魔法を使い切った!!」

 俺達が使う魔法はことごとく避けられた。
 武器だけで戦うのは不利だ。

「こうなったら撤退だ!!」

 畜生。
 アディが自分だけ逃げなきゃ倒せたのに!!
 自分勝手な女の所為で、俺は撤退という情けない道を選ばざるを得なかった。
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