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私の主人、ご気分を害される
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怒りに満ちているシニフェ様をなんとかなだめましたが『あんなヤツと顔を突き合わせて食事等できない』と仰るので、プランにシニフェ様を任せることにして、私が食事を受取るために信用ならないエルフのもとへ向かいました。
ダイニングの場所が分からないと思っていましたが、部屋を出ると廊下と呼べる物もなく開け放した扉がみえました。私たちがいた部屋を背にそこしか進む場所がなかったので、その部屋の方へ進んで行きます。
どうやら私たちのいた部屋のすぐ先のこの部屋がダイニングという珍しい作りの家のようです。
部屋に入ると、明かりもつけないで僅かに月光が差し込む薄暗い部屋の中でエルフが一人座っていました。机に肘を立て頬杖を付き、眼を細くして私を見据えると言葉を発し始めました。
「やっぱり君が来たんだ」
「やはりとは?」
「勘だけど、僕の勘は当たるんだよねぇ~☆」
勘ではなく、自分でそのように持って行っているだけの気もしますが言わないでおきましょう。
「ちょうど良いから、ちょっとお話しない?ガスピアージェの息子さん」
「エノームと申します。到着した時のやり取りでも思いましたが、あなたは父または当家の事をご存知なのでしょうか?」
「知ってるよ。うん、とても良く知ってる」
「私の父の知人なのでしょうか?それならご挨拶もせず失礼しました」
父上がエルフと懇意にしていることは聞いた事がありませんでしたし、エルフの来客も見た事がありません。
ただここへ来る事になってから、イリクサの件といい、家系魔術の話といい私は自分の家の事をあまり知らないのだと痛感しているところです。
もしかすればこの好ましくないエルフは父上の古い友人という可能性もなきにしも
「いや、君の父は知らないかな☆」
可能性はなかったようです。
「ではなんでしょう?率直に申し上げまして、私はあなたを疑っております。毒を撒いておいて『忘れていた』ですって、グラン伯爵から話は聞いていたでしょうにそんなこと有り得るわけがないでしょう。それに、目覚めてからのシニフェ様のご状態、あれもあなたの仕業ではないんですか」
「グランメションの坊ちゃん、そう、僕が話したかったのはそっちの件だ」
「シニフェ様のお話?」
私が聞き返しますと、丁度窓から差し込んでいた月明かりに雲がかかったようで、わずかに見えていた不可解なエルフの表情は全く見えなくなりました。
「君ってさ、別に彼の従僕とか使用人じゃないよね?」
「ええ、私はグランメション家に雇われているのではありません。何よりもまだ学生ですし」
「それなら何故そんなにグランメションの坊ちゃんに付き従うの?さっきの薬もそうだしさ、その後目が覚めてもすぐに自分じゃなくてあっちの心配してたでしょ?まぁ、最初に会った時は坊ちゃんの人柄もあるかなーと思ったけど、それって最近の事でしょ、よく我慢出来てたね」
最近の事?
どういう意味でしょう。この風変わりなエルフに会ったのは先ほどが初めてのはずです。シニフェ様も当然私も。しかしこの物言いではシニフェ様が変わられる前を知っているとでも言いたいのでしょうか。
「我慢?変な事をおっしゃいますね。ガスピアージェの事をご存知なら分かると思いますけど、当家は代々グランメション侯爵家を主君としています。従僕ではございませんが側近ではございます。私も生まれたときからシニフェ様のお側に居るように育っておりますし、今は自分の意志でお側に居ります、我慢なんてとんでもございません」
「ふぅん?お手本のような答えだね☆じゃあさ、最近の彼と昔の彼、選べるならどっちを選ぶ?」
「選ぶ…?おかしな事をーーまさか、目が覚めてからシニフェ様がお変わりになったのはあなたの仕業なのですか?」
「ふふっ、ちょっと面白そうだから弄ってみたんだよ。大丈夫、体には害はないし、今の彼だって素敵でしょう」
声色からでしか判断ができませんが、目の前の存在は間違いなく薄ら笑いを浮かべているでしょう。
面白そうだから弄った?人の性格を?
