手札看破とフェンリルさんで最強へ~魔法はカードだと真理に到達してない世界でデッキ構築!~

白慨 揶揄

文字の大きさ
37 / 58

第37話 全部自分で話しちゃった

しおりを挟む
「あぶねぇ!」

【選択領域】を開こうとすると同時に、ロウが体当たりで僕を押した。身体が一歩ズレたお陰で風弾《エアーショット》は脇を抜ける。

「フェンリルが助けたか。可哀そうに……。良いように利用されちまってよ」
「残念だが、俺は利用なんかされてねぇよ! ユライ、油断すんな!」
「ロウには言われたくないよ!! さっきまで、「良い奴かも!?」なんて言ってたくせに……」
「そ、それは……。そう、フェンリルの余裕ってヤツだ!! いいから、常に手札看破は発動してろよ!」
「分かってるってば!!」

 ロウの言葉に頷き、意識を瞳に集中させる。「ギュン」と視界が鋭く一点に狭まっていく。
 手札看破を発動したことで、男の頭上に魔法が浮かび上がる。
 枚数は三枚。

 斬数は一枚じゃないから、使用する魔法までは見抜けないか……。それにしても、4枚も魔法を持つなんて、かなりの腕が立つ。
 なのに、なんでこんな事件を起こしてるのだろうか? 

 なにより、相手は人間に躊躇ないなく魔法を放てる男。
 さっきは間違いなく僕を殺しにきた。痛めつけられることには慣れてるけど、人から殺意を向けられるのは初めてだ。
 ドクドクと心臓が早まる。

「ユライ、余計なことは考えんなよ? 相手が魔物だろうが人間だろうが、お前が出来ることは限られてんだからな」
「う、うん」

 興奮か恐怖か分からない鼓動が、ロウの言葉で少しだけ落ち着きを取り戻した。
 そうだ。
 魔法の枚数が多くても、ロウから貰った力があれば切り抜けられる。

「ほう。良い面構えだ。だが、次はどうかな? 今度は【脚力強化《中》】で、俺自身が加速し、【斬撃波】を二発繰り出す最速の攻撃だぁ!」

 手札看破などしなくとも、男は自分の持つ魔法を全て教えてくれた。
 相手に手の内をバラすことは愚かなことこの上ないが、きっと自信があるんだ。最速の攻撃を防がれない自信が。

「……」

【脚力強化】
 それは、僕が持つ【腕力強化】と同系統の魔法。身体の下半身に込められる力が倍増し、主に移動スピードが増加する。
 高速で接近されたら厄介だけど――

「ほぉら、行くぞ行くぞ、行くぞぉ!」

 男はゆらゆらと身体を、風になびく布地みたいに揺らす。そうすることで、いつ僕に近付くのか分からなくしているのだろう。
 でも、僕はまだ彼が責めてこないのが分かる。
 だって、頭の上に浮かぶ魔法は一枚も減っていないんだから。

「さーて、どのタイミングで殺そうかなぁ? まだかな、もう行こう――かな?」

 ひゅっと。
 男の頭上に浮かんでいた魔法が一枚消えた。
 男は不意を着いたつもりなのか、言葉の途中で魔法を発動する。どんな魔法か分からなければ、もう少し様子見が必要だけど――。

「【選択領域】!!」

 強化された脚力で一直線に駆ける男。どうやら扱う魔法について嘘は付いていないようだ。

「こいつ……馬鹿だな」

 ロウが馬鹿正直に魔法を教えた男に呆れていた。

「面倒だから、さっさと倒して【擬態龍】を探しに行くぞ」
「うん」

 まだ、解決すべきことはある。こんなところで時間を消費するわけには行かない。僕は表示された手札から一枚を選択する。

「よし!」

 領域を解除すると、男が僕の真正面に現れニヤリと笑う。

「喰らえ!!」

 男が放つのは【斬撃波】。発生タイムが早い範囲技。間合いが短い弱点を【脚力強化】で補う戦法は、確かに効果的だ。
 勿論、自分から相手にバラさなければだけど。

 キィン。

 魔法によって生み出された斬撃が、僕の魔法で弾かれる。
 衝撃を受けた盾から、衝撃波が生み出された。

「ぐ、グハァッ! こ、これは……!?」
「【反射の盾】。防御系で使いどころが難しいんだけど――持ってて良かったよ」

 手に入れてはいたけど、使う機会に恵まれていた魔法が役に立った。【反射の盾】は、魔法で盾を生み出し、受けた衝撃をそのまま放出するカウンター技。

「自分から飛び込んでくるって分かってれば、対応は出来るよね」

 正面から、自分の魔法の威力を受けた男は「ガクン」と膝を付いて地面に倒れた。

「ひゅう~。かっけー」

 ロウが口笛を拭いて手を叩く。

「今回は相手が全部話してくれたから助かっただけだよ。そんなことより、何か拘束できるものを探そう」

 意識を失っているとはいえ、事件と関係をしている人だ。このまま放置するわけにはいかない。
 ロウが近くにあった蔦を千切り僕に渡す。

「ありがと。なんでこんなことをしたのかとか、また後で話を聞かせて貰おう!」

 次は【擬態龍】を探さないと!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...