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ep.5
5-3
『……今、ちょうど東京駅の近く』
「――わかった。寒いだろうから駅入って待ってて」
『えっ、そんな……』
電話越しに三神峯が慌てていたが、そんなことはお構いなしに家を飛び出した。とにかくそっちに向かうから駅で待ってて、と何度も念を押して御堂は自宅の最寄りの駅に向かう。こちらの気迫に折れた三神峯が駅にいると渋々答えたのを聞いてから通話を切った。
(冷静になれって……。電車に乗るよりタクシーの方が早いか)
そう考えた御堂は駅でタクシーを捕まえると急ぎで東京駅に向かうよう指示をした。タクシーの運転手がそんなに急いでどおしたのぉ、と悠長に話しかけてくるものだから今世紀最大の危機なんだ、と適当に話すと、夜勤なのか早朝からの勤務なのかテンションが高い運転手は幸いにもノリがよく、東京駅まで飛ばしてくれた。
彼女さんのこと大事にするんだよぉ、と降り際に言われたのが少しだけ悔しかった。
「景!」
「……あ、和樹……」
とにかく広い東京駅で、八重洲側とも丸の内側とも聞いていないにもかかわらず三神峯をすぐに見つけられたのは彼が一層目立つ容姿だからか、それともそんな気がするだけか。
東京駅はさすがに午前6時前の早朝でも結構の人がいた。旅行客も多く、三神峯と同じようにスーツケースを持っている人がたくさんいる。壁に凭れて立っていた三神峯に、タクシーに乗る前に買っていたあたたかいペットボトルのお茶を差し出す。
「お疲れ様。昨日の展示会、ありがとうね」
昨日と同じスーツ姿のままなのも、スーツケースを持ったままなのも御堂は何となく察した。三神峯の目の下にはくっきりと隈が出来ているし、左頬が心なしか赤く腫れている気もする。三神峯は御堂からペットボトルを受け取ると、泣きそうに顔を歪めた。
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