人間をなんだと思っているのでしょう、非常に腹立たしい発言です。
シニフェ様の件は当然の事、ベグマン公爵家の鏡の取引がなければ何かしら反撃をしてさしあげるべきですかね。いえいっそ、先ほどシニフェ様には列車以外帰る手立てがないとは申し上げましたが、徒歩でも良いので今すぐここから出て行くべきでしょうか。
「高慢ここに極まれりといったところでしょうか。さすがエルフ、天上天下唯我独尊ですね」
「そんなに褒めなくて良いよ☆それで、どっちが良いの?」
そう言って立ち上がると、エルフは私の方へ歩み寄ってきました。なにをされるのかと身構え、いつでもプランに警告を出せるように指先に魔力を溜めました。
一歩、一歩、と私に近寄って、そして隣までくると私の肩に手を置き、耳元で小さく囁きました。
「それとも君に絶対服従する従順な性格にしてあげようか☆」
ダイニングの場所が分からないと思っていましたが、部屋を出ると廊下と呼べる物もなく開け放した扉がみえました。私たちがいた部屋を背にそこしか進む場所がなかったので、その部屋の方へ進んで行きます。
どうやら私たちのいた部屋のすぐ先のこの部屋がダイニングという珍しい作りの家のようです。
部屋に入ると、明かりもつけないで僅かに月光が差し込む薄暗い部屋の中でエルフが一人座っていました。机に肘を立て頬杖を付き、眼を細くして私を見据えると言葉を発し始めました。
「やっぱり君が来たんだ」
「やはりとは?」
「勘だけど、僕の勘は当たるんだよねぇ~☆」
勘ではなく、自分でそのように持って行っているだけの気もしますが言わないでおきましょう。
「ちょうど良いから、ちょっとお話しない?ガスピアージェの息子さん」
「エノームと申します。到着した時のやり取りでも思いましたが、あなたは父または当家の事をご存知なのでしょうか?」
「知ってるよ。うん、とても良く知ってる」
「私の父の知人なのでしょうか?それならご挨拶もせず失礼しました」
父上がエルフと懇意にしていることは聞いた事がありませんでしたし、エルフの来客も見た事がありません。
ただここへ来る事になってから、イリクサの件といい、家系魔術の話といい私は自分の家の事をあまり知らないのだと痛感しているところです。
もしかすればこの好ましくないエルフは父上の古い友人という可能性もなきにしも
「いや、君の父は知らないかな☆」
可能性はなかったようです。
「ではなんでしょう?率直に申し上げまして、私はあなたを疑っております。毒を撒いておいて『忘れていた』ですって、グラン伯爵から話は聞いていたでしょうにそんなこと有り得るわけがないでしょう。それに、目覚めてからのシニフェ様のご状態、あれもあなたの仕業ではないんですか」
「グランメションの坊ちゃん、そう、僕が話したかったのはそっちの件だ」
「シニフェ様のお話?」
私が聞き返しますと、丁度窓から差し込んでいた月明かりに雲がかかったようで、わずかに見えていた不可解なエルフの表情は全く見えなくなりました。
「君ってさ、別に彼の従僕とか使用人じゃないよね?」
「ええ、私はグランメション家に雇われているのではありません。何よりもまだ学生ですし」
「それなら何故そんなにグランメションの坊ちゃんに付き従うの?さっきの薬もそうだしさ、その後目が覚めてもすぐに自分じゃなくてあっちの心配してたでしょ?まぁ、最初に会った時は坊ちゃんの人柄もあるかなーと思ったけど、それって最近の事でしょ、よく我慢出来てたね」
最近の事?
どういう意味でしょう。この風変わりなエルフに会ったのは先ほどが初めてのはずです。シニフェ様も当然私も。しかしこの物言いではシニフェ様が変わられる前を知っているとでも言いたいのでしょうか。
「我慢?変な事をおっしゃいますね。ガスピアージェの事をご存知なら分かると思いますけど、当家は代々グランメション侯爵家を主君としています。従僕ではございませんが側近ではございます。私も生まれたときからシニフェ様のお側に居るように育っておりますし、今は自分の意志でお側に居ります、我慢なんてとんでもございません」
「ふぅん?お手本のような答えだね☆じゃあさ、最近の彼と昔の彼、選べるならどっちを選ぶ?」
「選ぶ…?おかしな事をーーまさか、目が覚めてからシニフェ様がお変わりになったのはあなたの仕業なのですか?」
「ふふっ、ちょっと面白そうだから弄ってみたんだよ。大丈夫、体には害はないし、今の彼だって素敵でしょう」
声色からでしか判断ができませんが、目の前の存在は間違いなく薄ら笑いを浮かべているでしょう。
面白そうだから弄った?人の性格を?
人間をなんだと思っているのでしょう、非常に腹立たしい発言です。
シニフェ様の件は当然の事、ベグマン公爵家の鏡の取引がなければ何かしら反撃をしてさしあげるべきですかね。いえいっそ、先ほどシニフェ様には列車以外帰る手立てがないとは申し上げましたが、徒歩でも良いので今すぐここから出て行くべきでしょうか。
「高慢ここに極まれりといったところでしょうか。さすがエルフ、天上天下唯我独尊ですね」
「そんなに褒めなくて良いよ☆それで、どっちが良いの?」
そう言って立ち上がると、エルフは私の方へ歩み寄ってきました。なにをされるのかと身構え、いつでもプランに警告を出せるように指先に魔力を溜めました。
一歩、一歩、と私に近寄って、そして隣までくると私の肩に手を置き、耳元で小さく囁きました。
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